Absolute areaのバンド史上最大キャ
パワンマンに溢れた希望と感謝

Absolute area One Man Live 2023 “Fly High~未来への滑走路~”

2023.6.3 EX THEATER ROPPONGI
Absolute areaのワンマンライブ『Absolute area One Man Live 2023 “Fly High~未来への滑走路~”』が、6月3日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて開催された。本公演はAbsolute areaにとって最大キャパシティで開催され、「挑戦の1年」と称していた2022年の活動と、12月にリリースした『Future』を経て、彼らにとってのひとつの集大成とも言える日だ。
そんな大事な一日ということもあり、期待感で満たされた会場に、山口諒也(Vo/Gt)、萩原知也(Ba)、高橋響(Dr)、サポートメンバーである坂本夏樹(Gt)、鮎京春輝(key)の5人が登場すると、1曲目に「ひと夏の君へ」を明るくプレイ。個人的に、ホール公演ということもあり、しっとりとした楽曲でスタートさせるのではないか?という予想を立てていたが、その真逆をいく選曲だった。初っ端から熱量高めの演奏を繰り広げ、爽快感ある楽曲に合わせて、オーディエンスも席を立ち、その声と音に応えていった。
さらにここから、山口がハンドマイクにチェンジ。萩原が鳴らす低音がクラップを促し盛り上げる「遠い春の夢」と、ギターフレーズがワクワク感を煽る爽快ポップチューン「マイナスの要素たち」をプレイ。以前観た渋谷WWW Xでのワンマンライブでも、ハンドマイクでのパフォーマンスをしていたが、その時に比べると表現力と見せ方が格段に良くなっていた。身振り手振りを交えつつ、歌詞の中に居る主人公の気持ちを豊かに表現していく山口の姿は、楽しそうであり、かつ堂々としていた。
そしてここで、「この日を楽しみにしていました!」と喜びを露わにしつつ、ここまでの雰囲気を一転させる「ビニール傘」をドロップ! ジャジーでアダルティックな曲に合わせて、キメの度に照明がバチっと切り替わり、楽曲が持つ世界観を強固に補填。そうした視覚的要素も相まって、ステージから目が離せなかったし、そうしたライブならではの魅せ方で、オーディエンスの気持ちをグッと引き込んでいく姿は、「ライブに来てくれた人を楽しませたい」という気持ちの表れに他ならないなと思った。そして、「ビニール傘」同様、「傘」をテーマにした楽曲ではあるが、全く異なるテイストの「70cm」を続けてプレイ。前日の台風のような暴風雨ではなく、もっと穏やかで優しい雨模様を想起させる柔らかな曲ではあるが、恋人とのすれ違いの中で生まれた「とにかくもう疲れてしまったんだ」という本音を忍ばせているところが、なんとも人間らしい。
この後に続けられた、ステージのバックに街並みを模したイラストが投影された中で届けられた「遠くまで行く君に」や「橋を越えれば」のバラード調の楽曲を聴いて、テイスト問わず、Absolute areaの曲は、ライブでもしっかりと歌詞が入ってくることに改めて感服した。ポップバンドの高みを目指すバンドとして、メロディのキャッチーさはもちろんだが、歌詞カードを手元に用意せずとも、ライブの中で歌詞が映えるというのは大きな強みだろう。一瞬で覚えてしまうようなパワーワードを入れ込むのではなく、最初から最後まで聴いて分かるストーリー仕立てになっている曲が多い中、柔らかな求心力を持って聴者の心を掴む彼らの楽曲は、きっともっと多くの人に届くだろう。
そうした歌詞を届ける上で、ドラムの力強さや、自由度の高いベースフレーズは大きな翼と成り得る。そのバランス感は、当初から「スケールの大きなバンドをやりたい」という信念を持って活動をしているAbsolute areaだからこそ歩めた道なのだと思えた。そうしてここで、着実に前進し続ける彼らの「新曲1」が披露された。生活を共にする恋人同士の中で生まれるすれ違いや変化を丁寧に描いた楽曲で、「70cm」の際に先述したように、上手くいっている時だけではなく、違和感や分かり合えないことへの一種の諦めといった、綺麗事だけではない生々しさを歌っているところが、最近のAbsolute areaの変化でもある。永遠を願いつつ、そう願うだけでは前に進めない、といったリアルを、柔らかな歌詞とメロディに落とし込むのが上手いバンドだ。
ミドルテンポの「Girl」や「無限シナリオ」では、明るさの中に宿る切なさがグッと胸を打ちつつ、ミラーボールの反射が照らす煌々とした光と、曲に合わせて鳴り響くオーディエンスの手拍子が相まって、曲と共に高揚感も華やかに高まっていく。曲中では、メンバー同士が向き合ったりアイコンタクトを取ったりしながら戯れるようにプレイしている姿も垣間見え、続く「useless days」まで、豊かで明るい雰囲気を作り上げた。
MCでは山口が、「一度空に飛び出した飛行機が、次の街に辿り着くまでその翼を休めないように、僕たちにとっての日々も同じようなものだと思っています。今日という日が、未来への滑走路だとしたら、また次のワンマンに向けて飛び立っていく。今よりももっと遠くに、高く飛んでいけるように、これからも頑張っていきます」と、気合と向上心を言葉にして届けた。そして、ラストスパートのきっかけとして、「こんな尊い時間がずっと続いていけばいいのに、という想いを込めました」という紹介から、「新曲2」を披露。清涼感と疾走感が気持ち良く合わさる、アブソの新たな一面が見られるナンバーだ。そこで得た勢いを更に加速させるように、「いくつになっても」、ラストには壮大なランドスケープを描く「僕が最後に選ぶ人」をプレイし、高揚感と多幸感で会場をいっぱいにして、本編を締め括った。
止まないアンコールに呼ばれ、まず山口、坂本、鮎京の3人が登場して「発車標-2023ver.-」をプレイ。そこから萩原と高橋がステージに登場し、「楽しかった!(萩原)」、「新曲や、数年振りに演奏する曲も多くて楽しめました!(高橋)」と思い思いの言葉を伝えた。山口は、半年前から構想していたこの日を迎えるにあたって、楽しみな気持ちだけでなく、不安な想いもあったと告白。その上で、「ここにいる皆がいないと、僕たちは何一つ成し得ないと思います」と改めて感謝の言葉を贈り、ここで更に、今年の秋にavexからリリースすることを発表! 会場は喜びと驚きの歓声と拍手に包まれた。
応援され、その励ましを追い風にして、更に高く邁進していくことを約束した彼らは、最後に「ドラマチックサマー」と「いつか忘れてしまっても」の2曲を届け、この挑戦の日を大きな意味のある日にした。

取材・文=峯岸利恵 撮影=北村勇祐

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