花粉イメージ

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花粉症患者が今年もバカの一つ覚えで
大騒ぎ

製薬業界や医療業界の陰謀説 うっとおしい季節がやってきた。2月初めから4月にかけてはスギ花粉が飛散するシーズン。頻発する鼻水やくしゃみ、目の痒みに涙、倦怠感と、花粉症の人たちにとってはなんとも嫌な季節である。
 しかし、この季節をうっとおしいと感じるのは花粉症患者だけではない。それ以外の人にとってもかなりうっとおしく、面倒くさいものなのだ。
 なにしろ、近くで鼻水を垂らされ、くしゃみを連発されるだけでも大迷惑なのに、テレビをつければ天気予報のコーナーでご丁寧に花粉情報が紹介され、ドラッグストアにはマスクなどの花粉症グッズが専用コーナーに山積み。さらに、外に出ればマスクに花粉防止メガネという、まるで変質者のような格好の花粉症患者がゾンビのようにゾロゾロ歩き職場や取引先、タクシーに乗っても挨拶代わりに花粉の話題を振られる。
 花粉症患者は、たかだか鼻水やくしゃみ、目が痒い程度のことで、なぜここまで大騒ぎを繰り広げるのだろうか。
 しかも、ただ騒ぎ立てるだけでは飽きたらず、最近ではスギ花粉の飛散が花粉症で儲ける製薬業界や医療業界の陰謀だとするトンデモ説まで飛び交っている。実際、過去の花粉症シーズンには、『ビートたけしのTVタックル』で東国原英夫が「(政府が花粉症の原因であるスギの植林をやめないのは)花粉症産業で儲けている人がいる」「裏で圧力がかかる」と発言。これにネットが「国家的な陰謀」「花粉症は国家主導で増やしていたのか」などと飛びつき、炎上騒ぎになったくらいである。
 そして、こうした陰謀論を真に受けたのか、ここにきて急増しているのが花粉症患者たちによる「スギを全部伐採しろ!」という頭の悪い主張だ。

「スギを全部伐採しろ」という主張 たしかに、花粉症の原因はスギがまき散らす花粉だ。
 花粉症の患者数は国民の3人に1人といわれるが、ここまで増えた背景にはさまざまな理由がある。生活全般におけるストレスの増大、生活環境が過度に衛生的になり、人間の体内にいた寄生虫や雑菌が減少したことによるアレルギー反応の過敏化、肉や卵の摂りすぎによる抗体の増加、さらに、ディーゼル車が垂れ流す排気ガスなどがそれだ。
 とはいえ、これらはあくまで花粉症が発症するまでのプロセスの話であり、花粉症を引き起こす直接の原因はやはりスギ花粉そのものにある。
 スギ花粉によるアレルギー症状が東京医科歯科大学の医師によって「スギ花粉症」と名づけられたのは1963年のことだ。その後、76年から花粉が激増し、79年には大飛散によって花粉症が社会問題にまでなった。
 この時期に花粉症が激増したのは、木材需要の高まりを受けて、国が関東地方の山間部を中心にスギやヒノキなど生育の早い針葉樹を大量に植林する「拡大造林」という政策を50年代に打ち出したからだ。スギは樹齢20年目から花粉をつけ始め、30年目以降に花粉のピークを迎える。そのため、植林から30年が経過した70年代終わりから80年代にかけて、スギがいっせいに花粉を飛ばし始めたのだ。
 そこに輪をかけたのが64年の木材輸入の自由化だった。この規制緩和によって価格の安い海外の木材が入ってくるようになると、国産のスギは価格競争で勝負にならない。せっかく植林したにもかかわらず、この大量のスギに木材としての需要が激減してしまったのだ。
 このため、木材としてのスギの価値が下落し、55年に95%あった日本の木材自給率は、70年には45%に急降下した。その後、80年には30%、00年以降は20%を割り込んでいる。スギの価格も、昔は1本4800円だったが、いまや2000円以下に下落している。
 かくして、伐採されないまま放置されたスギが植林から30年以上を経過した開花適齢期を迎えて、花粉を大量にまき散らすようになったのだ。
 しかも、木材として伐採しないにもかかわらず、国は補助金をつけて現在も毎年1600万本のスギの苗木を植えている。30年後には、このスギが新たに花粉をまき散らし始める。
 そのうえ、花粉症にかかる薬や治療などの医療費は年間3000億円を超えるが、林業の木材生産額は2000億円でしかなく、スギだけに限れば1000億円だ。
 花粉症によって鼻水やくしゃみが止まらず、これ見よがしにつらそうな顔をする人たちからすれば、スギこそが諸悪の根源に思えるわけだ。
スギやヒノキによって守られた榛名山。(撮影/Qurren)スギやヒノキは全然悪くない しかし、花粉症患者は知らないようだが、スギの植林は木材不足だけが理由ではない。それ以外にも「治山」という大きな目的があったのだ。
 この治山とは、地域の住民が安全・安心して暮らせるように、山地災害を防止し、土砂の流出などを防ぐことだ。
 そもそも、日本の国土は急峻な地形のうえ、地質が脆弱で、昔から豪雨や台風、地震などによって山崩れや土石流が発生し、地域の住民に大きな被害をもたらしてきた。たとえば、日本の災害史上でも稀な大きな被害となった明治29年の大水害、そして、カスリーン台風や枕崎台風、阿久根台風など、昭和20年代に続発した大型台風……。昭和20年代の台風は関東地方に大きな被害をもたらし、年間数千人の死者・行方不明者を出した。
 これらを通じて、その重要性があらためて確認されたのが治山である。そのため、明治以来、ハゲ山への植林や伐採規制など、住民が安全に暮らせるように、時代ごとにさまざまな法整備が行われた。
 しかし、それでも森林はどんどん伐採され、減少し続けていく。明治政府が植林を進めたのは、江戸時代半ばに山地で焼畑や肥料として利用する採草地が拡大して森がなくなったためだが、その明治時代も輸出産業に伴う木材消費の増加、足尾銅山の鉱毒などにより、再び森林が減ってハゲ山だらけとなった。当時の日本の国土には森林のない荒地が全国各地に広がっていたという。
 さらに、昭和初期からは軍需産業の木材需要が高まり、またしても森林の伐採が加速し、戦前戦中も戦争遂行を理由に森林を乱伐。戦後になると、今度は荒れ果てた国土の復興、大陸からの数百万人に及ぶ引揚者の住宅確保のために森林を伐採しまくり、日本中がハゲ山だらけになった。
 昭和20年代の台風がもたらした年間の死者数千人という被害は、森林を伐採しすぎたことによる人災だったのだ。
 実際、昭和22年のカスリーン台風では、群馬県の赤城山と榛名山に降った400ミリの大雨で大被害が発生したのだが、当時の赤城山は全体の1割がハゲ山で、残りも大半が樹齢5~6年程度のブナなどの広葉樹だったという。そのため、山津波が起きて土砂が利根川に流入、下流の埼玉県栗橋付近で堤防が決壊し、それによって東京都内だけで38万人もの被災者を出した。
 ところがスギが植林されて30余年が経過した1981年の台風15号では、590ミリもの大雨が降ったにもかかわらず、榛名山ではカスリーン台風のような被害がまったく出なかった。花粉症が社会問題化したのはこの台風15号が関東に上陸する2年前のことである。
 これが治山であり、樹齢30年以上のスギやヒノキが、花粉をまき散らしながら台風による被害を防いでくれたのだ。
 花粉症患者は、これでもスギ花粉で鼻水やくしゃみが出てつらいからスギを全部伐採しろというのだろうか。鼻水やくしゃみがつらいのと、災害で家が流されたり、生命が危険にさらされるのを防ぐことのどちらが重要であるか、バカでもわかるはずだ。

