「カメレオンバンドでありたい」大阪
発バンド13.3g、名刺代わりの1stアル
バム『Ashtray』で伝える綺麗事ばか
りではないリアル

2021年に大阪で結成されたオルタナティブロックバンドの13.3g(ジュウサンテンサングラム。以下、13)が、2月15日(水)に1stフルアルバム『Ashtray』をリリースした。藤丸将太(Vo.Pf.Gt)、藤原聖樹(Ba)、奥野“ロビン”領太(Gt)、輪田拓馬(Dr)の4人が生み出す楽曲は実にジャンルレス。今年で結成3年目、2月11日(土)に地元大阪で初のワンマンライブを成功させた彼らがSPICEに初登場。アルバム『Ashtray』の制作過程や注目ポイントを訊いた。
13.3g
個々のインスピレーションを大切にしながら、全員で曲を作る。
ーーよく聞かれている質問だと思いますが、バンド名はどのように決まったのですか?
藤原(聖樹):最初に「数字のバンド名も良いよね」という話になってまして。ある時事務所のテーブルにタバコが置いてあったんです。そこに13.3gと書いてありまして、13.3という数字がパワーワードで「これいいんじゃないか」とメンバーで決めました。
ーーそもそも皆さんは元々どういった関係性なのでしょうか。
輪田(拓馬):ドラムの僕とベースの聖樹がいた前身バンドが解散したタイミングで、僕が学生時代に一緒にバンドをしていたギターのロビンと、SNSで見かけたボーカルの将太に声をかけました。
奥野(“ロビン”領太​):新バンドはベーシックにリズム隊、ギター、ボーカルの4人編成で考えていて。
輪田:ボーカルは直感的に良いなと思う人を探しているときにSNSで将太を見て、歌や醸し出ているものに直感でグッときました。気になったので声をかけてみたら大阪にいたので、スタジオに入って、それで一緒にやろうと。
ーー将太さんはSNSでどんな動画を上げていらっしゃったのですか。
藤丸(将太​):元々音楽について学んだこともなかったのです。最初に始めたのは中学生の時で、そこから趣味で始めたアコースティックギターの弾き語りを自分が上げたいタイミングで好きに上げていっていました。なので期間としては長いですが本数はそんなにあげていません。最初は顔も出さなかったんですけど、大学くらいの時に顔を出して。熊本から大阪に移ってから1年くらいの良いタイミングで見つけてくれました。
輪田:顔出しと言っても横顔くらい。でも映像越しでも将太には惹かれるものがありましたね。
藤丸将太
ーー今年の3月で結成から2年。配信シングル5枚とミニアルバム1枚を出されていて、制作もコンスタントにされています。この2年間はライブをしながら曲作りもされてきたのですか。
藤原:今回のアルバムはまさにそんな感じで。
奥野:両方同時に進んでいたので、結構大変でした(笑)。
ーー楽曲のジャンルが幅広いですが、作詞は全て将太さんが担当されてるのですよね。
奥野:そうですね。各々「これはおもしろいな」と思ったフレーズやパーツを持ち寄ったり、「こういうのできたから聴いてみてよ」みたいなところから、皆の知識やアイデアで広げたりして作ることが多いです。それぞれのインスピレーションを大事にしてるので、曲によって曲が先か、歌詞が先かは特に決まっていなくて。メンバーによって出てくる色が違うので、その辺のエッセンスでバランスを取りながら膨らませていってます。
ーー若くしてどこか俯瞰しているというか、すごく落ち着いてらっしゃるなと思いました。歌詞の源になるのはどんなものですか。
藤丸:まずは音を聴いた時に自分の感情や、私生活の中で出てきた感情をそのまま文字に起こします。それをもう1回俯瞰して見た時に「これはこういうことだよね」と自分なりに解釈したものを歌詞に落とし込んでますね。落ち着いてるのかな(笑)?
