取材:石田博嗣

スーパーマンじゃない7人が奮闘してい

「ムーンライズ カーニバル」はFUNKISTらしい、ライヴで盛り上がりそうな曲ですね。

染谷
ありがとうございます。僕らのひとつの目標に“夏フェスに出たい!”というのがあるんですけど、今年になっていくつかの夏フェスに出れるようになったんで、その会場にいるみんなと一緒に楽しめる曲っていうのをテーマに作りました。でも、ただ楽しいだけだと意味がないから、“お前のままでいいんだぜ! 自分らしくいこうぜ!”っていうポジティブなメッセージも込めて。

この曲以外にも何曲か作ったのですか?

染谷
“ライヴでガンガンに盛り上がる曲を作ろうぜ!”って最初に作った曲が「ムーンライズ カーニバル」なんです。いつもなら僕が作詞作曲したものをバンドに持って行くんですけど、今回はセッションしながらメンバー全員で音を出して、ベーシックなトラックを作ってから、そこにメロディーと歌詞を乗せるっていう、いつもと逆の作り方をしたんですよ。だから、1曲に全部込めたっていう感じがすごくありますね。極端な話、CDで聴いてるだけだと“ここのセクション、いらなくない?”っていうところもあるかもしれないんですけど、ライヴで聴けば“これか!”って納得してもらえると思います。頭で考えるんじゃなくて、感覚で“うわっ、これ、超カッコ良い!”って思ったものをどんどん重ねていったんで。
ヨシロウ
“ここではタオルを回そうぜ”とか“ここで横に動こうぜ”とか、そんな話ばかりしてましたからね(笑)。
染谷
だから、粗いって言えば粗いんですけど、それがこの曲の味になっているというか…出来上がりを聴いてみて、“ほんと、俺たちらしいものができたな”ってすごく思いましたね。

歌詞に込められているメッセージも、“悲しい過去も涙の夜も どれか一つ欠けてたら 今俺らここにいないんだぜ!!”とナーバスなものも受け入れた上でポジティブなことを言っていますよね。

染谷
もともと僕自身が強い人間じゃないし、すぐに落ち込んだりするから、“なんとかなるぜ! 俺についてこい!”っていうのは歌えないんですよ。自分の中でリアリティーが持てないんで。それはバンドのメンバーも一緒で、ギターヒーローに憧れているのに成りきれないギタリストだったり、スーパーマンに憧れているけど成れないヴォーカリストだっていうのは重々分かっているんで(笑)。きっと、僕らだけじゃなくて、みんなも会社や学校で嫌なことがあったり、いろいろあると思うんですよ。でも、ライヴで“うわ?、楽しい! 音楽最高!”って一緒に盛り上がれているというのは、それがあったからで…きっと、どれかひとつでも欠けてたら、そのライヴの場にはいないと思うんですね。僕は“今日笑うために、あんな嫌なことがあったんだ!”と思っているので、それを出だしの歌詞で言ってるんですよ。あと、“へい! Mr.オンリーワン”って頭で言ってるのは、“お前がどんなに弱かろうが、強かろうが、醜かろうが、お前の代わりはお前しかいないんだよ”っていうことで。例えばライヴで一緒に盛り上がってくれていたら、盛り上がっている“お前”の代わりは誰にもできないわけだから、ライヴでも“お前はそのままでいいんだよ”っていうことを伝えたくて…
ヨシロウ
そのメッセージを僕たちはFUNKISTとして伝えるわけだから、僕らも精いっぱい僕ららしくいるというか、“俺はこれでいんだ!”って自信を持ってステージの上で演奏したいですね。
染谷
そうだよね。何かを演じてたり、カッコ付けて舞台に立ってたら、絶対に言えないメッセージだし、曲だと思いますね。

また、付属DVDの内容が興味深いのですが。4月に行なわれた南アフリカツアーがダイジェストで入っているんですよね。それだけFUNKISTにとっては、南アフリカでライヴをやることに意味があると?

