FINLANDS塩入冬湖が語る超濃密なEPに
込めた想いとそこから見つけ出した新
たなトゲとは

前々作『LOVE』ではバンドとしての視野が広がり、考え方はより柔軟になり、前作『BI』はその広がった視野の中で、改めて自身と向き合あったことで大切なものを見いだし、勢いと共にそれを“生き生き”と曲に反映させたFINLANDS。『BI』の世界観を伝えるワンマンツアーはソールドアウト。さらに勢いを増した二人が取り組んだのは4曲入りEPだった。『UTOPIA』と名付けられたEPに込めた思い、今後のFINLANDSが進べき道を、全ソングライティングを手がける、Vo&Gの塩入冬湖に聞いた。
FINLANDS 塩入冬湖(Vo.G)
――大切な位置づけのアルバム『BI』を作り、ワンマンツアーを成功させた後にくる『UTOPIA』というEPに込めた思い、そしてなぜEPだったのか、そこから教えて下さい。
『BI』を作ったことで、自分自身が今まで以上に正直になっていたと思います。だからこそ迷いが生じたのだと思うし、伝えたいことはたくさんあるのに、それをなかなかまとめることができず、難産でした。何をどういう形で、世の中に出すのかは、音楽でも色々とあると思いますが、その手法も全部一から考える時間が少なかったです。私たちは毎年夏にフルアルバムを出しているので、冬にも何か出したいという話をしていたら、スタッフからEPを提案されて、でもそもそもEPって何?というところから始まって、EPというものの定義に対して、迷いがありました。
――結果的に塩入さんの中で EPとはどういうものとして理解し、『UTOPIA』を作ったんですか?
私が曲を書いていて、いい曲だと思うけどこれを EPに入れるのは違うんじゃないかと思う曲が何曲もあって、すごくわめき散らしていると(笑)、メンバーが、いいと思ったらそれを作って、冬湖がいいと思うんだったら、それを4曲入れればいいからって言われて。そういう意味ではメンバーに救われました。過去の作品も入っていますが、新しい曲2曲は EPに入れたいと作っている時点で決めました。FINLANDSとしても新しいと思えるもの、これだってひらめいたものを入れました。「UTOPIA」という曲を作ったときに、すごくいい曲だなって思って、この曲を軸に色々な曲を作ろうと思いました。シングルってシングル曲がタイトルじゃないですか、そのイメージがすごくあったので『UTOPIA』をタイトルにしました。
▼UTPOIA トレーラー

自分では生きづらくて仕方ないですけどね
FINLANDS 塩入冬湖(Vo.G)
――「UTOPIA」は頭からすごくキャッチャーで、一度聴くと耳に残って、ライヴやフェスでリスナーの心をガシっとと掴みそうです。でも詞を読むと深いし切ないし、不思議な感覚になります。他の曲の歌詞も、悲しみが迫ってくるようで、せつなさを感じます。
最初自分ではキャッチーさを見出せなかったんですけど、バンドできちんと曲になったときに、キャッチーな部分がある曲だなと思いました。『BI』は誰もが持っている二面性を歌っていましたが、『UTOPIA』という作品全体に流れているのは、強烈な孤独というか、強烈な一人を4曲を通して描いているものだと思っていて。それは自分の中にあるものだし他人と関わっているからこそ、大勢の中の存在しているからこそ、孤独って絶対あると思うんですよね。ずっと一人だったら孤独ということも感じないと思う。強烈な優しさや、圧倒されるような面白さの中にいると、一人というものがもっと浮き彫りになってくると思いますが、私のことをわかってくれないからとかではなく、ただ本当に存在している孤独を歌いたくて。なので今仰っていただいた、迫ってくるような悲しさとか切なさが、如実に出ているのかなと思いますね。
――相変わらず鋭いトゲもあって、いい意味で捻くれていて、FINLANDSの“音楽の強さ”が前面に出ているEPだと思います。
それ、すごく嬉しい言葉です。よく言われるんですけど(笑)、自分では生きづらくて仕方ないですけどね(笑)。
――「call end」は畳み込むような疾走感もあって、言葉も多くて「UTOPIA」とは一転、という感じです。
結局そこは「UTOPIA」と繋がっていると思っていて、一人きりでいることもすごく好きなんですけど、やっぱり孤独だな、誰かと一緒にいたいなって思う瞬間ももちろんあって。私は音楽を作って生きているので、いい曲ができていいライヴができたという満足感は、何かに変えることがすごく難しくて、それは音楽だけではなくて、仕事をされてる方、学生さん、みなさんにもある感覚だと思います。そういうのを自分が無理やり恋愛や娯楽で紛らわそうとしていると感じることがあって、それでも紛れないんですよね。その孤独感や不安は変わらなくて、他人にすがろうが何をしようが、変わらないことは自分が一番わかっていて。だから何かに悔やんでしまってもいいかなと思って。一人でいることが悪いことではないし、誰かを好きになることが悪いことではないし、もうちょっと一人という孤独感や不安を、どこかでわかってほしかったんでしょうね。
――「UTOPIA」で言いたいことはとりあえず言って、一旦落ち着いたんだけど、でもやっぱりまだ言い足りないなって歌ったのが、「call end」という感じがしますね。
やかましいやつみたいですね(笑)。でもこの2曲は、全然違う曲なんですけど、私の中ではすごく似ていると思っていて。わかってもらってどうするんだっていうことって、あると思いますけど、何かわかってもらいたいと思うことがあって、わかってもらいたいと思う相手とは、未来があると思っているんですよ。それは友人でも恋人でも。わかってもらいたいと思うと、幸せだけでじゃうまくいかないと思うんですけど、それがすごくユートピア=桃源郷に繋がってくると思っていて。
――確かなものを見いだせない時、せめてわかってよ、という感覚はありますよね。
最悪わかったふりでもいいんじゃないかなって思う時、ありますよね(笑)。

