【加藤和樹 インタビュー】
全て一発録りで聴かせる
15周年記念アルバム
楽曲の世界観をどう表現するのかを
すごく考えるようになった
そして、DISC2にはカバー曲が収録されていますが、どのように選曲されたのでしょうか?
ファンの方のリクエストと、僕が今歌い継ぎたい曲に重きを置いて選曲させていただきました。
シンプルながらも難しい曲が集まっているように感じましたが…
そうなんです! シンプルな曲は伝えるのが難しいんですよ。ピアノ一本で歌っているからこそ、誤魔化しは通用しないんですよね。ピアニストの方とふたりの空気感、テンポなど、これもその場で“せーの!”で合わせたものだったので、歌の力、言葉の持つ力が如実に浮き彫りになると感じました。
では、このDISC2で改めて素敵だなと感じた曲を教えてください。
ずっと聴いてきた曲とはいえ、福山雅治さんが作詞作曲を手がけた「Squall」はカバーしたことによって、改めて歌うことの難しさを実感しましたね。中西保志さんの「最後の雨」もカラオケでよく歌っていたんですけど、カバー曲として歌うとなった際、原曲へのリスペクトとして自分の癖を全部フラットにして向き合うことが大事だと思ったんです。自分の癖が出たまま歌ってしまったら、それこそカラオケになってしまいますからね。カラオケとカバーの違いは何かと言ったら、ちゃんと曲と向き合うことで出てくる表現の仕方なのかなと思ったんです。
ちなみに加藤さんが思う自分の癖とはどんなものなのでしょうか?
曲によって違うんですが、わりとアタックという、音のとらえ方が他の人より少し遅いんですよね。ちゃんと声が音に当たるまでにラグがあるんです。なので、そこを一発でスパンと当てられるような感覚を意識するんですよ。その癖が出てしまうと、音がずれて聴こえたり、ピッチが合っていないように聴こえることがあって。いつもそこを細かく修正しながら歌うんですが、そこをもっと意識的にやらないと雰囲気だけで歌ってしまうことになるんですよね。バンドで歌うとそれが味になったりもするんですが、先ほど言ったようにピアノと歌声だけだと誤魔化しが効かないので、より音をしっかりキャッチできるように意識して歌いました。
その癖にはどのようにして気づいたのですか?
今までは気づいていなかったんですよ。でも、歌っていくうちにどこか甘さを感じるようになってきたんですよね。楽しい中にもそういった感覚を研ぎ澄ませていないと、ちゃんとした表現にならないと思うので、より聴いてくれる人たちが気持ち良くなるような歌を歌い続けていきたいですね。
そんな加藤さんはアーティスト活動と俳優を続ける中で、改めて“歌う”ということをどうとらえていらっしゃるのでしょうか?
自分の楽曲ってひとつの物語なんです。その世界観をどう表現するのかをすごく考えるようになりましたね。ミュージカルをやる前は“言葉をもっと大事に届けなくちゃ、もっとうまく歌わなくちゃ”という印象が強かったんですが、ミュージカルと出会い、その考え方がガラッと変わりました。ミュージカルって歌ってはいますが、あれは歌ではなくて台詞なんです。よく“ミュージカルでは歌を歌うな”と言われるんですが、実際にそうなんですよね。観ている人たちがそのまま世界に入り続けるためには、役者が世界観や空気感、物語をしっかりと作っていないとダメなんです。それを経験してからは、自分の曲でもイントロが鳴って、自分の居方でお客さんがどう惹き込まれていくのかを想像しながら世界観を作り、主人公をどう伝えていくかを考えるようになりましたね。
なるほど。本当にたくさんの舞台やライヴを経験した15年でしたね。
ありがたいことに、そうですね。でも、僕、本番にすごく弱いんですよ。
え!?
特にライヴは今でもすごく緊張するんです。これは15年間ずっと変わっていないですね。でも、この緊張がなくなってしまったらダメだと思うんです。今後もこの緊張感を持ち続けながら、いいライヴをしていきたいですね。
取材:吉田可奈
「Squall」(SPOT Ver.)
アルバム「K.KベストセラーズⅡ」
DIGEST
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