すべての感情を肯定するロックミュー
ジック。片桐航インタビュー

新世代の王道ロックバンド「Lenny cod
e fiction(レニーコードフィクション
)」が1stアルバム『Montage』で鳴らす
音と言葉とは?フロントマンの片桐航に
インタビュー

「誰だって、いろんな顔がある。さまざまな感情がある。そのすべてがあなたで、後ろめたく思う必要なんてない」

ロックバンド「Lenny code fiction(レニーコードフィクション)」のVo.&Gt.片桐航はファーストフルアルバム『Montage』にそんな想いを込めた。
Lenny code fictionのルーツは明快だ。90年代に爆発的な広まりを見せた、日本のロックミュージック。メロディやサウンドはキャッチーで、一聴して「カッコイイ!」と思えるもの。
前回のインタビューでは、中2の頃、校内放送で聴いた「L’Arc~en~Ciel」からすべてがはじまったこと、高校時代には地元滋賀のライブハウスで200本以上のライブをこなし研鑽を積んだことなど、バンドのルーツについて話を伺った。

その文脈を受け継ぎながら、彼らは90年代生まれならではの感性で新しい音と言葉を乗せる。
1stフルアルバム『Montage』はこれまでにリリースしたシングルや、ライブで何度も披露され磨かれてきた選りすぐりの楽曲が収録された渾身作であり、「Lenny code fictionとはどんなバンドなのか」を伝える1枚である。

このアルバムに込められた思いや制作背景について、全曲の作詞作曲を手がける片桐航に話をきいた。

Photography_Reiji Yamasaki
Interview&Text_ Kenta Baba

ひとつの感情だけではもったいない。

――『Montage』は、1枚を通じてどんなアルバムに仕上がりましたか?
片桐 : 全曲、シングルで出せるぐらいのクオリティの曲を入れようと決めていたので、どこから聴いてもらっても自信のある1枚になりました。


――新しくアルバムに収録した曲はどのように制作したのでしょうか?
片桐 : アルバム用につくった曲は1つもなくて、もともとすべて完成していたものを収録しているんです。ライブでも何度も演奏して精度を高めてきたものを厳選しています。


――アルバムタイトルの『Montage』は、映画好きな片桐さんらしい良いタイトルだなと思いました。どのような意味を込めていますか?
片桐 : 「モンタージュ」は映画用語で、いろんなカットを組み合わせてひとつのシーンをつくるという言葉です。


――『Montage』は、1枚を通じてどんなアルバムに仕上がりましたか?
片桐 : 全曲、シングルで出せるぐらいのクオリティの曲を入れようと決めていたので、どこから聴いてもらっても自信のある1枚になりました。


――新しくアルバムに収録した曲はどのように制作したのでしょうか?
片桐 : アルバム用につくった曲は1つもなくて、もともとすべて完成していたものを収録しているんです。ライブでも何度も演奏して精度を高めてきた楽曲も今回収録しています。


――アルバムタイトルの『Montage』は、映画好きな片桐さんらしい良いタイトルだなと思いました。どのような意味を込めていますか?
片桐 : 「モンタージュ」は映画用語で、いろんなカットを組み合わせてひとつのシーンをつくるという言葉です。

モンタージュ(montage)は、映画用語で、視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法のこと。元々はフランス語で「(機械の)組み立て」という意味。映像編集の基礎であるため、編集と同義で使われることも多い。ーWikipediaより

片桐 : 自分のなかの感情、怒りとか感動とか欲とかいろいろあるんですけど、代表的な感情って1つでは言い表せないなと。すべてが自分を構成しているものだし、Lenny code fictionの音楽も曲ごとにいろんな感情が込められているので、そのことを言い表すためにはピッタリだなと思ってこの言葉を選びました。

――片桐さんご自身、特にこうやってお話するときなどはあまり感情的ではない印象があります。

片桐 : そうですね。普段はあまり感情を表に出さないです。

――3人の写真家が片桐さんを撮り下ろした企画では、みなさん一様に「ライブ映像などで観ていたより、やわらかくてニュートラルな人だ」と驚いていました。

片桐 : 「犬っぽい」とか的確な意見をいただいてましたね(笑)。どの撮影も、短時間だけど一瞬で本質を言い当ててもらえて楽しかったです。

主戦場であるライブに連れ出すオープニ
ング

――ここから各楽曲について、特に今回のアルバムではじめて音源化される曲について伺っていきたいと思います。1曲目の「Montage(SE)」はいわゆる登場曲で、とにかくライブに行きたくなりますね。

