二人だからこその距離感と、今までに
ない関係性の両方を楽しんでもらえた
ら~赤澤燈×本田礼生、三人芝居『オ
ブセッション』インタビュー

コロナ禍において東映が新たに挑戦している少人数での濃厚な会話劇。その新作として2022年9月14日(水)より三人芝居『オブセッション』が上演される。脚本はテレビドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』などを手掛けるおかざきさとこ。演出は演劇集団Z-Lion主宰の粟島瑞丸が務める。
【Introduction】
事故で最愛の彼女を失くした三原雄吾(演:赤澤燈)は、親の力で事件を揉み消した加害者の曽根崎勇(演:本田礼生)を恨み、ある廃墟の一室に監禁し、殺そうとする。しかし、なんと曽根崎にはその最愛の彼女が憑依していた! 曽根崎を殺そうとすると、愛する彼女が出てきて、殺したいけど殺せなくなってしまう三原。同じく曽根崎の命を狙う柳(演:大内厚雄)も現れ、三原は殺したいほど憎い曽根崎を守る羽目になってしまう。不思議な協力関係となる三原と曽根崎。やがて彼女が曽根崎に憑依した衝撃の理由が明らかになり、事態は思わぬ展開に発展していく…
加害者と被害者だったはずの男二人は、憑依した彼女を通し、不思議な絆を芽生えさせていく。殺したいけど、殺せない。そのままでいてほしくないけど、そうじゃない。そんな不思議なやりとりを描いたドタバタコメディ! 人と人はどうつながって、人は人を通じて、どう変わっていけるのか?
「おまえが今やるべきことはおれを殺すことじゃない。…おれを守ることだ!!」

事故の加害者・曽根崎を演じるのは、MANKAI STAGE『A3!』や舞台『刀剣乱舞』シリーズ、THE CONVOY SHOW公演などに出演している本田礼生。愛する彼女の復讐を誓う三原は、MANKAI STAGE『A3!』や舞台『東京リベンジャーズ』などに出演の赤澤燈。柳を演じるのは演劇集団キャラメルボックス劇団員として多くの話題作に出演経験のある大内厚雄。
今回は、二人のシーンも多い本田礼生と赤澤燈にインタビューを行った。
■濃密なお芝居ができることが嬉しい
ーーまずは出演が決まった時の気持ちを教えてください。
本田:コロナ禍になってから濃密な空間でのお芝居が難しい状況が続いていたので、やっとできるんだと言うのが率直な気持ちでした。
赤澤:今まで礼生とはひとつの作品でしか共演したことがなかったので、別の作品で共演できるのが素直に嬉しかったです。やりたいなと思っていたし、二人でそういう話をしていたので。さらに三人芝居だと、他の役者もたくさんいる中で礼生と共演するのとは濃さが違うんだろうなと思ったので、素直に嬉しかったですね。
赤澤燈
ーーずっとやりたいと思っていた理由は。
赤澤:価値観が合うし、面白いと思うことが一緒。あと、嫌だなって思うラインが一緒なんですよね。プライベートでも仕事でも、そのラインが同じ人が好きで。感覚的な部分が似ていると言うか、分かり合えるなとこの4年くらいで感じていたからです。
本田:一緒です!
ーー脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか。
本田:企画の段階では“コメディ”とだけ聞いていました。その前情報だけの状態で台本を読んで、コメディとしてやる気がなければすごく重たくできる題材だと思いました。テーマが軽くないものをコメディに持っていくのがコメディらしいし演劇らしくて面白いと言うのが最初の印象です。
赤澤:当たり前ですけど、三人しか出ないからずっと喋ってるなとシンプルに思いました。一番苦しいんですよね、セリフを覚えてる瞬間が。
本田:受験勉強みたい(笑)。
赤澤:いるのかな、「覚えるの楽しい!」って人(笑)。もちろん覚えなきゃいけないし、その段階から役作りが始まってるし大事だけど。稽古までリミットがあって。ちょっと時間が経ってもう一度開いたらまったく覚えてなくて絶望みたいな。
本田:あるあるですね(笑)。
赤澤:だからすごく大変だろうなって(笑)。そして内容はコメディ。さらにサスペンス。やったことがないジャンルなので、どうやっていこうかなという気持ちでしたが、大変そうというのが一番でしたね。
ーー苦労されているのが伝わってきますが、役作りは今のところどう考えていますか?
本田:稽古は半分くらいまで進んでいて、これから終盤に向かうんです。置かれている状況が非現実的なので、その中でどうリアクションを取っていくかが役作りの肝になってくると思っています。そこに対して、演出の粟島さんと擦り合わせている段階です。
ーー本田さんは二役演じるので切り替えも大変だと思いますが。
本田:まさに今、僕が最初に考えたプラン、例えば変わったあとの彼女の芝居と曽根崎自身の演じ方、あとは憑依をどうやって表現するかなどを粟島さんと擦り合わせているところです。難しいですが、ことの重大さは周りがリアクションをとって作ってくれるので。
ーー赤澤さんも、憎い男と最愛の彼女を前に振り回される役です。
赤澤:やってみるしかないというか。信じられないことが起こるので、「自分なら」と想像するより、一緒にお芝居や稽古をして、目の前で起こったことに順応していく方がいいなと思っています。だから、この世界に飛び込んでいくしかないですね。
■作中での距離感の変化も楽しんでほしい
ーー現段階では大内さんとのシーンはまだ稽古をしていないとのことですが、本読みをした中で、大内さんからどんな印象を受けましたか?
本田:大先輩! 面白いし頼もしいです。
赤澤:シンプルに声がいいとか経験値が高いとかもあるんですが、本読みの段階で、自分がもらった役に対して考えている量が違うと感じました。辻褄が合っているかどうかとかまで考えられている感じがしてすごいです。
ーー少人数の作品でお互いとガッツリお芝居をしてみて、改めてお二人、お互いの気付いた一面や新たな魅力はありますか?
本田:やっぱり息が合うと感じました。もちろん役自体は新しいので新鮮ですけど。どうしたら相手が芝居しやすいかをすごく考えてくれる人なんです。自分もそれは考えていて、当たり前のことではあるけど、その“当たり前”が合うという印象です。
本田礼生
赤澤:役者としてのパラメーターがすごいですよね。元々踊れるしアクションもできるし、いろんなジャンルに挑めるステータスがあると思っていたけど、ストレートの芝居をする上でも、聞く力や表現する力、細々した部分も優れているなと。パラメーターで凹んでいるところがないんですよ、学力以外。
本田:学力もあるよ(笑)!
赤澤:(笑)。演劇に関するステータスが高いと改めて思いました。

