Masa Fukuda インタビュー
今回はOne Voice Childrenʼs Choirのプロデュースを行っている音楽プロデューサー・ディレクターのMasa(福田真史)さんにインタビューを実施、今回の共演の所感とともに、彼がこの合唱団を率いることとなったきっかけや目標などをうかがいました。
--表現力のすばらしさという点に高い評価が集まるOne Voice Childrenʼs Choirの活動としては、具体的にどのような目的があるのでしょうか?
Masa:「ハートの中に火を灯す」そういった気持ちを世界で分かち合おう、というものです。私が以前担当した2002年のソルトレイク冬季オリンピックの楽曲で訴えたメッセージにつながるものだと思います。
日々の生活にはさまざまに大変なことがありますが、その中にも光を感じ希望や愛のメッセージを分かち合うという気持ちを、どんなことがあっても忘れないということだと。
例えば今は特にコロナ禍の影響もあり、世界のどこか、当然日本に行きたくても行けないわけで、やっぱりその状況は悔しいわけですが、この状況にこの子供たちの純粋な歌声が響き渡ることで、一人でも多くの人に希望を与えることができたら本当にすばらしい。音楽でそんな「火を灯す」活動に生きがいを感じて、自分がこの組織に関わることで何ができるかをいつも考えています。
表現力という点に関しては、もちろん子供たちそれぞれが持っている才能も大切だけど、大切なのは「その才能を使って何をするか」ということだと思うんです。
--今回、フィリピンのシーア・ビゴーとコラボレーションを果たされましたが、彼女との仕事にはどのような所感を抱かれましたか?
Masa:レコーディングはアメリカとフィリピンを結ぶリモートで行われました。彼女が最初にスタジオに入ったときにはすごく純粋な子供で、まだおちゃめで無邪気な女の子だと思ったんですが、歌い出したら「さすが!貫禄だ」とその歌唱力にビックリしました。
一方で彼女は私をすごく信用してくれて、私のアドバイスに耳を傾けてその指示をすぐに実践してくれたのは嬉しかったし、本当に一緒にやっていて楽しかったです。
またネットで調べた時に彼女は歌がうまいだけでなく、さまざまな人道支援活動に参加しているということを知ったんですが、彼女の人間的な性質からは、彼女がそういった活動に参加していることがすごく納得できる気がしました。その意味で今回の彼女の参加は、非常にOne Voice Childrenʼs Choirの目的に合っていると感じたんです。
--Masaさんご自身のプロフィールを改めてお聞かせいただけますか?
Masa:高校のときにアメリカに留学したんですが、ユタ州プロボで高校生活を送りその後ブリガム・ヤング大学の音楽学科へと進みました。
学生のときは周囲の皆さんからいろんな助けやコネクションを得ることができ、2002年ソルトレイクシティ冬季オリンピック記念アルバムの一曲として私の曲が選ばれる機会に恵まれました。それがきっかけで子供たちの合唱団を指導することになったんです。
しかしオリンピックが終わると、一緒に過ごした時間で子供たちと育んだ友情などを考えると、この活動が終わってしまうことが残念で寂しい気持ちになったんです。そこで「彼らとまたずっと一緒に歌い続けられたら」「子供たちの熱意と願望になんとか答えられないか」という思いが生まれました。
それをきっかけとしてボランティアとして現組織の前身となる活動を始め、彼らを指導することになり、やがていろんな人の助けを借りてOne Voice Children’s Choir という組織ができあがりました。今は私もここソルトレイクシティを中心的な拠点として活動しています。
--One Voice Childrenʼs Choirとして普段の練習はどのように行われているのでしょうか?
Masa:一週間のうちにみんなが一堂に会するのは90分くらいなんですが、時には高度なことにチャレンジすることもあるわけで、この時間内だけで全部を子供たちが習得するのはまず不可能なので、事前に練習用の音源を彼らに向けアップロードし、それ聴いてもらった上で各自それぞれにマイナスワントラックで練習してもらっています。
--子供たちに指導するにあたり、どのような点を注意されているのでしょう?
