向井理、念願の赤堀雅秋作品で主演「
ノーガードで打ち合う覚悟です」 舞
台『美しく青く』

劇作家、演出家、映画監督、俳優とその才能を多方面で発揮している赤堀雅秋の作・演出作品『美しく青く』が2019年7月11日(木)からBunkamuraシアターコクーンにて上演される。赤堀作品はこれまでシアターコクーンで14年に『殺風景』、15年に『大逆走』、17年に『世界』と3作品上演されてきたが、いずれも赤堀らしい鋭い人間描写が光りながらも、それぞれに異なる作風を観せて観客たちを驚かせてきた。2年ぶりとなる新作は、仮設住宅を舞台に繰り広げられる人間模様を描く作品となる。主人公の“どこにでもいる青年”を演じるのは、数多くのドラマや映画に出演すると同時に、舞台にも継続的に出演している向井理。赤堀作品への出演はこれが初となる向井に、今の心境を聞いた。
ーーまず、この舞台の話を聞いたときの、最初の感想を教えてください。
元々赤堀さんの舞台はたくさん観る機会があって、とにかく演劇として面白くて、どんな内容か知らなくても「きっと何かある」から観に行こうと思える魅力があります。これまで一緒に仕事をしたことはありませんでしたが、今回も「きっと何かある」と思ったので、内容やキャストは関係なくオファーを受けました。
向井理
ーー赤堀作品のどういうところに面白さを感じていますか。
生々しさです。どこにでもあるようなシチュエーションで、そこで生きている人たちの生活やドラマを勝手にのぞき見ている感じと、それを見ている人たちは他人事だから無責任に笑うことができるという、人間誰しもが持っているシニカルな部分をさらけ出す作品だと思います。そして最終的に破綻した後、その先はどうなるんだろう、と「破壊と創造」という人間の本能的な部分を感じさせてくれるところが赤堀さんらしさかな、と思っています。
ーー共演者に、幅広く個性的な方々が集まりました。
大倉孝二さんは、これまでシアターコクーンで上演された赤堀作品すべてに出演されていますし、最も赤堀ワールドを理解していらっしゃると思います。僕はこれまで大倉さんとは映像でしかご一緒したことがないので、どういうスタンスで舞台に臨まれるのか楽しみです。田中麗奈さんとは、2017年に劇団☆新感線​の『髑髏城の七人』Season風 で共演しました。あのハードな舞台を飄々とやっていて、メンタルがすごくタフだと思います。
ーー今回、向井さんはいろんな人と関わって影響を受けていくという、なかなか大変そうな役です。
大変ですよ、きっと。でも、観に来てくださる方たちに楽しんでもらえるように​、感情をあおったり、喜怒哀楽を感じてもらうために演じる​わけですから、僕自身は楽しもうとは思っていなくて、むしろどれだけ傷つくことができるかが重要だと思っています。赤堀さんの作品が面白いと思うのは、出ている人が傷ついているからだと思うし、だからノーガードで打ち合うくらいの気持ちではいます。

向井理

ーー数年に1回程度のペースで舞台にご出演されていますが、向井さんにとって舞台出演とはどういうものですか。
修行ですね。何を得られるのか、具体的なことはわからないですけど、段々と怖いものはなくなっていきます。僕にとって舞台は、やりたいとかやりたくないとかじゃなくて、やるべきものだと思っています。今回のような会話劇は、公演中いかに新鮮にセリフをやりとりできるかが大事だと思います。慣れてしまうとダメになっていきますし、毎回リセットしないといけないので、メンタル的にキツいです。2016年に出演した舞台『星回帰線』のときも平田満さんと共演したのですが、1公演終わると平田さんの役のことを嫌いになって、でもまた次の回が始まるときには好きにならなきゃいけなくて、ということを繰り返していたので精神的に不安定でした。
ーー今作は、赤堀さんの作品を知らなかったり、舞台自体をそんなに見慣れていなくても、向井さんが出ているからという理由で見に来る人もいると思います。
2010年にNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』に出た直後の2011年に『ザ・シェイプ・オブ・シングス~モノノカタチ~』という舞台に出演したのですが、最低な役柄だったので、観に来て下さったほとんどの方が僕を嫌いになって帰っていきました(笑)。観に来てくださる事はとてもありがたいことだと思っていますが、俳優個人を見に来るということはあまりお勧めしません。
今回の舞台は、何気ない日常の中で生きている人たちの話なので、いろんな人に刺さるものになればいいなと思っています。舞台は、特にこういう会話劇だと、生身の言葉で紡いでいくしかないので、舞台にしかできない、生ものだからこその鮮度があります。同じものは2度とないですから、1回きりの息遣いや空気感をどれだけお客さんに伝えられるか、毎回が勝負ですね。

向井理
向井は映像作品において強い存在感を示しているがゆえに、どうしても一般的には舞台に出演しているイメージが浸透していない。しかし、赤堀作品を追い続けていたり、出演舞台1本1本に全力投球であったり、舞台にその身を捧げる姿勢はまさに真摯な舞台人だ。「観客を楽しませるために」という思いを胸に赤堀ワールドでひたすら傷ついていく向井の生き様を、ぜひ多くの人に劇場で体感してもらいたい。

ヘアメイク:晋一朗
スタイリスト:外山由香里
取材・文=久田絢子 撮影=池上夢貢

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