片桐 : ありがとうございます。これはライブのオープニングでここ1年半ぐらい演奏しているものを入れました。アルバムを聴いて、ライブを感じてもらえたらと思って。

――Lenny code fictionの楽曲は大きく分けて一聴して歌詞の意味がわかるものと、伏線的に何を歌っているのかわからないものがあると思って、2曲目の「Snach」は後者かなと思いました。

片桐 : そうですね。これは宣戦布告的な、聴いている人をこっちの世界に連れ去りたい曲なんですけど、極端な言い方をすると「世の中にかっこいい音楽はたくさんあるから、しょうもないバンドの音楽を聴いてる人はぜひこっちの世界に来てみてはいかがですか」という曲です。

映像から受けた衝撃を、音と言葉に変換
する。

――続いて「Enter the void」はどのような曲ですか?
片桐 : ライブでもいちばん盛り上がる曲なのですが、同じタイトルの映画を観た衝動でつくりあげたものです。
――どういった映画なのでしょうか?
片桐 : 洋画なんですけど、新宿・歌舞伎町が舞台で、性的な表現も多い映画。エロとクスリとネオンと死、みたいな癖の強い作品なのですが、いわば映像芸術ですね。ストーリーうんぬんではなく、映像の見せ方、発想が斬新で、衝撃的でした。


――そういった映画を観たときって、言葉やメロディが浮かんだりするのでしょうか?
片桐 : 具体的な何かが浮かぶわけではないんですど、胸のなかに衝撃だけが残るんです。こんなにいいものを観たのに、そのまま自分のところだけで留めておくのはもったいない!って気持ちが湧いて、衝動のままに曲作りをやるイメージです。


――たとえば片桐さんが映画監督だったら、映像という形でオマージュなのか、そのシーンをとりいれた映像をつくるような。
片桐 : まさにそう思います。ミュージシャンだから、映像で得た衝撃や衝動を音楽の形でアウトプットする作業ですね。特に「Enter the void」はそうです。なので歌詞も曲をつくって、一発で出てきた言葉を入れています。

誰だって、熱量は持っている。

――「欲を纏う」は、聴いていてハッとさせられる歌詞が印象的でした。

「だいたい人は肝心で貴重な衝動も覆い隠して それが持つ熱まで自分で冷まして見えない」 ー「欲を纏う」より

片桐 : もともとこの曲は、タイトルも歌詞も違ったんです。ライブでいちどやってみたら反響がよくて、もっと音に対して自由に言葉を乗せたいと思ってアレンジしていきました。

――音源になるまでに、ライブを経て楽曲が変化していくことも多いのですか?

片桐 : はい。ライブでやれば音としてどのように受け入れられるかが1発でわかるのと、メッセージもまずは現場に出してみてからより精度が高まることが多いですね。

――ちなみに元のタイトルは?

片桐 : 「アンダーカバー」です。好きなブランドの名前でそのまま(笑)。

――でも確かに、好きなブランドの服を着ることって、言い換えると「欲を纏う」ことかもしれないですね。

片桐 : もともと「纏う」って言葉が好きで。日本語ならではの上品さと奥底に何かが眠っている感じがして。

――「欲」に関しては、前回のインタビューでも片桐さんを構成するひとつの要素としてフレーズが挙がっていましたね。

片桐 : 自分自身に関しては、欲を纏っていないと、存在価値が無いと思っているんです。
――欲望が薄れた時期もあったのでしょうか?


片桐 : 19-20歳ぐらいのときですね。高校生まではただただ音楽に打ち込んでてバイトも死ぬほどやっていたのが、ひとり暮らしをはじめてから遊ぶことを覚えて、県外の友だちも増えて、何も気にせず毎日ただ楽しいことを追い求めるような生活をしていました。

――そこからどのように踏みとどまったのでしょうか?

