INTERVIEW / さらさ 音楽活動への復
帰からコロナ禍で対面した試練。3年
間が凝縮されたEP制作背景と、さらさ
の現在地

湘南出身のSSW、さらさが1st EP『ネイルの島』を4月にリリースした。
さらさは学生時代よりセッションへ通うなどして音楽家としての道を歩み始めるも、そこでの疲弊を経て、一時期は音楽活動を辞めようと考えていたという。今作には再び音楽の楽しさに目覚め、新たな姿勢で向き合うようになったこの3年間の体験、感情が凝縮されている。
作品にも表れている自然体なスタイルは、幾度かの暗中模索を経て辿り着いたものであり、だからこそ強い説得力を有しているのだろう。今回のインタビューではEPの制作背景と共に、音楽との距離感、付き合い方についても語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official
もがき続け、少しずつ光が見えてきた3年間
――今作『ネイルの島』には2年ほど前に発表されていた曲も収録されていますよね。このタイミングでEPとしてパッケージした意味も含め、この作品は今のさらささんにとってどのような立ち位置の作品だと思いますか?
さらさ:今回タイトルにしている「ネイルの島」という曲は、私がSSWとして活動していくきっかけとなった曲なんです。その頃は誰かに聴いてもらうことなども想定していなかったですし、ただ好きで作っただけなんですけど、SNSにUPしてみたら思った以上に反響をもらえて。それをきっかけにライブも誘ってもらえるようになった。
でも、そこから半年ほどでコロナ禍になって、活動が停滞してしまった。何も頼れるものもなく、真っ暗な状態でもなんとかもがき続けて、少しずつ光が見えてきました。EPの中で一番最後にできたのは「Amber」という曲なんですけど、言ってしまえば「ネイルの島」から「Amber」まで3年くらいの年月が経っていて、自分の人生の中でのひとつの区切りをパッケージした作品なのかなって感じています。
――「ネイルの島」から今までの3年くらいの月日は、さらささんにとってどのような期間だったと言えますか?
さらさ:しばらくはその勢いのまま、“曲を作る”こと、そしてそれを発表することが楽しくて仕方なかったです。でも、それから大好きなライブもできなくなって、どんどん気持ちが落ちていった。一時期は曲も作れなくなったんですけど、そのときに生まれたのが「祈り」という曲なんです。
さらさ:今振り返ってみると、もしコロナがなかったとしても、たぶんどこかで曲を作れなくなるタームがきたんだろうなとも感じていて、その試練が(コロナ禍によって)強制的にきたんだっていう感じがしています。すごく不安に苛まれていたんですけど、徐々に考え方や心境の変化もあって前を向くことができて。人間としても成長できたように感じています。
――そういったポジティブな変化に際して、何かきっかけになった出来事や出会いなどはあったのでしょうか。
さらさ:ひとつは、今も活動をサポートしてくれているスタッフの方に2020年の夏に出会ったことですね。その人がおもしろくて、「曲が作れないなら、その作れないときの曲が聴きたい。音楽ってそういうことじゃない?」って言ってくれて。それはすごく励みになったし、純粋に“この人と何か一緒にやりたい”って思いました。今お世話になっている〈origami PRODUCTIONS〉を紹介してくれたことも大きかったです。
あとは今のバンド・メンバーに出会えたことも大きいですね。Yogee New Waveの 粕谷哲司(https://www.instagram.com/kas_fe4/) さんにドラムを叩いてもらってるんですけど、それもコロナで時間ができたから繋がれたという感じで。そういった縁に救われているなって思います。2021年の年始には思い切って髪をブリーチしたんですけど、それも自分を前向きにするためで。ちょっとしたことで落ち込んでしまって、ヤバい、これはどこまでも下にいきそうだって思ったときに、髪を真っピンクにして、側から変えてみようと考えたからで。「私は変わりました」って自分で自分に言い聞かせる感じ。そうやって行動していくと、ちょっとずつですけど本当に変わっていくんですよね。
――今は音楽活動メインのお話でしたが、さらささんは音楽以外にも様々な活動をされていますよね。絵も描くし、写真も撮るし、古着のECサイト運営、フラダンスなどなど。そういった活動と比べて、この3年間は音楽活動の割合がとても大きかった期間だったと思いますか?
