INTERVIEW / 906 / Nine-O-Six 謎多
きプロデューサー・デュオの素顔。彼
らのバックボーンと、その音楽を貫く
美学に迫る

どこかモノクロの映画を想起させるような世界観と、ヴィンテージな質感を有したサウンド。ジャズを中心としたサンプリングで多様な作品を生み出すプロデューサー・デュオ、906 / Nine-O-Six。
昨年11月末にリリースされた最新アルバム『LOVE ON THE LUCKS』ではSoulflexのZIN、Ovallのメンバーとしても知られるmabanua、ラッパーのOMSB、SSW/プロデューサーのSUKISHAといった多彩なアーティストをゲストに迎え、洒脱な空気感で統一されながらも、これまで以上にバラエティに富んだサウンドを展開。特に後半のロック的な要素が強く出た2曲には驚かされた人も多いだろう。
これまでもコンスタントに作品をリリースし、他アーティストとのコラボも多く行ってきた906 / Nine-O-Sixだが、その情報は未だ多く明かされていない。今回はそんなプロデューサー・デュオのひとりにインタビューを敢行。彼らのバックボーンから最新アルバムの制作背景、そして彼らの音楽に一貫している美学について語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Ryo Sato(https://www.ryosato.website/)
ロックとレゲエをそれぞれルーツとする2人の出会い
――プロデューサー・デュオとして活動されていますが、それぞれの役割分担などは決まっているのでしょうか?
ホンダ:役割的には相方がビートを作ったりミックスなど、いわゆる裏方作業をメインにやっています。僕もビートを作るんですけど、主には歌唱担当という感じで。
――結成は2010年と伺いました。その経緯などを教えてもらえますか?
ホンダ:僕は元々バンドでメロコアやロックなどをやっていたんですけど、そのバンドが解散してしまった後に、ひとりでも音楽活動をしたいと思ってMPCなどを買って、トラック制作を始めました。僕の地元は大阪の岸和田というところなんですけど……。
――レゲエが盛んな街ですよね。
ホンダ:そうです。そこでレゲエDeejayなどをやっていた地元の友人たちと一緒にクルーみたいなものを結成しまして。広い駐車場の一角に、もらってきたカラオケのコンテナを置いて、そこをスタジオにしていました。相方は隣の市に住んでいたんですけど、彼は元々レゲエのサウンドマンをやっていて。共通の友人を介してそのタイミングで知り合いました。
――そこから906 / Nine-O-Sixの結成に繋がると。
ホンダ:はい。当時、まだ僕らも若かかったので、ゴタゴタがあったりでクルーとしてはあまり活動できず。そこで相方と一緒にビートメイクに集中するようになって、「せっかくなら2人でやるか」となりました。最初は名前も決めていなかったんですけど、とあるイベントに出させてもらうことになって、その連絡が来た日が9月6日だったんです。「名前どうする?」って話していたときに、PCの画面に表示されていた“906”という文字を見て、「906 / Nine-O-Sixでいこう」と(笑)。
――オシャレな決め方ですね(笑)。ホンダさんの音楽的ルーツについてもお聞きしたいのですが、そもそも音楽に興味をもったきっかけは何だったんですか?
ホンダ:僕が通っていた中学校に、若い用務員さんがいたんですけど、彼が学校にギターやアンプを持ち込んでいたんです(笑)。ちょうどそのとき、パンクやメロコアが流行っていたので、僕もギターに興味が湧いて、その用務員さんに教えてもらうようになりました。
――当時はどのような音楽を聴いていましたか?
ホンダ:すでに解散していたHi-STANDARDがすごく好きでしたね。高校生になってからはバンド漬けの3年間を送ったんですけど、次第にエモやスクリーモと呼ばれるような、もっと激しいサウンドに魅了されていって。それと同時に、ギターの練習をしていく中でブルースも聴くようになりました。
結局メンバーの進学と同時にバンドは解散してしまったんですけど、僕はお金を貯めて音楽学校に行こうかなと考えまして、地元のダイニング・バーで働くようになったんです。そこのお店はオーナーがめちゃくちゃ音楽好きな方で、常にヒップホップやジャズがかかっていました。
あるとき、The Pharcydeの『Labcabincalifornia』(1995年)が流れていて。それまではヒップホップにはあまり興味なかったんですけど、「これはカッコいいぞ」と。そこから(同アルバムの大半の楽曲をプロデュースしている)J Dillaという人がいることを知り、「音楽ってひとりでも作れるんだ」っていうことがわかって、MPC購入に至りました。
――そこから先ほどの話に繋がっていくんですね。
ホンダ:バンドの頃はギター/ボーカルでやってたんですけど、当時はビートやトラックを作ることに夢中になって。相方と一緒に地元のシンガーやラッパーを集めたプロデュース・アルバムも作ったりしていました。ただ、そうやって活動していく中で、やっぱりビートだけだと中々聴いてくれる人が増えないなと感じて。「だったら自分で歌うか」という感じで、今のスタイルに至りました。
――地元から出て、東京に来たのはどれくらいのタイミングなのでしょうか。
ホンダ:ちょうど10年くらい前になりますね。このまま大阪にいても広がっていかないなと感じて、2人で東京に来ました。ただ、上京したもののコネクションなどは何もなかったので、ワンルームの部屋でひたすらビート制作に熱中していました。
――ストリーミング・プラットフォームを遡ると、一番最初のリリースは2016年に発表された『SLICED HAM』になっています。
ホンダ:実は配信するときにデータ入力でミスってしまって。本当は『906 / Nine-O-Six’s Pizza』の方が先なんです。あの作品は当時部屋に引きこもりながら、2人で色々な機材などを試しながら作った、ある意味実験的な作品ですね。
――おふたりはいつもどのように制作を進めているんですか?
