ヤユヨ、変化の新作『SPIRAL』と「ア
イラブ」でつかんだ新しさと自分らし
さ――「こういう挑戦をもっと続けて
いきたい」

昨年、先行配信された「POOL」「愛をつかまえて」で変化の過程を存分に感じさせた大阪発のヤユヨが、3月15日(水)にミニアルバム『SPIRAL』をリリースした。前述の2曲に加え、フォーピースのロックサウンドだけで壮大さを演出する「このままじゃ」、ニューウェーブ風味で切ない「聞こえないの」、「ヤユヨ史上いちばん自信のある恋愛ナンバー」と自負する「ここいちばんの恋」を収録。リコ(Vo.Gt)とぺっぺ(Gt.Cho)が、「ヤユヨ=「さよなら前夜」のイメージが続いてきた分、新しい形で勝負したかった」と意気込む挑戦作となっている。なお、「愛をつかまえて」はテレビ東京系ドラマ『とりあえずカンパイしませんか?』のオープニングテーマに大抜擢。さらに、エンディングテーマには3月23日(木)リリースのファンタジックなヤユヨ流シティポップ「アイラブ」が起用されるなど、ドラマの世界観を入口から出口まで彩る豪華タイアップが実現したのもトピックだ。そして、5月26日(金)千葉・千葉LOOKより、過去最大規模のリリースツアー『青い愛とぐるぐるワンマンツアー2023』もスタート。2023年もヤユヨから目が離せない!
リコ(Vo.Gt)
ヤユヨをもっと多くの人に知ってもらいたいし、魅力的なバンドになりたい
ーー昨年、「POOL」「愛をつかまえて」を先行配信した時点で、今回のミニアルバム『SPIRAL』を見据えていたんですか?
リコ:「POOL」と「愛をつかまえて」は録ってすぐ出したんですけど、「聞こえないの」と「ここいちばんの恋」のレコーディングが一番早かったと思います。今までやってきたことも好きだし大切だけど、ヤユヨをもっと多くの人に知ってもらいたいし、魅力的なバンドになりたい。そのために何が必要かを4人で話し合ったとき、やっぱり変化しないとなと思って。
ぺっぺ:「POOL」のキーボードアレンジは、自分たちの変化とか成長を見せたかったという意味で、新しい挑戦になる確信を持って取り組んだことの一つで。その後の「愛をつかまえて」でもシンセとかキーボードは使ってはいるけど、「POOL」とはまた違った音楽性で同じようには聴こえないと思うし、その点は自信になったなって。「聞こえないの」とか「ここいちばんの恋」はそれより前に録った曲だったんで、別にシンセが入っているわけでもないし、『SPIRAL』に収録するのにふさわしいか悩んだりもして……でも、改めて考えたとき、確実に自分たちの強みになる2曲だったんで入れようと。
ーー「POOL」の変化は髪型や化粧を変えたように分かりやすいけど、「聞こえないの」とか「ここいちばんの恋」のように軸足は変わらず、いかに選び抜いたフレーズや言葉で遊べるか。ある種のヤユヨの王道が磨かれていく過程も、バンドとしては見せたいですよね。1曲目から勢いではなく「このままじゃ」でじっくり聴かせる始まり方も新鮮でした。
リコ:「このままじゃ」も別にシンセとかが入ってるわけじゃないんですけど、ギター、ベース、ドラムのロックサウンドだけで壮大というか、しっかりJ-POPが作れたなと。
ぺっぺ:曲順も悩んだところで、今回は「POOL」とか「愛をつかまえて」みたいにガラッとヤユヨのイメージを変える曲があるから、それをいいタイミングで聴かせたいのもあったし、何か印象に残る始まり方を考えたとき、「このままじゃ」が一番しっくりきたんですよね。リコの書く明るく笑い飛ばすような歌との差別化が自分の奥底には常にあって、作家としての違いを見せたい意地もあるし、単純にヤユヨの幅を出すためにも、自分は違うテイストを見せられるように心掛けています。その意識がより出たのが今回の作品かな。
ーー「このままじゃ」はイントロのリフからスケールを感じさせるし、間奏のギターも弾きまくらなくとも印象的なフレーズで。
ぺっぺ:それこそ「POOL」とか「愛をつかまえて」を作ったとき、何かを足すだけじゃなくて引くことも大切やなと思って。その後に「このままじゃ」を作ったんで、引いてみることで浮き彫りになるものがあるんじゃないかという挑戦が始まったのがこの歌でしたね。
ヤユヨ=「さよなら前夜」のイメージが続いてきた分、新しい形で勝負したかった
ぺっぺ(Gt.Cho)
ーー「ここいちばんの恋」に関しては、ぺっぺさんが「ヤユヨ史上いちばん自信のある恋愛ナンバーです」etc、こんなに何度もあおってきた曲はいまだかつてないんじゃないかと思うぐらい、リリース前にTwitterでつぶやいていましたね。
リコ:アハハ!(笑)。 元々私が考えた歌詞とかメロディもあったんですけど、何かパッとしないというか、ひと味足りないというか……レコーディングのギリギリまで歌詞も悩んだので、久しぶりにぺっぺと共作しました。出来上がったとき、自分一人で考えるより2人の案を組み合わせてよかったなとすごく思いましたね。
