L→R 中原信雄(Ba&Key&Programming)、野宮真貴(Vo)、鈴木智文(Gu&Key&Programming)

L→R 中原信雄(Ba&Key&Programming)、野宮真貴(Vo)、鈴木智文(Gu&Key&Programming)

【PORTABLE ROCK インタビュー】
今回のレコーディングも
とても楽しく、面白かった

一緒にやっているのは楽しいし、
楽しく自由にできたらいい

野宮さんにおうかがいしますが、そんなPORTABLE ROCKが復活に至るにはどんな想いがあったのでしょうか?

野宮
それは私の40周年記念アルバム(2022年4月発表の『New Beautiful』)がきっかけです。私のデビューから現在まで深くかかわってくれたアーティストの方に、今の私に歌わせたい新曲を書いてもらうというのがひとつのコンセプトで、慶一さんと「Twiggy Twiggy」の作詞者である佐藤奈々子のふたりにコラボしてもらって「美しい鏡」という新曲を書いていただいて。ソロの次に私はPORTABLE ROCKをずっとやっていたから、PORTABLE ROCKに“今の私が歌う新曲を書いてほしい”とお願いしたんですね。それがひとつのきっかけにはなっていると思います。で、実は私の40周年というのは正確に言うと昨年なんですけど、コロナ禍でずれ込んでアルバムは今年の発売になったんです。で、PORTABLE ROCKは1982年に結成したから今年結成40周年なんで、そういうことも重なって“PORTABLE ROCKの40周年を機にベスト盤を出せたらいいな”と思いついて…という感じですね。“PORTABLE ROCKはまだ解散してなかったよね? 40周年だし、ベスト盤を出して、そこにさらに新曲を入れられたらいいね”って。それから、今はサブスクとかで世界中の音楽を手軽に聴けますよね? 昔のものも今のものも。若い人も新旧の音楽を並列に聴けるから、“新曲だから聴く”じゃなくて“新鮮だから聴く”…古いものでも新鮮だったら新曲と同じように聴くから、イギリスのKero Kero Bonitoとか…もちろん一回も会ったことはないけど、ああいう子たちが聴いていて。そういう人たちがインタビューで“日本のPORTABLE ROCKが好きだ”って発言したりしてるので、このタイミングにベスト盤を出して配信するというのは、また若い世代にも届く可能性があると思うから、とてもいい機会だと思ったんです。

40周年というタイミングとサブスク時代になったこともあって、今、再びPORTABLE ROCKをやる意義があると感じたというところでしょうか。今回のアルバムには「Lonely Girl, Dreaming Girl」と「チェルシーの午後」という新曲も収録されていますが、曲作りはいかがでしたか? 機材もレコーディング方法が変わっているとは思いますが、臨み方は1980年代と同じだったでしょうか?

鈴木
そうですね。家に集まってやっていた昔と変わらない…機材はすごい進化しているけど、あの時と同じ感じですね。マルチトラックレコーダーがパソコンになっただけ。

気持ち的には4chをいじっていた時と変わらず?

中原
そうですね。昔から“自分の曲では自分の楽器は入れない”というコンセプトがあって、ベースは弾かないと決めていて。
鈴木
そうだったの!? 知らなかった(笑)。
野宮
そういうコンセプトがあったんだ!(笑)
中原
全部は弾いてない。
鈴木
それは気づいてたけど(苦笑)。

(笑)。中原さん、その“自分の曲では自分の楽器は入れない”というのはなぜなんですか?

中原
“ニューウェイブってそういうものだよな”という。
野宮
そうだよね。細野晴臣さんもYMOでは弾かなったり。ニューウェイブは“自分で弾くのはカッコ悪い”みたいなことがあったのかな。
中原
“自分の得意な楽器を入れない”とかね。
鈴木
あー、そういう感覚はあるかもね。
野宮
うんうん。

それは面白い話ですね。では、新曲についてうかがっていきいましょう。まず「Lonely Girl, Dreaming Girl」は“Dreaming”とはうまいタイトルだなと。明るいのか暗いのか分からないけど、その辺が“夢”っぽいのかなと思ったところではあります。

鈴木
“明る暗い”みたいな?(笑) うまいいこと言うなぁ。

“こういった感じもニューウェイブなのか”と思って聴かさせていただきました。

野宮
『New Beautiful』にもPORTABLE ROCKに曲を書いてもらった「Portable Love」があって、私が歌詞を書いたんだけど、それはアンドロイドの恋の話なんですね。「Lonely Girl, Dreaming Girl」もそのニュアンスがあって。音を聴くとラブソングにはしたいんだけど、いわゆる人間というよりも…。

サイバーっぽい感じ?

野宮
そうそう。ちょっとそういう感じで。
中原
真貴ちゃんに向いていると思うよ。だって、ちょっとロボットっぽいところがあるもん(笑)。
野宮
あははは。結局、人間は恋愛をすると終わりがあるじゃないですか。始まりがあるから終わりがあるし、始まらなければ終わりもない。アンドロイドの恋って始まらないものだから終わりがない…というような、それこそ暗いけど明るいというか(笑)。まず曲が先でしたから、音のイメージでそういう歌詞になりました。もちろん普通のラブソングとして聴いていただいてもいいし、私の中では実は少しそういうニュアンスがあったっていう。

そして、この楽曲はタイム的には3分40秒と決して長くはないんですけど、とても濃厚に音が詰まった楽曲で、まったく短く感じられませんよね。

中原
大変だったよね? シンセの音選びとか(笑)。
鈴木
そうそう(笑)。昔はこちらが口で言ったのを誰かがやってくれたんだけど、今は自分で全部やらなくちゃいけないし。

それでも場面々々いろんな音を入れてますよね?

