IN FOR THE KILL、国産エクストリー
ム・メタルの新たな究極形

10月25日に発売を迎えたIN FOR THE KILLのデビュー・アルバム、その名も『IN FOR THE KILL』が、エクストリーム・メタル愛好家たちの間で早くも絶賛の声を集め始めている。
IN FOR THE KILLは、INA(稲本剛章:vo)、RYO SUKE(市川亮介:g)、TOMO(鈴木友博:b)、TORU(渡邊 徹:ds)による東京を拠点とする4人組で、結成は2013年にさかのぼる。INAはそれまで7年にわたりMETAL SAFARIで活動しており、DEATH FILEやSURVIVEでの活動歴を持つRYO SUKEは現在、BAT CABEの一員でもある。結成以降、あくまで地道なライヴ活動を重ねてきた彼らは、これまで『DEMOS 2014』と題された2曲入りの無料配布CD以外には公式音源を発表してこなかった。今回はまさに、満を持してのアルバム・リリースということになる。
本作『IN FOR THE KILL』に収められている全11曲は、バンド結成当初からごく最近に至るまでに作られてきた楽曲群のなかから選りすぐられたもの、ということになる。そうした意味においては過去4年ほどの集大成ということになるが、その経過のなかで各楽曲には当然ながらさまざまな変容も生じている。メンバーたちが異口同音に認めるのも、「ベスト選曲であると同時に、すべてが変化を踏まえながら2017年度版にアップデートされている」ということだ。
彼らの音楽は、伝統的なヘヴィ・メタルでも典型的なスラッシュ・メタルでもなく、ハードコアの激烈さとメタルの整合性やテクニカルさを併せ持った、いわば真の意味でのオルタナティヴ/ミクスチャー。しかもそこにはポジティヴな怒りが溢れており、そうした部分については往年のPANTERAなどにも重なる部分が感じられる。そして彼らが本作をレコーディングするにあたり特に重視したのが「音のクオリティを保ちながら、ライヴ感を追求すること」だった。近代的なテクノロジーの力を借りながらの完璧な整合性ではなく、むしろ人力による生々しいグルーヴが突き詰められているのだ。だからこそ彼らは録音作業にもライヴさながらのエネルギー消費量をもって挑み、1曲録り終えるたびその場に倒れ込むぐらいに各曲に全身全霊を注ぎ込んできたのだという。ある意味、オールドスクールなやり方ではあるだろう。しかしこのアルバムに、古くささは感じられない。
加えて特筆すべきは、INAが日本語で歌っているという事実だ。あくまで英語的なリズムで歌われているため、歌詞カードやリリック・ビデオなどを見るまで日本語だと気付かない人たちもいるはずだが、彼は歌詞についての自身の考えを次のように述べている。
「母国語でこそ言いたいことを書き尽くすことができるし、それを誰かに英訳してもらって、噛み砕けていないまま歌うことにも抵抗がある。もちろん英語で歌う人たちに対してネガティヴな感情は皆無だけども、ここ日本においても他のジャンルの歌は、ヒップホップですらも日本語で成立している。確かにジャパニーズ・メタルのなかにもそうしたバンドはいるけども、こういったエクストリームなメタルを日本語でしっかり成立させているバンドというのを、少なくとも俺は知らない。その可能性を追求してみたいという想いが、自分としてはある。それを確立できたときに、やっとこういったスタイルの音楽が日本人のものになり得るんじゃないかと思えるんです」
少なくとも現在のIN FOR THE KILLにとって、INAの日本語での感情表現が重要なアイデンティティのひとつになっていることは間違いない。加えてRYO-SUKEをはじめとする他のメンバーたちも、歌詞のニュアンスを温度差なく把握できることによって、演奏上でも感情の一致を求めやすくなっていることを認めている。また、このデビュー・アルバムについては、ウクライナ出身のアーティスト、Nurgeslagの手によるアートワークも評判になっている。これまでにROTTING CHRIST、BALFOR、BATUSHKA、NORDWITCHなどの作品を手掛けてきた彼は、バンド側の意向や歌詞の大意も踏まえたうえで今回の作業に取り組んでおり、彼の手によりバンドのロゴも一新されている。
彼らは12月1日には東京は東高円寺・二万電圧にて、アルバム発売記念のライヴを行なうことになっており、これがバンド史上初のワンマン公演となる。また、それに先駆けてのイベント出演などもいくつか控えているが、なかでも11月4日、5日の両日に東京・吉祥寺CLUB SEATAで開催される『JAPANESE ASSAULT FEST 17』には注目したい(IN FOR THE KILLの出演は4日の公演のみ)。彼らのアルバムの発売元であるスピリチュアル・ビーストの主催による恒例のこのイベントには、アメリカ東海岸の伝説的バンド、THE RODS(なんと初来日!)をはじめ、世代も国籍も異なる屈強なバンドたちが集結する。その場において、日本の新時代を切り拓くべきIN FOR THE KILLがどんな“殺気”を感じさせてくれるかにも注目したいところだ。
取材・文◎増田勇一
■1st Full Album『IN FOR THE KILL』


2017/10/25発売

IUCP-16274 ¥2,571+tax

1. Chaos

2. Serpent From Hell

3. Berserk Song

4. Buried Alive

5. I Am A Stranger

6. Asphalt Mountain

7. Spit Out The Bait

8. War Comes

9. Born To Be A Killer

10. Nucleus

11. In For The Kill

■<「IN FOR THE KILL」リリース記念ライブ「IN FOR THE KILL ONE MAN」>


12月1日(金) 東京都・東高円寺二万電圧

開場 19:00 開演20:00

前売り¥1500+1D 当日¥2000+1D

■<JAPANESE ASSAULT FEST>

11月4日(土) 東京・吉祥寺CLUB SEATA

11月5日(日) 東京・吉祥寺CLUB SEATA

開場 14:00 開演15:00

前売り¥8000+1D 当日¥8500+1D

特典付き2日通し券¥14000+1D(×2day)

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