ーーこの曲はまさにヤユヨの真骨頂というか。あと、今作で唯一幸せな曲かなとも。
リコ:確かに(笑)。案外そういう曲がなかったというか恋の終わりの曲が多かったから、ちょっと違う歌詞を書きたいなと。
ぺっぺ:この曲はデモの段階から時間をかけて練り直した分、思い入れもあったし、失恋の歌が多い中でナチュラルに前向きだけど、結果が完全には見えていない終わり方で。そういう歌が久しぶりに生まれた気がして、素直にうれしいなと思いました。ヤユヨ=「さよなら前夜」のイメージが続いてきた分、新しい形で勝負したかったから、アレンジも試行錯誤しましたね。
ーー<「好き」って以外の言葉や仕草や歌でも/「好き」ってちゃんと伝わると思っていた>という歌詞も、安易に「好き」と言いたくないリコさんの恋愛観が出ていて面白いですね。
リコ:そこがこの歌の伝えたいところなので、絶対に変えたくなくて。誰もが知っているありふれた言葉=「好き」と言うのも分かりやすいからいいんですけど、それだけじゃ細かいニュアンスは伝わらない。表情とか仕草も大切なのに分かってくれない、分かってよ! という葛藤というか。2022年を振り返って、「今までと同じやったらあかん、新しいことをしないと」とずっと意識していたから、今作の曲作りはスタートから難しかったですね。ただ、途中でそれを意識し過ぎてもと気付いて、思うがままにシフトしていったんですけど。
ぺっぺ:この作品を出してからが勝負じゃないけど、よりブラッシュアップされたヤユヨを実感したいし、ちゃんと武器やと思いたいので。
ーー『SPIRAL』では、リズム隊のこの一年の積み重ねや成長も端々から感じられますね。
ぺっぺ:2人も私たちのデモが変わっていくのを感じて、「こういう曲を聴いて参考にしよう」とかいろいろと共有してスタジオに入って、リズム隊だけでも詰められるところは詰めていこうと練っていたので、それはうれしかったですね。
自分たちの良さとかルーツもちゃんと入れ込みたい
ヤユヨ
ーー「愛をつかまえて」と3月23日(木)リリースの新曲の「アイラブ」は、ドラマ『とりあえずカンパイしませんか?』のタイアップも付いて。実際にドラマを見て、映像と合わさってもまるで遜色のない出来に、何だか誇らしくなるような感覚でした。しかもオープニングとエンディングの両方を担当するのは、なかなかないことですよね。
リコ:本当にビックリしました。まずは「愛をつかまえて」でエントリーしてみようと思ったので、それとはまた違うテイストでもう一曲作って、どっちかが当たればうれしいなと思っていたら、「どっちもお願いします!」と言ってくださり……。
ーードラマを意識せずに書いた「愛をつかまえて」と、意識して書いた「アイラブ」と。
リコ:ただ、ドラマのテーマが「合コン」だとは聞いていたので、「愛をつかまえて」というタイトルはマッチしそうだなと思っていましたね。「アイラブ」は私が最初にデモを作ったんですけど、歌詞は跡形もないです(笑)。ドラマチームは夜をイメージした、今どきの言葉で言うとチルっぽい楽曲を求めていて。でも、私たちがただそれっぽい曲を作っても面白くないなと。
ーー流行りのソロシンガー系シティポップの量産型みたいになってもね。
リコ:そっちに全振りしないで、自分たちの良さとかルーツもちゃんと入れ込みたいと思ったとき、ユーミンとかシュガー・ベイブの要素とか、歌のリズムの取り方というか……。
ーーある意味、最近のヤユヨからはなくなっていた昭和の要素を。
リコ:そっちの方が自分たちに合うなとも思ったんで、「そこを意識して作らへん?」って4人で話し合って。
ぺっぺ:私は70年代のニューミュージックとか、あの時代のシティポップの音楽性も好きやし、2020年代のチルミュージックも聴いてきたんですけど、ドラマの制作チームにもメンバーにも、そのどっちかに寄せるアレンジにはしたくないと伝えました。そうなると模倣でしかないし、分かりやすく言えば間を狙いたい。それが一番自分たちらしさにつながると思ったので。あと、元々のリコのデモが結構昼っぽいイメージだったんで、それを夜に変えるといっても、ドラマに出てくる主人公たちは学生じゃないし、仕事をして、その帰りに合コンして、みたいな世代なので、完全な夜というよりは仕事終わりに日が落ちて夜が更けるぐらいの暗さをイメージして作りましたね。
ーーかわいげもあるしファンタジックでもある不思議な曲調で、歌い方もちょっとハイトーンというか。
リコ:いつもと違う歌い方をしてみたくて、昭和の年代のダブリングとかを参考に、高音をうまく使い分けて歌ってみました。これは新しい挑戦だったなと思います。
ペッペ:いつものヤユヨの歌い方とかエフェクトとは全然違うなと思うんですけど、それはたまたまレコーディングの時期にリコが喉つぶしていて……不可抗力でちょっとローファイ感が出たという(笑)。

はな(Ba.Cho)

ーーちなみに、実際に合コンに行ったことはあります?
