本当に放送できるのか!?『健全ロボ
ダイミダラー』柳沢テツヤ監督、河井
プロデューサーへ再インタビュー（そ
の1）

　
――まず、最初におうかがいいたしますが……ぶっちゃけ大丈夫なんですかね？
柳沢：……前シッポとかですか？
　
河井：シッポなので何も問題はありませんよ。シッポを放送できないなんて聞いたことないです。
　
柳沢：シッポがダメなら、「フランダースの犬」も放送できないじゃないですか。
　
河井：なにか別のものに見えるとすれば、それは見る人の心が汚れているんですよ。ダイミダラーのパイロット適性が高いタイプの人です。
　
――そ、そうですか……。『ダイミダラー』アニメ化にあたって困難があったんじゃないでしょうか？
柳沢：「こういう作品をやるよ！」って言った時に、みんな「マジですか！　いまどき手でロボット描くんですか!?」と、微妙そうな顔をされました。ダイミダラーのメカデザインを見せた時にも「ああ……」ってね（笑）。なので、スタッフを集めるのが大変でした。でも、そんな中で集まってくれたスタッフはみんな“わかっている”方々で、魂を込めて制作に取り組んでくれています。でも企画成立までの道のりをつけてくれた河井君はもっと大変だったと思いますよ。
　
河井：やっぱり放送コードが大きな壁でした。あぶない言葉を削ったり、シナリオ・コンテ段階での事前チェックも入念に行っています。でも、日和ったり逃げたりはしたくなかったので、“このギリギリのラインをどうやって描写すればいいのか”という方向に考えていきました。たとえば『進撃の巨人』などでも、人間を巨人が食べるような過激なシーンを、放送コードに引っかからないように、上手に描いていますよね。我々の中でも「“チ○ポ”はダメだけど“ティンポ”ならOK！」というような、涙ぐましい努力がありました。
　
――えっ、それで大丈夫なんですか!?
河井：僕も基準はよくわかりません。
　
柳沢：ある日「ティンポでOKになりました」って言われたんですよね。
　
河井：『ダイミダラー』をアニメ化するに当たり、“ガリバーチンポ”という必殺技の再現が不可欠だったんですよ。
　
――た、たしかに“ガリバーチンポ”はストーリー上な要素ですが……アレは技なんですか!?
柳沢：父親が息子に託した、一子相伝の必殺技じゃないですか。少年マンガ的展開としては王道ですよ。
　
河井：それだけじゃないんですよ。“ガリバーチンポ”は、原作者のなかま亜咲先生が、実際にご自身のお父さんから教わった秘伝奥義なんだそうです。
　
――マジですか（驚愕）!?
柳沢：ちなみに、“美容室プリンス”は沖縄県某所に実在していて、なかま先生のご実家なんです。お母さんが美容師さんなんだそうですよ。アニメ版でも真の“美容室プリンス”の写真をいただいて、それをそのまま再現しています。ロボットマンガに突如美容室が登場する時点で不思議に思ったでしょ？　それは、なかま先生の出自に原因があったんです。
　
原作では実際に美容室の“美容室プリンス”と、防衛組織の巨大ビル“美容室プリンス”、どっちも存在していて両者に特に関係はないんですが、アニメ版では美容室の地下に防衛組織があるという設定にアレンジしています。『秘密戦隊ゴレンジャー』とか『マイティジャック』みたいに、美容室の隠し通路から防衛組織に行けるようになっています。さすがにNGかとも思ったんですが、許可していただけました。今後、沖縄の“美容室プリンス”にお客さんが殺到したら、僕らの貢献を思い出してもらいたい（笑）。
　
――うーん、“チ○ポ”が“ティンポ”になったところで、“健全”からはかけ離れている気がしますが。そもそも、『健全ロボ　ダイミダラー』の“健全”って、どこが“健全”なんですかね？
柳沢：「己の心に正直である」ということでしょう。作中のキャラクターにしても制作スタッフにしても、誰ひとりとして、お仕事だからとか建前とかで行動しておらず、正直に動いています。だから、これ以上ないほど健全ですよ！
　
河井：制作スケジュール以外は健全です。
　
柳沢：シナリオが早くに上がってきたもので、「タイムリミットギリギリまで粘って、いいものを作ろう！」としているんですよ（笑）。作品の熱とかテンションというものは、ギリギリでみんながヒーヒー言っている非常に不健全な……いやいや、健全な！　そういう状況から生まれてくることもあるので。映画やOVAのように比較的スケジュールに余裕のある仕事とは異なる、TVシリーズだからこそ生まれ得るパワーですね。こうやって、河井くんを追い詰めることで、彼がHi-ERo粒子をバッと放つのを狙っているんですよ（笑）。
　

　


©なかま亜咲・eb刊/ペンギン帝国