ホンダ:“デュオ”と名乗っていながらも、基本的には別々に作ることが多いです。ただ、最近はこれまで以上に僕は歌うことに集中していて、ビートの大半を相方に作ってもらうことが多いです。例えば最新アルバム『LOVE ON THE LUCKS』では、ビートの土台を相方に作ってもらって、僕はそこに味付けなどをすることが多かったですね。ミックステープのように繋がる作品が好きで、曲頭や終わりにサンプリングでインタールード的な展開も入れているんですけど、そういった部分のサンプリングなどを担当しました。
――コンスタントに作品を発表していると思うのですが、ビートや作曲の最初の種になるのはどういったものが多いですか?
ホンダ:ビートは相方も僕も常日頃から作り続けていて。逆に何もやらないと不安になってくるというか、自然とストックが増えていきますね。曲というか歌に関しては、気持ちの浮き沈みが大きく作用しているのかなと。僕の場合は何かしらのフラストレーションを感じているときの方がいい作品を作れるような気がしていて。色々な人ともこういう話をするんですけど、ずっと満たされてない感覚があるからこそ、作品を作り続けてるんだと思います。
――フラストレーションなど負の感情が起点となりながらも、それをストレートに激しいサウンドなどで表現するのではなく、あくまでも聴き心地のいいサウンドに変換するという点が興味深いです。
ホンダ:相方と作り始めた頃から、その場の雰囲気を邪魔しない音楽を目指していて。さらっと聴けるというか、気づいたらアルバム聴き終わってた、みたいな作品が自分たちの中では理想なんですよね。
――作り手からすると、自身の作品をさらっと聴き流してほしくないと考える人も多いのではと思うのですが、そういった気持ちはないですか?
ホンダ:まず、僕はパンチの効いたリリックが書けないんですよね(笑)。めっちゃ普通の家庭で育ちましたし、ドカンと盛り上がるような曲とかも挑戦したことがあるんですけど、全然上手くいかなかったんです。あと、シンプルにこういう音楽が好きなんでしょうね。
とはいえ、もちろんサウンドやリリックもとてもこだわって作っているので、さらっと聴けるしBGMにもなるけど、しっかり聴いてもらえれば細かい部分のおもしろさにも気づいてもらえるんじゃないかなと。リリースしてすぐにバズったりするより、僕らは長く聴き続けられる作品を目指したいので、こういったスタイルになるんだと思います。
――そういった考えに至ったのには、高校卒業後に働かれていたダイニング・バーでの経験も大きそうですね。
ホンダ:確かにそうですね。ああいう素敵な空間で自分の音楽が流れてほしいなと思っています。
日常に溶け込む音楽、多様なバックグラウンドを“コーヒー”に例えた最新アルバム
――906 / Nine-O-Sixとしてのサウンド感や世界観が固まってきたのはいつ頃からだったのでしょうか?
ホンダ:それこそ最初の頃はサンプリングすることが楽しくて、ジャンルや年代も考えずにサンプリングして作っていたんです。今の世界観が固まってきたのは……実は『906 / Nine-O-Six’s Pizza』を出す前にもアルバムを作っていて、その頃からですかね。ジャンルや年代感を敢えて限定して作っていくのが楽しくて。
――相方さんとは音楽的な興味やバックグラウンドなど、重なる部分が多いですか?
ホンダ:そうですね……それなりに近いとは思います。ただ、どちらかというと音楽以外の部分、好きな映画だったり目指す雰囲気や世界観というか、そういう部分の方が似通っていると思います。性格は本当に真逆なんですけど(笑)。
――そうなんですね。
ホンダ:僕がめっちゃ大雑把なのに対して、向こうは几帳面できっちりしています。衝突することももしょっちゅうで、解散しかけたことも何度もあります(笑)。でも、お互い遠慮なく言い合えるからこそ、妥協なく作品作りに挑めてるのかなって。
――最新アルバムもそうですが、近年ではSoulflexのZINさんをはじめ、多くのアーティストさんとの共作を行っています。何かきっかけなどはあったのでしょうか?
ホンダ:2019年にリリースした『NINE-O-SIX’S BURGER』くらいから、他の方とやってみたいなと思い始めました。ちょうどそれくらいの時期にZINくんから連絡をもらって、コラボEP『KNOWN UNKNOWN』の制作に至りました。大阪で活動していた頃から僕はZINくんやSoulflexの存在は知っていて、共通の友人もいたんです。その人が僕らのことをZINくんにレコメンドしてくれて、一緒に曲を作ったらおもしろそうということで連絡してきてくれました。
『KNOWN UNKNOWN』の制作はすごくスピーディーで、最初に連絡を取ってから2〜3ヶ月くらいで完成させることができました。普段はお酒飲みながらくだらない話ばかりしてるんですけど(笑)、音楽制作になるとすごく真摯に取り組んでくれるし、何よりも歌がめちゃくちゃ上手くて。ZINくんとのコラボはすごく刺激になりましたね。
――ライブ活動についてはいつ頃からスタートしていたのでしょうか?
