東山紀之 堂本光一 井ノ原快彦の演出
、『JOHNNYS’ World Next Stage』が
帝国劇場で華麗に開幕【レポート】

ジャニー喜多川氏のエンターテインメントの集大成として、2012年11月の初演以来、ジャニーズ事務所の様々なアイドルたちが上演を重ねてきた舞台『ジャニーズ・ワールド』『ジャニーズ・アイランド』シリーズ。その最新作となる『JOHNNYS’ World Next Stage』が、2023年1月1日(日)、東京・帝国劇場にて開幕した(上演は1月26日(木)まで)。初日に先駆けて行われたゲネプロの様子をレポートする。

今回メインで出演するのは、次期デビューが期待されるジャニーズJr.の HiHi Jets、美 少年、少年忍者、その他ジャニーズJr.を合わせた総勢50名。また、演出を務めたのは、彼らの大先輩である東山紀之、堂本光一、井ノ原快彦。3人で各シーンを分担して演出し、全体の統括を堂本が務めたという。
東山は2018年に『ジャニーズ・ハッピーニューイヤー・アイランド』にて、ジャニー氏と共同で演出を行なった。堂本も2000年から『SHOCK』シリーズの主演を務め、ジャニー氏の没後は舞台『DREAM BOYS』の演出も引き継いでいる。そして井ノ原は昨年9月から、ジャニーズJr.の所属事務所・ジャニーズアイランドの社長に就任した。出演するJr.たちや、ジャニー氏のエンターテインメントについて深く理解している3人は、演出家にうってつけだ。

第1幕は、若きJr.たちが“ジャニー氏の作り上げたジャニーズのエンターテインメント”を追い求める姿をショーと芝居で描く。
オープニング曲は、今作のために堂本が作詞・プロデュースした新曲『天からの手紙』。ジャニー氏からジャニーズJr.への想い、そしてジャニーズ・アーティストの未来に向けての想いが描かれた壮大なバラード・ナンバーとなっている。その後、少年忍者が『The Shining Star』、美 少年が『Where My Heart Belongs』、HiHi Jetsが『In Your Life』と、同シリーズでこれまで歌われてきた人気曲を披露し、観客を物語の世界へと誘う。
続いてはジャニーズ舞台の定番のひとつである「和」のコーナー。少年忍者の内村颯太と深田竜生を中心とした変面、大勢のJr.たちによる和太鼓の乱れ打ちと、躍動感あふれる演目が続く。そしてこのコーナーのクライマックスは、美 少年 対 HiHi Jetsによる殺陣。年齢も近く普段から仲のいい2グループだが、ここでは和気あいあいとした雰囲気は封印し、刀をぶつけ合う。しかし一方、11人という大人数で複雑な殺陣を成立させることができるのは、仲がいいからこそとも言えるだろう。
その後の「戦争」のコーナーも『ジャニーズ・ワールド』初演から続く大事な演目。太平洋戦争、朝鮮戦争を経験したジャニー氏は、エンターテインメントを通じて平和の尊さ、戦争の悲惨さを観客に訴え続けてきた。
まずフォーリーブスの「急げ!若者」に乗せて、空襲警報に翻弄される若者たちの姿が描かれる。長いソロパートを担当するのは作間龍斗(HiHi Jets)と金指一世(美 少年)。普段、どことなくクールな印象を持たれがちな2人だからこそ、魂を込めて歌い上げる姿に胸を打たれる。
また井上瑞稀(HiHi Jets)と川﨑皇輝(少年忍者)は、愛する人のために命を散らす特攻隊を熱演。もう会えない恋人に向けての長い独白の後、フォーリーブスの「君にこの歌を」を歌う井上の切ない姿が印象的だった。
