【前島麻由 インタビュー】
カップリングも含めた4曲は、
ノスタルジーという
テーマが被っている
ノスタルジーを持ってるからこそ
描き出せるものも確かにある
もう一枚の「story」はTVアニメ『異世界おじさん』のオープニングテーマですが、こちらは拳をあげたくなるようなロックナンバーですね。
個人的には耳が痛い曲です(笑)。歳をとってからのほうが刺さるというか、初心に返るような楽曲だと思ったんです。『異世界おじさん』は主人公がおじさんじゃないですか。若かりし頃があったあとのおじさんだから、やはりノスタルジーを感じさせるところがあって。ノンクレジットオープニングを観ても、セガサターンの起動画面みたいなもので始まっていますし。おじさんもセガのそういうゲームが好きだったというところで、私とは種類が違うかもしれないですけど、“あの頃は良かった。あの時代はいいよな”といった感覚があるキャラクターなのかなと思っているので、そことも少しリンクするというか。“story”というタイトルですが、幼い頃に思い描いていたようなストーリーが知らない間に止まってしまった人、描き続けることを諦めた人、挫折したり妥協したりした人…そんな人たちが“もう一度描き出してみようかな?”といった気持ちになれる楽曲だと感じました。私も心当たりがあったりするので(笑)。いい意味で初心に返ることができる楽曲だなと。さらにノスタルジーの否定はまったくしていないところがいいですよね。逆にノスタルジーを持ってるからこそ描き出せるものも確かにあって。だからこそ“今、もう一度描き始めることに意味があるんじゃないかな?”と思わせてくれるような楽曲で、強制というよりは後押しという印象に個人的には感じたので、そこがすごく魅力だと思います。
こちらのカップリング曲の「Moratorium」も同じテンション感が続いていきますね。
いい意味で流行りの曲っぽさがあって、そういう曲をカラオケで歌ったことはありますが自分の歌としては全然歌ってこなかったので、とても新鮮でした。全て日本語詞というのも初めてだったので、新しい試みがたくさん詰まった一曲になりました。カップリングも含めた4曲の曲調はバラバラなんですけれど、ノスタルジーというテーマが被っていたりして。あと、「No Man's Dawn」と「Lights,camera,action」は切り替わりが必要で、一方の「story」と「Moratorium」は始めから一定のビート感なのでガラッと変わる感じはないんです。
「Moratorium」には《延長延長延長で》という歌詞もありますし、切り替わりとは対照的ですよね。
だから、面白い具合にそれぞれ一枚ごとに変化が出ているなと。狙ったわけではなかったのに、自然とそうなっていったのが面白いと思っています。しかも、『異世界おじさん』のおじさんは小さい頃からセガのゲームをたくさん楽しんでやっていたようで、私自身も子供時代が楽しかった人だから、まさに“Moratorium”というタイトルがしっくりくると思います。
なるほど!(笑)
今回の「story」は『異世界おじさん』のおじさんが熱狂的なセガファンということなので、ジャケットの撮影もゲームセンターで撮影したんです。「Moratorium」は《運命Game》という歌詞が入っていたから“この曲は絶対に「story」のカップリングだな”と思ったし。本当に意図していないところでポンポンとハマっていったから面白いなって。この2枚は発売の間隔も短いから、なおさら聴いた時にそれぞれの楽しみ方や良さがあるとみなさんに思っていただけると嬉しいと思っていたので、こういうかたちになって良かったです。
取材:キャベトンコ