ホンダ:東京に来てしばらくは全然やってなかったですね。知り合いもいなかったですし。大きく動き始めたのは、今回のアルバムのジャケットを描いてくれた Sayzさん(https://www.instagram.com/sayz0320/) と知り合ってからですね。 〈NITEKLUB〉(https://www.instagram.com/niteklub_tokyo/) というブランドをやっている方なんですけど、イベントに呼んでくれたり色々な方を紹介してくれて。あとはZINくんとも仲の良い FKD(https://www.instagram.com/fkd_vbpk/) と出会えたことも大きいですね。
――最新アルバム『LOVE ON THE LUCKS』の構想はいつ頃から練っていたんですか?
ホンダ:アルバムを作ろうって言う話になったのは2021年の5月くらいからですね。〈Manhattan Recordings〉の方とお話して、アルバムを出させてもらえることになって。さっきお話したように、これまでの作品はジャンルや世界観、年代感などを固めて作ることが多かったんですけど、今回は自分たちの通ってきた様々な音楽を出せたらなと考えました。
そこで浮かんできたのが“コーヒー”で。色々な国で採れたコーヒー豆がブレンドされて、抽出されることによって一杯のコーヒーになる。自分たちが大事にしている、日常に溶け込むような音楽を表すのにもぴったりだなと。アートワークでもこのコンセプトを表現するべく、コーヒーをモチーフにしてもらいました。
――それこそ「Very earthy」はレゲエ調ですし、最後の2曲は思いっきりロックに挑戦していますよね。
ホンダ:そうなんです。相方はレゲエがルーツにあるので。
――ちなみに、タイトルの『LOVE ON THE LUCKS』にはどのような思いが込められているんですか?
ホンダ:文法的にはちょっと意味がわからない感じの言葉なんですけど、なぜか数年前にこの言葉が浮かんできて、相方とも「『LOVE ON THE LUCKS』っていう作品を作りたい」っていう話をしていたんです。今回、それを引っ張り出してきたという感じです。
ベタなんですけど、これまでの作品でも“LOVE”という言葉をリリックでよく使用していたし、曲の題材も色々な意味での“LOVE”に起因することが多かった。その“LOVE”というものを突き詰めていくと、“運(LUCKS)”の要素も大きいんじゃないかなっていう考えに至って。……めっちゃ説明が難しんですけど(笑)。
――なるほど。
ホンダ:全ては巡り合わせというか、運というか。改めて過去の作品も振り返って、自分の作品におけるテーマのようなものが見つかった感覚があったので、今回の「アルバムはこれでいきたい」って相方に伝えました。
多彩な客演陣との共作と、今後の展望について
――客演の人選はどのように考えていきましたか?
ホンダ:これまでも多くの曲を作ってきたZINくんは言わずもがな、他の方たちも大前提として、僕らが普段から作品を聴いている大好きなアーティストの方々にお声がけしました。誰をお呼びしたらいい作品になるか、レーベル・スタッフやマネージャーとミーティングを重ねて考えていって。結果として、普通だったらひとつの作品で揃わないような幅広いアーティストの方たちに参加してもらえて、なおかつ作品としての統一感も持たせられたと思っています。それはすごく満足しているポイントですね。
――客演を迎える作品は、その方をイメージしてビートを作っているのでしょうか。
ホンダ:曲によりますね。最初からそのアーティストさんを目掛けて作るときもあれば、客演を入れることを考えずに作っている曲でも、途中で「ここに違う声が入ったらおもしろいかも」って閃くこともあって。今回のアルバムで言うと、ZINくんには最初から参加してもらいたいと思ってたので、「Shade tree」は前者になります。ジャズっぽいビートながらも、これまでのコラボとは全然違うテイストにしてみたくて。
ZINくんは僕がネガティブな人間だということを知っていますし、この曲もリリックの最初の方はちょっと暗いというか、マイナスの感情が綴られているんですけど、それが後半では少しポジティブなところに辿り着けた気がしていて。こういった部分がコラボレーションならではのおもしろさだなと感じました。
――個人的にはmabanuaさんの参加も意外でした。どのような経緯でコラボレーションに?
