ミュージックソムリエ協会では、「こんな時に聴きたい音楽!」ということで、日常のヒトコマで、ふっと聴きたい音楽を選曲しました。選曲はすべて、ミュージックソムリエ(http://musicsommelier.jp)によるもの。
お店の閉店時間に流れる音楽といえば、「蛍の光」が定番です。でも、もっと他にも閉店時間に似合う曲もあるはずでは・・・?!ということで、今回はカフェの営業終了時間に流れると良さそうな曲を選んでみました。ポスト「蛍の光」を探せ!ということで選曲した5曲をどうぞ。

1.「We’re all alone」/ Boz Scaggs

“Close the window, calm the light. And it will be all right ~窓を閉めて灯りを落として、そうすればすべてはOK” 
ボズ・スキャッグスの1976年のアルバム『シルク・ディグリーズ』のラストを飾るこの曲は、“We’re all alone ~僕たちふたりだけ”と歌うドラマチックなラヴ・バラードです。
カフェの閉店時間には「あ、このイントロが流れると終わりだな」と思わせる印象的なフレーズも欲しいところ。カフェによっては閉店時間も様々ですが、風営法などとの兼ね合いで遅くても夜の11時頃までには終わるところが多いかと思います。夜も更けてこのピアノソロが流れ始めると、あとは深夜に向かって大人の時間。バーへ流れてほろ酔い気分を味わうか、家に帰ってそれぞれの時間を過ごすのか。カフェの閉店時には、大人の時間への入口を感じる曲が似合うかなと選んでみました。
(選曲・文/阪口マサコ)

2.「奏(かなで)」/スキマスイッチ

スキマスイッチの代表曲。常田真太郎が奏でる最初のピアノの音だけで、それと分かる名曲です。静かな入りから大橋卓弥のボーカルで聴かせ、だんだんと盛り上がる構成は、感性が豊かで、心に訴えるものがあります。
カフェの閉店時間に流れると似合う曲という今回のセレクト。「蛍の光」が店内で流れ始めると”今日も一日が過ぎた”という気持ちになるかと思います。この曲の静かなイントロ にも、同様の感想を抱く方も多いのではないでしょうか。「奏(かなで)」は、2004年にシングルとして発表されて以来、多くの人に愛されて歌われています。発表から10年以上が経過し、J−POPとしても定番曲の位置にいる曲です。多くの人に親しまれていて、かつ一日を振り返るような気持ちにさせてくれる曲なので、カフェの閉店時間にふさわしいのではないでしょうか。
(選曲・文/Kersee)

3.「ナイアガラ・ムーンがまた輝けば」
/ 大滝詠一

アジア的な懐かしいエスニック感満載のオーケストラに導かれて始まるイージーリスニングな楽曲。別れの名残惜しさと、"またお会いしましょう"という親しみやすさが感じられる私的愛聴曲であった為、紹介させていただきました。最後のアガっていくギターから、山下達郎氏が録音したという滝の音に移行してフェイドアウトする部分で最高の盛り上がりをみせます。
ここで何度も繰り返し再生ボタンを押してしまうんです。
(選曲・文/田中孝典)

4.「Don’t Take Your Time」/Roger
Nichols & The Small Circle Of Frien
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かつての日本では渋谷系という、日本発祥のジャンルを確立した時代がありました。特に90年代の邦楽シーンで一大ムーブメントを巻き起こした、ソウルやテクノなどの要素をオシャレに内包した音楽です。とにかくオシャレです、カフェにもバッチリ合います。そんな渋谷系の元祖とも言える、Roger Nicholsとその仲間たち—雑ですみません(笑)—からこの名曲を。渋谷系のアーティストはほとんどこの方々の影響も受けているのではないでしょうか。
イントロからオシャレに突っ走ります。透き通った歌声もなおオシャレ度をグングン上昇させます。「君への愛を貫き通す、愛はこれからも続くよ!」「これ以上待てない、僕を待たせないでくれ!」というメッセージもキュンキュンすると思います。かの山下達郎も「これを嫌いな日本人はいないだろう!」と言ったとか言わなかったとか。全体を通してPizzicato Fiveの名曲、「大都会交響楽」にメロディが似ているなあと思う方もいらっしゃるかもしれません。この曲が元ネタでしょう、きっと。とにかく閉店前最後の曲としてオシャレに締めくくることができるでしょう。短めの曲なのでなお良いかと。
ちょっと皮肉めいた裏メッセージとしても使えるかもしれませんね、「Don't Take Your Time」ですから。仮に気づかれたとしてもジョークとして捉えていただくために、嫌味なくこの曲を流したいものですね(笑)。
(選曲・文/片山明憲)

5.「I say,」/JiLL-Decoy associatio
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閉店時間の音楽というと、お客様への「もうすぐお店を閉めさせていただきますよ」というご案内を、なるべく柔らかい気持ちで受け取っていただけるものが望ましいですね。
今回おススメしたいのは、クロスオーヴァー・ジャズ・ユニット「JiLL-Decoy association(ジル-デコイ・アソシエーション)」の名曲 ”I say,”。ヴォーカルの chihiRo(チヒロ)さんがお兄さんの結婚式のために作った曲ということで、すでにウェディング業界ではBGMとして人気ですが、
「今日も 同じ家に 二人で帰れる幸せに 感謝してます」という歌詞の一節に表れているように、「ああ、そろそろ家に帰らなきゃな~」という気持ちにさせてくれる温かさに満ち溢れています。ゆったり穏やかでありながらスタイリッシュなサウンドも、カフェというシチュエーションにピッタリの曲です。
(選曲・文/伊藤威明)

6.「Auntie’s Lock/Infinitum」/Fly
ing Lotus Feat. Laura Darlington

実験的かつ先進的な音楽をリリースしているイギリスの老舗テクノレーベル、Warp Recordsで存在感を放ち続けるFlying Lotus。叔父が20世紀ジャズの巨匠、John Coltraneというとんでもない家系の中で育った彼はデビュー以来、ジャズの要素も大胆に取り入れたヒップホップ、エレクトロニカを発表し続けています。常人では考えられないような強烈なビートと複雑なリズムが曲を支配し、圧倒的な音像を生み出しています。
…と言いつつもこの曲はFlying Lotusにしては非常に落ち着いているミニマルな曲です。らしさを挙げるとすれば刻み込まれたビートが鳴っているところでしょうか。何となく気だるさや浮遊感も感じてきます、ぼやーっとするような。頭の中がニュートラルな状態になります。カフェの雰囲気にも溶け込んでいくような気がします。
メロディにも注目です。「Infinitum…」とミニマルに歌い続けるボーカルのLaura Darlington。歌声が何となく学校のチャイムのような…。時間の区切りを伝えているようで、閉店のお知らせをするのにはいいかなあと。
ちなみにFlying Lotusは相当な親日家です。私はSonarSound Tokyo 2011で彼のライブを初めて観たのですが、その時彼はドラゴンボールの恰好をしていました(オレンジ色の、背中に◯亀のやつです)。現時点での最新アルバム、『You're Dead!』の中でも日本を代表する某格闘ゲームの人気女性キャラの声がサンプリングされていたり…。本当に日本が好きなんだなあと、何だかほっこりしてしまいます。
(選曲・文/片山明憲)

著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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