さらさ:私は2018年に1回音楽を辞めていて。それから「ネイルの島」を作って音楽に復帰するまでは、絵を描く方が多いくらいだったんです。いざもう一度音楽をやろうってなってからも、すぐにコロナ禍になってしまったということもあって、美学校っていう現代アートの私塾に、2020年から2021年の1年くらい通っていて。割合としては音楽が多いと思うんですけど、実はそれ以外のこともやっていました。
――美術や別の表現方法/活動が精神的な救いになるというか。
さらさ:そうですね。このご時世で音楽のことを考えたりすると、どうしても不安な方向にいきがちなので。そうでなくても人間ってネガティヴなことの方に強く引っ張られがちじゃないですか。そういうときでも、絵を描いていると無心になれたりするんです。学校に行って講義を受けたり、作品について考えたりしている間は、ちゃんと生産性のあることをしていると自覚できる。それはすごく心の支えになっていたと思います。
――先ほど一時期音楽を辞めていたという話が出ましたが、そのときに生まれた曲が「ネイルの島」なんですよね。他のインタビューによると、プレッシャーや義務感に疲弊してしまったと。
さらさ:当時はセッション・ミュージシャンを目指していて、色んなセッションに参加していたんですけど、結構厳しいところだったので、心が折れちゃったというのが理由のひとつです。
ボーカルって他の楽器とは違って、コードやリズムを教えられただけではすぐに参加できないじゃないですか。スキャットで入ったりはできますけど、基本的には歌詞やメロディを覚えなければいけない。行っても参加できなかったら意味がないので、セッション用の曲を勉強するために音楽を聴くことが多くなっていって、だんだんと楽しめなくなってしまったんです。それで2018年はまるまる1年くらい音楽を辞めていました。
――そこから再び音楽の道へと戻ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
さらさ:自ら音楽辞めようって決めたのに、時間が経つとどうしても歌いたいって気持ちが徐々に湧いてきて。友達が通ってた大学のブラック・ミュージックを演奏するサークルに入ることにしたんです。そこだったら同世代の子と楽しく、余計なことを考えないで音楽ができるんじゃないかって。
実際、そこでの経験は大きかったですね。あと、ちょうど同時期にFKJとMasegoのライブ映像をYouTubeで観たんですけど、あの曲と映像も音楽に復帰するきっかけになりました。
多様なアーティストとの出会いと繋がり
――さらささんは2020年に自主制作のCDとしてEP『グレーゾーン』をクリエイティブ・コレクティブ/レーベル 〈w.a.u〉(https://www.instagram.com/w.a.u_w.a.u/) からリリースしていますし、2021年頃より他アーティストの作品への参加など、活動の幅が広がったように感じます。
さらさ:〈w.a.u〉は今お話した大学のサークルでの活動を通して知り合いました。客演などに関しては、まず一番最初に参加したDIRTY JOINTっていうヒップホップ・クルーの作品なんですけど。
――さらささんと同郷、茅ヶ崎を拠点としているクルーですよね。
さらさ:そうなんです。私は中高一貫の私立に通っていたんですけど、(DIRTY JOINTの)FYNNくんはその小学校の出身で。地元のごはん屋さんでもよく会う先輩という感じでした。音楽始めたときも話していたし、私がEPを自主でリリースしたときもすぐ連絡くれて、フィーチャリングで参加させてもらいました。
さらさ:やっぱり同じ出身地だからか、ジャンルやシーンは違えどヴァイブスがすごく合うというか、あの曲は今でもすごく気に入っています。また作ろうとも言ってくれましたし。
――2021年に入ってからはSPENSR、Pause Catti、gato、碧海祐人の作品に参加しています。
さらさ:確かSPENSRくんは友人のDinoJr.に紹介してもらいました。gatoはMONJU N CHIEの カルロスまーちゃん(https://www.instagram.com/muuushu/?hl=ja) 経由ですね。一緒にご飯を食べていたら、たまたま近くにいたから合流して、一緒にお酒飲んでっていう。碧海くんも同じような感じで、DinoJr、Megashinnosuke、a子とかと一緒にご飯食べるときに碧海くんもいて、その何ヶ月後かに連絡をくれました。なので、普通に友達として出会っていることが多いですね。MÖSHIくんやPauseくんはSpincoaster Music Barで出会いましたし。
――DinoJr.さんとの繋がりはセッションですか?
さらさ:DinoJr.のサポートでベースを弾いている、 オオツカマナミ(https://www.instagram.com/m_a_n_a_ming/) ちゃんっていう方を高校生くらいの頃からチェックしていて。彼女がSNSにDinoJr.の曲を弾いている映像をUPしていたのが、最初に知ったきっかけですね。その後rpm(東京・下北沢に位置するバー・music bar rpm)のセッションで会いました。今では一番遊んでる友達のひとりです。
――他のアーティストさんの作品に参加することであったり、もしくは必要とされることで、何か発見や気づきを得たりはしますか?
さらさ:自分じゃ作れないような曲を歌わせてもらえることもそうだし、相手とのコミュニケーション自体も楽しいんですよね。「好きに乗せてください」って言ってもらうことが多いんですけど、それを打ち返して、相手から「こういう感じでくるとは思ってもいなかった」とか言われると本当に嬉しくて。その曲を聴く人にとっても、私にとっても毎回発見が詰まっていると思います。
これまでのコラボの中では、碧海くんの曲だけ唯一歌唱だけの参加で。人が作ったメロディや歌詞をレコーディングするのは初めてだったし、碧海くんが歌ったデモを超えなくちゃいけないって思ってすごくプレッシャーに感じていたんですけど、碧海くんに「これはどういう曲なの?」って聴いたら「さらさが思うように、感じたように歌ってほしい」って言ってもらえて。歌詞に込められた思いとかを自分で解釈して歌うのがすごく楽しかったです。こういう制作方法もまたやってみたいですね。
――今、名前が挙がったようなアーティストの多くは世代が近い方たちですよね。彼らとの緩やかな連帯意識みたいなものを感じたりはしますか?
さらさ:どうだろう……。そういえば、この前沖縄にライブをしに行ったんです。沖縄のSSW・TOSHくん主催で、私とDinoJr.、そしてsnowyが東京から出演するという企画で。そしたら碧海くんも遊びに来てくれて、私のステージで2曲くらい歌ってくれたんです。結局そのメンバーで4日間一緒にいて、連帯感というか……めっちゃいい友達、仲間だなとは感じました。
――自分たちの世代でシーンを変えるぞといったような野心というよりは、もっと自然体ですよね。自分たちの好きな音楽を好きなようにやっていきたいというか。
さらさ:みんなはどうかわからないですけど、野心というか目標を持って活動してはいるものの、その中でも自分自身が楽しむことに一番重きを置いているという感じですね。全員ぶっ飛ばす! みたいな気合入った感じではないです(笑)。
コロナ禍で起きた変化と、そこから生まれた新曲
――EPに話を戻しまして。一番新しい曲が「Amber」で、おそらくその次が「祈り」ですよね。後者は先ほどコロナ禍で落ち込んだときに生まれたとおっしゃっていましたが、そのときのことを具体的にお聞きしてもいいですか?
