待望の再演!ミュージカル『パレード
』堀内敬子にインタビュー「”ワル石
丸さん”のシーンが大好きです」

あの『パレード』が帰ってくる!
森新太郎の斬新かつ繊細な演出と、実力・個性の両方を併せ持ったキャストの演技により多くの観客の心をつかんだミュージカル『パレード』の再演が決定。2021年1月より東京芸術劇場プレイハウスを皮切りに、大阪、愛知、富山にて巡演予定だ。
20世紀初頭のアメリカ南部・アトランタで実際に起きた冤罪事件を基に、濃密な人間ドラマが展開する本作で、主人公、レオ・フランクの妻、ルシールを演じる堀内敬子に話を聞いた。
邪魔だと感じた紙吹雪が演技の助けになった
――堀内さんが『パレード』初演に出演なさる際、その前の舞台からだいぶ時間が空いた印象があります。
『パレード』初演までしばらく舞台をお休みしていたんです。理由はいくつかあるのですが、子どもを産みたかったというのは大きいですね。自分の人生を考える上で、家族を増やしたい、子どもと過ごしたいという強い気持ちがありましたから。舞台の仕事って早いものだと3年くらい前から決まるじゃないですか。そのサイクルで舞台の現場を入れていくと、なかなか長いお休みを取れないんです。なので、子どもを産みたいと決めてからは、比較的スケジュールを組みやすい映像のお仕事を中心にやらせていただいていました。
――そういう時を経てミュージカルの世界に復帰なさったのですね。
とは言いつつ、子どもが成長していくと、それはそれで忙しくなって、いつの間にか時が過ぎて行ってしまったんですけど(笑)。そんな中、『パレード』初演のお話をいただいて、あまりのブランクに怖いと思う気持ちも強かったのですが、このままミュージカルの世界から離れていいのかと自分に問いかけ、挑戦することを決めました。石丸さんとご一緒というのも大きかったです。
――石丸(幹二)さんとは劇団四季時代に『美女と野獣』『ウェストサイド物語』『アスペクツ・オブ・ラブ』等の作品で組まれていました。
そうなんです。でも、映像の現場が多くなる中で、テレビで知ってくださった人の中には私が劇団四季にいたことを知らない方も多いと思います。本当にしばらく間が空いてしまっていたので、劇団時代の同期である石丸さんとご一緒させていただく安心感は凄かったです。
堀内敬子
――『パレード』初演のお稽古はいかがでしたか?
こんなレジェンドたちの中に入れていただいて大丈夫だろうかと最初の頃は震えていました(笑)。歌に関していえば、私の実際のキーより曲のキーの方が低いのでそこを鍛えていくのに少し時間がかかった気はします。とにかく新人のつもりで稽古場に通いました。
――冒頭のシーンで色とりどりの紙吹雪が舞台に舞い散る様子にまず圧倒されました。演出として素晴らしいと感じつつ、演者さんは転んだり、バミリが見えなくなったりしないのかな、ってドキドキしたりも。
最初の頃は「邪魔、紙吹雪邪魔!」って正直思っていたときもあったんですけど(笑)、次第にあの紙吹雪が街のゴミに見えたり、花に見えたり、時には囚人にも見えたりして演技を助けてくれる存在になっていったんです。スタッフさんは本当に大変だったと思いますが、素晴らしい演出ですよね。森(新太郎)さんマジック!
――堀内さん演じるレオの妻・ルシールが、ただ夫の無実を信じて待つだけの存在でないのも素敵でした。みずからが行動を起こすことで事態を変えようとする女性。
レオにとっての本当の味方、彼を心から信じているのはルシールただひとりなんです。自分のために動くのではなく誰かのために行動する、家族のためにツラいことにも立ち向かっていくというのが彼女にとっての大きなエネルギーなのだと思います。自分のためだけに動いていたら、あの状況の中、心が折れてしまっていたんじゃないでしょうか。
――そのあたり、ご自身と重なる部分はありますか?
