MUCCというバンドの底力を見せつけた
初の無観客配信ライブ、NoGoD・団長
がレポート

MUCCがキャリア初となる無観客有料配信ライブ『~Fight against COVID-19 #2~『惡-THE BROKEN RESUSCITATION』』を6月21日(日)に開催。彼らの盟友でもあるNoGoD・団長によるオフィシャルレポートが到着した。

MUCC、通算15 枚目のアルバム『惡』を引っ提げ、本来であれば、6月21日にぴあアリーナMMにて行われるはずだったワンマンライブ、『蘇生』。
昨年の『壊れたピアノとリビングデッド』から、長い長い時間を掛けての蘇生が中止になりもう生き返れないのかと思いきや、転んでもタダでは起きないのがMUCC。『~Fight against COVID-19 #2~『惡-THE BROKEN RESUSCITATION』』と題し、無観客配信ライブでの蘇生に踏み切った。配信会場には各メンバーの機材が四方に設置され、センターには撮影クルーがスタンバイしていた。ゲストアーティストは別室で演奏と撮影をするという。
定刻になるとメンバーが赤く照らされた照明の中、無言で入場。アクリル板で仕切られた定位置に各メンバーが横一列に並ぶ。背景のスクリーンにMVで使われた映像が流れると共に、アルバムのトップナンバー「惡 -JUSTICE-」からスタート。真上のショットやメンバー四分割など、普段ライブでは見られない構図の映像を織り交ぜつつのパフォーマンス。
曲が終わると逹瑯(Vo)&ミヤ(G)が移動し、メンバーが四方に散って始まった「CRACK」。ライブの熱量が一気に加速していく。続いて3曲目は14thアルバム『壊れたピアノとリビングデッド』から「サイコ」。このアルバムに伴うツアーでは期間限定メンバーだった吉田トオル(Key)のオルガンが、極悪なMUCCサウンドと絡み合い、強烈な化学反応を起こしていく。彼がオルガンを弾く別室の映像がメンバーの映像と薄っすらと合成されて、さながら亡霊のようである。そのまま、吉田トオルが“バンドへの置き土産”として作曲した「海月」へ。この曲では五分割の映像も織り交ぜつつしっかりピアノをフィーチャーしていく。以前YouTubeでアップされたリモートライブ映像の構図をオマージュしたりと、遊び心あるカメラワークでライは進んでいく。
メンバーが再びスクリーンの前に集まり、怪しげな洋館の映像をバックに始まった「ヴァンパイア」。ヨーロッパツアーが中止になり、不完全に終わってしまった『壊れたピアノとリビングデッド』のツアーが新しい形で蘇る。逹瑯が優雅にソファに座りながらMCをした後は、昨年に会場限定で発売された、逹瑯作詞作曲のバラード「Taboo」が披露された。ゲストの後藤泰観、琴羽しらすのヴァイオリンも入り、一気にゴージャスな雰囲気に。
このゾーンで特筆すべき点は、逹瑯とミヤが歌やコーラスにコンデンサーマイクを使用しているという点だ。本来レコーディングで使用されるコンデンサーマイクは、音質は良いが周りの音を過剰に拾ってしまうため、ステージ上が爆音で溢れている普段のライブで使われることはまずない。だが今回、ギター&ベースはアンプのキャビネットから音は鳴らさず、メンバーは全てイヤーモニターで各楽器の音をモニタリングしている。実際のフロアで鳴っているのはSATOち(Dr)のドラムと逹瑯の生歌だけである。更にお互いの距離も離れているので、解像度の高いマイクを使っても他の楽器の音の回り込みもなく、上質な歌声が収録できるのである。まさに配信ならではの技。
逹瑯の前に置いてあるランタンに灯が灯り、ミヤのピアノで幕を開けた「積想」。コンデンサーマイクの高い音の解像度が、逹瑯の歌をよりエモーショナルなものに仕立て上げていく。普段ライブハウスの爆音では聴こえづらいYUKKE(B)のアップライトベースでの細かいフレーズも、配信ライブなら音の分離がはっきりしているため聴こえやすく、より曲の雰囲気に陶酔できる。
