貞松・浜田バレエ団が「創作リサイタ
ル33」を開催~カィェターノ・ソト、
稲尾芳文、森優貴の注目作を上演

貞松・浜田バレエ団「創作リサイタル33」が2022年3月19日(土)神戸文化ホール・中ホールにて行われる。「創作リサイタル」は、団員の創作に始まり、国内外の優れた振付家の創作作品を紹介している名物公演。「創作リサイタル33」では世界初演作品を含む3作品を上演する。
カィェターノ・ソト『Malasangre』は、スペイン出身で世界各地のバレエ団から引く手あまたの振付家ソトの人気作品で日本初演。キューバの歌姫ラ・ルーペヘのオマージュで、9人のダンサーがラテン音楽とともにエネルギッシュに踊る。ソト作品の指導を任されている日本人の新井美紀子を振付指導に迎えることによって、コロナ禍でも上演が実現する。なお今回の上演は、スターダンサーズ・バレエ団(東京)との共同制作となり、各々の公演に際し一部相互のダンサーが客演する。日本のバレエにとっても画期的公演となる。
カィェターノ・ソト振付『Malasangre』(日本初演)撮影:Gregory Batardon
カィェターノ・ソト振付『Malasangre』(日本初演)

稲尾芳文『波』は、世界初演作品。稲尾は、イスラエルのバットシェバ舞踊団で長らく活躍し、現在はノルウェーを拠点に活動している。貞松・浜田バレエ団の「創作リサイタル」において『スキン・グラフト』(2004年)、『The Last Bird』(2013年)を発表するなどカンパニーと親交のある振付家だ。今回の新作について稲尾は「2021年の夏、私が2年ぶりに日本に帰国した際、空港、電車、レストランなどの公共の場で抱いた身体感覚の違和感を基にして動きを起こし、作品として発展させたものです。舞台を分け合いながら空間と互いとの関係性を見つけていくダンサー達の19分間をお楽しみください」(作品メモより一部抜粋)と述べている。
稲尾芳文振付『波』(世界初演) 撮影:田中みずき
森優貴『囚われの国のアリス』は、2021年3月に「創作リサイタル32」で世界初演され話題を呼んだ。森は、貞松・浜田バレエ団出身で、日本人として初めて欧州の公共劇場の舞踊部門芸術監督を務めた実力者。「創作リサイタル」でも『冬の旅』(バレエ団が文化庁芸術祭大賞受賞)、『Memoryhouse』(新国立劇場地域招聘公演でも上演)といった秀作を発表している。最近作『囚われの国のアリス』では、ルイス・キャロルの小説「不思議の国のアリス」を下敷きとしながら、イマジネーション豊かなダンスが展開される。「あらゆる可能性の中で選択していくことは人間に課された宿命であり自由の権利です。 「囚われる」と言うことは自分に嘘がない自由への扉を開けるきっかけなのかもしれない」(森による初演時作品メモより一部抜粋)。
森優貴振付『囚われの国のアリス』撮影:岡村昌夫(テス大阪)
近年「創作リサイタル」を企画し、今回の公演を演出する総監督の堤悠輔は「貞松・浜田バレエ団だからこそできるプログラムです。世界が日常の変化を強いられる今、皆が立ち止まって、自分のこと、社会のこと、世界のことなどを考えていると思うんですね。3作品から伝わるメッセージがどこか自分が思っていることとリンクするはずなので、そこを体感してもらえたら。ダンスの素晴らしさや現代作品の良さを知っていただけるので、ぜひご覧ください」と話す。
【動画】貞松・浜田バレエ団 森優貴振付「囚われの国のアリス」ダイジェスト
貞松・浜田バレエ団は2022年で創立57年を迎えた。古典バレエと国内外の創作作品をバランスよく上演し、普及・教育活動にも熱心で、日本のトップクラスのバレエ団に位置付けられるまでに成長した。コロナ禍でも苦心しながら意欲的な公演活動を続け、昨秋初演した芸術監督の貞松正一郎振付『海賊』では、同バレエ団の古典作品として初めて文化庁芸術祭優秀賞を受賞した。躍進目覚しいが、ベテランから若手までが一致団結して舞台に臨む一体感、踊りへの熱い思いが伝わってくる点は変わらない。このたびも個性的かつクオリティが高く、親しみやすさも兼ね備えたプログラム。あらためてカンパニーの真価を示す公演となりそうだ。
取材・文=高橋森彦

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