花粉症患者は大げさに騒ぐ情弱 そもそも、アレルギー疾患は、アレルギー性鼻炎、気管支ぜんそく、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アナフィラキシー等々と、花粉症のほかにもたくさんある。また、抗原である「アレルゲン」の種類によって引き起こされるアレルギー症状も変わる。 このアレルゲンには、食べ物、薬物、室内のゴミ、ほこり、ペットの毛、ダニ、そして花粉などがあり、これに誘発されて、皮膚炎、ぜんそく、じんましん、鼻水、発熱などを発症するのがアレルギー疾患だ。 たとえば、アレルギー性鼻炎の場合、日本人の5人に1人が悩まされ、鼻水やくしゃみがとまらなくなるなど、その症状も花粉症に似ている。 アトピー性皮膚炎やじんましんの人は、痒くて眠れないことも多く、掻きすぎないように手袋をして寝る人もいる。 ぜんそくの場合はもっと深刻だ。症状がないときでも常に空気の通り道である気道に炎症を起こしていて、普通の人なら気にならない程度のホコリ、わずかなストレスでも発作が起きる。1960年代にはぜんそくの患者数は国民の1%前後だったが、2000年代に急増し、いまや子どもの約6%、大人の約3%、全体で400万人以上になっている。 しかし、こうしたアレルギー疾患を持つ人のなかでも、鼻水やくしゃみが出る程度のことで毎年バカみたいに大騒ぎをするのは花粉症患者だけだ。 アトピーやじんましん、アレルギー性鼻炎、ぜんそくに苦しむ人が、あいさつ代わりに「いや~、この季節、アトピーが大変で」などと話しているのは見たことがない。だいたい、花粉症以外のアレルギー疾患に季節はそれほど関係なく、ほぼ1年中、それぞれの症状に悩まされている。 たったの3カ月、鼻水やくしゃみが出るぐらいのことなのに、花粉症患者だけが自分が花粉症であることを他人にアピールするのだ。その意味不明のアピールは、もはや花粉症を発症しているということを自慢しているようでもある。 そうやって大騒ぎすれば、医療業界もレーザーや注射といった治療法を宣伝するだろうし、製薬業界もいろんな種類の薬を開発する。「花粉症」は製薬業界や医療業界の陰謀ではなく、むしろ花粉症患者じたいが楽しんでいるアトラクションなのだ。 あげくの果てに、言い出したのが「スギを全部伐採しろ」という主張である。花粉症患者はどれだけ堪え性がないのだろうか。鼻水やくしゃみぐらいで大げさというほかない。

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