奥野:メンバーの中だったら、1番日頃から物事を考えるタイプかもね。その性格が言葉に出てる。僕らが書いたらあんな言葉は絶対出てこないな。
ーーちなみに将太さん以外の皆さんが作詞するようなことも、今後はありそうですか。
輪田:今までナチュラルに歌詞は出てこなかったので、多分しないと思います。
「ララルラ」がアルバム全体の音像を決めるキッカケに。
13.3g
ーーアルバム『Ashtray』は全13曲で55分のフルボリュームです。今のご時世、なかなかアルバム単位で音楽が聴かれなくなってきているという話も聞きますが、この形態はどのように決まっていったのですか。
奥野:前作のミニアルバム『Chocolate Cigarettes(2021年10月)』をリリースした後くらいから「次はアルバムを出そうよ」みたいな話は出ていて。
藤原:これまでミニアルバムだけだったので、「やっぱりフルアルバムはいるよね」ということを話し合いました。
藤丸:曲数に関しては別に意識は持ってなかったですね。とにかく僕らが良いと思う曲を出してたら、そのボリュームになったという(笑)。
奥野:僕らの楽曲をどんどん届けたいなという気持ちが結果的に13曲になった、という表現がピッタリくるかな。他にも候補はありつつ、都度都度全体的に俯瞰して、その時完成してる楽曲を見た時に、「俺らにはもっとこういう色もあるけど、足りない色があるね。こういう曲を用意したら、もっとアルバムとして良くなるんじゃない?」と意見を出し合って。僕らの色をたくさん見せられるアルバムにしようというので、取捨選択しつつ擦り合わせながら作っていきました。
13.3g
ーーリード曲の「ララルラ」はどんなことを表現しようと作られた曲ですか。
藤丸:自分は皆と出会うまで音楽を全くしてきませんでした。「どうしても人前で歌を歌いたい、音楽を通して人と繋がりたい」という漠然とした夢だけはあって。その夢を抱えて大阪にひとりで飛び出してきて。「自信とは何だろう」、「何でこんなに音楽やりたいんだろう」と思った時に、「これだ」と表現できる根拠がなかったんです。でも色々考えた時、結果的に言葉では表せないけど、「僕らを突き動かす何か」=<ララルラ>というものが自分の中にあって、それが突き動かしてくれたんだろうなと。これをメインに、その時の感情を色々歌詞に入れてますね。
ーーサウンド面はどのように作っていかれましたか。
奥野:アルバム自体にも通ずる話なんですけど、シンセサウンドやオーケストラサウンドといった、綺麗で神聖な空気感に対して、僕らはやっぱりロックバンドでありたい。バンドサウンドの荒々しさをミックスしていくような音像のアルバムにしたらすごくワクワクするよね、というのが、制作の段階で見えてたんです。そこに行き着いたキッカケが、この「ララルラ」で。アルバム全体の音像も空気感と世界観にすると、カッコ良くなるんじゃないかと。やっぱり夢を追いかける中で、綺麗な瞬間もあれば「クソッ」と握り拳を掴む瞬間もあるよね、みたいな話も将太としてて。そういったリアルを表現したいとなった時に、ただ綺麗に歌うのではなくて、もっと熱くて現実的な部分も欲しいよねと。歌詞の世界観や将太の心情に寄り添って、そんな高揚感や世界観に合う音像を作っていきました。
輪田:ドラムはどうしてもソリッドにしたかったので、聴かせたいところを際立たせて引き算した結果、あの音像になりました。必要以上に主張せず、でもしっかり聴こえてほしいところもあったので、総合的にバランスを見て、かつ存在感のある音のイメージです。
藤原:ベースは最初、シンセベースっぽくしたり色々試したんですけど、そういうのではなく、シンプルでソリッドになるよう着地しました。
生活のどんな感情にも寄り添える「カメレオンバンド」でいたい
藤丸将太
ーー『Ashtray』は本当に幅広いジャンルの楽曲が入っていますが、それぞれ気に入っているところや聴いてほしいポイントを教えてください。
藤丸:1曲に絞るのは難しいですね。『Ashtray』のアルバムの歌詞には、色んなスケール感で自分の感情を乗せました。「カメレオンシンドローム」に<誰にでも染まれる自分でいる>という歌詞があるんですけど、本当に色んな色に染まるバンドでありたいなという想いは自分の中にあるので。13.3gは、あなたの生活のどんな感情の時にも寄り添えるカメレオンバンド。皆さんにもそういう認識を持ってほしいです。
藤原:多分全員共通の意見だと思うんですけど、例えば起きた時や通勤中、帰りの夜道だったり、その日の気分で聴きたい曲が結構変わります。「今日はポップなアーティストさんの曲を聴こう」とか「今日はバラードが多いアーティストさんを聴こう」とかではなくて、この『Ashtray』1枚で、13.3gだけで完結できるアルバムになっています。だから全体を聴いてほしいです。全部おすすめの最高のアルバムです。バラードもあれば、ポップスやファンクもあり。ダンスチューンもあれば、チルっぽい曲もありますし。
輪田:「too much」の最後のドラムの畳みかけるセクションがあるんですけど、叩きまくったので聴いてください(笑)。基本的には曲全体に溶け込みたいという気持ちがデカいんですけど、今回のアルバムは、要所要所でガンガン出しちゃっても良い機会が結構あったので。あと「蛍火」の後半で一気に盛り上がっていくセクションも、自分の中ではオルタナティブなイメージが純度100%で出せた感じがあります。何を叩いたか覚えてないぐらい、自分の芯からくるもので録れたテイクになってて。何なら実は拍にハマりきってなかったりもしてるんです。それぐらいの気持ちでいっちゃったけど、結果的にそれで「蛍火」が締まった感じがして。溶け込もうと思わなくても溶け込める時もあるんやなと。エゴとのバランスがすごく取れた楽曲になった。そこはめっちゃ聞きどころですね。
輪田拓馬
ーー自分の中での発見でしたか?
