渋谷すばる、ドリアン・ロロブリジーダ

渋谷すばる、ドリアン・ロロブリジーダ

渋谷すばる、
オフィシャルインタビュー第3弾で
ドリアン・ロロブリジーダと対談

3人のドラァグクイーンを中心とした物語・映画『ひみつのなっちゃん。』(2023年の1月13日から全国で好評上映中)の主題歌「ないしょダンス」を渋谷すばるが書き下ろしたことをキッカケに、日本を代表するドラァグクイーンであるドリアン・ロロブリジーダとの対談が実現!

15歳の頃から活動を始め、現在はソロアーティストとしてステージから歌を届ける渋谷すばると、ドラァグクイーンとして日々華やかな出立ちでステージに立つドリアン・ロロブリジーダとの初対面。全く異なる世界を生き抜いてきた2人が共鳴する想いとは?

第1弾:渋谷すばる、新曲「ないしょダンス」配信開始! “自分も苦手だからこそ、飛び出すことの大切さを伝えたい”
https://okmusic.jp/news/506374

第2弾:渋谷すばる、オフィシャルインタビュー第2弾を公開。“今、本当に自分が楽しんでいろいろなことに向き合えている”
https://okmusic.jp/news/507490

撮影◎西村彩子
取材・文◎武市尚子
ヘアメイク◎矢内浩美(渋谷すばる)

【ドリアン・ロロブリジーダ プロフィール】

ドラァグクイーン。1984年生まれ。東京都出身。180cmの長身に20cmのハイヒールと巨大なヘッドドレスを装着し、ひたすらに空を目指すその姿はさながらバベルの民か。2006年のデビュー以来、長い手足とよく回る舌、豊かな声量を活かして、各種イベントやMC、モデル業や映画/舞台/CM出演もこなすマルチなクイーン。新宿二丁目発本格DIVAユニット「八方不美人」や、好きな歌を好きな場所で“ただただ歌う”ユニット「ふたりのビッグショー」メンバーとしても活動するなど、その活躍はとどまることを知らず 今夜もちょっぴり高いところから、耳障りな笑い声をお届けします。 2023年2月10公開映画『エゴイスト』に出演。2023年春公開映画『ストレンジ』に主演として出演。

ずっと“普通って何なんだろう?”と
思って生きてきた

渋谷すばる、ドリアン・ロロブリジーダ

渋谷すばる、ドリアン・ロロブリジーダ

――映画『ひみつのなっちゃん。』の主題歌を渋谷さんがご担当されたことで、今回のドリアン・ロロブリジーダとの対談が実現した訳ですが。

渋谷:はい。そのご縁で監督の田中和次朗さんや主演の滝藤賢一さんとも対談させてもらったんです。田中監督と滝藤さんとの対談を通してもいろんなお話をさせて頂いて、本当にいろんな気持ちを貰ったんですけど、今回、ドリアンさん(ドリアン・ロロブリジーダ)と対談をさせてもらえる機会も貰えて、本当に嬉しく思ってます。

ドリアン・ロロブリジーダ(以下、ドリアン):こちらこそ、光栄でございます。こんな機会を頂けて、とても嬉しく思っております。今日はどうぞよろしくお願い致します。

渋谷:こちらこそです。本当に楽しみにしてました。知り合いにもドラァグクイーンは居ないので、実際にお会いしてみて、すごく華やかだなぁ、すごいなぁって思ってます。

ドリアン:ありがとうございます! こちらこそですよ! やっぱりすごい存在感だなって感じています。こんな言い方をしたら失礼かもしれませんが、 “テレビで見ていた人だ!”と感じちゃって。私なんてただの女装なので(笑)。 やはり、オーラが違うなって思いました。

渋谷:いやいやいや、そんなんは全然ないです! ドリアンさんこそすごい人間力やなって思いましたもん。スタジオに入って来られたときも、撮影してるときとかも、その場が明るくなるというか。

――分かります。花が咲いたみたいにパーッと明るくなりますよね。

渋谷:そう。ほんまにそう。すごいなって。

ドリアン:いやいや、こちらの台詞ですよ、それは!

――『ひみつのなっちゃん。』のお話の軸にドラァグクイーンという存在があったことで、今回の対談の流れになったのですが、渋谷さんは、今回この映画を通して、改めてドラァグクイーンやLGBTQ +というところと対面することになったんですよね?

