地球4周半で辿り着いた幸せのカタチ
、Lenny code fiction渋谷ファイナル
にみた未来への断片

Lenny code fiction 7th Single【SEIEN】Release Tour-東京FINAL-

2023.05.07(sun) 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
片桐 航「今日はテーマがあって。ここまでの終わり。そして、今日から始まる。ここが大きな分岐点。ただのツアーファイナルじゃなくて、そういう1日にできたらと思ってます」
2月に発表したシングル「SEIEN」のリリースツアーを開催したLenny code fiction。今回のツアーは、ツーマンとワンマンを交えた全9本が開催されたのだが、冒頭に記したのは、そのツアーの最終日である5月7日(日)、渋谷 duo MUSIC EXCHANGEのステージで、片桐 航が話した言葉である。なぜ、そのテーマを設けるに至ったのか。それはライブの後半で明らかになったのだが、前述の言葉が物語る通り、彼らの強い意志が漲り続ける壮絶なライブだった。
けたたましく鳴る電話の音と、無造作にザッピングしたテレビの音をミックスしたSEが流れる中、まずはステージにKANDAIが登場。豪快にドラムを叩き始めると、そこへkazuが姿を現し、低く構えたベースから歪んだ音を放ち、音に加わる。そこから続いてソラがギラギラとした怪しさ全開のギターを響かせて、3人がひとつの塊となって力強く音を重ね合わせると、満を辞して片桐が登場。そこから1曲目の「Psycho」になだれ込んで行ったのだが、この時点でもうすでにとんでもない熱が渦巻いていた。そこからさらに4人は「脳内」「KISS」「Vale tudo(MAKE MY DAY)」と、鉄板曲を間髪開けずに爆音で畳み掛けていくと、それに呼応するように、フロアからは声と拳が力強くあがる。
「飛ばしすぎた! 最高です!」と叫ぶ片桐は、「次にやるのは正真正銘、ただ楽しむためだけの曲です」と、勢いを落とすことなく新曲「DURARA」へ。ダンサブルなビートにしろ、高揚感を引きずり上げていくギターフレーズにしろ、シンガロングを誘発するメロディにしろ、シンプルゆえにどれも強烈。間違いなくここからより育っていく予感に満ち満ちていた。また、「I’ m watching one of my favorite movies now. This will be my 9th time.」では、獰猛に突き進んでいく楽器隊と片桐が拡声器型のマイクで歌をぶつけ、「Enter the Void」でフロアを激しく揺らしていく。ここまでの終わり=今日までの集大成を見せるという強い思いが一切空回りすることなく、そのすべてを音に乗せてグルーヴさせていったところは、とにかく圧巻だった。
片桐航
ソラ
それは何もアッパーな曲だけでなく、中盤に用意されていた「あなたがいなくなったら」といったミディアムナンバーも同様。片桐がセンチメンタルなフレーズを弾き始めると、ソラがその空気をより増幅させるように情感たっぷりにギターを奏で、リズム隊もそこへ加わり、強がりの裏に秘めた感傷や孤独を爆発させるように、歌とアンサンブルを届けていた。そこから続けて披露された「世界について」では、「今日はとにかく全部の感情を届けようと思ってます」と片桐が告げ、4人全員がフロアをまっすぐに見つめながら、音を高鳴らす。
そんなドラマティックな余韻に浸っていると、KANDAIが「楽しすぎる!」と叫び、ソラとkazuの3人で話を始めたのだが、今回のツアーで彼らの機材車の走行距離が16万5000kmを突破したことを報告。なんと地球4周半分の距離を移動していたという話に、客席から驚きの声と大きな拍手が送られていた。そして、「5周目を目指してまだまだ頑張っていくのでよろしくお願いします!」と、最新シングルの「SEIEN」へ。いつまでも消えることなく燃え続けている青い炎を心に宿しながら、彼らの音楽を求める声援と共に走り続けていく決意表明を、雄々しいアンセムコーラスが熱く彩っていた。
残すところあと1曲となったところで、「全部出し切りました」と、片桐が話し始める。込み上げてくる興奮を少し抑えながら、落ち着いたトーンで、今回のツアーや、デビューしてからのことを振り返っていたのだが、少し間を置いて「なんていうか……かっこつけようとしていたんですよね、ずっと」と、胸の内を明かし始めた。
片桐曰く、これまで自身が思い描く“片桐 航”というフロントマンのあるべき姿や理想像を追い求めてきたが、気持ちが疲弊してしまったことから、自分の弱い部分が出てきてしまったとのこと。それは「あなたがいなくなったら」や「SEIEN」といった近作の歌詞にも自然と表れていて、自分のそういった面を見られることに恥ずかしさもあったそうなのだが、「周りにいてくれたみんながすごく温かく受け止めてくれた」ことが、彼に大きな気づきを与えるキッカケになったという。
Lenny code fiction
片桐「俺、こうなりたいなと思ったんですよね。悲しい感情とか、マジで夢を追いかけていることとか、ちょっと苦しかったこととか、そういうことをちゃんと言える人。俺らのライブを見て、昨日あった嫌なことを重ねて、家で泣けなかったけどライブで泣けたり、楽しんで飛び跳ねてるのに泣いちゃったり。そんな場所を作れたらいいなと、心から思ったんですよ、本気で」。
片桐はフロアを見渡しながら、これまでとこれからのことを、まっすぐに語りかける。
片桐「ずっと幸せを探していたんですよ、悔しくて。俺のバンド人生のはじまりは、“反骨心”で。それが俺の根本で、それが全部だと思っていたけど、ライブをして、似たもの同士が集まって、ルールを守ってやれるみんなが、俺の誇りで。そんな人達と誠実に積み重ねてきたこの何年かで、俺の中で意識が変わってきて。直近の夢──次のツアーファイナルは、“幸せ”を糧にしたいなと思ったんです。反骨心とか、悔しさじゃなくて」。
この日のライブで、Lenny code fictionは、7月26日に2ndアルバム『ハッピーエンドを始めたい』をリリースし、『ハッピーエンドを贈りたい』と題したリリースツアーを行なうことを発表した。ツアーファイナルは、2024年2月11日(日)。場所は渋谷WWWXで開催される。
Kandai
Kazu
片桐「昔の俺を知ってる人からしたら、“丸くなったな”って言うかもしれないけど、どうぞ言ってくださいって感じで。俺は感謝を知ったんですよ。幸せを糧にすることを知ったので。自分の反骨心から脱却して、いろんな感情を書き留めた曲達をまとめたアルバムを完成させて、次のツアーを廻ります。そして幸せを糧に、今年、来年と進んでいきますので、どうぞよろしくお願いします」
そして、この日のラストナンバーとして、新曲「幸せとは」を披露した。「いま、一個人として、4人のバンドとして一番言いたいこと。生まれてきて一番言いたかったこと」という片桐の前置きから始まったこの曲は、赤裸々な言葉とダイナミックなバンドサウンドが胸を熱くさせる、なんともエモーショナルな1曲だった。それと同時に、彼らの新たなアンセムになっていくであろうことが充分に伺えたのだが、この「幸せとは」にしても、先の「DURARA」にしても、この日彼らが見せてくれた未来の断片は、どれもLenny code fictionのこれからが楽しみになるものばかりだった。来るべきアルバムと、そのリリースツアーで、4人はどんな音を高鳴らし、景色を作り上げてくれるのか。とにかく期待して待ちたい。

取材・文=山口哲生 撮影=白石達也
Lenny code fiction
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