SUPER BEAVER ホワイトデーに大阪で
緊急自主企画を開催、当日発表のゲス
トとここだけのスペシャル対談「一緒
に配るか! 梅田クラブクアトロのフ
ライヤー」

一度しかない人生で、互いにしのぎを削り、認め合える相手がいったいどれだけいるだろう? 2018年の2月14日、MOROHAの自主企画『怒濤』第十三回、翌2019年の2月14日、同じくMOROHAの自主企画『月金でギンギン!〜職場の死神背負って来い〜』と、東京・新宿LOFTにて2年連続で行われてきた、MOROHAとSUPER BEAVERのツーマンライブ。昨年は対バン相手が当日発表だったため、事前告知ではMOROHAの宣材写真のみ……と思いきや、SUPER BEAVERの藤原“31才”広明(Dr)が写り込むユーモアに両雄の関係性を感じつつ、当日はガチンコのライブで現場を大いに盛り上げた。そして今年は一転、SUPER BEAVERが緊急自主企画『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』を、3月14日(土)大阪・梅田クラブクアトロにて開催することが決定。気になるゲストはまたも当日発表ということで名前は一部伏せさせてもらうが、ライブに向けて実施されたフロントマンによるスペシャル対談では、2組の確かな絆と敬意を礎に、濃密で刺激的な言葉が何度も行き交うこととなった。さぁ皆さん、しばしの間、この大いなる茶番劇にお付き合いください(笑)。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
◆きっかけを全部こっちで作るというよりは、聴いてくれる人にも動いてほしい◆
――付き合いもそこそこ長い中で、2019年はお互いに良い年末を迎えられたんじゃないですか?
A♨(MC):いやいや、そんなことないです。俺らはライブのない年末だったので。
渋谷龍太(Vo):昔は年末にライブハウスに出まくる習慣ってなかった?
A♨:12月31日にライブハウスをハシゴする、みたいなね。31日ってさ、その1年のライブハウスの集大成というか、その年に箱に貢献したバンド、勢いのあるバンドを集めて、そのライブハウスの底力を周囲に見せつける1日だったよな。言わば、31日に呼ばれるの事はその箱の看板だというステータスなわけで。そういう日にハシゴするバンドを見て、羨ましいなぁとずっと思ってたよ。
渋谷:俺らは当時、渋谷のCYCLONEと(TSUTAYA)O-Crest、下北沢のCLUB 251によく出てたから、31日に3本ハシゴとかしてたね。
A♨:そういうバンドに俺、「売れた気になるなよ!2、3年で余裕でまくってやるからな!」とか、むちゃくちゃ息巻いてた。未だに31日に家でじっとしてるのはなんだか悔しい気持ちだな。
渋谷:俺らも10年ぶりぐらいで、31日には何もなかったね。ライブハウスに挨拶には行ったけど。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――まず2019年を振り返ると、SUPER BEAVERは初めてリリースがなかった年じゃない?
渋谷:これはもう計画的にですね。リリースしないだけで随分時間に余裕ができるんだなと。毎年1枚は絶対に出そうと思って動いてきたけど、時間をかけて1曲ずつ作りながら、1年を通して全貌が見えてくる方が健全かもしれないなと思いましたね。
A♨:プロモーションの時期に、インタビューされたりラジオに出たりするじゃない? そういうときって家に帰って、「あ〜疲れた、仕事したな」と思うじゃん。でも、これで「働いた」と思っちゃいけないなって。
渋谷:1つ「まやかし」みたいなところはあるからね。「努力した、頑張った」で満足しちゃう感覚と似てるかもしれない。「今日はいっぱい走ったな」とかもそうだけど、そこで達成感じみたものを覚えちゃって、ちょっと怖くなる瞬間は少なからずある。でも、それが実際に活きた感覚をちょっとでも得られたならいいと思うのよね。例えば、インタビューされることをゴールにしちゃいけないんだけど、それを読んでくれた人たちが何かを感じたり、何かを思ってくれて、ようやく形になった気がするから。そういうことじゃないの?