ホンダ:mabanuaさんは僕たちが長年憧れていた方で、まさかご一緒できるとは思ってなかったんですけど、レーベルの方が提案してくれて。僕らからしたら「え? できるんですか?」っていう感じでした。個人的に、mabanusaさんが他の人のビートの上で歌っているイメージがあまりなかったので、今回は敢えてそこに挑戦してみました。mabanuaさんってドラムやビート・メイキングも超一級だと思うんですけど、ボーカルも本当に素晴らしくて。僕らもかなり意識している部分なのですが、“グルーヴの追求”という意味では遥か先を行かれているなと感じました。
――mabanuaさんのボーカルを聴いて、グルーヴを感じたと。
ホンダ:細かい話なんですけど、ビートのノリ方、その解釈がすごいなと思いました。音が鳴っていなくても、ビートやリズムを分解して多様なノリを生んでいるというか。だからこそ絶妙なレイドバック感が出るんですよね。最初にmabanuaさんから返ってきたボーカル・データを聴いたときはめちゃくちゃテンションが上がりましたね。あと、言わずともこちらの意図を読み取ってくれたことにも驚きました。12小節で展開していく部分はそれに沿って書いてくれたり。
――10曲目に位置する「Over the slope」には昨年大きな話題を呼んだアルバム『ALONE』のリリースも記憶に新しいOMSBさんが参加されています。
ホンダ:お声掛けしたのはアルバムが出る前だったんですけど、僕ら2人ともラッパーとしてもビートメイカーとしても大好きで。声の存在感も圧倒的ですし、リリックも素晴らしいですよね。自分にはできないパンチライン満載のアプローチというか。「Over the slope」に関してはOMSBさんに乗ってもらうことを想定して相方がビートを作って、最初の打ち合わせで聴いてもらったらすぐに「これでいきましょう」となり、制作もスムーズにいきました。
――客演の最後のひとりはSUKISHAさんです。この曲は特にSUKISHAさんのユニークなリリックが印象的です。
ホンダ:SUKISHAさんも自身でビートを作ったり、何でもできる方だと思うんですけど、僕は特にメロディ・メイカーとしての側面がすごく好きで。最初にビートをお送りしたら、SUKISHAさんが先にヴァースを入れてくれました。リリックでは学生時代の悶々とした想いが綴られていて(笑)。僕も学生時代はずっと憂鬱な気持ちで、修学旅行とか文化祭も気乗りしないし、早く学校辞めてバンド活動したいって思ってたので、かなり共感しました。
SUKISHAさんに引っ張られる形で僕も当時の鬱屈とした感情を綴ったんですけど、そしたら少しだけ過去の自分が成仏したというか、ちょっとだけ決着がついた気がして。自分たちだけではこういう内容の曲は絶対作れないと思うので、これもコラボレーションのおもしろいところだなと。
――ローファイかつオーガニックな質感の音色も印象的でした。トラックは全て906 / Nine-O-Sixのおふたりによるものですか?
ホンダ:土台となった僕らのビートの上で、SUKISHAさんが色々な楽器を乗せてくれたんです。それで印象もガラッと変わりましたね。鍵盤のソロ・パートとかもSUKISHAさんが弾いてくれました。SUKISHAさんに限らず、今回アルバムに参加してくれた方たちはみんな熱を持って作品制作に臨んでくれて、すごく嬉しかったです。
――先ほどもお話したとおり、最後の2曲がロック調の楽曲というのも驚きでした。ある意味“変化球”とも取れる作品だと思うのですが、この2曲はどのようにして生まれたのでしょうか。
ホンダ:実はアルバムの制作前からこの2曲はあって。以前から自分たちとしては気に入っていたんですけど、中々他の作品に入れることができなかったんです。でも、今回は先にお話した通り、自分たちの色々な側面を出そうと決めたので、満を持して収録することにしました。元々自分のルーツにロックがあるのと、あとはBROCKHAMPTONやSpillage Villageも大好きで。彼らもロックや様々なジャンルをミックスさせるじゃないですか。そういう姿勢に触発されたという部分もあります。
――この2曲でアルバムを締めくくっているので、今後はさらに多様なジャンルに挑戦していくのかなと感じました。2023年の活動についてはどのようなことを計画していますか?
ホンダ:もちろんこれまで通りジャズやソウルをサンプリングする楽曲も作りつつ、今回のアルバムで自分たちの多様な面をお見せできたかなと思うので、今後もおもしろいと思ったことには素直にトライしていきたいです。あと、もっと制作ペースを上げたいんですよね。
――さらに、ですか?
ホンダ:はい(笑)。相方とも話したんですけど、僕らは本当に普通の人なので、みんなに知ってもらう、覚えてもらうためにはたくさんリリースするのがいいんじゃないかって。「こいつらまた新作出してる」って思ってもらえたら嬉しいですね(笑)。それが自分たちの強さでもあると思いますし。今後の野望みたいな部分でいうと、海外アーティストとのコラボも積極的にやっていきたいです。
――ライブの方はいかがですか?
ホンダ:実は2月からリリース・ツアーを行う予定でして。今、相方は大阪に住んでいるので、近くでライブするときは一緒にやって、その他の場所では別の方にライブDJを担当してもらう予定です。回数を重ねてライブの精度も高めていきたいですし、ゆくゆくはバンド・セットなどにも挑戦してみたいです。
【イベント情報】
日程:2023年2月3日(金) (DAY)
会場:福岡 With The Style
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日程:2023年2月3日(金) (NIGHT)
会場:福岡 The Voodoo Lounge
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日程:2023年2月4日(土) (DAY)
会場:大分 10 COFFEE BREWERS
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日程:2023年3月4日(土) (NIGHT)
会場:福島 Club NEO(https://www.instagram.com/neo_fukushima/)
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……and more!

