音楽とアートの超鬼才・山脇紘資って
?香取慎吾の美術展に参加

音楽とアートの超鬼才・山脇紘資(ook
k)って?香取慎吾の美術展に参加

何はともあれ、これから紹介する3つのツイートと画像を見てほしい。

それぞれ映っているのは、沢尻エリカ、峯田和伸(銀杏BOYZ)、香取慎吾新しい地図)。

そして沢尻エリカの隣で少しシャイな表情を浮かべ、峯田和伸に美術指導を行い、香取慎吾の隣で笑顔を浮かべている男性が、山脇紘資(やまわきこうすけ)。

端正な顔立ちの彼は、なぜ名だたる女優やミュージシャン、タレントと肩を並べ、写真に写っているのか。彼は何者なのか。そんな謎が沸いては来ないだろうか。

彼はロックバンド・ハグレヤギ(2017年解散)の元メンバーであり、現在は芸術のオープンソースと呼ぶべきプロジェクト”ookk”(オウケイ)を始動している。また、香取慎吾が主宰するアート展『NAKAMA de ART』にも、アーティストの1人として出展している。

しかし、彼の才能はこれまであまりにも注目されて来なかった。率直に言って、知られていなさすぎる。その才能にさらなる脚光が当たらないのは、(少なくとも個人的には)おかしいとすら思う。

というわけで、本記事では、美術家・音楽家の山脇紘資を紹介したい。

Text_Arato Kuju

音楽家としての山脇紘資(ookk)

音楽家としての山脇紘資のキャリアは、高校時代のベッドルームでのセッションからスタートした。2008年に山脇が美術大学に進学したのを機に、ロックバンド・ハグレヤギの前身バンドが始動。翌2009年にハグレヤギを正式に結成している。

ハグレヤギはおよそ6年間の活動を経て、2015年に「制作期間」に入り活動を休止、2017年2月12日に解散。その後1年半を経て、山脇紘資と、ハグレヤギのドラム・小杉侑以(こすぎ・ゆうい)らを中心にスタートした新たなプロジェクトがookk(オウケイ)。

山脇紘資の音楽家としての最大の魅力は、一度聴いたら絶対に忘れられないほど印象的な人懐っこいメロディーと、激しさとソフトさを兼ね備えたハイトーンボイス、そしてサウンドメイクのセンスの良さ。ハグレヤギ時代の楽曲は、ギター、ドラム、ベースという最小限のシンプルな構成ながら、声の響かせ方ひとつ、ギターの響かせ方ひとつで楽曲に多彩な表情が与えられていた。歌詞の言葉選びやオノマトペ使い、「どんな時だってそばにいるからね」というような定型的な言葉を臆面もなく堂々と使ってみせるセンスにも注目。とにかくあらゆる面でクレバーだ。
(ハグレヤギ『アパート』MV)

山脇紘資が現在注力しているookk(オウケイ)では、ハグレヤギ時代のギターサウンドに加えてエレクトロな要素も付加。ライブではエレキギターやドラム、ベースに加えて、KORGやiRigのシンセサイザー、サンプラーなども使用される。新メンバーも加わり、さらに曲の幅が広がっている。

スピッツ×ポストパンクなギターロッ

(ハグレヤギ『海がくる』MV)

ハグレヤギの代表曲『海がくる』には、先に紹介した山脇紘資の楽曲の魅力が余すところなく詰め込まれているといっても過言ではない。シンプルなバンド編成で奏でられる美しくも儚いメロディー。英語やスペイン語には絶対に訳すことができないであろう、日本語で歌われる曲だからこそ心に響くサビの絶唱。アウトロの強烈なノイズギター。

メロディーだけを取り出せばスピッツのようでもあるし、アウトロの激しい演奏を取り出せばPublic Image LimitedやThe Smithsのようでもある。スピッツ×ポストパンクとでも言うべき、ともすれば食い合わせが悪そうな両者を、絶妙なバランス感覚で美しく同居させている。はっきり言ってしまうが、個人的にこの『海がくる』という楽曲もまた、あまりにも知られていなさすぎる名曲だと思う。