A♨:いや、改めてエンターテインメントに対しても腹括ってやってるんだなぁと思った。凄い事だよ。ビーバーが認知される為の取材やプロモーションもきっちり「仕事」だと考えてるのが如実に出たなと思うんだけど。俺はそれらをどうしても自分の「仕事」とは思えなくて。家で歌詞を書いてる時間、書こうともがいている時間、曲を作ってライブの練習をしてる時間、とにかくそれだけが「仕事」だと思おうとしてる。その時間がどれだけ濃密かだけで勝負してきた。そんな中でメジャーと一緒に仕事をするようになって、認知してもらうための時間、つまりは取材やプロモーションの時間が生まれるわけだけど、そこでの疲労感で働いたと思っちゃうとさ、仕事の総量として音楽と向き合う時間が多少減ったって仕方ないみたいな感覚になっちゃう気がして。「取材やプロモーションなんか音楽家としては家で寝てるのと同じ事だ」って、それぐらいに追い込まないといけないと思ってる。だけど今、渋谷くんが言ったのは取材、プロモーションもきっちり自分の「仕事」として捉えてる印象だったから。
渋谷:そこで何かが「変わった」経験があるんだよね。例えば、俺たちはライターの奥さん(=筆者)にずっとインタビューをしてもらってきて、それを読んで「うわぁ〜」って響いてる人を見ることが多いから。そういう反応が付いてきたり、その人がそれによって変わった瞬間を垣間見るとね、やっぱりすごい良かったなと思うよ。アウトプットして発見することってない? 今までの自分の体験談、誰かのライブを観たり本を読んだり映画を観たり、自分の中に溜め込んだものを、自分の言葉で話してようやくまとまる、みたいな瞬間が結構多いんだよね。「あ! 俺はこう思ってたのか、新発見」みたいな。まぁライブがその最たるものだけどさ。
A♨:なるほどなぁ。俺はアウトプットってライブや作詞以外でやってしまうと蒸発しちゃう感じがあるのよ。少し話はズレるけど俺、成功してる人の事を「あいつはどうして上手くいったのか?」とか飲み会とかで分析して語ったりしちゃうのね。そんで得意気になって言葉を重ねてると「あいつの技は見切った!」みたいな感じで、どこかでそいつらに並んだ気になっちゃうんだよね。負けてる惨めさが薄まるというか。世の中の事とか自分の葛藤とかにしても、喋る事によってそれを攻略した気になっちゃう。そういう情けない会話をした後のその感情さえも持ち帰って、歌詞に、ライブに落とせたらいいんだけど。
渋谷:一番最初に落とし込む場所が音楽であるべきだと。
A♨:そこで喋った事によって、その感情が消えなきゃいいんだけどね。でも上手に説明できると気持ちいいんだよ。賢い人間になった気がしてね。でもあの気持ちよさってイヤだな。だから、本当は気持ち悪く帰りたい。やっぱりね、グツグツ煮込まれたやつを出したいの。それをインタビューとかで気持ちよく喋らせてもらって発散してしまったら本末転倒な気がして。本質に対して一直線でなければと思うから。チラシ配りにしてもそう。「握手してください!」って言われたら握手はするよね。ただその間もどんどん人が通ってるから「撒かなきゃ! 撒かなきゃ!」みたいになって握手に対しておざなりになっちゃう。そうするとせっかく手を握り目を見て「是非ライブ来て下さい」と伝えられる機会を逃してしまう。数よりも質だと思えばこれは間違ってる。だからチラシ配りも難しい。目的=チラシを配ること、みたいになると本質から遠のくよね。そういう大事なことを見逃してしまわないようにしないとって思う。
渋谷:それってさ、やらなくてよくなったらやらなくなる? Zeppでワンマンをやってる人がフライヤーを配ってるって、あんまり聞いたことがないから。会場の規模で判断しちゃいけないけど、例えば武道館に立ったらそれをしなくなるのか。どこでそれを判断するのかなと。
A♨:フライヤーを配る事が神秘性みたいな事から遠のく、って言われた事はあるよ。でも1つカッコつけるとさ、2つ3つカッコつけなきゃいけなくなるでしょ? それはイヤなんだよ。向き不向きだとも思うんだけど、俺は神秘性とか幻想みたいなものを演出して勝負して来た人間じゃないから。なるべく状況に対して嘘をつかないようにチケットがソールドアウトしてないなら、チラシを配った方がいい、勝ってないんだから勝ってるフリしない 、ってのが自分のスタンス的にも悔いなくステージに立てるってのはあるかなぁ。
――歌詞=生き様というところは2組とも一緒なのに、ちょっとしたところのアプローチが違うのは面白いね。
A♨:だって俺がスカしたところで、生まれから存在がカリスマみたいなヤツには絶対に敵わないから。それに「それいけ!フライヤーマン」(2016)という曲があるからね。あれを歌ったことによって、あの歌を歌い続けるためにも、やっぱり配らなきゃと今は思うね。
◆お互いのテンションが一番高いときにまた会えた◆
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――そして、M●R●HAの2019年も、2年半ぶりにアルバムが出て、過去最大キャパとなる日比谷野外大音楽堂でのワンマンも行い、端から見たら充実した1年に見えましたけど。
A♨:全力は尽くしたけど、充実というにはまだまだです。俺が求めてるものがデカ過ぎるのかもしれないけど。実際に同じ時代を生きてるSUPER BEAVERや他の同世代がどんどん上がっていくのを見て純粋に悔しいし、数字を持ってないことを惨めに感じる瞬間が去年は結構多かったね。バカにされてるというか優先順位が低いんだなって。そういうアンテナばっかり立ってるから。
渋谷:優先順位に関しては俺、めちゃくちゃ敏感だよ。
A♨:ちなみにそれはどんなときに感じるの?