その後はフレッシュなジャニーズJr.たちがSMAPの「Triangle」をパフォーマンス。この曲は、2004年にニューヨークの同時多発テロをきっかけに制作されたものだが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、再び注目が集まった。従来の『ジャニーズ・ワールド』シリーズでは、戦争パートの後に東京オリンピックの様子を描くことで、未来への希望を表現していた。しかし今年は「Triangle」で戦争パートを終わらせることで、今現在の世界情勢、反戦への想いがより色濃く現れているように感じられた。
1幕の最後は、2023年の若者の葛藤を描いた芝居パート。「未来に向けて自分は何をすればいいか分からない」と悩む橋本涼(HiHi Jets)らに、織山尚大(少年忍者)演じる謎の青年が手を差し伸べる。舞台に登場した織山が被っているのは、ジャニー氏が愛用していた黒いキャップ。織山は、自分が誰なのかは最後まで明かさないのだが…つまり、そういうことなのだろうか? コミカルなセリフのやり取りに隠された未来へのメッセージを、ぜひ感じてほしい。
『JOHNNYS’ World Next Stage』ゲネプロより (撮影:鈴木久美子)

第2幕は、ジャニーズ歴代の名曲たちを新たな振付・演出で魅せるノンストップ・ショー。演出は主に東山が担当した。自身も日頃からトレーニングを怠らないことで知られる東山の演出は、とにかくストイック。舞台セットが極端にシンプルな分、出演するJr.たちは身体能力とダンス力で魅せなければいけないのだ。
ショーのオープニングを飾るのは、HiHi Jetsと美 少年による少年隊の「Act-Show」。一糸乱れぬダンスの合間には、なんと中国武術剣術のパフォーマンスも! 瞬きする間もなく魅せられ、あっという間に1曲が終わってしまう。
続いては少年忍者がTOKIOの「宙船」を披露。元気いっぱいな少年らしい“動”のパフォーマンスを持ち味としてきた少年忍者だが、ここでは全員同じポーズでピタッと止まったり、ゆっくり身体を動かしたり。大人っぽい“静”のパフォーマンスを見事にこなし、新たな一面を見せていた。
と、突然ジャニーズとは縁のない(?)「ルパン三世のテーマ」が。ここではHiHi Jetsがルパン三世風、美 少年が銭形警部風の衣装で登場し、タップダンスを繰り広げる。合間にラジオ体操や「キュンです」のポーズが組み込まれた楽しい演目だが、中でも岩﨑大昇(美 少年)の動きのコミカルさは、まるで本物の銭形警部さながら。ジャニーズのエンターテインメントの幅広さを思い知らされる。
他にも猪狩蒼弥(HiHi Jets)や藤井直樹(美 少年)のラップ、青木滉平(少年忍者)のトランペット、檜山光成(少年忍者)のドラム、など特技を生かし、近藤真彦の「スニーカーぶる〜す」やKAT-TUNの「Real Face」など、時代を超えた名曲のパフォーマンスが続く。
また後半では、これまで上演されてきたジャニーズ・ミュージカルの人気曲を、メドレーで堪能できる贅沢なコーナーも。「Let’ s Go to Tokyo」(『PLAY ZONE』より)を皮切りに、浮所飛貴(美 少年)、岩﨑大昇(美 少年)、橋本涼(HiHi Jets)、北川拓実(少年忍者)が見事なコーラスを響かせる「Never My Love」(『ジャニーズ伝説』より)。那須雄登(美 少年)、藤井直樹(美 少年)、井上瑞稀(HiHi Jets)、作間龍斗(HiHi Jets)、ヴァサイエガ渉(少年忍者)、織山尚大(少年忍者)らが大人の色気たっぷりに踊る「SOLITARY」(『SHOCK』より)。そして高橋優斗(HiHi Jets)、猪狩蒼弥(HiHi Jets)、佐藤龍我(美 少年)、金指一世(美 少年)、川﨑皇輝(少年忍者)、元木湧(少年忍者)、深田竜生(少年忍者)らが衣装まで再現し華やかに歌う「Next Dream」(『DREAM BOYS』より)。ジャニーズファンにはたまらないメドレーだろう。