さらさ:今のチームでやっていきましょうってなったときに、ちょうど曲が作れない時期で。それまでは美術の方に集中したり、(音楽に対する)モチベーションが上がらないなら他のことすればいいやっていうマインドだったんですけど、一回無理矢理にでも作ってみようという考えになって。サウンド面もこれまで好きだったR&B的な感じというよりも、もうちょっとオルタナティブな感じを意識して作っていきました。それこそコロナ禍で変化した音楽的趣向も反映されているかも知れません。それまでの自分のイメージなども意識せずに、そのときの気分や心境にすごく正直に作ったという感覚があります。
――中盤からのアグレッシブな展開も印象的です。
さらさ:あれはトラックメイクしてくれた Ryuju(https://www.instagram.com/nickname__0606/) のアイディアだったかな? ……いや、違いますね。私が弾き語りでデモを作ったときにブレイクっぽい展開を入れていて。フックがなかなかこなかったり、中盤から展開が変わったりなどは狙ったというより、すごく自然に出てきた感じですね。ただ、ダブっぽいトラックになったのはRyujuのアイディアです。彼も〈w.a.u〉のメンバーです。
――トラックに引っ張られた部分もあると思うんですけど、さらささんの歌い回しも新鮮な印象で。ちょっとファンキーというか、攻撃的というか。
さらさ:それも聴いている音楽やリファレンスとしている音楽の変化が大きいと思います。
――実際に聴く音楽などはどのように変化したのでしょうか。
さらさ:シンプルに自分の気持ちが変わったので、コロナ前に聴いてた曲を一切聴けなくなったんです。昔好きだった曲とかも聴けなくなって。チルっぽい曲よりも、どちらかというとロックな感じとか、ガツンとくるサウンドだったり、攻めた音楽を好むようになって。ブランキー(Blankey Jet City)などをよく聴いていました。
たぶん、刺激がなかったからなんですよね。コロナ禍で家に籠もっているうちに、だんだんと刺激を欲するようになって、強いサウンドを求めたっていう感じはしますね。オーガニックなサウンドよりも、電子的なサウンドがしっくりきたり。今はまた昔に戻りつつあるなって感じているんですけど
――コロナ禍で注目を集めたハイパーポップも、今おっしゃったように過剰に攻撃的というか、こういう世の中で刺激を求める人たちの潜在意識が作用しているように感じました。さらささんのお話も、そういった感覚と繋がっている部分があるのかなと。
さらさ:確かに。やっぱり、家に籠もってたりライブがなかったりすると、どうしても刺激的なものが欲しくなりますよね。
――現状での一番新しい曲になる「Amber」はどのように生まれてきた曲ですか?
さらさ:実は並行してアルバムも作っていて。このEP用に入れようと思っていた曲を、急遽アルバムに収録しようという話になり、もう1曲急いで作らないと! っていう状況になったんです。なので、これまでは基本的にギターの弾き語りで作っていたのですが、この曲に関してはトラックメイカーに先にトラックを作ってもらいました。
――なるほど。
さらさ:トラック先行で作ったのは(自分の曲では)初めてなので、今までの作品とも雰囲気が異なっていると思います。トラックから90年代後半とか2000年代のテイストを感じたので、そういうイメージで書き上げて。
――トラックメイクはどなたが担当を?
さらさ:〈w.a.u〉の Kota Matsukawa(Madkava)(https://www.instagram.com/kotamatsukawa/) です。
――他の曲もプロデューサー/トラックメイカーと作り上げていくことが多いのでしょうか。
さらさ:そうですね。自分でコード、メロディを組んで、構成とかも全部整えた状態でトラックメイカーに送って、アレンジしてもらったりトラックを組んでもらうパターンが多いです。作品ごとにリファレンスも一緒に送ったり、自分なりのイメージも伝えて。基本的には〈w.a.u〉のメンバーにお願いすることがほとんどですね。友達なので考えを共有しやすいですし。
「Amber」はリード曲にしようと考えていたので、耳に残る感じ、キャッチーな感じに振り切ることを意識して制作しました。すでにあるミニマルな曲とは違って、ライブで披露することも意識しつつ、ポップスっぽい感じでって伝えて。
――歌詞はどのように膨らませていきましたか? これまでのお話から、《日々を奪っていく衝動/音のない衝動》というラインは、コロナ禍の経験から生まれたのかなと感じました。
さらさ:生活が続いていくなかで色々なアップダウンがあって、自分じゃどうしようもできない気持ち、自分じゃコントロールできない感情ってあるんだっていうことを、より顕著に感じたのがコロナ禍だったので。そういうネガティヴな感情をコントロールしようって歌うのではなく、「そういう衝動もあるよね」、みたいな。
――ありのままに切り取ったというか。
さらさ:そういうイメージで書きました。歌詞でもあまり無理はしたくなくて、基本的に部屋の中で見えてくる景色から引っ張ってきたり、自分がそのとき思ったこと、感じたことを素直にアウトプットしています。
――「Amber」は“琥珀”を意味する単語ですよね。
さらさ:琥珀は天然樹脂の化石/宝石で、陰陽のバランスを保つ効果があるとか、“太陽の石”って言われたりしていて。コロナ禍でバランスを保つのってすごく大事だなって思ったので、タイトルにしました。このご時世、自分の隠な部分、ダウナーな部分がブワって出てきて、心のバランスを崩してしまう人も多いと思いますし、逆にハイテンション過ぎても崩れちゃいますよね。どうやってバランスを取るかっていうことを考えていることが多い2年だったので、ぴったりだなと。というか、これこそが本質だよなって思ったんです。
「嘘じゃない音楽を聴きたいし、自分もそうでありたい」
――一度は音楽から離れようとしたものの、音楽の楽しさを再発見し、1st EPを作り上げた今のさらささんにとって、音楽を作ることや歌うことってどのような意味を持っていると思いますか?