遠隔で支配しようとしている感覚って自分にもあって
FINLANDS 塩入冬湖(Vo.G)
――「天涯」は1stアルバムに入っている曲ですが、またこのタイミングで光を当てようと思った理由を教えて下さい。
この曲は、その当時好きだった人のことを思って書いた曲で、書いたときのことははっきり覚えていますが、、でも今自分が作る曲と、出てくる言葉とかが全く違うなと思って。それが私にとってすごく新鮮で、面白くて。「UTOPIA」という曲ができた時に、1stアルバムは廃盤になっていて、もうこの曲を聴ける方法がないので、今入れたら面白いんじゃないかなと思いました。
――4曲で濃厚な短編小説みたいですね。
言葉が大事なアルバムだなとは思います。
――「衛星」は配信シングルとしてリリースされていて、ファンの間で人気が高い曲ですよね。グッとくる曲です。
そうなんです、この曲を好きと言ってくださ方が多くて、最初は入れるつもりはなかったんですけど、自分で作っておいてなんですが、グッとくる曲なので、「『UTOPIA』にお前も入っていいぞ」って(笑)、晴れて収録されることになりました。入り口は精神的な支配というか、そういう男女の関係について書いていたんですけど、時間が経って聴いてみると、ただそれだけではなく、今の自分自身も、バンドのことや自分がやっていることを、過保護に守ろうとしすぎてしまう節があって、それがいいことばかりではなく、遠隔で支配しようとしている感覚って自分にもあって。それがすごく煩わしくなってしまって、それで<衛星を離れていこう>と歌うことで、自分でグッときたという…。この曲は録音し直していて、ほかの3曲よりも向き合う時間が結構あって、その間にメンバー間でこうしたい、ライヴではこうしたいとか、色々な話をしてからの再レコーディングでした。自分で作ったものに対して、色々な解釈が生まれてくるんですよね、時間が経ってくると。その中で作ったので、パッケージされた時に、スタートラインが「衛星」だけ早いので、これからもっと色々なことを感じていくと思います。

ライヴをやるのが苦痛で仕方ない時もあって
FINLANDS 塩入冬湖(Vo.G)
――濃度の高いEPを作ったあと、次なる作品はすでに頭の中にありますか?
次、何を作りたいのかは、全然決まっていませんが、曲はたくさんできているので、その中で徐々になくなってきたトゲみたいなものって、本当は知らないところでもう少しトゲがあったな、みたいな、再度トゲをみつけて、それを見せることはしたいです。人は年を重ねてくると、徐々に丸くなっていくものだと思いますが、あえて尖る必要はないですけど、誰も気づいていないけれど、もっともっとトゲみたいなものを出していけたら、美しいんじゃないかなと思います。そこに新しい発見があると思っています。
――『UTOPIA』が2019年第一弾音源になりますが、今年もライヴが多そうな一年ですが、どんな一年にしたいですか?
去年『BI』を作ったときにお話させてもらったように、FINLANDSとして焦りというものがなくなったんですよね。なので、自分のペースで作りたいものを作っていきたいなという、ただの希望なんですけど(笑)、そう思っているのと、年々ライヴが好きになっていいます。本当に年々好きになっていて、20代前半の頃は、ライヴをやるのが苦痛で仕方ない時もあって、でも今すごくライヴが楽しみで。制作活動ももちろん力を入れたいし、増え続ける一方の曲達を、色々なところで放出する時間を設けていきたいです。作品を作れば作るほど埋もれていく曲もあるので。でもそういう曲って、ライヴで聴けば好きになる曲って私はすごくあるんですよ、他のアーティストでも。そういうことを、今年はもう少しやっていきたい。
――ライヴの動員も右肩あがりで、自分達が手繰り寄せたかったものが、どんどん手元に来ている感覚はありますか?
すごくあります。何が自分の手元に来ているのかって、色々あると思いますが、ライヴでいうと、例えば自分が学生時代に憧れていたバンドとライヴができることは、すごく手元に手繰り寄せられたことだと思います。でも、ふと考えた時に、自分がコンスタントにCDを出せていること自体が、手繰り寄せられていることだと思うんですよね。その作品に関して自分はすごく満足していて、でもこれでFINLANDSが満足し切っているわけではなくて、その時その時に、すごく満足するものを作ることができています。なので、バンドでCDを出して活動している中で、行きたい場所に少しずつ行けるようになっていることが、手繰り寄せていることにに繋がっていると思います。
FINLANDS 塩入冬湖(Vo.G)
取材・文=田中久勝  撮影=三輪斉史

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