ジャニーズ事務所の60年間の歴史をたっぷり堪能した後は、井ノ原がプロデュースを手掛けた3つの新曲をお披露目。HiHi Jetsの「NEVER STOP -DREAMING-」は、夢を諦めない少年たちの想いが切なくも熱く描かれている。美 少年の「吉吉 Bang!Bang!」は、世界中へ愛を届けるという前向きなオーラを感じるポップな楽曲。そして少年忍者の「Journey Must Go On」は、次の時代を自らの手で切り開く! というエネルギーが爆発する力強い1曲だ。「Next Stage」と冠された本作のラストにふさわしい、各グループの魅力を堪能できる時間だった。
『JOHNNYS’ World Next Stage』ゲネプロより (撮影:鈴木久美子)

公演全体を通じて一番印象的だったのは、出演しているジャニーズJr.たちの“熱”だ。2時間30分、舞台の上でこれでもかというほど激しく歌い踊る彼らだが、全ての出番に手を抜かない。1曲終わるごとに息を切らし、それでもまた次の曲を全力で魅せる。その姿からは「偉大な先輩である東山、堂本、井ノ原、そして舞台の生みの親であるジャニー氏に恥じぬように頑張りたい」「まだJr.ながらも一人のジャニーズのタレントである」というプライドが感じられた。この公演に限らず、そんな彼らがこれから作っていくNext Stageは、きっと輝かしいものになるだろう。
取材・文=井上明日香  写真撮影=鈴木久美子
なお、1月3日(火)12時30分開演の回のカーテンコールで、会見がおこなわれた。二十数分間、終始和気あいあいとした雰囲気の中、笑いの絶えない時間が流れた。
まず、今回の公演の稽古について司会者から訊かれると、猪狩蒼弥(HiHi Jets)が元気に挙手をして積極的に語り始めた。今回、リハーサルの開始が早かった。例年の倍=約2か月の期間をとって稽古がおこなわれた。さらに、演出のひとり東山紀之の提案により、毎回、全員ヨガマット持参のうえレッスン1時間前に集合し、“レッスンのためのレッスン”“リハのリハ”というものがルーティンでおこなわれたのだという。
「演出のお三方は、役者を褒めて伸ばすタイプだったんです」と猪狩。「全然怒らない。基本『めっちゃよかった、めっちゃよかった』と言いつつ『ただ、一点いいかな』と、めっちゃエグいことをいうんです(笑)」「堂本光一さんも殺陣の稽古で、『おれ、泣いちゃうよ、泣いちゃうよ』とか言いながら『でも一点』と。『喉がはちきれるくらい叫べ』と指導されました。『君たちがしんどければしんどいほどお客さんは楽しいんだから』と。褒められると気持ちが持ち上げられて、肉体が騙されるかんじなんです。“気持ちいい!”と思いながら演じたものの、帰ってきたらヘロヘロ、みたいな(笑)」
髙橋優斗(HiHi Jets)も、通称“リハのリハ”がキツかったと述べる。「毎回、一時間。発声やストレッチに腹筋等々…。でも、それで身体がとても変わりました」。彼はダンスが苦手で、稽古初日から東山から「ロック・オン」されたとのこと。「(東山を真似て、右手で指さすポーズで)『優斗、ポイント』と言われて」
続いて猪狩が「優斗は“ノート”(かつて“ダメ出し”といわれていた舞台用語が最近はこの言葉に置き換えられている)も他の人の5倍くらいあって。でも、次回それを克服してみせると、東山さんが(右手で指さすポーズで)『優斗、合格』と言ってくださるんです」と、ここでも東山のモノマネ。
内村颯太(少年忍者)も挙手して、語り出す。「『DESTINY』という曲を、ヴァサイェガ渉(少年忍者)と二人でまかされれることとなり、東山さんにアドヴァイスを聞きにいったんですよ。そしたら、『身体から光を出せ』と言われました」
すると、内村と一緒に東山のところに行ったというヴァサイェガ渉が、「光を出せ!」と、再び東山のモノマネ。すっかり、東山モノマネ祭りの様相を呈し始めてきたところで、川﨑皇輝(少年忍者)が「今日は東山さんがいらっしゃらないから、みんな好き勝手やってませんか」と釘を刺した。
