(C)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

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【映画コラム】綾瀬はるかをいかに美
しく、魅力的に見せるかに力を込めた
『今夜、ロマンス劇場で』

 映画の中から現実世界に現れたお姫様(綾瀬はるか)に恋をする映画の助監督(坂口健太郎)の姿を描いた『今夜、ロマンス劇場で』が好評を博しているという。
 本作の時代設定は映画黄金時代の昭和35年。その割には、撮影所の点描や、『ローマの休日』(53)のパロディー、北村一輝演じる大スターのデフォルメされた姿などは稚拙で、思わず失笑させられるところもあるのだが、この映画は、モノクロからカラーになった綾瀬はるかをいかに美しく、魅力的に見せるかに力を込めたものなので、背景は二の次だったのかもしれない。
 また、若い観客は、虚構と現実が交錯する恋愛話はアニメやゲームで慣れているので、この荒唐無稽な話もすんなりと受け入れることができるのだろうし、中年以上の観客は、加藤剛が演じる助監督の老境が描かれるのを見て、涙腺を刺激されるのではないかと思う。その点はなかなか巧妙に作られているのだ。
 ところで、映画の中の人物が現実に現れるさまを描いたのは本作が初めてではない。『キートンの探偵学入門』(25)では映写技師が現実とスクリーンの中を行き来するし、『ボギー!俺も男だ』(72)では、ハンフリー・ボガートのそっくりさんが映画から出てきてウディ・アレンに恋の指南をし、そのアレンの監督作『カイロの紫のバラ』(85)では、ジェフ・ダニエルズ演じる映画の中の探検家が、外に出てきて人妻のミア・ファローと恋に落ちる。ただ、いずれも映画と現実を行き来するのは男性なので、今回は映画の中から女性が出てくるところに新味がある。
 また、現実と非現実のはざまで展開する、時を超えた恋愛という点では、『幽霊と未亡人』(47)や『ある日どこかで』(80)があるが、どちらも年を取るのは女性の方で、男性は若いまま。この点も今回は逆になっているのが面白い。
 レンタル店などを利用すれば、本作のアイデアの基になったであろうこれらの映画は簡単に見ることができる。本作が気に入った人は、見比べてみるのも一興だろう。(田中雄二)

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