~とある優先順位についての話~
A♨:うわぁ〜これは使えないやつだ。聞けてめっちゃ面白いけど!
(一同笑)
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
渋谷:本当に、本当に、人は見るようにしてます。
A♨:なるほどなぁ。どれぐらい自分たちのことをちゃんと大事にしてくれてるのか。
渋谷:そこはすごく意識するし、そういうことは後々めちゃくちゃ響いてくると思ってる。
A♨:でもSUPER BEAVERは相手に「ふざけんな!」と思ってても、しっかり対応ができるところがすごいよな。もちろん腹の中ではギラギラに燃えてると思うんだけど。俺はこの前、腹立った時に喋ってる自分が鏡に映ってるの見たら唇が怒りで震えてたもん。
渋谷:アハハ!
A♨:でも、例えば自分たちで企画してスリーマンをやりますっていうときに、こっちが決まったからようやく声をかけられる、みたいな心ある優先順位の場合は別でしょ?
渋谷:そう! 言わばそれをちゃんと説明できるわけじゃない? 「どうしてもあなたとやりたかったけど、何も決まってない状態だと断られるかもしれなかったから、何が何でもこの3バンドでやるために、この順番で声をかけました」とか言えるわけで。
A♨:どんな事でもさ、変に隠さずにガッツリ目を見て言われたらシビれるよね。 「お前らの立ち位置はここだ、悔しけれゃあがってこい」みたいな。結局、なんであれ心を開いて喋れたらいいんだよな。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――今の話を聞いてるだけでも、自分の企画に誘うということは、やっぱり並々ならぬ気持ちだなと思いますね。
A♨:昔さ、ただ意気込みだけで先輩に「一緒にやりたいっす!」と言ったとき、「俺らに何のメリットがあんの?」と言われたの。これって一見、冷たく見えるけど、本当のことを言ってくれて優しかったなと今は思う。確かに当時の俺らとやってもメリットなんかないのよ。お客さんも呼べないし、俺らとやることの面白みがプロモーションとして成立することもない。やっぱりちゃんと相手にもメリットが与えられるだけのものを、自分自身が持っていないと。でも、そんな中でも俺らの意気込みと音楽だけを買って挑戦を受けてくれた人もいる。それに関しては、思い返すだけで涙が出るぐらい感謝してる。だから逆に自分のところにピカイチの意気込みを持ってるヤツが来たら……もちろんそいつの音楽に撃たれるかどうかは大前提なんだけど、メリットがなくてもやれるようなボディにはしときたいなとは思うね。
――2017年、2018年はM●R●HAからSUPER BEAVERを企画に誘いましたけど、SUPER BEAVERじゃなきゃと思うところは何なんだろうと。
A♨:いやもう、純粋に素晴らしいバンドだと思う。最初はお互いに嫌いだったのがまた良かったよね。その壁をブチ抜けたのは相当なこと。自分が一度組んだ腕をほどくのって、結構プライドを削られる事だし。そういう体験をしたのは、SUPER BEAVERとA.O.W(ex.against one's well)っていうハードコアなバンドですね。俺はフロアに降りてお客さんを巻き込んで大暴れするみたいなライブがめちゃくちゃ嫌いで。
渋谷:基本的にSOUICHIROU(Vo)さんはずっとフロアにいるからね(笑)。
A♨:だから最初は「うわ、俺の嫌いなやつだ、、、」と思ったんだけどあの人の暴れっぷりは、もうハンパじゃないんですよ。あそこまで振り切ってやられたらね。もう笑うしかないというか。泣けたんです。A.O.Wを観た瞬間と、SUPER BEAVERを観たときのあの感覚は忘れられないです。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――最初にSUPER BEAVERが気にくわなかったのはなぜ?