さらさ:以前は深く考えず、ただ作りたいから作ってるっていう感じだったんですけど、最近はコミュニケーション・ツールなのかなって考えることがあります。自分のことを理解してもらうことに繋がっているのかなと。普段のコミュニケーションが苦手な分、こっち(音楽)でバランス取っているんだろうなって。
――そのコミュニケーションというのは、どこへ向けてのものだと思いますか?
さらさ:基本的には身近な友達とかスタッフとのコミュニケーションだと感じています。ただ、会ったことも話したこともない方に、「こういう風に感じました」「この曲を聴いて救われました」って言ってもらえると、すごく嬉しくて。自分と同じように感じたり、考えたりする人がいるんだっていうことに気づけるというか。なので、どこへ向けるとかは限定せずに、敢えて言うのなら世の中に対するコミュニケーションなのかなって思います。
――言葉にしづらい感情や気持ちを曲にすることで、自分と世界、もしくは社会との距離だったり、立ち位置などをよりはっきりと認識できるようになるのかもしれませんね。
さらさ:確かに。今のところ自分の作品には大体2つのパターンがあって。「ネイルの島」みたいに自分の思想を体現して、誰かへのメッセージとなるような曲。元々これが自分の立ち位置だと思っていました。
でも、コロナ禍になってからはそれだけじゃ無理だったというか。綺麗事のつもりで言っていたわけじゃないんですけど、そんなことを言ってられない、聴いてられないっていう状態のときもやっぱりあって。そういったものを新しい曲たちでアウトプットできたのかなって思います。誰かへ向けた曲じゃなくても、それを聴いて「私だけじゃなかったんだ」って思ってもらえることもあるし、これからは2つの軸から人に寄り添える曲を作れたらいいなぁって。
――ちなみに、さらささんはいちリスナーとして、音楽に対して何を求めているのかって言語化できたりしますか?
さらさ:嘘がない曲が好きですね。例えば、「僕がそばにいるよ」とか「大丈夫だよ、上手くいくよ」っていう曲って、自分が辛いときは聴けないことが多くて。それって私の中では本物じゃないなってっていう風に感じちゃうんですよ。私はコロナ禍で折坂さんの曲にすごい救われたんですけど、折坂さんの言葉は嘘がないというか、偽善じゃないっていうのをすごい感じて。抽象的な言葉ですけど、やっぱり嘘じゃない音楽を聴きたいし、自分もそうでありたいなって思いますね。
――今後の活動に関しては、今はアルバムを制作中ということですよね。どういう作品になりそうか、見えてきましたか?
さらさ:コロナ禍以降に作った曲がほとんどになってくるので、全体的に初期の頃の曲とは印象が変わるんじゃないかなって思います。でも、私らしさっていうものは隠しようがないと思いますし、これまでと同じくアンダーグラウンドに掘っていくような曲もあれば、ポップな曲もあるという感じで、あまり狙わずに、気負わずに作ろうって考えています。
――今日お話を聞いて、“気負わずに”というのはさらささんの音楽活動にとってはとても重要なポイントなんだなと感じました。
さらさ:そこがブレることなく活動していけたらいいなって思います。
――だとすると、音楽家としての目標、夢みたいなことを挙げるとするならば、自分のやりたい音楽を、やりたいように歌い続けるっていうことに尽きるのかなと。
さらさ:夢をきかれたら、いつも言ってることがひとつあって。80歳くらいになって、若いミュージシャンを引き連れて、渋い「What’s Going on」を歌いたいんです。
――Marvin Gayeの。
さらさ:はい。そうなったら万々歳じゃないですか。80まで歌い続けてるし、若いミュージシャンにも慕われてる。「What’s Going on」っていうのも、自分が老いていって色んなことができなくなったり、忘れていくことにも掛けられるし。そういうおばあちゃん、カッコいいなってすごい憧れていて。楽しく歳を取っていけたらいいなって思っています。
――楽しく歳を取る。そしてその側には常に音楽があって。
さらさ:本当に、長く続けていければいいなと思っています。
――音楽的に挑戦してみたいことはありますか?