曲のクオリティにも、演奏のクオリティにも文句がつけられない。それでも、2018年7月15日時点で、同曲のYouTubeでの再生回数は2.8万回。筆者はこの1年半で100回弱はこの曲を聞いた。そういうヘビーリスナーにとって、この「2.8万回」という数字がどれだけもどかしいものに見えるかは推して知るべし……。素晴らしい曲が埋もれてしまうということは、言いようもなく悲しい。良いものは「良い」ともっと評価されるべきだ。音楽だけでなく、どんなジャンルでも。

解散前ラストインタビューをミーティア
で実施

2017年1月、ミーティアは解散直前のハグレヤギにラストインタビューを実施している。
彼らの解散を、公式ウェブサイトのリリースを参考に「事実」として伝えたメディアはあっても、インタビューを通じてその理由に迫ったメディアはミーティアだけだった。素晴らしい若手音楽グループが1つなくなってしまうという悲しい事実と向き合い、どうして彼らがそのような状況になってしまったのかを掘り下げるメディアがまだまだ少ないことにも、個人的には悲しみを感じる。

このインタビューを振り返ると、山脇紘資の発言には「インディー魂」があふれている。

元ハグレヤギのメンバーは現在、大井町にある一軒家を自分たちの手でリノベーションし、シェアスタジオとして使用。創作活動の拠点としている。創作活動を続けられる場がないのなら自分たちの手で作り出すしかない。山脇紘資の発言からは、危機感のようなものに裏打ちされた「コミュニティづくり」「場作り」への関心が感じとれる。

環境を作るのって、すごく大事じゃないですか。 僕は大学生のとき、そのことを良く分かっていなくて。 (中略) 「環境ほど、得るのが難しいものはない」と――先生の言っていた意味が、身に染みて分かりますね。環境というのはアトリエのような空間だけでなく、人もそうですよね。環境を作るのも、環境を維持するのも本当に大変です。 でも、その環境を作れない人は一生這い上がれないんじゃないかとも感じています。だからこそ、漆喰塗るのは大事なんです。 (『ハグレヤギが語る「規律と自由」〜解散前ラストインタビュー〜』) 

美術家としての山脇紘資(ookk)

2012年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業し、2014年に東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了している山脇紘資。このように書くと超絶エリートのように感じられるかもしれないが、実は彼は、美術大学入学までに4浪しているのだ。山脇紘資は音楽活動だけでなく、学生生活でも悔しい思いを何度も味わってきた経験を持つ苦労人だ。

美術家としての山脇紘資の特徴は、主に油絵による細密画。題材にはフクロウや犬といった動物が選ばれることが多く、作品のほとんどは顔のアップ。つまり、動物らしいジャンプなどの躍動感がある動きは一切描かれず、フォーカスされるのはその顔面のみ。何種類もの真正面から描かれた動物の絵を目の当たりにすると、普段自分の目に見えている世界とはまた違う形の世界が浮かび上がってくる。

また、山脇紘資は、油絵具以外の画材の採用にも積極的。特に代表的なのは鉛筆画だ。以下の動画では、圧巻の鉛筆画によるライブペインティングが見られる。
(鉛筆画『ライオン』)

映画「猫は抱くもの」美術監修、香取慎
吾『NAKAMA de ART』に出展

山脇紘資は、2018年6月23日に公開された映画『猫は抱くもの』(監督・犬童一心 主演・沢尻エリカ)の美術監修を担当している。

元アイドルで妄想好きの沙織(沢尻エリカ)と、自分を人間だと思い込む猫の良男(吉沢亮)の関係を描く同作。山脇紘資が監修を手掛けた美術は、同作に登場する売れない画家・ゴッホ(峯田和伸)の登場シーンで主に使用されている。冒頭に紹介した2つ目のツイートは、彼が峯田和伸へ美術指導を行なっている際の一コマだ。

さらに山脇紘資は、2018年5月24日から6月24日まで期間限定開催された香取慎吾主宰の美術展『NAKAMA de ART』にもアーティストの1人として出展。今秋にはルーヴル美術館での個展開催も決まっている香取慎吾とともに現代アート空間を構築。香取慎吾を含む全14人のアーティストによる打ち合わせや会場でのペイントの模様の一部は、新しい地図のYouTubeチャンネルにアップロードされた動画で閲覧可能。
(『NAKAMA de ART』打ち合わせ〜ペイント。赤いブルゾンを着ているのが山脇)

ookk(オウケイ)とは?