染谷
僕らは“肌の色や髪の色、言葉とかって大した問題じゃない、音楽でみんなつながれるんだ!”ってことをずっと言い続けているんですけど、そのメッセージが南アフリカで届かなかったら意味がないと思ってるんですよ。南アフリカって人種問題ですごく傷付いている国なんで、その場所に行って、そこで奏でた音楽によってみんなが笑ったり、肩を組んだりすることができれば、音楽の可能性ってほんとにすごいって思えるというか。だからこそ南アフリカでは失敗できなかったのに…あんまり言うとネタバレになってしまうんですけど、実は2ステージやったうちの1ステージ目が全然ダメだったんです。自分たちの想いがまったく伝わらなくて…みんな落ち込んだし、泣いたし、パーカッションのオガチとは“2ステージ目もダメだったら、もう音楽を続けることはできないかも”っていう話までしましたからね。“たかがライヴ1本失敗したぐらいで?”って思われるかもしれないけど、南アフリカで音楽を届けるっていうのは、僕らにとっては音楽生命を懸けてやるぐらいの価値があるんですよ。

すごく意味のあることなんですね。

染谷
今回で2回目だったんですけど、毎回、南アフリカはぶん殴られるような出来事がありますよ。心を開いてほしかったら、自分らがむき出しでやらないとダメだってのを改めて教えられた気がしました。きっと1ステージ目がダメだったのは、メジャーデビューもして、いろんなライヴをやってきたから、僕らの中で無意識のうちに“大丈夫だろう”っていう気持ちがあって、“ちゃんと弾こう”とか“カッコ良く観せよう”みたいな意識があったんだと思うんです。でも、いざライヴをやってみたら、まったく無反応だったっていう。だから、そんな着飾っているものを全部脱いで、裸になってライヴしないと届かないよって話し合ったんです。それこそ“自分のままでいい”っていうか…僕らよりも上手いミュージシャンはいっぱいるけど、“音楽が好きで仕方ない!”っていう気持ちは誰にも負けないって、7人がその気持ちだけを持って舞台に上がったら、みんな前に来てくれて、すごく盛り上がってくれて…だから、日本に帰った後、空気感だったり、挑む姿勢だったり、ライヴが全然変わりましたよ。このDVDでは、そんな南アフリカの人たちに音楽が伝わっていく瞬間が観れると思います。
ヨシロウ
ほんとだったら盛り上がっているところだけ使えばいいんだろうけど、FUNKISTとして伝えるんだったら、そこを伝えないと。
染谷
そこがリアルな部分ですからね。スーパーマンじゃない7人が奮闘しているという(笑)。そういう意味では、このDVDも含めて、実に僕ららしい作品に仕上がりましたね。
FUNKIST プロフィール

01年に結成。染谷西郷(vo)、宮田泰治(g)、ヨシロウ(g)、春日井陽子(flu)、JOTARO(b)、オガチ(per)、住職(dr)からなる7人編成。日本のみならず、南アフリカ、アジア、インドなど、世界中所狭しと駆け回り、年間100本を超えるライヴを繰り広げてきた生粋のライヴ・バンドである。

染谷の故郷でもある南アフリカ仕組みのビートフルなリズムに染み入るメロディー&リリックが混ざり合い、ジャンルの壁を超えたFUNKIST独自のスタイルを生み出した。些細な日常の様子から世界中の様々な問題までを等身大の自分達で表現するその音楽は“笑顔あり”“涙あり”聴く人の心を掴んで離さない。そんな彼らのオーディエンスを巻き込んでのライヴは、老若男女問わず人と人を繋げ、国境も超えられる程の熱い想いで地球規模の大切なメッセージを伝えている。

08年4月、SHIBUYA-AXにて開催されたワンマン・ライヴで大成功を収めたことが皮切りとなり、5月に催された『9条世界会議ヒロシマ』では6,000人を超える観衆を前に圧巻のパフォーマンスを披露。そして7月には、<ポニーキャニオン>より1stシングル「my girl」でメジャー・デビュー。09年7月に10-FEET主催の『京都大作戦 2009』へ参戦、サブ・ステージながら1,000人以上を集客するなどしてFUNKIST旋風を巻き起こした。FUNKIST Official Website
公式サイト(レーベル)

OKMusic編集部

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