THE NOVEMBERS『At The Beginning』。混迷の時代に響くはじまりの歌
では、終わったものとは何か? それはたとえば、強烈なインスダストリアル・サウンドを突きつける「理解者」の、<何だって知ってるし分かってる/俺のことを/俺よりも>、<あんたが噛んでたものばっか食ってたら/歯が抜けた>という歌。あるいは冷たいビートで反復を繰り返す、「New York」の<過去はくれてやる>、<賞味期限切れのファンタジー>というリリックから想像できるかもしれない。小林祐介(G&Vo)は本作について、「コロナ禍で浮き彫りになったいくつもの問題への眼差し、そこからの再解釈、新しい始まりの意を込めた」と表明している通り、未来を歌う本作には必然的に古くなった価値観への離別が存在する。強烈なノイズには否定の力があり、我々を縛りつけてきた悪しき風潮を退けようという意志を感じるのだ。