この『NAKAMA de ART』で行われたライブペイントのBGMとして、山脇紘資のあたらしい音楽活動・ookk(オウケイ)の『MENOU』が使用された。この曲を聴いた香取慎吾の反応は「え、これめっちゃいいじゃん」というものだったそう。

実はインディーズ音楽が大好きだという香取慎吾。twitterでは新しい地図ファンのあいだで、Abema TV『7.2 新しい別の窓』(ななにー)での香取慎吾とookkの共演を望む声が上がっている。

ookkは、実はバンドでもグループでもなく、1つの”タグ”でしかない。一定のルールを守れば誰もがookkのタグを使用して作品を発表することができるという、極めて開かれたプロジェクトだ。つまり、ookk『MENOU』もまた、ookkというタグがつけられて発表された幾多の作品の中の1つということ。

ookkの活動コンセプトと、彼らが定めるクリエイティブのルールというべき「12のテーマ」は以下のリンクから読むことができる。

ookk/puzz-le 12theme/12のテーマ
ookkは、2018年7月14日に東京・渋谷にある「RUBY ROOM TOKYO」で初のライブを行った。いくつかの機材トラブルに見舞われるも、『MENOU』を含む全5曲を演奏。特に珠玉のバラード『love』は必聴だ。
全5曲はいずれもエレクトロ要素を持ちつつ、エレキギターのカッティングやドラムの心地よいハイハット、ベースラインが冴え渡るギターロックとしての一面も持つ。過去に山脇紘資がフロントマンを務めたハグレヤギのギターロックの要素を引き継ぎつつ、さらに独自の進化を遂げた音像に仕上がっている。

香取慎吾も絶賛するookk『MENOU』は20
18年必聴のチューン

ここまで紹介してきたように、山脇紘資は音楽家としても美術家としても圧倒的な才能を持っている。しかし、彼の才能はこれまであまりにも知られていなかった。

だが2018年に入り、確かなセンスを持つ人のところへと、彼の才能は届き始めている――香取慎吾、沢尻エリカ、峯田和伸、犬童一心。しかし、それでもなお彼はその才能の大きさに対して知られていなさすぎる。まずは一度、『MENOU』を聴いてみてほしい。
(ookk『MENOU』MV)


ookk『ookk room』@RUBY ROOM TOKYO 2018年7月14日
セットリスト
1. MENOU
2. Lurgee
3. toto(仮)
4. TILT
5. love

イベント情報

展覧会『ookk/puzz-le』

アーティスト: ookk
山脇 紘資、鈴木 秀尚、渡辺 聖介、坂爪 康太郎
会期: 7月14日(土) – 8月25日(土)
時間: 13:00 – 19:00
休み: 日曜日、月曜日 および 8月9日より8月20日
会場: FARO Kagurazaka | 東京都新宿区袋町5-1
URL: http://faroaoyama.com/gallery/1928

ROCK PARTY『Getting Better~Birthda
y Party’18~』

(※Day.2に出演)
9.22(土)23:30〜@「下北沢CLUB 251」
Getting DJ:片平実/鹿野淳/神啓文/TAISHI IWAMI/斎藤雄/Amy
Guest DJ:中野”RIOT”敬久
Opening Live Act:ookk
VJ:Ajuka/Shun
《前売》2,000yen(+500yen:1drink or+1,500yen:飲み放題)
《得割》500yen Off w.24時までにご来場/22才以下(要身分証提示)/当日のライブ半券持参/団体(5名以上)/MUSICA最新号綴じ込みハガキ持参
6.25(月)~Getting Better Web予約前日まで受付


山脇紘資
オフィシャルサイト
Twitter

ookk

音楽とアートの超鬼才・山脇紘資って?香取慎吾の美術展に参加はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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