『TOUR FINAL』

日程2023年6月4日(日)
会場:東京・恵比寿NOS
【リリース情報】
※CDは12月16日(金)リリース
■906 / Nine-O-Six: Twitter(https://twitter.com/906_codomo) / Instagram(https://www.instagram.com/906nineosix/)
どこかモノクロの映画を想起させるような世界観と、ヴィンテージな質感を有したサウンド。ジャズを中心としたサンプリングで多様な作品を生み出すプロデューサー・デュオ、906 / Nine-O-Six。
昨年11月末にリリースされた最新アルバム『LOVE ON THE LUCKS』ではSoulflexのZIN、Ovallのメンバーとしても知られるmabanua、ラッパーのOMSB、SSW/プロデューサーのSUKISHAといった多彩なアーティストをゲストに迎え、洒脱な空気感で統一されながらも、これまで以上にバラエティに富んだサウンドを展開。特に後半のロック的な要素が強く出た2曲には驚かされた人も多いだろう。
これまでもコンスタントに作品をリリースし、他アーティストとのコラボも多く行ってきた906 / Nine-O-Sixだが、その情報は未だ多く明かされていない。今回はそんなプロデューサー・デュオのひとりにインタビューを敢行。彼らのバックボーンから最新アルバムの制作背景、そして彼らの音楽に一貫している美学について語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Ryo Sato(https://www.ryosato.website/)
ロックとレゲエをそれぞれルーツとする2人の出会い
――プロデューサー・デュオとして活動されていますが、それぞれの役割分担などは決まっているのでしょうか?
ホンダ:役割的には相方がビートを作ったりミックスなど、いわゆる裏方作業をメインにやっています。僕もビートを作るんですけど、主には歌唱担当という感じで。
――結成は2010年と伺いました。その経緯などを教えてもらえますか?
ホンダ:僕は元々バンドでメロコアやロックなどをやっていたんですけど、そのバンドが解散してしまった後に、ひとりでも音楽活動をしたいと思ってMPCなどを買って、トラック制作を始めました。僕の地元は大阪の岸和田というところなんですけど……。
――レゲエが盛んな街ですよね。
ホンダ:そうです。そこでレゲエDeejayなどをやっていた地元の友人たちと一緒にクルーみたいなものを結成しまして。広い駐車場の一角に、もらってきたカラオケのコンテナを置いて、そこをスタジオにしていました。相方は隣の市に住んでいたんですけど、彼は元々レゲエのサウンドマンをやっていて。共通の友人を介してそのタイミングで知り合いました。
――そこから906 / Nine-O-Sixの結成に繋がると。
ホンダ:はい。当時、まだ僕らも若かかったので、ゴタゴタがあったりでクルーとしてはあまり活動できず。そこで相方と一緒にビートメイクに集中するようになって、「せっかくなら2人でやるか」となりました。最初は名前も決めていなかったんですけど、とあるイベントに出させてもらうことになって、その連絡が来た日が9月6日だったんです。「名前どうする?」って話していたときに、PCの画面に表示されていた“906”という文字を見て、「906 / Nine-O-Sixでいこう」と(笑)。
――オシャレな決め方ですね(笑)。ホンダさんの音楽的ルーツについてもお聞きしたいのですが、そもそも音楽に興味をもったきっかけは何だったんですか?
ホンダ:僕が通っていた中学校に、若い用務員さんがいたんですけど、彼が学校にギターやアンプを持ち込んでいたんです(笑)。ちょうどそのとき、パンクやメロコアが流行っていたので、僕もギターに興味が湧いて、その用務員さんに教えてもらうようになりました。
――当時はどのような音楽を聴いていましたか?
ホンダ:すでに解散していたHi-STANDARDがすごく好きでしたね。高校生になってからはバンド漬けの3年間を送ったんですけど、次第にエモやスクリーモと呼ばれるような、もっと激しいサウンドに魅了されていって。それと同時に、ギターの練習をしていく中でブルースも聴くようになりました。
結局メンバーの進学と同時にバンドは解散してしまったんですけど、僕はお金を貯めて音楽学校に行こうかなと考えまして、地元のダイニング・バーで働くようになったんです。そこのお店はオーナーがめちゃくちゃ音楽好きな方で、常にヒップホップやジャズがかかっていました。
あるとき、The Pharcydeの『Labcabincalifornia』(1995年)が流れていて。それまではヒップホップにはあまり興味なかったんですけど、「これはカッコいいぞ」と。そこから(同アルバムの大半の楽曲をプロデュースしている)J Dillaという人がいることを知り、「音楽ってひとりでも作れるんだ」っていうことがわかって、MPC購入に至りました。
――そこから先ほどの話に繋がっていくんですね。
ホンダ:バンドの頃はギター/ボーカルでやってたんですけど、当時はビートやトラックを作ることに夢中になって。相方と一緒に地元のシンガーやラッパーを集めたプロデュース・アルバムも作ったりしていました。ただ、そうやって活動していく中で、やっぱりビートだけだと中々聴いてくれる人が増えないなと感じて。「だったら自分で歌うか」という感じで、今のスタイルに至りました。
――地元から出て、東京に来たのはどれくらいのタイミングなのでしょうか。
ホンダ:ちょうど10年くらい前になりますね。このまま大阪にいても広がっていかないなと感じて、2人で東京に来ました。ただ、上京したもののコネクションなどは何もなかったので、ワンルームの部屋でひたすらビート制作に熱中していました。
――ストリーミング・プラットフォームを遡ると、一番最初のリリースは2016年に発表された『SLICED HAM』になっています。
ホンダ:実は配信するときにデータ入力でミスってしまって。本当は『906 / Nine-O-Six’s Pizza』の方が先なんです。あの作品は当時部屋に引きこもりながら、2人で色々な機材などを試しながら作った、ある意味実験的な作品ですね。
――おふたりはいつもどのように制作を進めているんですか?