それはありますね。私も自分のためではなく、家族の喜ぶ顔が見たかったり、お客さまになにかギフトをお渡し出来ればという思いで舞台に立っていますから。すべてではないですが、ルシールの気持ちはわかりますし、自分との共通項も多い気がします。
堀内敬子
「フラれた時は扉の向こうで泣きました」
――少し時間をさかのぼらせてください。劇団時代の同期である石丸さんとの当時の1番の思い出はなんでしょう。
私たちは、アンドリュー・ロイ=ウェバーの『アスペクツ・オブ・ラブ』というミュージカルの初演に出させていただいたのですが、あの作品はいろいろ大変でした。
――堀内さん演じるジェニーは母の愛人であるアレックス(石丸さん)に恋をして振られます。
そうなんですよね(笑)。初演ということもありましたし、2人とも他作品への出演経験はあったものの、『アスペクツ~』はあまりにやることも考えることも多くて、かなり苦しみました。ラスト近く、ジェニーがアレックスに去られてしまう場面では扉の向こうにハケてからもずっと泣いていたりして。
――それが『パレード』では夫の無実を信じて戦う妻に。
あ、本当(笑)。共演が多いと作品によって役の関係性がいろいろ変わるのは面白いですね。
――『パレード』初演の時の思い出で1番強く残っていることもうかがいたいです。
まず、森さんの演出が厳しかったです(笑)。曲も難しいですし、皆さん大変だったと思うのですが、全員が森さんの言葉を信じてトライしていく姿に圧倒されました。若手からベテランの方たちみんなが果敢に挑戦することによってメキメキ作品の質が上がっていくんです。その中に入れていただけたのは嬉しかったですね。本番の幕が開いてからも、毎朝、森さんからの「ひとこと」があったのですが、全員がその言葉を聞いてその日の自分の課題を心において舞台に立っていました。素晴らしいカンパニーです。
堀内敬子
――『パレード』は実話が基になっていますが、それを知っていてもあのラストの展開には驚きました。
衝撃的ですよね。観終わってからもすぐに席を立てないお客さまがたくさんいらしたと聞いています。
――じつはレオはアメリカ北部の出身でルシールは南部の女性。同じユダヤ人でも生まれ育った環境の違いで、最初からすべてが上手くいっている夫婦でないというのも興味深かったです。
そこはひとつのポイントだと思います。最初から100%の信頼関係があったわけではないふたりが、冤罪事件の渦中に放り込まれたことで少しずつ互いを理解し信頼関係を築いていく。また、今の時代にこの作品を上演することにも大きな意味を感じています。
――堀内さんが『パレード』で1番お好きな場面はどこでしょう?
裁判のシーンで”ワル石丸さん”が登場するところです。
――詳しくうかがいたいです(笑)。
嘘の証言の妄想再現のような場面なんですが、石丸さん演じるレオが女の子たちをたぶらかすんですね。そこでレオがちょっと悪い、そして楽しそうな顔をしてダンスを踊るシーンが大好きです。ああ、石丸さん、楽しそうって(笑)。私はその場面をルシールとして裁判所の椅子に座って見ているのですが、素の自分が出ないように気を付けています。
――初演時に、石丸さんとのエピソードで特に印象に残っていることがあったら教えてください。
先日、NHKの『うたコン』で一緒に『美女と野獣』のナンバーを歌わせていただくことになり、『パレード』のことをお話する時間もあったんです。”ワル石丸さん”の場面のナンバー、かなり譜面を忘れていて、現時点ではほとんど歌えなかったと石丸さんがおっしゃっていて私も少し安心しました(笑)。初演で私が舞台袖にハケる際、最初の頃は幕が邪魔で毎回手でババっと払って奥に進んでいたのですが、ある日、幕が綺麗に処理されていて手で払わなくても良くなったんです。後で聞いたら、石丸さんがハケる私の様子をご覧になっていたらしく、スタッフさんに幕の処理をお願いしてくださったと。主役なのに、こんな風に周囲に目を配って気を遣える方なんだとあらためて思いました。
堀内敬子
――今回の再演にあたって、ルシールを演じる上で大事にしたいポイント、アップデートしたい箇所はどこでしょう。
この3年半の間に、森さんは海外でも学ばれたそうなので、演出がどう進化しているのか体感するのが楽しみです。ルシールとしては、初演でミュージカルの歌の勘を取り戻すのに時間がかかりましたので、再演ではそこをしっかり上げていきたいと思っています。演技に関しては、新しいキャストの方も入られますので、むしろ初演の記憶を引きずらずに新たな気持ちで作品や役と向き合いたいですね。人が変われば必ず作品も変わりますから。
――また、あの”熱”に満ちた作品と劇場で出会えるのが楽しみです。
初演も開幕当初は当日券もあったのですが、どんどん評判が広まり、最後は立ち見のお席も取れなくなったと聞いています。今はこのコロナ禍でいろいろシビアになっていますが、感染防止の対策を整えて万全の態勢でお客様をお迎えできればと思っています。再演をやるからには「初演のほうが良かった」とならないように、カンパニーの一員として精一杯ルシールを演じていきたいです。
ヘアメイク=多絵 スタイリスト=梶原寛子
取材・文=上村由紀子(演劇ライター) 撮影=早川達也
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