A♨:いや、何となく直感です。
(一同爆笑)
A♨:いやでもさ、見た目がやっぱりチャラチャラしてるじゃん!
渋谷:めっちゃそう思われることが多いんですよ。鼻につきやすいのは、自覚してるんですよね。
A♨:でも、それがひっくり返る瞬間がサプライズなわけで。それを求めてみんなライブハウスに来てるから。
渋谷:明らかに内面と見た目にギャップがあるのは分かってるけど、超真面目そうなヤツが本質的に何も考えてないヤツだったらイヤだけど、本当にただこういう格好が好きで、こういう音楽が好きで……でも、いざ蓋を開けたら「お!? こいつらやるな」って思わせる手法というか(笑)。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――渋谷くんが白シャツに黒スキニーでアコギを弾いてたら、また絵面が違うもんね。
渋谷:俺は、今でもずっと音楽のファンなんですよね。でも、そこを必死に守ってるわけじゃなくて、ただ本質的にあるものだから。それがまぁくだらない言い方をすれば美学みたいな言葉になってしまうんですけど、それを大事にできなくなったら終わりだなとも思ってるので。そんな中でこいつらに出会ったとき、俺も最初は鼻についてたんですよ。実際に面識がある前から、先輩から散々名前は聞かされてて。
A♨:海北(大輔/LOST IN TIME・Vo&Ba,P,Acog)さんね。
渋谷:あと、ATATAもそう。俺たちのナベ(=奈部川光義・Vo)さん、俺たちの海北さん。
A♨:それまではずっと「俺の」だったんですよ。でも、ビーバーの話を聞かされ始めて、「何だよ! 俺の海北さんだぞ!!」と思ってたところはあった。多分、ビーバーも思ってたよね。
渋谷:「俺の海北さんだぞ!」と(笑)。打ち上げで喋ってると改まった感じで、「渋谷くんさ、M●R●HAって知ってる?」みたいな。でも、「興味ないですから俺らは」みたいなスタンスを取りたいわけですよ。
A♨:俺らは俺らで「一緒にやった方がいいよ」と言われてて。そう思うと、やっぱ海北さんってすごいよね。あの人は2組が一緒にやった方がいいと心から思って言ってくれてるわけじゃん。それが逆に遠ざけることにもなったけど、それがあったからお互いのテンションが一番高いときにまた会えたのもあるから。奈部川さんもそうだけどね。
渋谷:俺、ATATAが新代田のFEVERで昼間にやったライブを観に行ったんですよ。そしたらM●R●HAが出てて。「うわ……何でこいつらなんだよ!」とか思いながらも、実は俺、CDは持ってたんだよ。
A♨:それは本当いい話。鼻につきつつ、音楽は音楽で良いと思ったらちゃんと踏み込むところ。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――それは海北くんから薦められる前に?
渋谷:こいつらが(2011年に)JACCSカードのCMに出てたじゃないですか。いろんなバンドが取り上げられてるラインナップを見てたら知らないヤツがいて、「何こいつら? すげぇかもな」と思って。僕は盤を買うことが好きだし、それは音楽家に対しての1つの敬意の表し方だと思ってるからそれを買ってみて、「まぁまぁ良いじゃないですか……」みたいなことは正直、思って(笑)。実際にライブを観ても、やっぱりよかったんですよ。これはもう認めざるを得ないから、どう認識されてるのかは知らないけど、素敵だなと思ったのは伝えるのが筋だろうと思って言いに行ったのに、無下にされて、俺のプライドが!(笑)
A♨:俺は基本的に自分がいいと思わないと、観に来てくれてもそうなっちゃうんです。お返しに褒めなきゃいけない、と思ってしまうから。居心地わるくて。あとは良いって言ってくるヤツをあんまり信じてないんで。例えば、「めちゃめちゃ好きです!」と職種を問わず言われることがあるじゃない? 嬉しいなと思ってもその人のTwitterとかを見ると、俺が1ミリも良いと思ってないバンドにも同じようなことを書いてたりして。
渋谷:めっちゃ分かる〜!