ホンダ:“デュオ”と名乗っていながらも、基本的には別々に作ることが多いです。ただ、最近はこれまで以上に僕は歌うことに集中していて、ビートの大半を相方に作ってもらうことが多いです。例えば最新アルバム『LOVE ON THE LUCKS』では、ビートの土台を相方に作ってもらって、僕はそこに味付けなどをすることが多かったですね。ミックステープのように繋がる作品が好きで、曲頭や終わりにサンプリングでインタールード的な展開も入れているんですけど、そういった部分のサンプリングなどを担当しました。
――コンスタントに作品を発表していると思うのですが、ビートや作曲の最初の種になるのはどういったものが多いですか?
ホンダ:ビートは相方も僕も常日頃から作り続けていて。逆に何もやらないと不安になってくるというか、自然とストックが増えていきますね。曲というか歌に関しては、気持ちの浮き沈みが大きく作用しているのかなと。僕の場合は何かしらのフラストレーションを感じているときの方がいい作品を作れるような気がしていて。色々な人ともこういう話をするんですけど、ずっと満たされてない感覚があるからこそ、作品を作り続けてるんだと思います。
――フラストレーションなど負の感情が起点となりながらも、それをストレートに激しいサウンドなどで表現するのではなく、あくまでも聴き心地のいいサウンドに変換するという点が興味深いです。
ホンダ:相方と作り始めた頃から、その場の雰囲気を邪魔しない音楽を目指していて。さらっと聴けるというか、気づいたらアルバム聴き終わってた、みたいな作品が自分たちの中では理想なんですよね。
――作り手からすると、自身の作品をさらっと聴き流してほしくないと考える人も多いのではと思うのですが、そういった気持ちはないですか?
ホンダ:まず、僕はパンチの効いたリリックが書けないんですよね(笑)。めっちゃ普通の家庭で育ちましたし、ドカンと盛り上がるような曲とかも挑戦したことがあるんですけど、全然上手くいかなかったんです。あと、シンプルにこういう音楽が好きなんでしょうね。
とはいえ、もちろんサウンドやリリックもとてもこだわって作っているので、さらっと聴けるしBGMにもなるけど、しっかり聴いてもらえれば細かい部分のおもしろさにも気づいてもらえるんじゃないかなと。リリースしてすぐにバズったりするより、僕らは長く聴き続けられる作品を目指したいので、こういったスタイルになるんだと思います。
――そういった考えに至ったのには、高校卒業後に働かれていたダイニング・バーでの経験も大きそうですね。
ホンダ:確かにそうですね。ああいう素敵な空間で自分の音楽が流れてほしいなと思っています。
日常に溶け込む音楽、多様なバックグラウンドを“コーヒー”に例えた最新アルバム
――906 / Nine-O-Sixとしてのサウンド感や世界観が固まってきたのはいつ頃からだったのでしょうか?
ホンダ:それこそ最初の頃はサンプリングすることが楽しくて、ジャンルや年代も考えずにサンプリングして作っていたんです。今の世界観が固まってきたのは……実は『906 / Nine-O-Six’s Pizza』を出す前にもアルバムを作っていて、その頃からですかね。ジャンルや年代感を敢えて限定して作っていくのが楽しくて。
――相方さんとは音楽的な興味やバックグラウンドなど、重なる部分が多いですか?
ホンダ:そうですね……それなりに近いとは思います。ただ、どちらかというと音楽以外の部分、好きな映画だったり目指す雰囲気や世界観というか、そういう部分の方が似通っていると思います。性格は本当に真逆なんですけど(笑)。
――そうなんですね。
ホンダ:僕がめっちゃ大雑把なのに対して、向こうは几帳面できっちりしています。衝突することももしょっちゅうで、解散しかけたことも何度もあります(笑)。でも、お互い遠慮なく言い合えるからこそ、妥協なく作品作りに挑めてるのかなって。
――最新アルバムもそうですが、近年ではSoulflexのZINさんをはじめ、多くのアーティストさんとの共作を行っています。何かきっかけなどはあったのでしょうか?
ホンダ:2019年にリリースした『NINE-O-SIX’S BURGER』くらいから、他の方とやってみたいなと思い始めました。ちょうどそれくらいの時期にZINくんから連絡をもらって、コラボEP『KNOWN UNKNOWN』の制作に至りました。大阪で活動していた頃から僕はZINくんやSoulflexの存在は知っていて、共通の友人もいたんです。その人が僕らのことをZINくんにレコメンドしてくれて、一緒に曲を作ったらおもしろそうということで連絡してきてくれました。
『KNOWN UNKNOWN』の制作はすごくスピーディーで、最初に連絡を取ってから2〜3ヶ月くらいで完成させることができました。普段はお酒飲みながらくだらない話ばかりしてるんですけど(笑)、音楽制作になるとすごく真摯に取り組んでくれるし、何よりも歌がめちゃくちゃ上手くて。ZINくんとのコラボはすごく刺激になりましたね。
――ライブ活動についてはいつ頃からスタートしていたのでしょうか?
