朝夏まなと「私は愛が100パーセント
」ーー元宝塚歌劇団宙組トップスター
が語る、主演舞台『モダン・ミリー』
とは真反対の結婚観

宝塚歌劇団宙組の元トップスター、朝夏まなとが主演をつとめる舞台『モダン・ミリー』が9月7日(水)から26日(月)まで東京の日比谷シアタークリエ、10月1日(土)と2日(日)の2日間大阪の新歌舞伎座にて上演される。原作は、1967年に公開された映画『モダン・ミリー』。1920年代のニューヨークを舞台に、田舎から都会にやってきた女性ミリーが、「大切なのはロマンスよりも理性」をモットーに、仕事と恋に奮闘する物語だ。2020年4月の開幕直前に新型コロナの影響で公演中止となり、念願の再スタートとなる今回の舞台。朝夏はどのような気持ちで作品に取り組むのか、その想いについて話を訊いた。

朝夏まなと
――朝夏さんはミリーの人物像をどのようにとらえていらっしゃいますか。
彼女は「ロマンスより理性」というタイプ。タイプライターという天職がありながら、一方で玉の輿に乗ろうとする。つまりミリーのなかでは、理想と本心が一致しているわけではないんですよね。
――ミリーは、自分の能力を活かした仕事をするよりも、お金持ちと結婚することが最優先。そういう考え方は1920年代という時代性も影響しているかもしれません。
今は結婚がすべてではないですもんね。あらためて当時は、女性の生き方として結婚が前提にあったことがわかります。一方で彼女は、自分で結婚相手を選ぶことにこだわりがある。「男が選ぶんじゃない」という。そこが当時としては最先端な女性像なのではないでしょうか。ミリーは野心家でもあると思いますし、そうやって自分の変え方を信じて疑わない部分がかわいらしく映ります。
――玉の輿が目当てという点では、すごく現実的な考え方をしていますよね。
たしかに結婚相手には、財力があるに越したことはないですよね。そう思いこんでいる女の子がどう変わっていくか、それが見どころです。あ、でも私は愛が100パーセントですから(笑)。
朝夏まなと
――ミリーはそうやって、自分の知らない物事にたくさん触れて、新しい価値観を得ていきます。
私自身も宝塚歌劇団を卒業してから、「外の世界にはこんなにいろんなことがあるんだ」といろいろ気づくことがありました。まさにミリーのように、一つひとつが新鮮でした。特に役者さんは、いろんなタイプの方がいらっしゃるんだなと。すぐに台本を覚える人もいれば、稽古場で本来の台詞に近いことを言いながら少しずつ成立させていく人もいる。あと、ずっと練習をしている人、逆にそれほど練習していないのに本番でできちゃう人。全体的に言えるのは、みなさん余裕がすごいですよね。タカラジェンヌは、いくら学年を重ねていてもやっぱり生徒なんです。だから、余裕がないなかでやっている部分は多い。ただ他の俳優さんたちの稽古を見るようになって、「こんなに余裕をもって役に挑めるものなんだ」と驚きました。
――今回はタップダンスのシーンもあるそうですね。
タップダンスのシーンでは、古き良きブロードウェイミュージカルの雰囲気を楽しんでいただけると思います。タップダンスのひとつに、男性に向けて「言っていることと、やっていることが違うじゃないか」という気持ちをぶつけるところがあります。男性に対する女性の普遍の感じ方がそこには込められています。女性だけのナンバーになっているので、特にパワーがすごいですね。
朝夏まなと
――宝塚歌劇団時代は男役で知られていただけに、そういった女性の細かな心情を表現する朝夏さんの姿は、新鮮かもしれませんね。
16年ほど宝塚歌劇団に在籍し、男性役をやってきましたから。だから卒業後は毎回、「女性役はどうやるんだろう」と壁にぶち当たりながら臨んでいます。難しいけど、でも私は表現することが好きなので、いろんなタイプの女性役をやってみたい。悪女から前向きな女の子まで幅広いキャラクターを演じたいですし、ミュージカルだけではなく、ラジオドラマなどさまざまな表現を極めたいです。だから今回も貴重な経験をさせていただいています。
――女性役はどういうところが難しいですか。
男性役と女性役は発声やキーが違うんです。だから、鍛える筋肉が違います。女性役の場合、ミュージカルでも音域が広い。卒業直後は、作品の楽曲を歌いこなすだけでも大変でした。宝塚歌劇団時代に2度ほど女役をやっていることもあって、未経験だということではなかったですが、それでも自分のなかでは大きなチャレンジでしたね。

朝夏まなと
――元宝塚歌劇団宙組トップ娘で、朝夏さんとの名コンビでも知られた実咲凜音さんも今回、ミリーが下宿先で知り合う女性のミス・ドロシー・ブラウン役で出演されますね。
『風と共に去りぬ』で彼女はメラニー(・ハミルトン)​、私はスカーレット(・オハラ)で共演しているのですが、あの当時のことを思い出しました。「この感覚、懐かしいね。なんだろう、この懐かしい感じ」とふたりで話し合っていて、「あ、『風と共に去りぬ』だ」と。『モダン・ミリー』は2020年4月に公演が中止になって、それからこの2年の間、ふたりで宝塚を観に行ったりもしているんです。そういう普段の私たちに近い関係性を、役を通して見てもらえるのではないでしょうか。
――さまざまな個性派キャラクターの登場も見どころになりそうですね。
変な人たちばかり出てきますから(笑)。そういう人たちの変わった関係性が次々と明かされていきます。一度ご覧になって、結果を知った上でもう一度観てもおもしろいはず。何より笑いどころも多いので、観ていると元気が出る。私も、明るくて前向きなミリーを表現したいです。
朝夏まなと
取材・文=田辺ユウキ 撮影=高村直希

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