A♨:その瞬間に、あの言葉は俺の記憶から消し去らないといけないと思うわけよ。
――いやもう、今日ずっと話を聞いてきて思うのは、2人とも面倒臭ぇな!(笑)
(一同爆笑)
◆今こう思ってるとか、こういうスタンスだというのが、ライブを観ると分かったりする◆
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――2年連続バレンタインに新宿LOFTで対バンしてきましたけど、それに関しては振り返ってどうでした?
渋谷:いや~面白かったですよ。個人的にもすごく仲良いし、いろんな話をしてきた中で、俺は今こう思ってるとか、こういうスタンスだというのが、ライブを観ると分かったりするから。一歩も退かない攻防を繰り広げ続けてると思ってるので、どっちもサービスゲームでブレイクできてない感じ(笑)。それがヒリヒリしててまたいいんですよね。お互いにこんな感じだから気も使わなくて済むし、「あれはもったいなかったんじゃない?」とか、「2曲目の段階で勝ったと思ってただろ?」とか(笑)、結構バチバチに答え合わせもできる仲だから、ツーマンなんていうのは話が早いわけで。
A♨:俺が印象深かったのが、HAWAIIAN6主催の『ECHOES』で。結構ハードコアとかが好きなお客さんがいる客層の中にビーバーが出てて。あそこでポップスという看板を背負ってやること自体がパンクだから、すっごくカッコよかった。MCでも、誰も気を悪くしないように丁寧に言葉を紡いで。多分、自分たちがお邪魔する立場だからっていう感覚だったと思うのよ。
渋谷:すごく覚えてる。要は「自分たちはこういう音楽を背負ってこの場所に立ってるけど、そもそも、ここに来てる人たちはジャンルが何だかんだで判断する人ではないだろうから、こんなことをわざわざ言うのは野暮かもしれないけど……」みたいなことを言ったの。
A♨:でも、俺はそれを観て「そこまで説明しなくても、ちゃんと愛情は伝わってるんじゃない?」と伝えたんだけど、「いや、やっぱりこれぐらい伝えないといけない人もいると思うんだよね」と言われて。「確かにそういう現場もあるよなぁ」と思ったし、どれぐらい言葉を尽くして伝えるかという線引きみたいなものを、そこで探り合えた感じがして。ビーバーが素晴らしいのは、そこにいる人にちゃんと好きになってもらおうとしてる。いつだって心を開いて向かってるところがカッコいいよなぁと思うし。あとヤナギ(=柳沢亮太・Gt)の書く歌詞の良さ。いつも思うんだけどヤナギはさ、渋谷くんのことをどこまでも深く理解してるよね? そこがまずビーバーのビックリするところでもあるんだけど、本人が書いてないのに、こんなに本人の歌になることってなかなかないよ。だからヤナギはすごい奴だなぁって。
渋谷:あいつはめちゃくちゃ人を見抜く力があるし、どんなことを考えて動いて、何を思っての発言だったのかが分かってるから。だから、俺がMCでどんな気持ちでそれを言ったのか、何で言わなきゃいけないと思ったのかを、曲にスッと落とし込める。俺は俺で「あのとき喋ったことね」と分かるぐらい、MCの内容が歌詞にはバンバン入ってるから。しかも、あいつが響いたことしかパッケージしないから、純粋にクオリティが上がっていくのもすごく感じるし。