ホンダ:東京に来てしばらくは全然やってなかったですね。知り合いもいなかったですし。大きく動き始めたのは、今回のアルバムのジャケットを描いてくれた Sayzさん(https://www.instagram.com/sayz0320/) と知り合ってからですね。 〈NITEKLUB〉(https://www.instagram.com/niteklub_tokyo/) というブランドをやっている方なんですけど、イベントに呼んでくれたり色々な方を紹介してくれて。あとはZINくんとも仲の良い FKD(https://www.instagram.com/fkd_vbpk/) と出会えたことも大きいですね。
――最新アルバム『LOVE ON THE LUCKS』の構想はいつ頃から練っていたんですか?
ホンダ:アルバムを作ろうって言う話になったのは2021年の5月くらいからですね。〈Manhattan Recordings〉の方とお話して、アルバムを出させてもらえることになって。さっきお話したように、これまでの作品はジャンルや世界観、年代感などを固めて作ることが多かったんですけど、今回は自分たちの通ってきた様々な音楽を出せたらなと考えました。
そこで浮かんできたのが“コーヒー”で。色々な国で採れたコーヒー豆がブレンドされて、抽出されることによって一杯のコーヒーになる。自分たちが大事にしている、日常に溶け込むような音楽を表すのにもぴったりだなと。アートワークでもこのコンセプトを表現するべく、コーヒーをモチーフにしてもらいました。
――それこそ「Very earthy」はレゲエ調ですし、最後の2曲は思いっきりロックに挑戦していますよね。
ホンダ:そうなんです。相方はレゲエがルーツにあるので。
――ちなみに、タイトルの『LOVE ON THE LUCKS』にはどのような思いが込められているんですか?
ホンダ:文法的にはちょっと意味がわからない感じの言葉なんですけど、なぜか数年前にこの言葉が浮かんできて、相方とも「『LOVE ON THE LUCKS』っていう作品を作りたい」っていう話をしていたんです。今回、それを引っ張り出してきたという感じです。
ベタなんですけど、これまでの作品でも“LOVE”という言葉をリリックでよく使用していたし、曲の題材も色々な意味での“LOVE”に起因することが多かった。その“LOVE”というものを突き詰めていくと、“運(LUCKS)”の要素も大きいんじゃないかなっていう考えに至って。……めっちゃ説明が難しんですけど(笑)。
――なるほど。
ホンダ:全ては巡り合わせというか、運というか。改めて過去の作品も振り返って、自分の作品におけるテーマのようなものが見つかった感覚があったので、今回の「アルバムはこれでいきたい」って相方に伝えました。
多彩な客演陣との共作と、今後の展望について
――客演の人選はどのように考えていきましたか?
ホンダ:これまでも多くの曲を作ってきたZINくんは言わずもがな、他の方たちも大前提として、僕らが普段から作品を聴いている大好きなアーティストの方々にお声がけしました。誰をお呼びしたらいい作品になるか、レーベル・スタッフやマネージャーとミーティングを重ねて考えていって。結果として、普通だったらひとつの作品で揃わないような幅広いアーティストの方たちに参加してもらえて、なおかつ作品としての統一感も持たせられたと思っています。それはすごく満足しているポイントですね。
――客演を迎える作品は、その方をイメージしてビートを作っているのでしょうか。
ホンダ:曲によりますね。最初からそのアーティストさんを目掛けて作るときもあれば、客演を入れることを考えずに作っている曲でも、途中で「ここに違う声が入ったらおもしろいかも」って閃くこともあって。今回のアルバムで言うと、ZINくんには最初から参加してもらいたいと思ってたので、「Shade tree」は前者になります。ジャズっぽいビートながらも、これまでのコラボとは全然違うテイストにしてみたくて。
ZINくんは僕がネガティブな人間だということを知っていますし、この曲もリリックの最初の方はちょっと暗いというか、マイナスの感情が綴られているんですけど、それが後半では少しポジティブなところに辿り着けた気がしていて。こういった部分がコラボレーションならではのおもしろさだなと感じました。
――個人的にはmabanuaさんの参加も意外でした。どのような経緯でコラボレーションに?