さらさ:今後は作詞作曲だけでなく、トラックメイクにも挑戦してみたいなって考えています。
【プレゼント企画】
SpincoasterのTwitterアカウントをフォロー & 該当ツイートをRTで『ネイルの島』のサイン入りCDを3名様にプレゼント。発表通知はTwitterのDMにて行わせて頂きます。
キャンペーン期間:5月6日(金)18:30〜5月13日(金)18:30

※3枚の中からランダムでの発送となります。

※当選のお知らせに対して48時間以内に返信がない場合、誠に勝手ながら辞退とさせて頂きます。
※住所の送付が可能な方のみご応募下さい。頂いた個人情報はプレゼントの発送以外には使用致しません。
※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます
【リリース情報】
■さらさ: Twitter(https://twitter.com/omochiningen_) / Instagram(https://www.instagram.com/omochiningen/)
湘南出身のSSW、さらさが1st EP『ネイルの島』を4月にリリースした。
さらさは学生時代よりセッションへ通うなどして音楽家としての道を歩み始めるも、そこでの疲弊を経て、一時期は音楽活動を辞めようと考えていたという。今作には再び音楽の楽しさに目覚め、新たな姿勢で向き合うようになったこの3年間の体験、感情が凝縮されている。
作品にも表れている自然体なスタイルは、幾度かの暗中模索を経て辿り着いたものであり、だからこそ強い説得力を有しているのだろう。今回のインタビューではEPの制作背景と共に、音楽との距離感、付き合い方についても語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official
もがき続け、少しずつ光が見えてきた3年間
――今作『ネイルの島』には2年ほど前に発表されていた曲も収録されていますよね。このタイミングでEPとしてパッケージした意味も含め、この作品は今のさらささんにとってどのような立ち位置の作品だと思いますか?
さらさ:今回タイトルにしている「ネイルの島」という曲は、私がSSWとして活動していくきっかけとなった曲なんです。その頃は誰かに聴いてもらうことなども想定していなかったですし、ただ好きで作っただけなんですけど、SNSにUPしてみたら思った以上に反響をもらえて。それをきっかけにライブも誘ってもらえるようになった。
でも、そこから半年ほどでコロナ禍になって、活動が停滞してしまった。何も頼れるものもなく、真っ暗な状態でもなんとかもがき続けて、少しずつ光が見えてきました。EPの中で一番最後にできたのは「Amber」という曲なんですけど、言ってしまえば「ネイルの島」から「Amber」まで3年くらいの年月が経っていて、自分の人生の中でのひとつの区切りをパッケージした作品なのかなって感じています。
――「ネイルの島」から今までの3年くらいの月日は、さらささんにとってどのような期間だったと言えますか?
さらさ:しばらくはその勢いのまま、“曲を作る”こと、そしてそれを発表することが楽しくて仕方なかったです。でも、それから大好きなライブもできなくなって、どんどん気持ちが落ちていった。一時期は曲も作れなくなったんですけど、そのときに生まれたのが「祈り」という曲なんです。
さらさ:今振り返ってみると、もしコロナがなかったとしても、たぶんどこかで曲を作れなくなるタームがきたんだろうなとも感じていて、その試練が(コロナ禍によって)強制的にきたんだっていう感じがしています。すごく不安に苛まれていたんですけど、徐々に考え方や心境の変化もあって前を向くことができて。人間としても成長できたように感じています。
――そういったポジティブな変化に際して、何かきっかけになった出来事や出会いなどはあったのでしょうか。
さらさ:ひとつは、今も活動をサポートしてくれているスタッフの方に2020年の夏に出会ったことですね。その人がおもしろくて、「曲が作れないなら、その作れないときの曲が聴きたい。音楽ってそういうことじゃない?」って言ってくれて。それはすごく励みになったし、純粋に“この人と何か一緒にやりたい”って思いました。今お世話になっている〈origami PRODUCTIONS〉を紹介してくれたことも大きかったです。
あとは今のバンド・メンバーに出会えたことも大きいですね。Yogee New Waveの 粕谷哲司(https://www.instagram.com/kas_fe4/) さんにドラムを叩いてもらってるんですけど、それもコロナで時間ができたから繋がれたという感じで。そういった縁に救われているなって思います。2021年の年始には思い切って髪をブリーチしたんですけど、それも自分を前向きにするためで。ちょっとしたことで落ち込んでしまって、ヤバい、これはどこまでも下にいきそうだって思ったときに、髪を真っピンクにして、側から変えてみようと考えたからで。「私は変わりました」って自分で自分に言い聞かせる感じ。そうやって行動していくと、ちょっとずつですけど本当に変わっていくんですよね。
――今は音楽活動メインのお話でしたが、さらささんは音楽以外にも様々な活動をされていますよね。絵も描くし、写真も撮るし、古着のECサイト運営、フラダンスなどなど。そういった活動と比べて、この3年間は音楽活動の割合がとても大きかった期間だったと思いますか?