渋谷:はい。『ひみつのなっちゃん。』は、“オネエ”仲間である“なっちゃん”が突然死んでしまったことをキッカケに、バージン(滝藤賢一)、モリリン(渡部秀)、ズブ子(前野朋哉)の3人のドラァグクイーンが、お葬式に参列する為に、なっちゃんの地元である岐阜県・郡上八幡に向かう物語で、“オネエ”であることを知らない家族の為に、なっちゃんの秘密を守り抜こうと、必死に“普通のおじさん”になりきる3人の様子が描かれている映画なんです。僕が曲を書かせてもらうときには、まだ台本しか上がっていない状態でビジュアルも全く無い状況だったので、頭の中で台本に描かれている風景や背景を想像しながら読み進めていったんですが、正直、台本を読む前は、ドラァグクイーンやLGBTQ +を題材にした内容ということで、そこがどう描かれているのか、少し心配になったんです。心配、、、というか、、、上手く言葉に出来ないですけど、ちょっと構えちゃったというか、、、。特別視しているとかそういうことではなく、どんな風に描かれているんだろうって思ったというか。でも、お話は、歳を重ねて、自分の容姿や踊りに自信を持てなくなってしまったバージンさんが、自分がドラァグクイーンになるキッカケとなった“なっちゃん”の死を受けて、いろんな人と触れていく中で、“なっちゃん”が自分にくれたちっちゃなコンパクトに込められていたメッセージや、自分に残してくれたメッセージに気付くんですよね。改めて自分の生き方と向き合うことになるというか。本当にあったかい映画だなって思ったんです。自分はドラァグクイーンでもLGBTQ +でもないので、全ての気持ちが理解出来るという訳ではないんですけど、ここに描かれていた、“すごく狭いところで生きている感覚”というところに、すごく共感したんです。自分も同じ感覚を持って生きて来た人間なので、自分の中ですごく重なるものを感じたんです。

――主題歌として書き下ろされた「ないしょダンス」は、まさにご自身のことを歌われているのでは? と思うほどにリアルでしたからね。

渋谷:そうなんです。すごく自分自身と重なったんです。ドラァグクイーンやLGBTQ +の方達みんながそうであるかどうかは分からなかったんですが、『ひみつのなっちゃん。』の台本を読んだとき、“すごく狭いところで生きている感覚”という孤独と、歌詞にも書かせて頂いたんですけど、“じゃあ普通って何なんだろ”ってところを、とても強く感じたんです。

ドリアン:すごく分かります。すばるさんは、私達みたいに性的マイノリティではないけれど、そうではないところで“すごく狭いところで生きている感覚”で生きてこられたのかなっていうところでは、共通するところを感じます。周りにゲイとかレズビアンの方っていらっしゃいました?

渋谷:いました。同級生で、元々女の子だったんやけど、男の子になった子が。でも、僕はそこまで特別視をしていなかったから、ほんまに何も考えんと接してましたけどね。

ドリアン:なるほど。すばるさんにとっては自然なことだったんですね。

渋谷:そうですね。特別な目で見るとかは全くなかったです。ただその事実をすんなりと受け入れてただけだったので。
渋谷すばる、ドリアン・ロロブリジーダ

渋谷すばる、ドリアン・ロロブリジーダ

――よく“カミングアウトする” “カミングアウトしない”という言葉を聞きますが、やっぱりまだ隠さないと生きづらい世の中ということなんでしょうかね?

ドリアン:そうなのかもしれないですね。日本もだんだん自由になってはきているのは確かですが、制度が追いついていないところがありますから。それに、制度云々ではなく、やっぱり気持ちの問題で偏見というのはなくならないと思うんです。だからこそ隠したいと思ってしまう方も多いのではないでしょうか。

渋谷:人と違うということって、特別じゃないって思うんですよね、本当は。でも、人間って珍しいものとか、他とは違うものに対して、反射的に“え?”ってなるからね、絶対に。その反応は仕方ないことだと思うんですよ。でも、そこから、ちゃんと真っ直ぐに向き合って、それをちゃんと受け入れていけばいいことやと思っているんです。特別視されるのが本当に嫌なんです。小さい頃からそういう生き方して来ちゃったから、本当に大嫌いなんですよね。周りの人とかに気を遣われるような生き方して来ちゃったから。こういう仕事をするようになってからは、“コンビニとか行くんですか?”とか聞かれたりもしてたから、“え? なんで? コンビニとか行くでしょ。なんでそんなこと聞くん?”って思ってたりもしたし。たまたま仕事がこういう世界なだけで、僕も人間やねんけど、、、。特別やないねんけど、、、。って思ってたし。それに、自分はこういう世界に入る前からちょっと変わってたというか、小さい頃から自分でも周りに馴染めてない自覚があったんですよ。

ドリアン:この世界に入る前からですか?

渋谷:そうなんです。なんか、変な目立ち方をする子やったんです。自分でも、自分ってちょっと変わってんなぁって思って自覚してたところもあったから。ずっと“普通って何なんだろう?”と思って生きてきたので、ここにきて、こんなにもそれについて語り合えていることが嬉しいんですよね。

ドリアン:本当にそうですよね。“普通って何なんだろう?”って私もずっと思って生きています。“私の普通は貴方の異常で、貴方の普通は私の異常”っていうことって、世の中に溢れていると思っているんです。だからね、み〜んな変だと思ってるの。“み〜んな変!”でいいじゃん!って。

渋谷:本当にそうかも。一緒であることの方がおかしいですよね。だって、みんな違う人間なんやもん。1人1人違って当たり前なのに。なんで“普通”にしたがるのかな? みんな一緒にしたがるのかな? みんなと同じじゃないとダメ! っていうのはどうしてなんかな? 日本人だから?

ドリアン:みんな同じにしておけば、管理が楽で済むからね。そういうことじゃないかしら?

渋谷:あ〜。なるほど。そうすることによって、良いこともあるのかもしれないけど、そうすることによってシンドイ思いをする奴もいるよね、絶対に。後者の人達は、少なくないと思うんやけどなぁ、俺。

OKMusic編集部

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