REPORT / Koji Nakamura『Epitaph』
試聴会 ナカコーが語る、新作『Epit
aph』制作背景。そしてDAW時代、アク
セス・モデル時代における音楽表現の
在り方
2014年発表の『Masterpeace』以来およそ5年ぶりとなる今作は、ストリーミング・サービスにて同名のプレイリストとして発表されてきた楽曲をコンパイルしたもの。同プレイリストは楽曲の追加や入れ替え、更新も行われるなど、発表してからも変化を続けるといった特殊な、そして今日的なアウトプットの手法でも話題を集めた。2016年に発表されたKanye West『The Life of Pablo』ともリンクするその形態は、音楽を取り巻く環境がドラスティックな変化を遂げる昨今において、これまでの常識、「当たり前」を打ち壊すかのような姿勢を感じさせた。
「歌っていうのはおもしろいぞっていうことに気づいた」「自分でも意外。超意外。やりながら『意外だな』って思ってた(笑)。でも、それが心地悪いものではなかった」と続ける。検証を重ねた結果、ある種ミニマルな構造となった今作では、歌を大切にすることがそのまま楽曲の強度に繋がるということに辿り着いたのだという。「バンド・サウンドだったら歌はごまかせるけど、こういう作風だとごまかせない」。
「(DAWからスタートした)madeggくんとかは、最初からルールがない。思い描いたものをすぐに形にできる」「madeggくんから来たデータには解明できないようなやつが結構あって。例えば、『テンポは130です』って言って送ったデータが、『129』とかで返ってきたりして。それをこっちで検証するんです。これは間違いなのか、それとも意図的なのか。意図的なものはもちろん取り入れて。たまに『ここはミス?』って聞いてみたりすると『ごめんなさい、そこはミスです』って言われたりする(笑)」。戸惑いながらも新たな感性と交わった、今作の制作背景が伺えた。
「若い世代とコラボすることで、自分の価値観を再構築しようとする意図があったのではないか?」との有泉の問いには、「(彼らの)感覚だけはわかった。でも、その感覚を自分の血肉にするのは全くの別物。彼らと一緒に制作していく中で生まれてくるモノが自分の身になる」と、今回の制作における成果についても言及してくれた。
また、プレイリスト企画として始まった『Epitaph』然り、SoundCloudでの音源発表然り、ストリーミング・サービス以降、激的に変化した制作とリリースの関係性。果たして、それは今後どのように発展していくのだろうか。ナカコーは最後にこう話した。「もはや制作とリリースがセットになっている。作っている僕ら、それこそmadeggくんたちもそう考えている。あとはそれを売る側、レーベルだったりメディアだったりがその想いにどう応えていくか。それが今後おもしろいことになっていくかどうかに繋がるんじゃないかな」。有泉は思わず「……頑張ります」と真摯に返答し、思わず来場者から笑みが溢れる。
トークは短いながらも、切り口も鋭く、随所で深い考察が飛び交っていた。今作『Epitaph』以降、ナカコーがどのような動きを見せるのか、今から楽しみで仕方がない。
Koji Nakamura 『Epitaph』
Label:Sony Music Labels Inc.
Tracklist:
1. Emo
Lyrics by Arita shohei
Music by Koii Nakamura
2. Lotus
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
3. Wonder feat. Ryugo Ishida & NENE
Lyrics by Ryugo Ishida & NENE / Arita shohei
Music by Koji Nakamura
4. Reaction Curve #2
Lyrics by ACO
Music by Koji Nakamura
5. Open Your Eyes
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
6. Influence
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
7. Hood
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
8. Sense(3:44)
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
9. Being
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
10. 1977
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
11. Night
Lyrics by Arita shohei
Music by Koji Nakamura
12. No Face feat. abelest
Lyrics by abelest
Music by Koji Nakamura
※Produce, programming & editing by Kazumichi Komatsu (Madegg)
■ Koji Nakamura オフィシャル・サイト(http://kojinakamura.jp/)
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