輪田:発見でしたね。どうしても「この曲はこうありたい」というイメージが自分の中であって、それを再現していくことが多いんですけど、そこを無視してもバランスが締まる時もあるんやなと。ライブでもエゴが出せて、良い意味で足枷が外れたんですよ。自分がやるものがしっかり13.3gになるんだと改めて気付けて、すごく楽しいです。全部が良い風向きにいったキッカケの曲です。
奥野:僕は今回のレコーディングは、今まで以上に色んなギターを試させてもらって。エフェクターや機材も「ああでもないこうでもない」と、アレンジャー&プロデューサーの(猫田)ヒデヲさんとディスカッションを重ねました。曲数が多かったのもあるんですけど、3〜4本のギターを使って色々チャレンジできたと思います。曲の中でも「このパートはこっちのギターが合うな」とか「この曲は逆にこのギターでいっちゃった方がカッコ良くないですか?」みたいな話をしながら、すごくこだわって作れました。曲によってギターの音色や聞こえ方が変わってくると思うので、そこも楽しみながら聴いてもらえたら嬉しいです。
ーー1曲の中でパーツごとにギターを分けている曲は、ライブではどのようにプレイされますか?
奥野:ライブの時はステージでうまいこと音色が1本でいけるように会場に合わせて作ってたりします。曲中にギターを持ち替えるのはパフォーマンス上難しいので、バランス感を見ながら。逆に「この曲はステージではこういう聞こえ方にした方がもっと届くんじゃないか」とポジティブに捉えてます。ライブは生モノとして、レコーディングはレコーディングとして、良い意味でこだわりすぎず、それぞれにフォーカスしながら使い分けてますね。
ーー楽曲の後半に聞き所が置かれている印象がありましたが、いかがですか。
奥野:展開は、方向性を決めてプロデューサーのヒデヲさんと擦り合わせていく上で、一緒に作っていきました。ドラマチックにしたり、後半にエッセンスを入れたりというのは、擦り合わせる中でブラッシュアップしていきました。
藤丸:歌詞も最初は割と人に揉まれて、尖らず緩やかに進んでるんですけど、後半になるにつれて自分を出していくというか。「我が我が」というような歌詞に合わせてサウンドを作っている感じですね。歌い方も本当に歌詞のまま、感情を露わに出していきました。後半にいくにつれて荒々しさが出ています。
13.3gという、唯一無二のジャンルを作れたアルバム
奥野“ロビン”領太
ーー今回の制作の中で成長した部分や、チャレンジだったことは?
