カサビアン、“ロックが持つべき姿勢
”を語る「ビートルズは50年代のロッ
クを創造し直していた」

(参考:『Mステ』出演のコールドプレイ、大ヒット曲「Viva La Vida」から最新作までに起こった変化とは?)

●新作『48:13』について 

 『48:13』は、アルバムに入っている全楽曲の収録時間をそのままタイトルにし、ジャケットにはピンク色の背景に収録曲の分数が書いてあるだけ、という至ってシンプルなもの。『ヴェロキラプトル!』や『ルナティック・アサイラム』は、アートワークも含めて、それぞれコンセプチュアルなアルバムだったが、今作でここまで単純明快な形に変えた理由と、アルバムの中で最初に作った楽曲である「Bumblebee」について、2人はこう語っている。

トム:俺もサージも、アルバム・タイトルの意味とかをいちいち説明するのがもう面倒なんだ。なぜ『ヴェロキラプトル!』や『ルナティック・アサイラム』なのかを説明するのがさ。それで、俺たちが楽なものにした。読むのも難しくないものにね。シンプルに『48:13』、それだけだ。明白なタイトルだ。俺たちには、もうそういったことは必要ない。やりたくないんだよ。説明するのは十分にやってきた。それにピンクだしな(笑)。

サージ:未来的なパンクのエッジがあるヴィジュアルだ。48分13秒の経験を完璧に要約してるタイトルだ。今ではみんな、アルバムから2曲だけを聴くといった聴き方をするけど、ちゃんとこの作品を体験するにはそれだけの時間がかかるってことだ。このアルバムにとって、これ以上ない最高のタイトルになってるんだ。アルバム・タイトルや一単語だけの曲タイトルもそうだけど、いろいろと重ねることはやめて、そこにあるものすべてはちゃんとした理由があって存在している。しかるべくして存在している。アルバム自体、ひとつの旅路のようになっていて、流れもちゃんとした理由でそうなっている。インタールードも理由があって入れられていて、一息つくために収録されている。曲が強烈でヘヴィだから、そういったちょっとした間があることでリラックスできる瞬間を持てるわけだ。そして、次のステージへと移る。アルバムは、ジャーニーとなっている。俺にとっては24時間ある感じだ。アルバムを聴き直してみると、24時間アンフェタミンをやってる感じだ。24時間で何千年分もの経験をしてるような感じだ。

・「Bumblebee」について

サージ:この曲のオルガン・サウンドに関しては、William Onyeaborっていうナイジェリア出身の男性がいて、信じられないくらい素晴らしいんだけど、俺は彼の曲を知って、彼はオルガンを使って、そこには シンセも入ってるんだけど、彼のオルガン・サウンドはとんでもなく素晴らしくて、それがアイデアの基礎となっている。トムには古いVoxオルガンがあって、何年間も持ってたのに俺たちはそれまで一度も使ったことがなかった。

トム:1961年製か何かだったよな。もう買えないんだぜ。

サージ:ずっと俺たちのスタジオに放置されていて、William Onyeaborの音楽が“凄いな”ってことになって、この曲、こういった60年代サウンドをベースに作ってみようってことになった。それを現代風にして、この曲にはヒップ・ホップのヴァイブがある。でも、純粋なモッシュピット・ソングだ。パリのギグで初めて演奏してみたんだけど、観客の激しい反応にびっくりしたよ。聴いたことのない曲にあんなに反応してくれるなんてさ、最高の出だしだ。

トム:妙なのはさ、まるで10年間演奏してきたような感覚がするんだ。不自然な感じでもなければ変な感じもしない。それこそ変だよな。初めて演奏したのにさ。妙だよ。これまであった曲みたいなんだ。変だな。

●今作で影響を受けた音楽について

 アルバムを通して聴かせることを純粋な目的とし、他の要素はなるべく削ぎ落としたという彼らは、多ジャンルの音楽を取り入れることが上手く、これまでも様々なコンセプトでアルバムを制作してきた。その分、影響を受けた音楽も幅広く、今作についてもロックだけにとどまらず、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックなどに刺激されたとサージは語っている。

サージ:たくさんあるよ。常に何かに刺激を受けていなければならない。どちらかっていうと、フライング・ロータスとかマッドリブといった音楽だな。カニエのアルバムもちょうどいいタイミングでリリースされた。彼はこの作品でシーンに変化をもたらしたと思う。ロック・ミュージックもこういったアティテュードを持つべきだ。ロックってのは、ギターだけじゃないんだ。60年代後半は、バンドも…ザ・ビートルズなんかも50年代のロックン・ロールに影響を受けていて、エルヴィスのことも大好きだった。でも、エルヴィスがやってたことをやるのではなく、自分たちの感じてたこと、“凄い!”と思えるようなもの、メロディとかさ、それまでとは違ったものに創造し直して音楽を作ろうとしていた。俺たちもそうしようと試みてきたけど、今回はそれが上手く出来たと思う。

 俺が最初に手にした楽器はサンプラーなんだ。12歳の時で、昔のAkaiのサンプラーで、そこが原点となっている。トムはロックン・ロールよりもっとヒップ・ホップが好きだったし、俺たちはブリット・ポップを一緒に経験している。ブリット・ポップには誰もが影響を受けていた。俺たちの文化に大きな影響力を与えていた。俺たちはレイヴ・シーンに始まってヒップ・ホップ、ギター音楽と影響を受けてきて、バンドはいつでもそういったものを混ぜ合わせて音楽を作ってきたんだ。

・『SONICMANIA 2014』での来日について

 また、カサビアンにはこのあと、『グラストンベリー・フェスティバル 2014』のヘッドライナーをはじめ、地元レスターで5万人の観客を前にしたライブや、『SONICMANIA 2014』にはヘッドライナーとして出演するなど、10周年にふさわしい公演の数々が控えている。2人は今回の来日について、日本への好意を独特の表現で語ってくれた。

サージ:俺たちがバンドとして人気の出た場所でもある。未だにテープ、カセットを持ってるんだけど、ヴィデオ・カセットのことなんだけど……。

トム:俺たちがステージに上がると、みんながじっと待っててさ(笑)。

サージ:観客の反応がワイルドで、イギリスでも見たことないくらいだった。だから、日本とは常に恋愛関係にあるようなもんで、俺の言いたいこと分かるよね。俺たちに対して親切で敬意を表してくれてきた。日本のみんなは俺たちが何をしたいのか常に理解してくれてきたと思う。

トム:日本に着くと時差ぼけで眠たくて仕方がない(笑)。日本の東京という歪んだゾーンに入っていって、Nintendoのようだ。コンピュータ・ゲームの中に入り込んだようだ。モンスターだ。それで俺たちも“すげえ!すげえ!”ってな感じでビックリしまくって、ホテルにチェックインして、眠らないように頑張る。眠ったら最後だ。初めて訪れた時は驚いたよ。まるで神のような扱いを受けて、すごく妙に感じた。すごく変わってるよ。日本のような場所は他にはないね。

 10年のキャリアを持つベテランバンドとして、今やイギリスを代表するバンドの1つとなっているカサビアン。サマーソニックには複数回の出演経験がある彼らだが、重低音の効いたダンスミュージックが流れる深夜の幕張メッセではどのようなパフォーマンスを繰り広げるのだろうか。来日を楽しみに待ちたい。

(制作協力=Sony Music Japan International)

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