ーーネタバレにならない範囲で、見どころや注目ポイントを教えていただけますか。
本田:バタバタしている赤澤さんが見られます! 一番状況に振り回される人だと思うので、見ていて面白いと思います。
赤澤:ストーリー的に、そこがそうなっちゃうの? というのもあるし、信じられないこともたくさん起こる。最初は三原と曽根崎の心の距離ってすごく遠いんですよね。きっかけがあって仲良くなっていくというか、距離感が縮まっていってしまう。ストーリーの中で関係が結構変化します。それを元々すごく距離の近い二人の役者が演じることで、後半のグッと距離が縮まった部分はシンプルに二人の良さが出ると思います。逆に前半の全然心が通っていない部分は僕らだからこそ難しい部分があるし、今まで見たことのない関係性を見せられると思いますね。そこはこの作品の見どころのひとつかと思います。

ーー稽古中の面白エピソードはありますか?
赤澤:三人芝居だから稽古場に来たら絶対会うじゃないですか。それなのに(本田と)駅から一緒に稽古場に行くんですよ。目的があるわけじゃなくて、稽古場まで一緒に歩きながら覚悟を決めているというか(笑)。
本田:20分くらい歩くんですけど、最初の10分と後の10分でテンションや会話の内容が変わってくるんですよ。軽口から今日の芝居の話になっていく。一人なら歩かない距離を、二人で覚悟を決めながらゆっくり稽古場に向かうみたいな感じです。だから、日によってはさらに時間をかけて歩くときもありますね(笑)。
ーー初共演から4年ほどですが、4年の間でお二人の間にできた絆は。
赤澤:最初は後輩でしたからね。まあ今も後輩ではあるんですけど。
本田:同い年みたいになっちゃったんですよね(笑)。
赤澤:不思議ですよね。3歳差だから、礼生が高校生になった時僕は大学生の年。20代の時って、その微妙な年の差が結構大きいんです。
本田:(自分が)17歳の時(赤澤は)20歳だからね。当たり前のこと言ってるけど。
赤澤:(笑)。
本田:でも、そこが意外と大きい。
赤澤:4年間一緒にお芝居をして苦楽を共にしてもその関係が変わらない人も多いけど、礼生とはそうじゃない。自然と距離が近付きました。
本田:そこはもう、赤澤さんのおかげです。
■お互い、誰かに憑依していても分かると思う
ーー赤澤さん演じる三原が、本田さん演じる曽根崎に彼女が憑依していると気付くきっかけが彼女である愛の癖。お二人がついついやってしまう癖は?
赤澤:礼生は椅子に普通に座れない!
本田:確かに。でも椅子の座り方って人それぞれじゃないですか? 正解はない。「DEATH NOTE」のLを見た時、「僕かな?」って思いましたもんね。
赤澤:僕は癖ないから。
本田:癖はないですけど、突然電源が落ちる時がある。ちょっと黙ってるとまた上がってくるみたいな流れがあります。
赤澤:それ分かる人あんまりいなくない?
赤澤燈
本田:そうかも。でも、すごく近くにいると分かりますよ。
ーーでは、相手がもし誰かに憑依していたら気付けそうですか?
赤澤:絶対分かると思う。座り方変だし。
本田:でも見た目も声も違うんだよ?
赤澤:ずっと甘いレッドブル飲んでる。
本田:今は飲んでないよ。
赤澤:じゃあ分かんないか。
本田:え、僕の見分け方それだけ(笑)!?
赤澤:でも喋ると分かると思う! 癖というより、お互いに軽口を叩き合うこの感じとか。なんとなくあるんですよね。こう言ったらこれ返してくるとかがあるので。
本田:分かるかなあ。
赤澤:絶対忘れ物をするんで、何日か一緒にいたら分かる。すぐには難しいかもしれないけど。
本田:でも、「憑依してる」って言ってくれるんですよね?
ーーその場合はすぐに信じられますか?
本田:それはもちろん!
赤澤:分かりますね。
ーー人でも動物でも物でも自由に憑依できるとしたら、何に憑依したいですか?
本田:実はパンフレットでもこの話をしているんですが、僕は魚類以外の動物です。犬とか猫とか。
赤澤:でも動物は喋れなくない?