リコ:マジでないんですよ! だから全然分からなくて。
ぺっぺ:大学2年のときにはもうコロナ禍だったんで、そういう系の話は全部なくなりました(笑)。
ーー合コンというのは、めちゃめちゃシビアに自分の存在価値を突き付けられる場所よ(笑)。歌やギターがいくらうまかろうが、そこでは効力を発揮しない。
ぺっぺ:ドラマでもその感じが出ていて「あ、リアルやな」って(笑)。でも、傷の癒やし合いというかが、ちょっと面白そうやなと思いました。
ーー『とりあえずカンパイしませんか?』は合コンをテーマとしながら、ガツガツしてないですもんね。いろんな会話から新しい価値観を知る、みたいな。
リコ:どっちかと言えば「友情」みたいな。それも歌詞に反映させて書いていますね。
すーちゃん(Dr.Cho)
ーー「アイラブ」を『SPIRAL』には入れなかったのはあえてですか?
リコ:いや、「アイラブ」が本当に緊急決定過ぎて入れられなかったんですよ(笑)。
ぺっぺ:だから、せめてドラマの最終回には間に合うように出そうと!
ーーそう考えたら、ドタバタですけど充実感のある忙しさを味わえている日々ですね。
ぺっぺ:『SPIRAL』では新しいことに挑戦できているし、その2週間後という短いスパンで、また新しいヤユヨを見せられる「アイラブ」が出るので、みんなもヤユヨにしっかりついてきてほしいな。
今までやってきたことに固執し続けていたら、絶対に見えなかったものがある
ヤユヨ
ーーそして『SPIRAL』というタイトルには、リコさんがスパイラルパーマをかけているのもあるけど、螺旋状のものは上がるにせよ下がるにせよ、今までとは違う位置まで進んでいるという意味が込められていて。
リコ:何事も挑戦してみないと分からないとは思うんですけど、『SPIRAL』が出来上がった感覚的には、自分たちの新しい魅力を引き出せたと思うし、さっきぺっぺも言ってましたけど、武器になったなと。今まで自分が好きで聴いてきたポップな部分もちゃんとバンドで表現できたのはうれしかったし、こういう挑戦をもっと続けていきたいなと思いました。
ぺっぺ:この作品を作る上で、0→1で新しいことをしたい、何かを変えたいという思考に固執し過ぎてよく分からなくなったり、立ち止まってしまったことはあったけど、出来上がったこの作品は単に0→1じゃなくて、今までの自分たちの何かが残ってる手応えがすごくあったんです。これが自分たちらしさなのかなと、ちょっとつかめた気がして。改めて、今と今までの自分たちを比べられた。そういう意味でも、自分たちの確信とか自信につながる作品になりましたね。
ーー5月26日(金)千葉・千葉LOOKより、『青い愛とぐるぐるワンマンツアー2023』も始まります。
リコ:14カ所もやるのは初めてで、千葉とか横浜、熊本、新潟も初めてでうれしいです。全カ所ワンマンなので、たっぷり新曲を聴かせたいなと思ってますけど、めっちゃセトリで悩んでます(笑)。今までの楽曲とどう合わせていくのか。
ぺっぺ:今までやってきたことに固執し続けていたら、絶対に見えなかったものがあるから、『SPIRAL』でこういうトライができてよかったなと思うし、それをライブでもちゃんと発揮したい。今はツアーが楽しみで仕方ないですね!
リコ(Vo.Gt)
ぺっぺ(Gt.Cho)
はな(Ba.Cho)
すーちゃん(Dr.Cho)
取材・文:奥“ボウイ”昌史 撮影:ハヤシマコ

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着