これから始まる第3章―AKB48川栄李奈
は、まだ強くなる

「私はすぐ近くのレーンだったので。正直、ふたりとも、もう戻ってこれないかもしれないと思いました。だから(復活したふたりの姿を見て)、すごく『強いな』って」

 グループに入ってから、ずっと苦楽をともにしてきた相方・高橋朱里は襲撃事件を振り返り、そう話している。

 そう、川栄李奈は筋金入りの“強い”アイドルなのだ。




 川栄は2010年7月24日、AKB48 11期研究生オーディションに合格。早くから次世代エース候補として期待され、研究生時代には「チーム研究生」名義で数々の楽曲に参加。2012年には正規メンバーに昇格、26thシングル『真夏のSounds good!』で初の表題曲選抜入りを果たした。

 こう書くと、人気者へのステップをトントン拍子に駆け上がったように思えるかもしれない。だが、その道は平坦ではなかった。

 ブレイク確実とされ、ランクイン必至といわれた第3回・第4回選抜総選挙では、まさかの連続で圏外。苦汁をなめたこの頃、印象深いエピソードとして、総選挙後に「期待されながらもランクインできなかったメンバー」として、ランクインしたメンバーとともに撮影したという話がある。同じ境遇だった高橋とともに「私たちはどうしてここにいるんだろう……」と、周囲の期待に応えられない自分を責めたこともあったという。

 心が折れてしまってもおかしくない状況。それでも川栄はひたむきに努力を重ねる。Google+に投稿された自宅の写真には偶然、床に貼られた自主練用の立ち位置確認テープが映りこむ。川栄は普段、自分が努力している姿をひけらかすことはしない。だからこそ、その写真の“熱さ”に心を打たれた人も多いはずだ。

 そんな中で、少しづつ兆しが見えはじめる。バラエティでは「足が臭い」といじられながらも笑い飛ばす明るいキャラクターを発揮し、『マジすか学園3』などのドラマやコント番組では演技力が高く評価されたのだ(『びみょ~』内「まゆゆのブレスレッド」での演技がベスト!)。

 そして長いトンネルを抜け、ついに訪れた転機。2013年4月に放送された『めちゃ×2イケてるッ!』の企画「国立め茶の水女子大学付属第48高等学校期末テスト」で珍解答を連発。これにより「おバカキャラ」が定着、一気に知名度を上げることとなったのだ。(また、バカといわれつつも、時折見せる機転やクレバーさも川栄の魅力のひとつだ)

 その勢いを受けて迎えた第5回総選挙では、見事25位にランクイン。過去2回に渡るトラウマを払拭し、名実ともに「次世代エース」としての覚醒をとげる。同年10月に発売された33thシングル『ハートエレキ』PVではキレキレのダンスを披露。もはや「ダンスが苦手」と語っていたかつての面影がないほどに成長したのだった。

 選抜に定着し、「AKBの顔」となるべく、これからというところまで来た川栄。しかし、そこで悲劇に見舞われる。前述の襲撃事件だ。大の男でも、素手で刃物を持った人間と対峙するのは恐ろしい。どれほどの恐怖だったのかは想像に難くない。

 しかし、川栄は帰ってきた。“乗り越える”というのは文字にしてしまえば簡単だが、生半可なことではない。恐怖をねじ伏せるという行動を、どれほどの人間ができるのだろう。それでも、川栄はやってのけた。さらに強く、大きくなって。

 テレビではパフォーマンスも再会し、いよいよ完全復活も近くなってきた川栄。これから始まる彼女の“第3章”に期待したい。


佐藤 朋樹:都内在住のフリーライター/編集。アイドルのみならず、節操なくなんでも執筆

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