片桐 : わかりやすく太りはじめて、たしか今より10キロぐらい増えていました。音楽活動もコンスタントにやっていたのですが、いざ自分で自分の曲を聴いたときに全然よくなくて。

――音楽から完全に離れてしまっていたわけではないのですね。

片桐 : 傍から見ればものすごくダラけている、ってわけではなかったですけど、自分のなかでは全然だめでしたね。

――そういった経験もあっての「欲を纏う」。

片桐 : 自分も放っておくと、欲がなくなったり流されてしまうことにそのとき気づきました。絶対、誰しも熱量は心の奥底にあるとおもうんですけど、意識して燃料を投下してあたため続けないと、行動をどんどん起こさなくなってしまうなと。
片桐 : 熱量に差はなくて、みんな、どこかに眠っているだけだと僕は思っています。今日何をしたいか。何を食べたいか。何を纏うか。どこへ生きたいか。明日をどうしたいか。しっかり自分が意識して理解していかへんとなって思います。


――欲を纏い続けるために工夫していることはありますか?

片桐 : 「いまの現状では出来ないこと」に目を向けて、それをモチベーションにしています。単純にいえば、武道館でまだライブはできないし、壮大な曲をつくりたくても作れない。でも、ひとつずつ要素を揃えていけば出来るようになることを思い浮かべて、そのための今を詰め込んでいくようにしています。

――「いま出来ないこと=実現したい目標」みたいなものですかね。

片桐 : そうですね。場面場面のゴール。できないことが出発点で、その間を埋めることに集中するようにしています。でも、はじめはとにかく「できないこと」をちゃんと意識して見つめるようにすることが「欲」を持つための鍵かなと思います。

本当になにもしない人は、ロックすら聴
かない。

――「Vale tudo【MAKE MY DAY】」も聴いていて駆り立てられるような曲ですね。
片桐 : 音のフレーズ的にも、音楽をはじめた頃に近い17-18歳のUKやガレージロック的で、メッセージ的にもその頃感じていたことを込めています。

「脳ミソと足動かして行動をとってんだ今も 放置されたお前の人生とは真逆 Day by day」 ー「Vale tudo【MAKE MY DAY】」より

――これも20代には刺さる言葉だと思います。

片桐 : 挑発的ですよね(笑)。いまはあんまりこういうことは考えないですが、高校生の頃は反骨心だけで生きていたので、そのくらいの時期に完成した価値観ですね。
――ひとつ気になったのが「典型的な臆病者は既にこんな曲なんか聴かない」というフレーズ。急に自分のことを言われるようでドキっとしました。ここはどのような意味ですか?


片桐 : たとえば、俺は行動してるけどおまえは座ってるのかよってことをうたってるんですけど、マジでなんもせえへんやつは、ロックもきかないし、もっとぬるぬる生きてるから、これを聴いてるひとは、すでに可能性がある。1歩目を踏み出してるっていう意味ですね。

――なるほど。ちょっと安心しました(笑)。後半の『Ruby’s Day』はまさにザ・名曲!といった構成ですごく耳に残ります。

片桐 : いろんなシングルのカップリングやアルバム収録曲を最終的にあわせると、8話完結で全部ストーリーがつながっている、みたいなことをしていて、『Ruby’s Day』はその1話目です。出会った瞬間の一目惚れの気持ちですね。

――ということはここから2話3話と続いていくわけですか?

片桐 : いえ、もうすでに出ている曲もあって。同じく『Montage』に収録されている「オーロラ」は7話目ですね。

――おお〜面白いですね。

片桐 : あとは2話と3話、6話も出ています。

――スターウォーズ的な!

片桐 : まさしく!

――これは言ってしまって良いことなのですか?

片桐 : 歌詞カードのなかにヒントを入れ込んだりしていてどの曲が何話目かを気づいている方も多いと思います。

――「オーロラ」は別れがテーマで、7話目と聞いて納得がいきます。

片桐 : これは2年前にはできていて、メンバー全員が気に入っているので1stアルバムに絶対に入れたいと思っていた曲です。ラストナンバーの「Twice」も、順番も含めてこれしかないという曲です。いろんな感情を表現したなかでも最後に伝えたいことが込められています。

「ずっと昔憧れた毎日じゃないけど 知らなかった日々を手にして 大切なものが変わってく」 「離れてしまっても何十年経っても 思い出すだけで覚えてるだけで 輝くこの日を忘れない」 ー「Twice」より

作ること、作られることの輪の中で。

――アルバム全体を俯瞰してみると、2つの曲タイトルに同じフレーズ「Make My〜」が使われています。“自分のなにかをつくること”はLenny code fictionを語る上で欠かせないキーワードでしょうか?