再びメンバーは四方に戻り、ミヤがフィードバックノイズで空気感を変えると、切り裂くようなベース音で始まった「SANDMAN」。イントロの特徴的なベースサウンドを作り出すエフェクターの映像など通常のライブでは見ることは無いだろう。こういった遊び心あるカメラワークはさすがMUCC。ボーカルの歪んだエフェクトも、より音源に近い感じで再現されているのは流石である。
「スーパーヒーロー」終わりのMCでは、逹瑯やミヤがオーディエンスの居ないライブは孤独だとしきりに語る。だが彼等は、世界各国の言語で書かれたタイトルがスクリーンや配信画面に映し出されていく「自己嫌悪」、バンドインの瞬間にフロアに置いたミラーボールが一気に輝きだす「アルファ」と、無観客の配信ライブでしか出来ない演出を次々と見せつけてくる。
ここまで『惡』『壊れたピアノとリビングデッド』の曲で構成されたセットリストだったが、続いての「ニルヴァーナ」は2012年の曲だ。この曲はミヤが東日本大震災を受け“影と希望の光”をテーマに制作した。世界的な災害を受けている今だからこそ届けたい曲なのだろう。そして「My WORLD」が始まった瞬間、メンバーの後ろのスクリーンに思いを届けたかったファン達の映像がリアルタイムで映し出された。Zoomを活用し、世界中のオーディエンスと彼らが“今可能な最良な形”で繋がった瞬間だった。嬉しそうにスクリーンに歩み寄るメンバー達。ライブはバンドだけでは決して成立しないものだと、改めて感じさせられる瞬間だった。
全てのファンに逹瑯が「ありがとう」と伝えると、フィードバックノイズを切り裂き始まった本編最後の曲「生と死と君」。カメラワーク、背景に映し出される映像、配信映像に合成される歌詞などが相まって、より一層エモーショナルに。まるで一本の映画を見たかのような感覚に襲われた。
少しのインターバルの後、メンバーが今回通販で販売されている「惡」Tシャツに着替えて会場に戻ってきた。このままアンコールかと思いきや、行われたのはなんと吉田トオル氏の「断髪式」だ。
『壊れたピアノとリビングデッド』にまつわる期間、MUCCのイメージに合わせ髪を伸ばし続けていた彼。本来ならば4月に予定されていたヨーロッパツアーで“期間限定正式メンバー”の期間が満了するはずだったのだが、そのツアーがキャンセルになってしまったので、改めてこの日“けじめの日”としてMUCCの為に伸ばした髪の断髪と相成った。年下のMUCCメンバー達が、冗談を交えながら容赦なく鋏を入れていくシーンは、先程までの“カッコいいバンド”ではなく、ただの“惡ガキ”である(笑)。
和やかなムードの中、12月27日の日本武道館公演が突然発表され、配信上の書き込みやSNSでは喜びの声が溢れた。Twitterでは「#mucc無観客ライブ」がトレンド入りする状況となった。
祝福の中で始まったアンコールの「蘭鋳」では、メンバー全員がガスマスクとゴム手袋を装着し、アクリル板を飛び越えてメンバー同士が敢えて密になるパフォーマンスも。最後に、普段見る事のないメンバーの円陣からのカーテンコールで、熱狂の配信ライブは幕を閉じた。
この数ヶ月間に色々なアーティストの配信ライブを観て、私自身も配信ライブをやったからこそ分かるが、このクオリティは尋常ではない。改めてMUCCというバンドの底力を思い知らされた。
年末に武道館ワンマンという未来に繋がる嬉しい発表もあったが、正直まだその時期には通常通りのライブが開催出来ないかもしれない。
だとしても彼等なら目の前の困難や逆境を全て飲み込んで進んで行くだろう。そんな彼等にどこまでもついて行こうと、このライブを観た人達は誓ったに違いない。

取材・文=団長/NoGoD
撮影=田中聖太郎・渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)

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