さらさ:私は2018年に1回音楽を辞めていて。それから「ネイルの島」を作って音楽に復帰するまでは、絵を描く方が多いくらいだったんです。いざもう一度音楽をやろうってなってからも、すぐにコロナ禍になってしまったということもあって、美学校っていう現代アートの私塾に、2020年から2021年の1年くらい通っていて。割合としては音楽が多いと思うんですけど、実はそれ以外のこともやっていました。
――美術や別の表現方法/活動が精神的な救いになるというか。
さらさ:そうですね。このご時世で音楽のことを考えたりすると、どうしても不安な方向にいきがちなので。そうでなくても人間ってネガティヴなことの方に強く引っ張られがちじゃないですか。そういうときでも、絵を描いていると無心になれたりするんです。学校に行って講義を受けたり、作品について考えたりしている間は、ちゃんと生産性のあることをしていると自覚できる。それはすごく心の支えになっていたと思います。
――先ほど一時期音楽を辞めていたという話が出ましたが、そのときに生まれた曲が「ネイルの島」なんですよね。他のインタビューによると、プレッシャーや義務感に疲弊してしまったと。
さらさ:当時はセッション・ミュージシャンを目指していて、色んなセッションに参加していたんですけど、結構厳しいところだったので、心が折れちゃったというのが理由のひとつです。
ボーカルって他の楽器とは違って、コードやリズムを教えられただけではすぐに参加できないじゃないですか。スキャットで入ったりはできますけど、基本的には歌詞やメロディを覚えなければいけない。行っても参加できなかったら意味がないので、セッション用の曲を勉強するために音楽を聴くことが多くなっていって、だんだんと楽しめなくなってしまったんです。それで2018年はまるまる1年くらい音楽を辞めていました。
――そこから再び音楽の道へと戻ったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
さらさ:自ら音楽辞めようって決めたのに、時間が経つとどうしても歌いたいって気持ちが徐々に湧いてきて。友達が通ってた大学のブラック・ミュージックを演奏するサークルに入ることにしたんです。そこだったら同世代の子と楽しく、余計なことを考えないで音楽ができるんじゃないかって。
実際、そこでの経験は大きかったですね。あと、ちょうど同時期にFKJとMasegoのライブ映像をYouTubeで観たんですけど、あの曲と映像も音楽に復帰するきっかけになりました。
多様なアーティストとの出会いと繋がり
――さらささんは2020年に自主制作のCDとしてEP『グレーゾーン』をクリエイティブ・コレクティブ/レーベル 〈w.a.u〉(https://www.instagram.com/w.a.u_w.a.u/) からリリースしていますし、2021年頃より他アーティストの作品への参加など、活動の幅が広がったように感じます。
さらさ:〈w.a.u〉は今お話した大学のサークルでの活動を通して知り合いました。客演などに関しては、まず一番最初に参加したDIRTY JOINTっていうヒップホップ・クルーの作品なんですけど。
――さらささんと同郷、茅ヶ崎を拠点としているクルーですよね。
さらさ:そうなんです。私は中高一貫の私立に通っていたんですけど、(DIRTY JOINTの)FYNNくんはその小学校の出身で。地元のごはん屋さんでもよく会う先輩という感じでした。音楽始めたときも話していたし、私がEPを自主でリリースしたときもすぐ連絡くれて、フィーチャリングで参加させてもらいました。
さらさ:やっぱり同じ出身地だからか、ジャンルやシーンは違えどヴァイブスがすごく合うというか、あの曲は今でもすごく気に入っています。また作ろうとも言ってくれましたし。
――2021年に入ってからはSPENSR、Pause Catti、gato、碧海祐人の作品に参加しています。
さらさ:確かSPENSRくんは友人のDinoJr.に紹介してもらいました。gatoはMONJU N CHIEの カルロスまーちゃん(https://www.instagram.com/muuushu/?hl=ja) 経由ですね。一緒にご飯を食べていたら、たまたま近くにいたから合流して、一緒にお酒飲んでっていう。碧海くんも同じような感じで、DinoJr、Megashinnosuke、a子とかと一緒にご飯食べるときに碧海くんもいて、その何ヶ月後かに連絡をくれました。なので、普通に友達として出会っていることが多いですね。MÖSHIくんやPauseくんはSpincoaster Music Barで出会いましたし。
――DinoJr.さんとの繋がりはセッションですか?
さらさ:DinoJr.のサポートでベースを弾いている、 オオツカマナミ(https://www.instagram.com/m_a_n_a_ming/) ちゃんっていう方を高校生くらいの頃からチェックしていて。彼女がSNSにDinoJr.の曲を弾いている映像をUPしていたのが、最初に知ったきっかけですね。その後rpm(東京・下北沢に位置するバー・music bar rpm)のセッションで会いました。今では一番遊んでる友達のひとりです。
――他のアーティストさんの作品に参加することであったり、もしくは必要とされることで、何か発見や気づきを得たりはしますか?
さらさ:自分じゃ作れないような曲を歌わせてもらえることもそうだし、相手とのコミュニケーション自体も楽しいんですよね。「好きに乗せてください」って言ってもらうことが多いんですけど、それを打ち返して、相手から「こういう感じでくるとは思ってもいなかった」とか言われると本当に嬉しくて。その曲を聴く人にとっても、私にとっても毎回発見が詰まっていると思います。
これまでのコラボの中では、碧海くんの曲だけ唯一歌唱だけの参加で。人が作ったメロディや歌詞をレコーディングするのは初めてだったし、碧海くんが歌ったデモを超えなくちゃいけないって思ってすごくプレッシャーに感じていたんですけど、碧海くんに「これはどういう曲なの?」って聴いたら「さらさが思うように、感じたように歌ってほしい」って言ってもらえて。歌詞に込められた思いとかを自分で解釈して歌うのがすごく楽しかったです。こういう制作方法もまたやってみたいですね。
――今、名前が挙がったようなアーティストの多くは世代が近い方たちですよね。彼らとの緩やかな連帯意識みたいなものを感じたりはしますか?