A♨:良いなぁ! ヤナギ最高じゃん。渋谷くんだって、紛ごう事なき言葉の人でしょ。だからこそ、MCをそのまま歌詞にできるぐらいのクオリティがある。それをヤナギが横で聞いてて、それをちゃんとパッケージングしてくれるわけでしょ。それを上杉、藤原がガッツリ支えてより熱くなる。すごいチームだね。MCで言えば北海道でツーマンをやった時に「俺は手を離さないけど、それだけじゃ離れてしまうから、そちらも握っててください」と言ってたの、あれは良かったな。その日は俺らが先攻で俺は「あんたが逃げたって無駄だ、俺の手が離さない。」という内容の事を言ったの。そこにちゃんと被せての返しなんだよね。逃さねぇぞ! と言ったM●R●HA。抱き締め合いましょう、というビーバー。それがライブを通しての会話であり、闘いなんだよ。俺らが言ったことに対して言い返してもらえてる感覚があるから、その瞬間は贅沢だな、音楽をやってて良かったなと思う。そこはツーマンの面白さだよね。
渋谷:お互いに筋が通らないことを言ってるつもりは一切ないんですけど、向こうから見て「ここはひっくり返せるな」みたいなところを、ライブの後半でポンと突いてきたりするんですよね。
A♨:それもちゃんとお客さんの方を向いて、お客さんを通してできるようになったのは、30を過ぎて、キャリアが10年を超えたぐらいのタイミングでようやくだった気がする。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――年齢を重ねてお互いの変化や成長も感じるから、何度やっても刺激がなくならないね。
A♨:でもやり過ぎないようにはしてるよな。お互いが新しい切り口や感情がないと意味ないから。
――そう考えたら、年1回の恒例みたいになってるツーマンはある意味、特別な日だね。
渋谷:年イチの答え合わせぐらいはしとくべきだなと思ってるんですよ。今の音楽シーンを見てて、純粋に友達として発信するのは全然いいんですけど、いくら仲がよかったとしてもズブズブに横でつながってるのを見ると気持ち悪いんですよね。そういう手のつなぎ方って、一緒に落ちるだけだろうなって思っちゃう。そこは俺らも極力避けてるところで。そう思う中で、M●R●HAとはいい距離感でやれてるんじゃないかな?
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――そして今年は、大阪の梅田クラブクアトロで、ホワイトデーにSUPER BEAVERが自主企画をする。ちなみに前回は、バレンタインにちなんでチョコレートの数でも対決してましたけど。
A♨:また対決しようや。前回はチョコの数で勝負したけど、結果は引き分けだったっけ?
渋谷:俺らの大勝ちだよ(笑)。
A♨:あ、数は負けたのか、数は。そしたらホワイトデーは質で勝負しようか。
渋谷:何だよチョコの質対決って。お前はどこのマイスターなの(笑)。でもさ、ホワイトデーって基本的にお返しをする日じゃん。その辺がちょっと難しいなと思って。
A♨:そしたら「ホワイトデーに着て来てほしいコーディネート対決」だな。ライブハウスのロビーにメンバーのデカい写真パネルを立てて、そこに投票シールを貼ってもらう。特別な気持ちを手渡す場面での相応しい服を着るのは男のマナーだからな。お前ら顔出しで勝負できるの?
渋谷:お前こそ顔が赤くなったり唇が震えたりするのによく言うよ(笑)。
A♨:今回もチーム戦でしょ? 2対4だと俺らが不利だから、もちろん今回もビーバーから1人もらおうと思って。
渋谷:だから藤原(“31才”広明)をあげるよ(笑)。
A♨:いやいやいや。今回は本当に勝ちに行きたいからこっちで選んでいい?申し訳ないけど冷静に勝つ為の選択をさせてもらって…………藤原で!
(一同爆笑)
渋谷:だよな(笑)。ただ、今回はヤナギとUK(Gt)がマジで強い気がしてる。
――さっき柳沢くんの話になったけど、UKはどんな人なの?
