地球最後の日に、工藤晴香は何を想う
か? ワンマンライブ『Doomsdays S
howcase』レポート

2022.12.29(Thu)工藤晴香ワンマンライブ『Doomsdays Showcase』@豊洲PIT
2022年12月29日、年の瀬の豊洲PITを工藤晴香が染め上げた。1部に「くどはるーむ」と題してゲストに相羽あいなを迎えたトークライブ、そして2部にワンマンライブ「Doomsdays Showcase」と両部参加した方にとってはまさしく”くどはる尽くし”の充実した1日となったはずだ。今回れポートをお届けする2部では”地球最後の日”がテーマとなっており、そんな日を彼女は一体どんな風に過ごすのか?この一点に今日の魅力は詰まっていたと思う。彼女らしくマイペースに、時に竹を割ったような潔さで紡ぎあげた2時間の様子を書き記す。

2022年の工藤晴香としては、3月に初のフルアルバム「流星列車」のリリースがあり、5月にはワンマンライブ「Vogel」-Under the Sun- / -Cry for the Moon-があったのだが、そんな2022年を締めくくるべく、約半年ぶりのソロアーティスト活動として、この年の瀬に「Doomsdays Showcase」の開催が敢行された。ライブの開催が発表されて以降、彼女の公式YouTubeでは新曲を毎月配信されていたりもしたが、全てはこの日に向けてのもの。そんな、まだ音源化もされていない新曲も初披露された。
まずは「ROCK STAR’ s Brand new song 」そして「Utopia」とアップテンポなナンバーで会場をかき鳴らし、初速からフルスロットルで場内のボルテージをガンガンに高めていく。続く3曲目「MY VOICE」ではモニターにMVが映し出される。1曲目から既にそうだが、改めてドラム、ギター、ベース、どれも音圧がすごくて圧倒される。
「見ました?オープニングの映像!地球に大型隕石が接近中ということで……」と彼女が語るように、今回のライブは”Doomsday”、つまり終末の日がコンセプトとなっているようで、「本当はライブなんかしてる場合じゃないんですけど、逃げたところで助からないんで(笑)じゃあ楽しむしかないでしょ!」と、いきなり地球滅亡の危機に巻き込まれたら、たまったもんじゃないが、確かにそうかもしれないなと思わせるだけの説得力もある。
「みんなの勢いがすごくて負けそうだったけど、最高で激アツな夜にしちゃいましょう!じゃあ次の曲行っちゃおうかな?」と奏で始めた「Thunder Beats」では「みんな一緒に~!」と語りかけ、観客と一緒にヘドバンで盛り上がる。続いて「KEEP THE FAITH」の速弾きのイントロが聞こえてくる。ラップパートがあったり、転調があったりと、本当にジェットコースターのような展開のゴリッゴリのミクスチャーロックをやり切ると、「Because I am」ではバスドラムの「ドスドス!」という音に合わせ手拍子が鳴る。
「新曲Because I am披露しました!」と口火を切り「今日ライブするって決まって、いきなり新曲やるのもアレかなと思って、毎月YouTubeでアップロードしてたんですけど、毎月新曲出すのって大変でしたね(笑)」と、この5ヶ月間を振り返った。また
「わたし来年でデビュー20周年なんです。」と自身の芸能活動もアニバーサリーを迎える事を伝え、「みんなと出会えて、私の選んだ道は間違ってなかったんだなって思えたんです。」と感謝の言葉でMCを結んだ。
そんな感謝の気持ちが込められた楽曲「My Story My Life」は、誰もが自分自身の人生を創り上げるクリエイターなんだよ、とメロコアサウンドに乗せて語りかけてくるのだが、そんなこんなで20年のキャリアを積み重ねてきた彼女の言葉を聞いたあとだと、バンドメンバーが奏でる音圧以上に深みが増していく。その後も「HOPE」「それぞれのPLANET」とメッセージ性の強い2曲が続いた。リリックビデオのように直筆の歌詞がモニターに映し出されたりと、彼女からの感謝や、ファンの皆へ伝えたい生き様の部分が強調されたパートだったように感じた。
「はちみつタイムしていい?」と水分補給とはちみつで喉のケアもしつつ、手鏡持って髪の毛を直したり、MCパートとはいえ、まるで楽屋のようなラフさに思わず笑いそうになるが、それだけオーディエンスに心を委ねている証拠なのだろう。
「それぞれのPLANET」は「自分もこの曲に励まされる」と語り、「ここからは月と太陽と地球の物語、それぞれ立場や役割が違うけど、みんな同じように孤独を抱えている。だけど決してそれはネガティヴな事じゃない、それを感じて欲しいです」と「Cry for the Moon」「Under the Sun」「Tread this Earth」の3曲を続けた。