片桐 : まさしく、バンド結成当初からグッズにも「We make〜」「We made〜」といった言葉を入れていて、鍵になる言葉だと思います。根底にあるのは、自分たちがつくった曲を聞いた人が、何かをつくって、それをまた僕らがみてつくりかえすみたいな、そういう「作る」「作られる」の輪のなかにいるんだなという思いはずっとあります。
――そういった言葉、循環を意識することになったのは何かきっかけがありますか?
片桐 : デビューして、ファンレターなどの手紙を読んでるうちに、いい言葉をつかうひとがいるなーとか、すごい発想やなーとか、全然知らん考え方、発想が入ってきたことが大きいですね。


――ファンレターも、影響を受ける作品のひとつなのですね。

片桐 : そういうとちょっとかっこ良すぎる気もしますが(笑)、映画とおなじで、自分が知らない経験を知るのが好きなんです。手紙の中に、いま何歳で、学生で、とか、どんな職業についてて、それ故の悩みとかが書いてあると、小説を読むみたいにひとりの人生が入ってきて、新しい経験だなと思いました。

――最後に、冒頭の話に戻りますが、『Montage』について、「人にはいろんな感情があって、ひとつに絞るのはもったいない」と仰っていたことについて聞かせてください。なぜそのような発想に至ったのでしょうか?

片桐 : 今回のアルバムを制作していくなかで、強く感じたことなんです。自分たちがこれまでにつくってきた曲を眺めて、「どの瞬間の感情も自分なんやな」って認識することができました。

曲をつくった当時は「悔しさ」とか「楽しさ」とかひとつひとつの感情があって。アルバムとしてひとつの作品にする作業を通じて、悔しさも悲しさも怒りも、すべてが肯定されていったような気がして。
片桐 : 誰でも、その瞬間の、すごい怒ってしまったとかも、悲しくて弱くなって泣いてしまったことも、自分の感情に忠実に沿っただけやから、全然いいんじゃないかなって思うんです。

人ひとりにはいろんな側面あるし、どういう人と関わるかでも、変わってくるし。「自分を好きになれない」とか「自分って何なんやろ」とか思って何か苦しい思いをしてる人がいれば、このアルバムを通じて、どんな自分でも、どんな感情でも大切な自分なんだと肯定してもらえるようになると嬉しいなと思います。

Lenny code fiction 最新リリース情報

1st ALBUM『Montage』

11月14日(水)発売
収録曲(CD)
01 Montage(SE)
02 Snatch
03 Enter the Void
04 Key-bring it on, my Destiny-
05 欲を纏う
06 Vale tudo 【MAKE MY DAY】
07 Make my story
08 Colors
09 Ruby’s day
10 Flower
11 オーロラ
12 Twice

収録曲(DVD)※初回生産限定盤のみ
01 「Key -bring it on, my Destiny-」Music Video
02 「Flower」Music Video
03 「Colors」Music Video
04 「Colors」Music Video -jacket ver.-
05 「Make my story」Music Video

最新LIVE スケジュール
Lenny code fiction LIVE TOUR 2018-2
019 ”Montage”

チケット全公演共通/前売り¥2,500(オールスタンディング・税込み・ドリンク別)

<SCHEDULE>
2018/11/15(木)東京 duo MUSIC EXCHANGE<ワンマン>
2018/11/25(日)滋賀 U☆STONE<対バンあり>
2018/12/1(土)神奈川 横浜Bay Jungle<対バンあり>
2018/12/2(日)千葉 千葉LOOK<対バンあり>
2018/12/8(土)栃木 宇都宮Hello Dolly<対バンあり>
2018/12/9(日)埼玉 西川口Hearts<対バンあり>
2018/12/14(金)兵庫 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎<対バンあり>
2018/12/15(土)広島 Hiroshima CAVE-BE<対バンあり>
2019/1/19(土)福岡 DRUM SON<ワンマン>
2019/1/26(土)大阪 梅田Shangri-La<ワンマン>
2019/1/27(日)愛知 ell.FITS ALL<ワンマン>


Lenny code fiction 公式サイト
Lenny code fiction Twitter
片桐航 Instagram

すべての感情を肯定するロックミュージック。片桐航インタビューはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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