本田:それは別にいい。なんの動物になるかはどれくらい自分の割合が残るかにもよります。例えば鳥に憑依したとして、僕は高所恐怖症なんですよ。鳥に憑依したら鳥としての能力があって飛べるのか、それとも僕のままで、飛ぼうとしても怖いのか。ちなみに憑依は自分で解けるんですよね? もし犬に憑依して、一生そのままだったら嫌だな。
赤澤:僕はちょっと偉い人になって法律を作ろうかな。1日2公演を3日連続でやっちゃ駄目とか、午前中の舞台公演は禁止とか、殺陣は何手までとか(笑)。無呼吸で何十秒も動くとかは命に関わりますからね。
本田:いいね。あと、4日に1回休演日を設けるとか。
赤澤:で、飼ってる犬が本田礼生です(笑)。
ーー三原は彼女である愛を自分にとっての“太陽”と言いますが、お二人にとって人生を照らしてくれるものとは。
本田:“照らす”というのが何かにもよりますよね。自分の人生を照らしてくれるものなのか、それのおかげで自分が成り立っているものなのか。三原さんとしてはどっち?
本田礼生
赤澤:自分を明るく照らしてくれる、行くべき道を示してくれる存在かな。
本田:じゃあ演劇。エンタメです。だって無理だもん、一般社会。
赤澤:分かんないよ。やってみたら意外と。
本田:いや、演劇に出会っていなかったらと思うとゾッとする。
赤澤:その都度変わりますが、今はサウナかなあ。
本田:たまに禁断症状が出てますもんね。
赤澤:心が綺麗になるし、それによって頑張ろうと思えるんですよね。
ーー三原と曽根崎のように、不思議なきっかけで友情が芽生えたという実体験はありますか?
本田:幼馴染の蒼木陣ですね。新学期に出席番号順に挨拶するじゃないですか。出席番号一番の蒼木がめちゃめちゃでかい声で挨拶したんです。僕らもそのテンションで挨拶しなきゃいけないのかなってイラッとしたのが印象的で、それがきっかけでダンスに誘って仲良くなって、今は同じ役者。どっちかっていうと引っ込み思案なやつなので、挨拶がなかったら印象に残らなかったかも。
ーー引っ込み思案なのにそんなに元気な挨拶を?
赤澤:意味分かんないね(笑)。
本田:頑張っちゃったらしいんです、良い子だから(笑)。「蒼木陣です!!」って挨拶してまた引っ込み思案に戻るみたいな。それを鮮明に覚えています。もしあの自己紹介がなかったら違っていたかもね、と陣とたまに話します。
赤澤:一緒に仕事をしたことのない声優さんとよくサウナに行くんですが、きっかけは声優をしている友達を通してゲームをしたことなんです。他にも、オンラインゲームで出会った友達と二人でご飯に行ったりサウナに行ったり。礼生とかはいいけど、二人でご飯に行くのがそもそもあまり好きじゃないから、そういう関係になれているのが自分でも結構不思議です。
ーー最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
本田:今お話ししている時点では、稽古は台本の中間地点。これから終盤まで進めて精度を高めていきます。僕たち自身も手探りで、どんな作品になるか楽しみな状態です。でも、赤澤さんや大内さんがいてくださり、粟島さんが作ってくださって、面白いものになるだろうし面白いものにしなきゃいけない。不安と期待があって、皆さんのもとに届く時にはどんな作品になっているだろうというのが率直な思いです。劇場でも配信でも楽しんでもらえるように頑張って作り上げていくので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。
赤澤:三人芝居ということで、濃密な芝居ができる時間を楽しもうと思っています。コロナ禍で地方公演の機会も減ってしまいました。地方でお芝居したいなとも思いますが、今回は配信もあり、普段なかなか会えずにいる皆さんにも画面越しで見てもらえるチャンスがあります。たくさんの方に見ていただけると嬉しいなと思っています。
本作は2022年9月14日(水)~19日(月・祝)東京・CBGKシブゲキ!!にて上演。初日と千穐楽は配信も行われる。
(左から)赤澤燈、本田礼生
取材・文=吉田沙奈   撮影=金丸 圭

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