ところで今回の公演では、振付を、従来から作品を支え続ける振付チームに加え、前田清実( 『Triangle』『夜空ノムコウ』)、HideboH(『ルパン三世のテーマ』)、梨本威温(『Act-Show』『Introduction』『宙船』)、Sota(GANMI)(『吉吉 Bang! Bang!』)といった超一流コレオグラファーをはじめ、 ジャニーズ•アーティストからも屋良朝幸(『スニーカーぶる~す』)、五関晃一(A.B.C-Z)(『Real Face』)、岩本 照(Snow Man)(『硝子の少年』)、さらに今回のキャストから猪狩蒼弥(HiHi Jets)(『In your life』) 、織山尚大(少年忍者)(『Journey Must Go On』)も振付に参加している。また、中国武術剣術指導には女優の山本千尋が、アクション・殺陣には『Endless SHOCK』の諸鍛冶裕太が、そして和太鼓指導には同じく『Endless SHOCK』の日野一輝が参加するなど、スタッフ陣の豪華さには目を見張らされるばかりだ。
川﨑皇輝(少年忍者)も「少年忍者は12人で『硝子の少年』を岩本 照くんの振付で踊らせていただき、彼をほぼ独り占め状態にできました。岩本くんらしい、まるでSnow Manのような振付でした。(TV番組の)『SASUKE』で彼にお世話になった安嶋秀生(少年忍者)経由で、現在もアドヴァイスをいただきながら、ますます完成度を高めています」と振付の魅力をアピール。また、弱冠13歳の小山十輝(ジャニーズJr.)が後方から進み出て、自身の「緊張」について、また「お年玉」について嬉しそうに報告。
会見も終わりに近づき、司会者から今回の三人の演出家(東山紀之、堂本光一、井ノ原快彦)についての印象が問われた。
東山については、井上瑞稀(HiHi Jets)が「お客さまが泣くシーンでは、役者は涙を流しすぎたり声を震わせたりせず、あえて落ち着くようにしたほうがいい、というアドヴァイスを東山さんからいただいて、新鮮でした。また、立ち方、歩くスピード、振り向き方など、全部細かく指導していただきました。しかも、口頭で説明するだけではなく、実際に東山さん本人が演じて見せてくださるので、それがとてもわかりやすかった」と話した。
堂本については、浮所飛貴(美 少年)が語る。「僕たちは舞台に登場する際に、真面目な顔をして堅くなりがち。でも、最初から笑っていることでよりお客さんも感動するから、と光一さんに言われたことが印象的でした。役者が笑顔で明るい部分を前面に出すことで、お客さんが感動に至るという理論を教えてくださいました」
そして井ノ原については、橋本涼(HiHi Jets)が「イノッチの熱量はマジすごくて、ぶっちゃけパッションいちばん! この公演でもわざわざ僕たちの楽屋に来て励ましてくださるので、とても助かっています」と語れば、猪狩蒼弥(HiHi Jets)も「リハ初日、イノッチと初対面で若干気まずかったのですが、彼が“エアバレーボールやろうか”と言ってくれて、みんな一気に打ち解けました」とイノッチの見事な人心掌握術を披露。調子に乗った猪狩は「サンキュー、イノッチ、ありがとな!」と軽口をたたき、周囲から「やめなよ、怒られるよ」と注意されていた。
最後は髙橋優斗(HiHi Jets)が「このような御時世ですが、ジャニーさんが愛したこの舞台を最後まで盛り上げていきたい。また、2025年には建て替えとなる帝国劇場も盛り上げていきたい。そのためには、皆様のお力添えが不可欠です。これからも僕たちのことをどうかよろしくお願いします」と、締めの挨拶をしっかりとおこなった。
文=SPICE編集部

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