さらさ:どうだろう……。そういえば、この前沖縄にライブをしに行ったんです。沖縄のSSW・TOSHくん主催で、私とDinoJr.、そしてsnowyが東京から出演するという企画で。そしたら碧海くんも遊びに来てくれて、私のステージで2曲くらい歌ってくれたんです。結局そのメンバーで4日間一緒にいて、連帯感というか……めっちゃいい友達、仲間だなとは感じました。
――自分たちの世代でシーンを変えるぞといったような野心というよりは、もっと自然体ですよね。自分たちの好きな音楽を好きなようにやっていきたいというか。
さらさ:みんなはどうかわからないですけど、野心というか目標を持って活動してはいるものの、その中でも自分自身が楽しむことに一番重きを置いているという感じですね。全員ぶっ飛ばす! みたいな気合入った感じではないです(笑)。
コロナ禍で起きた変化と、そこから生まれた新曲
――EPに話を戻しまして。一番新しい曲が「Amber」で、おそらくその次が「祈り」ですよね。後者は先ほどコロナ禍で落ち込んだときに生まれたとおっしゃっていましたが、そのときのことを具体的にお聞きしてもいいですか?
さらさ:今のチームでやっていきましょうってなったときに、ちょうど曲が作れない時期で。それまでは美術の方に集中したり、(音楽に対する)モチベーションが上がらないなら他のことすればいいやっていうマインドだったんですけど、一回無理矢理にでも作ってみようという考えになって。サウンド面もこれまで好きだったR&B的な感じというよりも、もうちょっとオルタナティブな感じを意識して作っていきました。それこそコロナ禍で変化した音楽的趣向も反映されているかも知れません。それまでの自分のイメージなども意識せずに、そのときの気分や心境にすごく正直に作ったという感覚があります。
――中盤からのアグレッシブな展開も印象的です。
さらさ:あれはトラックメイクしてくれた Ryuju(https://www.instagram.com/nickname__0606/) のアイディアだったかな? ……いや、違いますね。私が弾き語りでデモを作ったときにブレイクっぽい展開を入れていて。フックがなかなかこなかったり、中盤から展開が変わったりなどは狙ったというより、すごく自然に出てきた感じですね。ただ、ダブっぽいトラックになったのはRyujuのアイディアです。彼も〈w.a.u〉のメンバーです。
――トラックに引っ張られた部分もあると思うんですけど、さらささんの歌い回しも新鮮な印象で。ちょっとファンキーというか、攻撃的というか。
さらさ:それも聴いている音楽やリファレンスとしている音楽の変化が大きいと思います。
――実際に聴く音楽などはどのように変化したのでしょうか。
さらさ:シンプルに自分の気持ちが変わったので、コロナ前に聴いてた曲を一切聴けなくなったんです。昔好きだった曲とかも聴けなくなって。チルっぽい曲よりも、どちらかというとロックな感じとか、ガツンとくるサウンドだったり、攻めた音楽を好むようになって。ブランキー(Blankey Jet City)などをよく聴いていました。
たぶん、刺激がなかったからなんですよね。コロナ禍で家に籠もっているうちに、だんだんと刺激を欲するようになって、強いサウンドを求めたっていう感じはしますね。オーガニックなサウンドよりも、電子的なサウンドがしっくりきたり。今はまた昔に戻りつつあるなって感じているんですけど
――コロナ禍で注目を集めたハイパーポップも、今おっしゃったように過剰に攻撃的というか、こういう世の中で刺激を求める人たちの潜在意識が作用しているように感じました。さらささんのお話も、そういった感覚と繋がっている部分があるのかなと。
さらさ:確かに。やっぱり、家に籠もってたりライブがなかったりすると、どうしても刺激的なものが欲しくなりますよね。
――現状での一番新しい曲になる「Amber」はどのように生まれてきた曲ですか?
さらさ:実は並行してアルバムも作っていて。このEP用に入れようと思っていた曲を、急遽アルバムに収録しようという話になり、もう1曲急いで作らないと! っていう状況になったんです。なので、これまでは基本的にギターの弾き語りで作っていたのですが、この曲に関してはトラックメイカーに先にトラックを作ってもらいました。
――なるほど。
さらさ:トラック先行で作ったのは(自分の曲では)初めてなので、今までの作品とも雰囲気が異なっていると思います。トラックから90年代後半とか2000年代のテイストを感じたので、そういうイメージで書き上げて。
――トラックメイクはどなたが担当を?
さらさ:〈w.a.u〉の Kota Matsukawa(Madkava)(https://www.instagram.com/kotamatsukawa/) です。
――他の曲もプロデューサー/トラックメイカーと作り上げていくことが多いのでしょうか。
さらさ:そうですね。自分でコード、メロディを組んで、構成とかも全部整えた状態でトラックメイカーに送って、アレンジしてもらったりトラックを組んでもらうパターンが多いです。作品ごとにリファレンスも一緒に送ったり、自分なりのイメージも伝えて。基本的には〈w.a.u〉のメンバーにお願いすることがほとんどですね。友達なので考えを共有しやすいですし。
「Amber」はリード曲にしようと考えていたので、耳に残る感じ、キャッチーな感じに振り切ることを意識して制作しました。すでにあるミニマルな曲とは違って、ライブで披露することも意識しつつ、ポップスっぽい感じでって伝えて。
――歌詞はどのように膨らませていきましたか? これまでのお話から、《日々を奪っていく衝動/音のない衝動》というラインは、コロナ禍の経験から生まれたのかなと感じました。
さらさ:生活が続いていくなかで色々なアップダウンがあって、自分じゃどうしようもできない気持ち、自分じゃコントロールできない感情ってあるんだっていうことを、より顕著に感じたのがコロナ禍だったので。そういうネガティヴな感情をコントロールしようって歌うのではなく、「そういう衝動もあるよね」、みたいな。
――ありのままに切り取ったというか。
さらさ:そういうイメージで書きました。歌詞でもあまり無理はしたくなくて、基本的に部屋の中で見えてくる景色から引っ張ってきたり、自分がそのとき思ったこと、感じたことを素直にアウトプットしています。
――「Amber」は“琥珀”を意味する単語ですよね。
さらさ:琥珀は天然樹脂の化石/宝石で、陰陽のバランスを保つ効果があるとか、“太陽の石”って言われたりしていて。コロナ禍でバランスを保つのってすごく大事だなって思ったので、タイトルにしました。このご時世、自分の隠な部分、ダウナーな部分がブワって出てきて、心のバランスを崩してしまう人も多いと思いますし、逆にハイテンション過ぎても崩れちゃいますよね。どうやってバランスを取るかっていうことを考えていることが多い2年だったので、ぴったりだなと。というか、これこそが本質だよなって思ったんです。
「嘘じゃない音楽を聴きたいし、自分もそうでありたい」
――一度は音楽から離れようとしたものの、音楽の楽しさを再発見し、1st EPを作り上げた今のさらささんにとって、音楽を作ることや歌うことってどのような意味を持っていると思いますか?
