L→R 桜井 賢(Vo&Ba)、坂崎幸之助(AG&Par)、高見沢俊彦(EG)

L→R 桜井 賢(Vo&Ba)、坂崎幸之助(AG&Par)、高見沢俊彦(EG)

【THE ALFEE インタビュー】
50年経ったバンドの矜持を、
このシングルで出している

今年結成50周年を迎えたTHE ALFEEが通算72枚目のシングル「鋼の騎士Q/Never Say Die」をリリースした。すでにお聴きになられた方も多いだろうが、両曲ともにエレキのアプローチの中にも、しっかりとアコースティックサウンドの存在感を示したナンバーである。3人の歌声を含めて、まさにTHE ALFEEにしかできない新たな名曲の誕生と言えよう。

今回は今風にリニューアルした
ケルティックサウンド

「鋼の騎士Q」はタイトルこそヘヴィメタルを思わせますが、サウンドはその真逆とも言えるケルティックなサウンドです。まず、こういうサウンドとなった経緯を聞かせてください。

高見沢
この楽曲は『グランマの憂鬱』というドラマの主題歌でありまして、そのオファーが来てから制作しました。僕は原作のコミックをすでに読んでいたので、イメージしやすかったですね。舞台となる山間の村を取り仕切るグランマの物語という世界観、孫との丁々発止のやりとりとか、その村のイメージから異国情緒を出せたら面白いかなと思い、ケルティックサウンドにしてみました。

原作の地方感みたいなところから、民族音楽寄りのアコースティックサウンドが出てきた感じですか?

高見沢
そうですね。やっぱり懐かしいイメージですかね。あと、僕らもそういったサウンドは以前から結構好きで、今までの作品で言うと「無言劇」(1980年3月発表のシングル)とか、そういうちょっとフォルクローレ調なものをやっていましたので、今回は今風にリニューアルしたケルティックサウンドを僕らふうにやってみようと思いました。ケルティックサウンドに坂崎のアコースティックギターと桜井のヴォーカルを入れたらドラマのイメージに合うかなと思った次第です。

毎回、取材をさせていただく度にTHE ALFEEというバンドのすごさをひしひしと感じているのですが、それは今回もそうで。例えば、若いバンドがケルティックサウンドをやろうとした場合、エレキギターを持っていた人がアコースティックギターに持ち替えたり、弾ける人を客員にしたりすることもあると思うんですけど、THE ALFEEには坂崎さんがいらっしゃるという。

高見沢
坂崎はアコースティックギターの名手ですからね。実体はポンコツですけど(笑)。
坂崎
ポンコツ名手です(笑)。

坂崎さんの「鋼の騎士Q」の最初の印象は?

坂崎
高見沢の作るサウンドには以前からこういう部分がありました。今本人も言いましたけど、今までも「無言劇」とか「エルドラド」(1994年10月発表のシングル)という曲があって。キョンキョン(=小泉今日子)へ提供した「木枯しに抱かれて」(1986年11月発表のシングル)とかもそうですよね。だから、久々に“懐かしいのが来たな”という感じでした。今回は得意な3フィンガーでしたから、もう一気に弾かせてもらいましたよ。

桜井さんにもおうかがいしたいのですが、この「鋼の騎士Q」はアコースティックギターサウンドもさることながら、私はベースラインのリズミカルさも聴き逃せないと思ってます。いいベースラインですよね。ベースが楽曲全体にいいうねりを与えている。

桜井
そうなんですよ。だけど、ベースのノリとヴォーカルのノリが逆なので、これは実際、ステージで演奏するとなると結構難しい(苦笑)。
高見沢
キーボードでベースラインを作るので、これを歌いながらベースを弾くのは至難の業だと思う(苦笑)。
桜井
食ってるところを食わないで歌うっていうのがね。リズムが複雑で難しいんですよね。

レコーディングはともかく、桜井さんにとってはライヴが大変なんですね。

桜井
そういうことですね。レコーディングはベースを一番最初に録りますから。
坂崎
ライヴに向けて練習し直さなきゃいけない。歌いながらね。
桜井
いや、今回の新曲は2曲とも、すでにライヴでやってるから大丈夫(苦笑)。春のツアーの頭からずっとやってるから、さすがにもう慣れましたよ。
坂崎
観客が知らないうちにやっていて良かったよな(笑)。
桜井
そうそう。まだお客さんが聴いてないですから。テレビで多少聴かれていると思いますが、こういう構成になってることまでは知らないでしょ? 発売されるまでには、しっかり練習できました(笑)。

(笑)。その発言を聞いてもまた“やっぱりすごいバンドだなぁ”とより深く感じてますよ。美声も相変わらずですし。

坂崎
今回のシングルは“桜井さんの声で”というリクエストですから。

そうだったらしいですね。最初は高見沢さんが歌われる予定だったんですか?