A♨:あいつはゲームばっかりやってる。あと今度、秋葉原でアダルトショップを始めるから。
渋谷:お前ら大丈夫なの?(笑) たまに心配になるよ。俺から見たUKは、この人より面倒臭い気がしますね。本当にね、組んじゃいけない2人が組んでるから。混ぜるな危険(笑)。
A♨:俺もね、15年ぐらい付き合ってきて思ったけど、あいつはすっげぇ人を見ててさ、めちゃめちゃ考えてるように見えるじゃん? 実は何も考えてない。
渋谷:マジか(笑)。だとしたらそれも才能だよ。天才的にギターがうまいだけの人(笑)。
◆俺みたいなヤツに嫌われる瞬間が、ビーバーのブレイクポイントだと思う◆

『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』

A♨:しかし改めて「人として」(2016)は本当にいいよね。2019年に俺の頭の中で一番かかった曲かもしれない。というのは、去年はいっぱい謝罪会見のあった1年だったじゃない? ああいうのを見る度に人が人を裁く事に対して辟易してる自分がいてさ。<身に覚えのある失敗を どうして指差せる?>って、いつも「人として」が頭の中に流れてたよね。あの曲はすごいよ。2019年の曲だよ。結局、<信じ続けるしかないじゃないか>という回答をみんなが今、出し始めてるでしょ。まさに「人として」の根底に迫る曲だよね。
――そう考えたら、SUPER BEAVERの音楽が世に求められてきたのも何だか頷けるね。
渋谷:でも、確かに去年オンステージした体感として、「人として」は「ありがとう」(2014)よりも響いてたかもしれない。演奏した回数も「人として」の方が多かったかも。
A♨:疑いの時代に生きてる俺たちが今、一番求めてる曲なのかもしれないね。あれを書けるヤナギはやっぱりすごいし、全体重を乗せて自分の気持ちとして歌に、演奏に注ぎこむ三人も本当にすごい。他にはいないよ。俺は疑いが多い人間だから余計にそう思うのかもしれない。
渋谷:もちろん柳沢だってたくさん苦労してきたはずだけど、あいつは元がめちゃくちゃ強い人間なんですよ。でも俺は、元々はそうじゃなくて、順を追って強くなっていったタイプの人間だから。この差はデカくて、<信じ続けるしかないじゃないか/愛し続けるしかないじゃないか>っていうフレーズは多分、俺からは出てこないんですよね。ともするとこの部分って、弱いところから派生した俺のような人間にとっては、言ってくれるなみたいなところもあるっちゃあるんで。そこを響かせるには何が何でもちゃんとスタンスを見せないと伝えるのがすごく難しいから、柳沢とはよく話しますね。だから、全面的に物事を信じられない気持ちって、めちゃくちゃ分かる。いくつも裏付けがないと、「あの人が言ってたことは本当だった」と思うのに時間がかかるから。
A♨:バンド内でその会話があるのがもう素晴らしいよね。
――思った。渋谷くんと柳沢くんが1つのバンドに共存してることの尊さよ。
A♨:「人として」の、<身に覚えのある失敗を>というひと言があるかないかだよね。<信じ続けるしかないじゃないか/愛し続けるしかないじゃないか>だけだったら、「綺麗事かよ」となりかねないところを、「自分もやってきただろ?」って問う……まさに強くなるまでの過程だよね。それがメンバー間の会話から生まれるわけで。それに比べると1人で歌詞を書くのはなかなか孤独だよ。
渋谷:その分、それを思った人間がそのまま歌詞に落とし込んで伝える強みはあるよね。それってすごいピュアネスじゃない? ピュアネスって人として一番強い武器だと思うから。俺と柳沢は属性が逆だから、これをどう強みに変えていくのかを考えたとき、俺らには視点が2つあるから、ここを活かさない手はないなと思って。
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
――M●R●HAとSUPER BEAVERはこうやってざっくばらんに話せる関係性だし、お互いに「あいつらの手前、恥ずかしいことは絶対にできないぞ」みたいなところもあるんじゃない?
A♨:でも、それも行き過ぎるとつまらんよな。俺に嫌われる瞬間がビーバーの次の進化へのステップかもしれないし。届けたい相手がそこにいて、自分の心に嘘をついてないなら、やっちゃいけないことなんてないし。ビーバーがそれをやって、仮に俺が全然好きじゃないアルバムができたとしても「俺の心は動かない、だけど新しい挑戦をしてるんだな」と信じる事が出来たら素晴らしいと思う。自分自身もそうなれるように、日々活動していきたいなと思うし。心動かなくなったら寂しいよ。でも特定の人間の価値観に縋り付いてどうするんだよ、と思うから。とはいえ、もう既に日本中に愛してもらえる歌をつくってると思うから、このままやれ! って思うけどね。
――逆に渋谷くんからM●R●HAにプランはあったりする?