奥野:今回13では初めてアコースティックギターでのレコーディングもさせてもらって。「ホットレモネード」や「蛍火」では、要所要所にアコギの音色も入ってます。僕個人としては13の中で初めてのアコギで、プロデューサーのヒデヲさんと相談しながらやれたので、すごく良い経験になったなって。アコギのコントロール感がギタープレイに活きてきたり、 逆にエレキでついてた変なクセが顕著にアコギで出てしまったり。その辺もギタリストとして勉強になりましたし、成長に繋がった感じがありました。
ーー最後を締め括る「蛍火」は長めのバラードですが、この曲も夢をテーマにしておられますね。
藤丸:アルバム自体が今の僕らを留めたということをコンセプトに歌詞を書いてたんですけど、それが1番出た曲です。ただ歌が好きなだけの僕が、13.3gのボーカルという存在になれた。「何者かになれたんだ」というリアルをそのまま乗せましたね。
奥野:将太の歌詞や歌を聞いた時にどう感じるかを、各々出し合うことはあんましないんですけど、でも多分各々が自分の経験を振り返った時に解釈をして、それに寄り添えるプレーをした結果が、高揚感に繋がってるのかなというのはありますね。
藤丸:レコーディングでシンセとか入れずに全楽器隊でやったのは「蛍火」だけだっけ。
藤原:そう。他の曲に比べると割とバンド色が強いですね。
輪田:そうやな、そこも結構聞きどころかもしれない。
藤原聖樹
ーー初めてのフルアルバム、改めてどんな1枚になりましたか。
輪田:一言で言うと「13.3g」です。難しいことはなく、ただやりたいことやワクワクするものを詰め込めた。「13.3gです」と言って、名刺代わりに出せるアルバムになったと思います。
奥野:とにかく色んな人に聴いてほしいと思える自信作がしっかり作れました。
藤丸:同じくですね。ジャンルレスというジャンルというか、13.3gという唯一無二の僕らのジャンルを作れたのかなと思います。
藤原:全部言われてしまった(笑)。
全員:ハハハ(笑)!
藤原:日常に寄り添えるようなアルバムになったのかなと思うので、ぜひ聴いてほしいです。
初の大阪ワンマンで得た実感、ライブの意義
13.3g 撮影=ヤマグチレナ
ーー2月11日(土)に心斎橋VARONで行われた、初の大阪ワンマンの感想もお聞きしたいです。率直にどうでしたか?
藤原:ソールドアウトできましたし、大成功だったと思います。
藤丸:今まで自分たちは、意識的に13の音楽の輪を広げてきました。今回、視覚的にもたくさんのお客さんに包まれて、活動してきたことが間違いはないんだなという確信に変わったライブでしたね。
奥野:告知してからの期間も結構長かったので、準備もしながら溜め込んでた感情やワクワク感を全部会場に出し切れた。やりきれました。
輪田:自分たちがおもしろいと思うものを作っている感覚があるので、それに共感してくれる方が目に見えて多くなってることが、純粋に嬉しかったですね。
ーー次のワンマンに向けての気持ちは高まってきていますか?
藤原:ワンマンをもっとやっていきたいですね。
藤丸:でもそれで言うと、自分たちはあまりワンマンとか対バンという、ライブに対する差別化はしてないのかなという感覚がありますね。毎回迎えるライブを全力で、ただただ来てくれたお客さんと一緒に楽しみたいです。
輪田:自分たちも会場で初めて曲の見え方が変わることもあるので、そういうことも感じながら演奏できるのが、ライブの醍醐味でもあるんだなというのは常に感じてますね。「この会場ではこの曲はこういう色で見えるんだ」と。一方的に音を出してるだけじゃなくて、自分たち自身も気付かせてもらいながら、すごく楽しみながらやってます。
奥野:今後もそういうことを肌で感じながらやっていきたいですね。
13.3g
ーー主戦場はライブなのですね。
奥野:やっぱりあくまでライブバンドではありたいので。
輪田:あとは13の楽曲の世界観を、耳だけではなく体でも体感してほしいという僕らの想いもあります。会場でもそういった空間を共有したくて、ライブも力を入れてやらせてもらっています。僕ら自身が体で音を浴びたいという欲求があるので、それを感じてほしいです。
奥野:拓馬が言ったように、僕らの空気感や世界観を皆と一緒に共有したい。それがライブの目的というか、自分たちの意思としてありますね。
ーー3月19日(日)には下北沢440にて『13.3g Presents UNPLUGGED LIVE “CLASSIC” Vol.1』を、4月7日(金)からは東名阪で『13.3g "Ashtray" Release Tour [FILM]』を開催されるなど、続々とライブが決まっていますね。
奥野:僕たちはライブバンドなので、アルバムを聴いてもらって、ライブでたくさんの人と僕たちの音楽を共有していきたいですね。今よりももっと広めていきたいなと思っております!
13.3g
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=ハヤシマコ ライブ写真=提供(ヤマグチレナ)

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