さらさ:以前は深く考えず、ただ作りたいから作ってるっていう感じだったんですけど、最近はコミュニケーション・ツールなのかなって考えることがあります。自分のことを理解してもらうことに繋がっているのかなと。普段のコミュニケーションが苦手な分、こっち(音楽)でバランス取っているんだろうなって。
――そのコミュニケーションというのは、どこへ向けてのものだと思いますか?
さらさ:基本的には身近な友達とかスタッフとのコミュニケーションだと感じています。ただ、会ったことも話したこともない方に、「こういう風に感じました」「この曲を聴いて救われました」って言ってもらえると、すごく嬉しくて。自分と同じように感じたり、考えたりする人がいるんだっていうことに気づけるというか。なので、どこへ向けるとかは限定せずに、敢えて言うのなら世の中に対するコミュニケーションなのかなって思います。
――言葉にしづらい感情や気持ちを曲にすることで、自分と世界、もしくは社会との距離だったり、立ち位置などをよりはっきりと認識できるようになるのかもしれませんね。
さらさ:確かに。今のところ自分の作品には大体2つのパターンがあって。「ネイルの島」みたいに自分の思想を体現して、誰かへのメッセージとなるような曲。元々これが自分の立ち位置だと思っていました。
でも、コロナ禍になってからはそれだけじゃ無理だったというか。綺麗事のつもりで言っていたわけじゃないんですけど、そんなことを言ってられない、聴いてられないっていう状態のときもやっぱりあって。そういったものを新しい曲たちでアウトプットできたのかなって思います。誰かへ向けた曲じゃなくても、それを聴いて「私だけじゃなかったんだ」って思ってもらえることもあるし、これからは2つの軸から人に寄り添える曲を作れたらいいなぁって。
――ちなみに、さらささんはいちリスナーとして、音楽に対して何を求めているのかって言語化できたりしますか?
さらさ:嘘がない曲が好きですね。例えば、「僕がそばにいるよ」とか「大丈夫だよ、上手くいくよ」っていう曲って、自分が辛いときは聴けないことが多くて。それって私の中では本物じゃないなってっていう風に感じちゃうんですよ。私はコロナ禍で折坂さんの曲にすごい救われたんですけど、折坂さんの言葉は嘘がないというか、偽善じゃないっていうのをすごい感じて。抽象的な言葉ですけど、やっぱり嘘じゃない音楽を聴きたいし、自分もそうでありたいなって思いますね。
――今後の活動に関しては、今はアルバムを制作中ということですよね。どういう作品になりそうか、見えてきましたか?
さらさ:コロナ禍以降に作った曲がほとんどになってくるので、全体的に初期の頃の曲とは印象が変わるんじゃないかなって思います。でも、私らしさっていうものは隠しようがないと思いますし、これまでと同じくアンダーグラウンドに掘っていくような曲もあれば、ポップな曲もあるという感じで、あまり狙わずに、気負わずに作ろうって考えています。
――今日お話を聞いて、“気負わずに”というのはさらささんの音楽活動にとってはとても重要なポイントなんだなと感じました。
さらさ:そこがブレることなく活動していけたらいいなって思います。
――だとすると、音楽家としての目標、夢みたいなことを挙げるとするならば、自分のやりたい音楽を、やりたいように歌い続けるっていうことに尽きるのかなと。
さらさ:夢をきかれたら、いつも言ってることがひとつあって。80歳くらいになって、若いミュージシャンを引き連れて、渋い「What’s Going on」を歌いたいんです。
――Marvin Gayeの。
さらさ:はい。そうなったら万々歳じゃないですか。80まで歌い続けてるし、若いミュージシャンにも慕われてる。「What’s Going on」っていうのも、自分が老いていって色んなことができなくなったり、忘れていくことにも掛けられるし。そういうおばあちゃん、カッコいいなってすごい憧れていて。楽しく歳を取っていけたらいいなって思っています。
――楽しく歳を取る。そしてその側には常に音楽があって。
さらさ:本当に、長く続けていければいいなと思っています。
――音楽的に挑戦してみたいことはありますか?
さらさ:今後は作詞作曲だけでなく、トラックメイクにも挑戦してみたいなって考えています。
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