鈴木
それは昔と同じで“他人と違うことをしようか”という(笑)。それはすごいありますよね。それでいてカッコ良い音…みたいな。

まさにニューウェイブらしさを意識されたということでしょうか。もうひとつの「チェルシーの午後」ですが、こちらは生音で構成されていてバンドっぽい印象ですね。

鈴木
これはネオアコの感じの曲で…もともとそういうところから出発していたんだけど、『PAST & FUTURE ~My Favorite Portable Rock』のラインナップを見たら、そういう曲が少なかったから“それを今やったら新鮮かな? 他とは違うぞ”みたいな感じですね(笑)。

ネオアコはネオアコでしょうけど、かなりガシガシとギターを弾かれている印象はありましたが。

鈴木
生ギターが…ですか? あははは。

ベースにしても自己主張が激しい気はして。特に間奏のあととか。

鈴木
それはね、中ちゃんはあんまりそういうのはやらないから頼んだんです。“こうやってくれ”みたいな(笑)。最初は嫌がってたんだけど、渋々やってくれた。
中原
恥ずかしかったんですよ(苦笑)。
鈴木
あははは。TDの時に音色をいじったり、“何かエフェクトをかけてくれ”とかいろいろ言ってたもんね。でも、すごくいい感じにできたと思います。

自分の我を入れないのが中原さんのスタイルなんですか?

中原
そういうことでもないんですけどね。でも、我は入れないとダメですよ。入れれば入れるほどいいです。
鈴木
ただ、“俺が! 俺が!”というタイプではない。
中原
自分の楽器では入れたくないという。曲とかアレンジとかに入れる。

歌詞ですが、“幸せ!”という感じの内容になりましたね(笑)。

野宮
あははは。“幸せ!”ですよね。
鈴木
これは最初に俺が歌詞を書いて、真貴ちゃんに“これでどうかな?”って。で、真貴ちゃんが“いいけど、ちょっと直そうかな”って(笑)。
野宮
やっぱり歌ってみてしっくりくるかどうかというところがあるんですよね。

《幸せなひととき 確かめあうの/やっと見つけた I wish you love》といった辺りの歌詞は、外野は勝手にPORTABLE ROCKを再開したことと重ねてしまいます。

鈴木
うまいまとめですね(笑)。
野宮
いやいや、そこまでは(笑)。でも、PORTABLE ROCKで一緒にやっているのは楽しいし、楽しく自由にできたらいいなって。結成したのは40年前で、その時は“青春!”みたいな感じだったじゃない? でも、バンドや音楽をやっている人たちって何十年間も一緒にいなくても、また集まると当時の感じにすぐ戻れるというか。だから、今回のレコーディングもとても楽しく、面白かったです(笑)。

それは何よりだと思います。今回のアルバムのタイトルには“FUTURE”がついていますから、PORTABLE ROCKはこれ以降も続いていると受け取っていいんですよね?

鈴木
そういう期待感も込めて…という(笑)。
中原
老後を楽しく過ごすためにね(笑)。
野宮
“FUTURE”はもちろん“FUTURE”なんですけど、このくらいの年齢になると、すごく先のことを考えて“こうなりたい!”ということではなくて、それよりも今、音楽に関して最大限に楽しいことをやるだけだし、“それを積み重ねていければいいよね”という感じですかね。

取材:帆苅智之

アルバム『PAST & FUTURE ~My Favorite Portable Rock』2022年5月25日発売 徳間ジャパンコミュニケーションズ
    • TKCA-75049
    • ¥2,800(税込)

ライヴ情報

『ポータブル•ロック 結成40周年記念ライブ 「PAST & FUTURE ~My Favorite Portable Rock」』
7/09(土) 東京・新代田FEVER
17:00開場 17:30開演
※詳細はオフィシャルHP等をチェック

ポータブル・ロック プロフィール

ポータブル・ロック:1981年にソロデビューをした野宮真貴と鈴木智文、中原信雄により、1982年に結成されたユニット。New MusikやPrefab Sprout等当時の海外アーティストにも通ずる斬新なサウンドメイキングと、日本のニューミュージック的要素をブレンドした独自のスタイルで、80年代の音楽シーンで異彩を放った伝説的グループ。鈴木慶一(ムーンライダーズ)が主宰する『水族館レーベル』より83年にリリースされたオムニバスアルバム『陽気な水族館員たち』に2曲収録され、実質的メジャーデビューを果たした。85年1stアルバム『QT』、翌86年にはコーセー化粧品春のキャンペーンソングとなったシングル「春して、恋して、見つめて、キスして」をリリース。87年、実質上のラストアルバムとなる2ndアルバム『ダンス・ボランティア』を発売。その後、野宮真貴はPIZZICATO FIVEの3代目ヴォーカルとなり、22年4月には自らのメジャーデビュー40周年を記念したアルバム『New Beautiful』を発表。鈴木智文、中原信雄もそれぞれ、プレイヤー、コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーとして多くの作品やライヴに参加している。PORTABLE ROCK レーベルアーティストページ

「Lonely Girl, Dreaming Girl」MV

OKMusic編集部

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