『ZERO』/DEAD END

『ZERO』/DEAD END

その後のJ-ROCKの基点にもなった
DEAD ENDの歴史的名盤『ZERO』

バンドアンサンブルの妙味

DEAD ENDがどれだけ偉大なバンドであるか随分と回りくどい説明をしてしまったが、こんな拙文、駄文よりも、何より音源を聴いてもらえればDEAD ENDのすごさは即実感できる。彼らの音源には俗に言うビジュアル系バンドのアプローチが全て入っている。具体的にはバンドアンサンブルの妙味だ。若いリスナー──特に所謂ビジュアル系アーティストのファンで、DEAD ENDを聴いたことがないという人がいるなら(それはそれで実はとても幸せなことではないかと思うが)、騙されたと思って一度DEAD ENDを聴いてみてほしい。「この雰囲気はあのバンドに似ている」と思う楽曲がいくつもあると思う。

1stアルバム『DEAD LINE』、2nd『Ghost of Romance』辺りまでは所謂ハードロック、ヘヴィメタル的なサウンドメイキングが色濃くはあるものの、ギターはアルペジオを意欲的に取り入れていたり、リフにしてもストロークを細かく刻んでいたり、単なる力技で迫っている印象が皆無である(この辺りは80’Sニューウェイブ、取り分けポジティブパンクの影響下にあるのではないかと邪推できる)。ギターソロも長いものが多いが、いずれもメロディアスで嫌味な感じがない。そのボトムを支えるリズム隊は概ね疾走感を演出する効果を発揮している。手数が多いドラムはいい具合にやや突っ込み気味、一方、ベースはギターの音数が少ない時は積極的に楽曲を引っ張り、ギターが派手なナンバーはしっかりとリズムをキープしており、どの楽曲も絶妙なグルーブと緊張感を生んでいる。

また、アラビア音階やコード面ではテンションノートを取り入れているところも聴き逃せない。これにより、ロックバンド特有のダイナミズムばかりでなく、オリエンタルな雰囲気や、肉体的なカタルシスとは別の叙情感を醸し出している。あえて言葉にすれば“耽美”や“妖艶”といったことになるだろうか。80年代後半に、少なくとも当時のキッズが熱狂していたライヴハウスシーンには、そんなバンドはDEAD ENDの他には居らず、そのサウンドをリアルタイムで聴いた者にとってはトラウマにも似た体験になって当然だったであろう。

OKMusic編集部

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