急に猫撫で声で「お願いがあるんですけど……スマホ持ってる?」とオーディエンスへスマートフォンのフラッシュを焚くようにおねだりをする。
「すごい、星みたい~!私の大好きなLUNA SEAのライブでもこういう演出があって、私も絶対にやりたい!と思ってたんです」と彼女たっての希望をここでえることに。
ここからは撮影可能タイムというアナウンスがなされ、大勢のオーディエンスにカメラを向けられながら「My Proof」を歌っていった。曲が終わると「みんなケータイしまってね~!」と一言告げ、そのまま次の曲へ。
「Supernatural」のイントロが聞こえてくると、そこかしこでツーステが踏まれる。世が世ならモッシュが起きてもおかしくないような、まるで小箱のライブハウスみたいな光景に驚く。「Real me」では再びギターを担ぎ、「ROCK STAR」はまさに”POWER CHORD”でTHE・パンクなテイストから、派手な転調、ピアノソロのエモ展開へと物語が続く。
「先ほどの動画はハッシュタグつけて、ライブ後に投稿してください!」とアナウンスもあり、最後のMCパートを終えると、ライブもいよいよ終盤戦へ。
こちらもこの日に向けて制作された新曲「910 STARs MUSIC」では、YouTubeにもアップロードされているカラオケ風のMVが流れる。カラオケのように文字の流れるテロップはもちろん、”間奏 約15秒”まで作り込まれていて、非常に味わい深い(笑)。サビの階段を駆け上がるようなアルペジオが気持ち良すぎるし、彼女の地元である大阪の風景も非常にエモいのだが、曲のアウトロで「Next:Magic Love」と次曲が予約された時のテロップが出る芸の細かさで、ちょいちょい笑いそうにもなる。
対して新宿の街並みの中でMVが撮影された「Magic Love」だが、ジャンプのタイミングやクラップの場所もバッチリで、オーディエンスとのシンクロ率を上昇させていく。「楽しい時間もあっという間で最後の曲です。ありがとうございました。」と「旅立ち」を最後に披露。”終末”という設定があったからなのか、まるで”アルマゲドン”のラストのように、喜びと悲しみも入り混じったような、壮大なラストシーンを飾っていたように感じた。
先ほどのMCでも言及があったように、当然アンコールを求める拍手に応じて、まずはバンドメンバー、そしてくどはるが登場すると「新曲です!」と「Crawl up!!」を初披露。「急いで着替えて戻ってきたわけだけどさ、あっついね!!息も上がってますよ。こんなにゼーハーしてるのスタァライトぶりかも!」とひと笑い誘ったところで、来年の告知が。「2023年、春 KD-HRColoful Orchestra Tour!開催決定!!くどーはるカラフルオーケストラツアー、略してくどはるカラオケツアーです(笑)」と、来年はいよいよ初の全国ツアーを行うことを発表した。3月4日の京都を皮切りに、大阪/愛知/静岡/埼玉/宮城/北海道/岡山/福岡/神奈川と全国10都市を巡るカラオケツアーとは、一体どのような内容になっているのだろうか。「個人的には地元ということもありますが、大阪公演の会場になっているESAKA MUSEはよく遊び行ってたから、アツいよね。」と、新年が楽しみになるサプライズで会場を湧かせてくれた。
「アルバムを出して、舞台やライブも経験し、激動の2022年でした。出会いもあれば別れもあり……。」と2022年、そして自身の芸能活動を改めて振り返り、「アナタがいるから」そして「Doomsday LoveSong」を披露。長く活動を続けてきたからこその人との繋がり、縁の有り難みを噛み締めた年末になった。こちらも直筆の歌詞カードがより一層、その想いの温もりを感じさせた。
工藤晴香の楽曲はとにかくサウンドが強い。ライブを通して改めてそう感じた。私はあえて”キッズ”と呼びたいが、彼女のライブに来るキッズたちの心を掴む理由がよくわかる。彼女が奏でるロックサウンドはメタル、メロコア、パンク、オルタナティヴ等々と幅広く、また重たいサウンドの上に乗っかる甘く甲高い声は完全にメタルの方程式だ。
たとえ明日、世界が崩壊したとしても、笑って過ごそうよ。本当に彼女はそういうタイプなんだなと実感した。20周年を経て、辿り着いた答えがコレなのは、すごくハッピーで素敵だし、羨ましくもある。また、この年の瀬のタイミングを”地球最後の日”と例えて、2022年に後悔を残させないためのライブだったのかな?とも思えた。少なからず、私は彼女と彼女の歌声のおかげで気持ちよく新年を迎えられそうだ。きっと、気付けばあっという間に春の全国ツアーはやってくるだろう。この冬を乗り切るには十分すぎるほどにアツくパッションほとばしる2022年の締めくくりとなった。
文・レポート=前田勇介 撮影=高田真希子

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