Masa:みんなからよく言われるんですが、根本的に私はまだ自分が子供だと思っているんです(笑)。だから指導という言葉に固執せず、『自分が教師で向こうが生徒』といった関係ではなく、一緒に音楽をやるんだという気持ちで「音楽を楽しんでもらいたい」という思いで子供たちに向き合っています。
その上で自分たちの音楽に心を込めることを一番大切なものと考えています。アートはもちろんテクニックも大切なんですが、それ以前にやっぱり心が大切で、そういった心の声を人にどれだけ伝えられるか、訴えることができるかが大切だと思うんです。
一方で私は彼らをプロとして扱っているし、子供たちに期待することもたくさんあり、彼らも意識の中で「Masaは自分たちを信じて(僕らは)これを達成することができると思っているからやるんだ」という自発的な気持ちで向き合ってもらっています。
また時にはやっていて気が乗らない、気持ちが「伝える」ということにコネクトしないことがあります。そういったときは自分にもありますし、練習についてきてない、曲に心が入っていないなとお互いに感じると、私もやっていて辛いし、みんなも同じ気持ちだと思うんです。
だから練習時間の中で、彼らの気持ちが「心を伝える」というミッションにコネクトしてないと思ったら、一度その場で練習を止めて「曲のメッセージについて、みんなで考えてみようよ」みたいなディスカッションの場を設け、それを認識してもらった上で改めて練習に向き合ってもらうようにしています。
--日本の子供たちとのセッションなども経験されていますが、日本の様式、音楽教育の良さや世界に通用する部分はあると思いますか?
Masa:日本のいいところは、しつけの良さとともに基本、基礎を重視する点だと思うんです。基礎に固執しがちになるという点は日本の教育の欠点といわれますが、やっぱり重要なことですよね。例えば最初のドレミ音階を覚えることは、音楽を作っていく上ではすごく大切なことです。
日本の子は小学校一年生、二年生くらいにもなると、クラスの中で歌っていて音を外す子って意外にいないんですよね。一人だけ音を外す子がいたら、みんなそこに注目したりして結構目立つし(笑)。
一方でアメリカでは、自由にのびのびと表現することが大切とされています。だからアメリカでは逆にピタッと合う子が一人とか二人とかいて、そっちの方が逆に目立って「すっげー!マジか!」って言われるような感じなんです(笑)。
私は以前日本でヤマハの音楽教育プログラムの一環として行われているJOCに参加したことがありますが、そこで得た基礎的なスキルは今、自分の活動の大きな助けになっているところがたくさんあります。
だからそういった大事な基礎は、アメリカの子供たちにも教えたいと思うところがあります。アメリカの子たちにその日本の基礎、基本を植え付けるやり方を取り入れれば、歌ももっとまとまったりやすかったり、曲にフォームができたりするんじゃないかと。だから音楽教育という意味では、両方の国の様式をうまく一体化すると、さらに豊かな表現ができるようになるのではないかと思うんです。
●これからも世界に向けて
--今後Masaさんがやっていきたいこと、今後の活動として考えられていることなどはありますか。
Masa:特に日本は私の母国ですし、お世話になったこともたくさんあります。また私の本が出版されたときにもたくさんの方が読んでくださいましたし、本当にOne Voice Children’s Choirや私の音楽を待っていただいている方がたくさんおられるので、皆さんに向けてさらにメッセージを届けていきたいです。
またCM制作や、学校への楽曲提供など、いろんな依頼のお話をいただいており本当にありがたく思っています。だからそんな活動でも合わせて私の曲を続けて提供できたらと思っています。
そして本を出していただいた出版社のイベントやワークショップに加え、コンサートなどの企画を日本でできたらと思っています。そういった活動を通して子供たちと関わり、アメリカと日本の懸け橋になれればと思いますし、その意味でアメリカの子供たちを日本に連れて行ったり、という国同士の交流の場を増やしていけたらと考えています。
--最後に世界の皆さんに向けてメッセージを。
Masa:This is Masa Fukuda sending love, prayers, and good vibes to people all over the world. I know it’s a tough time for everyone right now, but my hope is that my music and these children’s voices will bring healing, peace, and comfort so we can get through this time together. I hope to see you all someday. Please take care and stay safe.
Apple Music https://itunes.apple.com/album/id1541157171
■福田真史(ふくだ・まさふみ)
福田真史『君だけの声を聴かせて』(書籍)
■One Voice Childrenʼs Choir(ワンヴォイスチルドレンズクワイヤー)
One Voice Childrenʼs Choir オフィシャルサイト
One Voice Childrenʼs Choir YouTubeチャンネル
■Xia Vigor(シーア・ビゴー)
Xia Vigor インスタグラム
●インタビュアー 中脇雅裕
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