ホンダ:mabanuaさんは僕たちが長年憧れていた方で、まさかご一緒できるとは思ってなかったんですけど、レーベルの方が提案してくれて。僕らからしたら「え? できるんですか?」っていう感じでした。個人的に、mabanusaさんが他の人のビートの上で歌っているイメージがあまりなかったので、今回は敢えてそこに挑戦してみました。mabanuaさんってドラムやビート・メイキングも超一級だと思うんですけど、ボーカルも本当に素晴らしくて。僕らもかなり意識している部分なのですが、“グルーヴの追求”という意味では遥か先を行かれているなと感じました。
――mabanuaさんのボーカルを聴いて、グルーヴを感じたと。
ホンダ:細かい話なんですけど、ビートのノリ方、その解釈がすごいなと思いました。音が鳴っていなくても、ビートやリズムを分解して多様なノリを生んでいるというか。だからこそ絶妙なレイドバック感が出るんですよね。最初にmabanuaさんから返ってきたボーカル・データを聴いたときはめちゃくちゃテンションが上がりましたね。あと、言わずともこちらの意図を読み取ってくれたことにも驚きました。12小節で展開していく部分はそれに沿って書いてくれたり。
――10曲目に位置する「Over the slope」には昨年大きな話題を呼んだアルバム『ALONE』のリリースも記憶に新しいOMSBさんが参加されています。
ホンダ:お声掛けしたのはアルバムが出る前だったんですけど、僕ら2人ともラッパーとしてもビートメイカーとしても大好きで。声の存在感も圧倒的ですし、リリックも素晴らしいですよね。自分にはできないパンチライン満載のアプローチというか。「Over the slope」に関してはOMSBさんに乗ってもらうことを想定して相方がビートを作って、最初の打ち合わせで聴いてもらったらすぐに「これでいきましょう」となり、制作もスムーズにいきました。
――客演の最後のひとりはSUKISHAさんです。この曲は特にSUKISHAさんのユニークなリリックが印象的です。
ホンダ:SUKISHAさんも自身でビートを作ったり、何でもできる方だと思うんですけど、僕は特にメロディ・メイカーとしての側面がすごく好きで。最初にビートをお送りしたら、SUKISHAさんが先にヴァースを入れてくれました。リリックでは学生時代の悶々とした想いが綴られていて(笑)。僕も学生時代はずっと憂鬱な気持ちで、修学旅行とか文化祭も気乗りしないし、早く学校辞めてバンド活動したいって思ってたので、かなり共感しました。
SUKISHAさんに引っ張られる形で僕も当時の鬱屈とした感情を綴ったんですけど、そしたら少しだけ過去の自分が成仏したというか、ちょっとだけ決着がついた気がして。自分たちだけではこういう内容の曲は絶対作れないと思うので、これもコラボレーションのおもしろいところだなと。
――ローファイかつオーガニックな質感の音色も印象的でした。トラックは全て906 / Nine-O-Sixのおふたりによるものですか?
ホンダ:土台となった僕らのビートの上で、SUKISHAさんが色々な楽器を乗せてくれたんです。それで印象もガラッと変わりましたね。鍵盤のソロ・パートとかもSUKISHAさんが弾いてくれました。SUKISHAさんに限らず、今回アルバムに参加してくれた方たちはみんな熱を持って作品制作に臨んでくれて、すごく嬉しかったです。
――先ほどもお話したとおり、最後の2曲がロック調の楽曲というのも驚きでした。ある意味“変化球”とも取れる作品だと思うのですが、この2曲はどのようにして生まれたのでしょうか。
ホンダ:実はアルバムの制作前からこの2曲はあって。以前から自分たちとしては気に入っていたんですけど、中々他の作品に入れることができなかったんです。でも、今回は先にお話した通り、自分たちの色々な側面を出そうと決めたので、満を持して収録することにしました。元々自分のルーツにロックがあるのと、あとはBROCKHAMPTONやSpillage Villageも大好きで。彼らもロックや様々なジャンルをミックスさせるじゃないですか。そういう姿勢に触発されたという部分もあります。
――この2曲でアルバムを締めくくっているので、今後はさらに多様なジャンルに挑戦していくのかなと感じました。2023年の活動についてはどのようなことを計画していますか?
ホンダ:もちろんこれまで通りジャズやソウルをサンプリングする楽曲も作りつつ、今回のアルバムで自分たちの多様な面をお見せできたかなと思うので、今後もおもしろいと思ったことには素直にトライしていきたいです。あと、もっと制作ペースを上げたいんですよね。
――さらに、ですか?
ホンダ:はい(笑)。相方とも話したんですけど、僕らは本当に普通の人なので、みんなに知ってもらう、覚えてもらうためにはたくさんリリースするのがいいんじゃないかって。「こいつらまた新作出してる」って思ってもらえたら嬉しいですね(笑)。それが自分たちの強さでもあると思いますし。今後の野望みたいな部分でいうと、海外アーティストとのコラボも積極的にやっていきたいです。
――ライブの方はいかがですか?
ホンダ:実は2月からリリース・ツアーを行う予定でして。今、相方は大阪に住んでいるので、近くでライブするときは一緒にやって、その他の場所では別の方にライブDJを担当してもらう予定です。回数を重ねてライブの精度も高めていきたいですし、ゆくゆくはバンド・セットなどにも挑戦してみたいです。
【イベント情報】
日程:2023年2月3日(金) (DAY)
会場:福岡 With The Style
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日程:2023年2月3日(金) (NIGHT)
会場:福岡 The Voodoo Lounge
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日程:2023年2月4日(土) (DAY)
会場:大分 10 COFFEE BREWERS
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日程:2023年3月4日(土) (NIGHT)
会場:福島 Club NEO(https://www.instagram.com/neo_fukushima/)
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……and more!

『TOUR FINAL』

日程2023年6月4日(日)
会場:東京・恵比寿NOS
【リリース情報】
※CDは12月16日(金)リリース
■906 / Nine-O-Six: Twitter(https://twitter.com/906_codomo) / Instagram(https://www.instagram.com/906nineosix/)

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