渋谷:結構その話もしたりするんですよ。ギター1本とマイク1本、要はめちゃめちゃソリッドな陣形じゃないですか。ゆえにエンタメ性みたいなものは割と最初の段階から絶ってると思うから、そこじゃないんだろうなとは。
A♨:自分達の表現の核となる部分以外は削ぎ落として、とにかく伝える事を第一にしてやって来たという自負はあるよ。でも今はこの編成が一番伝わると思ってるけど、気持ちが変わればドラムもベースも抵抗なく入れると思う。そしてエンタメ性を絶った、という言葉を免罪符に沢山の人に届けるという目標を諦めたくないなと思う。俺達はいつも悔しいよ。ビーバーがむちゃくちゃデカいところでやってるから。それこそこういう企画を1年周期でやれたら嬉しいけど、俺たちも同じようにステップアップしてないと、正々堂々と挑めないしさ。もう本当に悔しいよ。お前らのライブスケジュールを見てて、「何ここ? 聞いたことないけどデカそうなホールの名前!」みたいな。もうね、胃がちぎれそう。
渋谷:俺も知らない名前がいっぱいあるからね(笑)。年イチと決め切らなくてもいいけど、毎年やりたいなと思える環境にお互いが居続けるのはすごく大事だと思うし、俺はむしろ定番化しても面白いだろうなって思ってるよ。俺らはそういうことを誰ともやったことがないし、やれる人がいないし。
A♨:前にさ、安室(奈美恵)ちゃんを追いかけるイモト(アヤコ)さんの番組(=『世界の果てまでイッテQ!』)を一緒に観たよな。イモトさんがね、むっちゃくちゃ安室ちゃんのこと好きなのよ。あの夜の事、走馬灯に出ると思うわ。ライブの直前とかにあの時に感じた事を思い出すのよ。
渋谷:もうクッソ泣きました!
A♨:自分達の音楽を愛してくれるお客さんも、イモトさんと同じようにライブを楽しみにしていて、同じように人生を共にしたいと思ってくれているんだ、って思ったらグッと来ちゃって。渋谷くんの家で観たんだけど、「ヤバい! こいつの前で泣きたくない! ぐっ、、たっ、耐えた~!」と思ってパッて渋谷くんを見たらもう顔面が土砂崩れするくらいに泣いてて。
(一同笑)
渋谷:イモトさんって人間がすごくできてて、何て素敵な人なんだろうって思った反面、安室奈美恵さんは、要はファンと言われる人たちを、多くを語らずして、こんな幸せな気持ちにさせてきたのかと思って。ファンのかがみであり続けたイモトさんはもちろんのこと、ファンにそうい続けさせた安室奈美恵さんっていう。その関係性がもう、本当にすごい!
A♨:あれは泣けたよな。俺、それまではハッキリ言って「M●R●HAのライブを楽しみに生きてます!」みたいな言葉って、「いやいや嘘でしょ。みんな他にもいろいろモチベーションがあって、その中の1つとして俺らがいるだけで」とか思ってたけどさ、イモトさんは安室ちゃんがいるから頑張ろう、安室ちゃんのファンとして恥ずかしくない生き方をしよう、と本当にしてたじゃん? 実際にそういう人の姿を見て、自分もそういう言葉を疑わずに信じてもいいのかもしれないなと。

『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』

――まさかこの2組が最後の最後に安室奈美恵に着地するとはね。
A♨:大きな規模になるとお客さん1人1人の顔が見えない時もある。それでも何千人という数字ではなくて、一人一人の人生が何千とそこにあるんだと思い、想い続けなきゃいけないよな。
渋谷:だって、他人のファンのたった1人の姿を見て、俺らはあんなに泣いたわけじゃん。それがあれだけの数いたらもうすごいことだよ。
A♨:フライヤーを配ってると実感するよ。ライブが終わった後に「あー……すごかったね……」って涙目で言い合いながらカップルが目の前を通って行ったり、1人で来てる男の人が小さい声で「僕も頑張ろう、頑張ろう」ってぶつぶつ言いながら通って行ったり。そういう場面を見られるのもフライヤー配りの醍醐味だし。こういうことを忘れたくなくて今でも配ってるのかもしれない。
――今度の梅田クラブクアトロにも、絶対にそういう人が来ますよ。
A♨:一緒に配るか! 梅田クラブクアトロのフライヤー。
渋谷:お前は俺らのライブ終わりで配って、俺らはお前らのライブ終わりで配って、「お願いします! 絶対に勝つんで! 俺のところにシールを貼ってください!」って(笑)。
A♨:お前、「シールの貼り方が雑だから無効」とか、「俺のは丁寧に貼ってあるから数は少ないけど優勝」とか屁理屈ぬかすなよ!
渋谷:こいつこそ絶対に言いますよね!? 「渋谷くん、見てごらん? 俺の方がきれいに並んでるから勝ち」とか。これ書かないでください、絶対にフリになるから。こいつ絶対に言うから!(笑)
――結果は3月14日(土)、ホワイトデーのお楽しみと! 本日はありがとうございました!!
『お返しもギンギン!~今日は土曜日!明日は日曜日!~』
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=森好弘

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