【安月名莉子 インタビュー】
自分を理解したからこそ、
一歩を踏み出すことができる
自分の中にある本音って
自分では歌えない
カップリングの「知らない」はギターとパーカッションだけで歌っていて。
あえてこういうシンプルなアレンジにしていただきました。タナカ零さんの作詞作編曲なんですけど、“モンスターと対峙する自分”的なものをイメージして書いてくださっていて。
路上ライヴやレコーディングスタジオの様子が浮かんで、これは安月名さん自身が主人公なのかなと思いました。
カップリング曲の制作打ち合わせで今何を歌いたいのかを訊かれて、歌いたいことを書き出していったんですけど、うまくまとめられなくて…。自分は何を伝えたいのか分からなくなってきて、打ち合わせ中に泣いてしまったり。それで“じゃあ、なぜ歌っているの?”と訊かれた時、“理由なんてなくない?”と思ったんです。それこそ“そんなの知らない!”って。歌が好きだからとか、小さい頃からの将来の夢だったからとか、原点的な理由はもちろんあるけど、なぜ歌っているのかを深く考え出したらブワッといろんなことがたくさんあふれ出てきて、最終的に“じゃあ、それをそのまま歌えばいいじゃん!”となったんです。
実際に《なんでって訊かないでよ》って出てきますしね。
タナカさんが“まとまってなくてもいいから今思っていることを全部書き出してみて”と言ってくださったので、頭にあることを全部、脈絡がないままにすごい長文で書いて送ったんです。人には見せられないくらいの本音も含めて、歌に対することとかデビューしてから今までのことなど、全て吐き出しました。それをもとに歌詞を書いてくださったんです。もちろん自分で作詞したいし、弾き語りで活動していた時期もあったから自分で曲が作れたらいいなと思うんですけど、自分の中にある本音って自分自身ではうまくかたちにできないものなんですよね。自分で歌いながら感極まっちゃったりするので。だから、ここまで自分の本音を言葉にしているのに、自分で歌えるというのが嬉しいです。あと、その時々の溜息や呼吸音やニュアンスなど、ライヴでいろんな感情が見せられる歌を作っていただけたらとお伝えしたのもあって、本当にすごい曲になりました。
しゃべっているような、歌っているような、叫んでいるような、自問自答しているような感じですけど、結局は答えが出ないまま終わるという。でも、そういう人って多いと思います。
そういうところに共感してもらえたら嬉しいです。「知らなきゃ」も「知らない」も、どちらも結局は安月名莉子の中にあるものなので、そのことをインタビューとかSNSで伝えていけたらなと思います。でも、歌うことに対しての理由は本当にないんですよ(笑)。だからこそ、《ねえ歌うんだよ歌うんだよ歌うんだよ》というフレーズは一番感情が入りました。
結局、モンスターというのは他人の意見みたいな?
はい。客観的な意見は大事にしたいと思っているからこそ、勝手にいろんなことを聞きすぎて頭がゴチャゴチャになっちゃうんです。それに対して“うるさい!”と歌いつけています。他人の声や意見がモンスターに感じてしまうのは、ネット社会でたくさんの方が感じたことがあると思うので、そういうところと重ねて聴いてもらえる部分もあると思います。結構チャレンジした曲なので、実際にライヴで歌った時の反応がすごく楽しみです。
ライヴでは自分でギターを弾くんですか?
弾きたいと思って絶賛練習中です!
では、最後に2021年はどんな年でしたか?
私の中で2021年を漢字一文字で表すと“変”だったんです。毎日走るようになって歌が変わったと思うし、まだまだ自分は変われると思ったので。それこそ「Glow at the Velocity of Light」の歌詞で《変わりたい》と歌って、それで変われたと思っていたけど、その後にやっぱりまた悩んで、今回の曲でまた変われたので。結局は2022年もこの先も、どんどん変わっていくのかなって。変わることって難しいですけど、いい意味で変われるようになりたいですね。
2022年やりたいことは何かありますか?
富士山に登りたいです! 高尾山が好きでひとりで行ったりするんですけど、自分の気持ちを整理するのに山登りってすごくいいと思っていて。ランニングもそうですけど、無心になれるんです。今年はそういう時間をより大事にしたいと思っています。
取材:榑林史章