高見沢
桜井のメインボーカルがずっと続いてたんで、次作はそろそろ坂崎か俺にしようかと3人で話していたんですけど、ドラマのプロデューサーから“ぜひ桜井さんに歌ってほしい”という要望があったので、ふたつ返事でOKしました。その後、本人に“またお前な”って伝えたら、最初は怪訝な顔をしていました(笑)。
桜井&坂崎
あははは。
高見沢
“えっ、何で!?”って桜井に詰め寄られたので、“いや、実はね、プロデューサーからのたっての要望があった”からと伝えたら“それなら仕方がないな”ってまんざらでもない顔になりました(笑)。
坂崎
“それなら致し方ないよね”って(笑)。
桜井
あははは。致し方ないですよね。

「鋼の騎士Q」はケルティックサウンドではあるんですが、聴き進めていくと間奏で中東風なエレキギターが入ってきて、ハードロック、プログレ的な展開になったり、アウトロではワウペダルを使ったような奏法も聴こえてきます。やっぱりエレキも重要というか、“こういうものが出てきてこそのTHE ALFEEだろう”という感じがありました。

高見沢
ちょうどその時、Creamの「White Room」を聴いていて、“ワウ、カッコ良いなぁ。今度、使ってみようかな?”って(笑)。

本当ですか!?(笑)

高見沢
本当です(笑)。「White Room」はスタジオ録音盤だと結構ワウが多用されているので、“こういうふうに使うのも面白いな”みたいなね。今、ワウってイコライザーで使う感じの人が多いですからね。でも、Cream 時代のエリック・クラプトンの激しさって言うか、ああいうのもカッコ良いですよね。

では、「鋼の騎士Q」の歌詞について。やはり最初はタイトルからファンタジー路線を想像したのですが、相田みつをや武者小路実篤の人生訓のような内容ですね。

全員
あははは。

これは原作漫画のイメージもありましたかね?

高見沢
武者小路実篤というより、『グランマの憂鬱』というドラマのイメージに思いきり寄せた感じですね。

ただ、《勝ち負けが人生じゃないんだ》とか《比べるなんて無意味なこと/それぞれの道信じて》とか、今までTHE ALFEEが発してきたメッセージに近いですよね。

高見沢
そうですね、グランマとは世代が近いですからね(笑)。グランマの金言っていうんですかね? “喝!”のあとの言葉がグランマの魅力でもありますよね。押しつけがましいお説教ではなく、見守る説得力っていうか、それが『グランマの憂鬱』のひとつのポイントですから、そこをうまく楽曲に活かせたらいいなと思っていました。

楽曲の話からは少し離れますが、バンドをやってる人にインタビューすると“ここまでいっぱい歌詞を書いてきたから、もう書くことがないんです”というようなことをおっしゃる人が時々いらっしゃるんです。高見沢さんはそうした枯渇の焦りみたいなものってないですか?

高見沢
以前はそういう時もありましたけど、小説を書くようになってから、それが良い相乗効果を生んで、自然と煮詰まらなくなりましたね。あと、ずっとアルフィーに対しては客観性を持ってやってきましたから…3人とも歌えるからこそ俯瞰で見ることができるのかなって感じはしますね。だから、歌うことがない、書くことがないということはないなぁ。

自分自身が歌わなくても、桜井さん、坂崎さんが歌えるし、そうであれば、歌詞はこういうタイプで…という想像が効くということですね。

高見沢
そうですね。アルフィーは、A、B、Cって個性豊かな声が3色ありますからね。そういう意味で最強の3人なのかも。
坂崎
高見沢の作る楽曲は、個人的な歌詞じゃないんですよ。“THE ALFEEが歌うのはこういうのがいいだろう”という、常にTHE ALFEEなんです。
桜井
いわゆる作家なんだと思います。これがシンガーソングライターとかになると、自分を出さないといけなくなるから…
高見沢
それはそれで大変です。
桜井
そうなると難しい…。
坂崎
あと、バンドでもね、例えば3人組がそれぞれに曲を書いていたら、みんな自分自身のことを歌うわけですよね。他のメンバーはそれをフォローする。例えばCrosby, Stills, Nashとかね(笑)。でも、バンドの歌というところで歌詞を書いてる人ってあんまりいないんじゃないかな? そこが他と違うところですね。

あぁ、バンドでも自作自演の悪さみたいなものって出ますよね。

坂崎
やっぱりどうしても煮詰まってくるでしょうね。
高見沢
自分のことばかり歌にするのは限界がありますし、煮詰って当然ですよね。
坂崎
そんなに人生経験をひとりでたくさんできるわけがないし(笑)。

20代なんて、そもそも人生経験がないですもんね。

坂崎
なので、“小説を書きなさい”ってことですよ(笑)。
高見沢&桜井
あははは。
L→R 桜井 賢(Vo&Ba)、坂崎幸之助(AG&Par)、高見沢俊彦(EG)
桜井 賢(Vo&Ba)
坂崎幸之助(AG&Par)
高見沢俊彦(EG)
シングル「鋼の騎士Q / Never Say Die」【初回限定盤A】(CD)
シングル「鋼の騎士Q / Never Say Die」【初回限定盤B】(CD)
シングル「鋼の騎士Q / Never Say Die」【初回限定盤C】(CD)
シングル「鋼の騎士Q / Never Say Die」【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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