第76回トニー賞、ミュージカル作品賞
は『キンバリー・アキンボ』、演劇作
品賞は『レオポルトシュタット』 ノ
ンバイナリーを公言している俳優がミ
ュージカル主演男優賞&ミュージカル
助演男優賞を初受賞

2023年6月12日(日本時間)、アメリカ演劇界で最も権威のあるアワードとして知られる『第76回トニー賞授賞式』が開催され、WOWOWでは、世界のトップスターたちの歌とダンスのパフォーマンスを含め、華やかな授賞式の模様を生中継で放送した。受賞結果レポートが届いたので紹介する。
今年は全米脚本家組合のストライキにより台本がない異例の事態に、そしてミュージカル『イン・ザ・ハイツ』の舞台となったニューヨーク市マンハッタン区ワシントンハイツのユナイテッド・パレスで初めて開催された。
『第76回トニー賞授賞式』会場    写真:AP/アフロ
ミュージカル部門では、常人の数倍の早さで老いていく16歳になる女子高生を描いた『キンバリー・アキンボ』がミュージカル作品賞、ミュージカル主演女優賞(ヴィクトリア・クラーク)、ミュージカル助演女優賞(ボニー・ミリガン)など最多5冠を獲得。最多12部門13ノミネートの『お熱いのがお好き』は、ミュージカル主演男優賞(J・ハリソン・ジー)など4冠で続いた。
『キンバリー・アキンボ』パフォーマンス(ヴィクトリア・クラーク、ジャスティン・クーリー)     写真:AP/アフロ
ヴィクトリア・クラーク『キンバリー・アキンボ』(ミュージカル主演女優賞)     写真:AP/アフロ
ボニー・ミリガン『キンバリー・アキンボ』(ミュージカル助演女優賞)    写真:AP/アフロ

ミュージカル演出賞 マイケル・アーデン『パレード』(ミカエラ・ダイアモンド、ベン・プラット)     写真:AP/アフロ
演劇部門ではトム・ストッパード作、ユダヤ人一族の四世代にわたる物語を描いた『レオポルトシュタット』が演劇作品賞、演劇演出賞、演劇助演男優賞(ブランドン・ウラノヴィッツ)、衣装デザイン賞(ブリジット・ライフェンシュトゥール)の4冠に輝いた。なおストッパードの作品が作品賞に輝くのは5度目となり、85歳にて自らのもつ最多記録を更新し、壇上で喜びのコメントをした。

『レポルドシュタット』(演劇作品賞)    写真:AP/アフロ

ブランドン・ウラノヴィッツ『レオポルドシュタット』(演劇助演男優賞)    写真:AP/アフロ

演劇主演女優賞はドラマ 『キリング・イヴ/Killing Eve』や映画『最後の決闘裁判』のジョディ・カマーがひとり舞台の『プライマ・フェイシィ』でブロードウェイデビューにして見事授賞。法律と社会が抱える矛盾に直面する若き弁護士を演じ、オスカー女優のジェシカ・チャステインを退けた。
ジョディ・カマー『』プライマ・フェイシィ』(演劇主演女優賞)    写真:AP/アフロ
ショーン・ヘイズ『グッドナイト、オスカー』 (演劇主演男優賞)    写真:AP/アフロ
ミリアム・シルヴァーマン『ザ・サイン・イン・シドニー・ブルースティーンズ・ウィンドウ』(演劇助演女優賞)    写真:AP/アフロ
そしてJ・ハリソン・ジー(『お熱いのがお好き』)とアレックス・ニューウェル(『シャックト』)が、性自認を明言していないノンバイナリーを公言している俳優として初めてノミネートされていたが、それぞれJ・ハリソン・ジーがミュージカル主演男優賞、アレックス・ニューウェルがミュージカル助演男優賞に輝き歴史的な回となった。
J・ハリソン・ジー『お熱いのがお好き』(ミュージカル主演男優賞)    写真:AP/アフロ
アレックス・ニューウェル『シャックト』(ミュージカル助演男優賞)     写真:AP/アフロ
鮮やかな青いドレスで登壇したJ・ハリソン・ジーはトロフィーを手に「“見られてはいけない”と言われてきたみなさん、これはあなたたちへの贈り物です」とマイノリティのコミュニティに向け呼びかけた。アレックス・ニューウェルも「私は、ノンバイナリーの、太ったマサチューセッツ出身の人間としてここにいます。『無理だ』と思うみなさんに目を見て伝えたいと思います。心を込めれば何でもできます!」と力強く呼びかけ、喝采を浴びた。
アリアナ・デボーズ    写真:AP/アフロ

アリアナ・デボーズ「OP」パフォーマンス    写真:AP/アフロ
今年は全米脚本家組合(WGA)によるストライキが行なわれていることを受け、ショーを支える脚本家への敬意を表する形で、授賞式は台本なしという異例の形式で進行した。昨年に続き、アリアナ・デボーズが司会を務めたが、オープニングの映像では、台本を開いたアリアナが、その中身が白紙であることに呆然とするという演出で始まり、1930年代に建てられた絢爛豪華なユナイテッド・パレスを存分に使ったオープニング・パフォーマンスは音楽とダンスのみでセリフや歌詞は一切なし! それでもアリアナらが圧巻のパフォーマンスを見せ、会場はスタンディングオベーションで称えた。
ジョエル・グレイ&ジョン・カンダー    写真:AP/アフロ

また功労賞は『ニューヨーク・ニューヨーク』『キャバレー』『シカゴ』など数々の傑作で知られる作曲家ジョン・カンダー、そして『キャバレー』のMC役で舞台ではトニー賞、映画ではオスカーを受賞した俳優ジョエル・グレイが受賞。96歳と91歳のふたりが健在な姿を見せ、アリアナ・デボーズとジュリアン・ハフが『シカゴ』の「Hot Honey Rag」の華麗なパフォーマンスで祝福した。

『シカゴ』(アリアナ・デボーズ、ジュリアン・ハフ)パフォーマンス    写真:AP/アフロ
台本がないことで今年はノミネート作品以外のパフォーマンスも多く、歌手ニール・ダイアモンドの伝記的ミュージカル『ビューティフル・ノイズ』から大ヒットナンバー「Sweet Caroline」が披露され会場が一丸となり大合唱。リン=マニュエル・ミランダがノリノリで歌う姿も印象的だった。そしてリア・ミシェルは『ファニー・ガール』から「Don't Rain on My Parade」を熱唱。名古屋市出身の岩井麻純、ハワイ出身のキャンディス・ハタケヤマもパフォーマンスを行った。
『ファニー・ガール 』(一番左:岩井麻純)     写真:AP/アフロ
『ファニー・ガール』(リア・ミシェル右後ろ、キャンディス・ハタケヤマ)    写真:AP/アフロ
日本のスタジオは昨年に続き、井上芳雄、宮澤エマがナビゲーターを務め、スタジオゲストとして俳優の市村正親、平方元基、三浦宏規、影山雄成(演劇ジャーナリスト)、柏木しょうこ(映像翻訳者)が出演。オープニングでは井上と宮澤がスタジオで「New York, New York」を生で熱唱し、三浦がダンスパフォーマンスを披露。授賞式終了後のスタジオでは、平方がミュージカル『生きる』より、自身が演じる小説家の楽曲「人生の主人になれ」をスタジオで生歌唱した。
(左から)井上芳雄、宮澤エマ
なお、『第46回トニー賞授賞式』[字幕版]の模様は、6月17日(土)午後9:00より、WOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで放送・配信される。

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着