『印象派からその先へ—世界に誇る吉
野石膏コレクション展』レポート
近代美術のエッセンスが楽しめる、珠
玉の名品72点が集結
ピエール・ボナール 《靴下をはく若い女》 1908-10年 吉野石膏コレクション
風景画家のコローやバルビゾン派のミレーにはじまり、モネ、ルノワール、ピサロたち印象派から、セザンヌ、ゴッホなどの後期印象派、さらにはピカソやシャガールなど20世紀の作家まで。フランス近代絵画の流れを一望できる作品群には、優しく親しみやすい作品が多く含まれている。
クロード・モネ 《睡蓮》 1906年 吉野石膏コレクション
三菱一号館美術館館長の高橋明也氏は、「1980年代以降に形成された日本の西洋絵画コレクションとしてはトップクラス」と絶賛する。なかでも、ピサロやシスレーによる風景画の数々や、パリ時代の代表作から晩年の名作をそろえたシャガールの油彩画は見逃せない。
展示風景
充実した印象派のコレクションに浸る
ジャン=フランソワ・ミレー 《バター作りの女》 1870年 吉野石膏コレクション
続いて、都市生活を主題に絵画を描いたエドゥアール・マネ、光や大気の変化を、明るい色彩と素早い筆致でキャンバスに描き出した印象派、20世紀の前衛芸術を予告するようなセザンヌやゴッホなど、後期印象派たちの絵画が並ぶ。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《雪原で薪を運ぶ人々》 1884年 吉野石膏コレクション
特に、水辺の作品を明るい色彩で描いたアルフレッド・シスレーと、印象派の画家の中で最年長のカミーユ・ピサロの作品は、一部屋ずつ展示室が割り当てられているので、それぞれの画家の作品をじっくり鑑賞したい。
アルフレッド・シスレー 《ロワン川沿いの小屋、夕べ》 1896年 吉野石膏コレクション
ルノワールやモネによる初期から晩年までの名品にも注目したい。第一回印象派展と同年の1874年に制作された、ルノワールの《庭で犬を膝にのせて読書する少女》は、「《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》や《ぶらんこ》など、70年代中盤の代表作に通じるような秀作」と、岩瀬慧氏(三菱一号館美術館学芸員)。本作では、青々とした草むらの背景に溶け込むような青いドレスの少女と、揺れ動く木々や光の揺らめきが、画面の中で調和している。
メアリー・カサット 《マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像》 1911年 吉野石膏コレクション
第2章では、鮮やかな色彩や大胆な筆触を特徴とする野獣派の画家アンリ・マティスや、キュビスムの画家パブロ・ピカソ、さらにはワシリー・カンディンスキーによる抽象絵画まで、20世紀前半のモダン・アートを牽引してきた画家たちの作品が集う。なかでも、ピカソがパリのフォンテーヌブローの風景を描いたパステル画は非常に珍しく、本展の見どころのひとつになっている。
ワシリー・カンディンスキー 《過度なヴァリエーション》 1941年 吉野石膏コレクション
第3章では、諸外国からパリのモンマルトルに集ったエコール・ド・パリの作家たちの作品が並ぶ。本章は、詩情豊かな作風で知られるマルク・シャガールのパリ時代の作品《パイプを持つ男》から、画家が92歳の時に描いた最晩年の作品《グランド・パレード》まで、計10点が出品される。ほかにも、「白の時代」と呼ばれる画家の最盛期に描かれたモーリス・ユトリロの《モンマルトルのミュレ通り》や、パステルカラーを用いて、優美な女性像を描いたマリー・ローランサンの肖像画など、パリで活躍した個性的な画家たちの作品もあわせて紹介されている。
右:マリー・ローランサン 《五人の奏者》 1935年 吉野石膏コレクション 左奥:同作者 《羽扇をもつ女》1937年 吉野石膏コレクション
印象派後の様々な芸術潮流をおさえた作品群は、フランス近代絵画の流れを見渡せると同時に、絵画表現の多様さを体感できるコレクションになっている。
SPICE
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