NIGHTMARE 貫き通し到達した円熟味
、ツアー初日に見た大人のヴィジュア
ル系バンドの未来の希望

NIGHTMARE TOUR 2022 I’ m With You

2022.11.17 川崎CLUB CITTA’
NIGHTMAREの全国ツアー『NIGHTMARE TOUR 2022 I’ m With You』が11月17日、神奈川県・川崎CLUB CITTA’ で開幕。本ツアーは11月16日にリリースしたニューシングル「With」を掲げて展開するもので、このあと全国を巡ったあと、12月11日、東京・TOKYO DOME CITY HALLでファイナルを迎えることになっている。SPICEではさっそくこのツアー初日の模様をレポート。今後も続いていくツアーなのでネタバレなしで書き進めたいと思う。
チケットSOLD OUTで迎えたツアー初日。「With」制作時に“いろいろな時計が回っているイメージ”で咲人(Gt)が集めたと言っていた時計の音がぐんにゃりと時間を歪めていくような新SEが流れるなか、長身のRUKA(Dr)が足早にステージに登壇すると、続けて足の細さを強調するようなパンツが目を引くNi~ya(Ba)、イケ女風のハイヒールサンダルを履いた咲人、続いておでこ出しヘアの柩(Gt)がマント姿で登場。最後に、ペイントのリメイク加工を施した超ワイドパンツをはいたYOMIが合流したところから、ライブはスタート。黒一辺倒で耽美かつ退廃的なデザインが多いNIGHTMAREのなかでも、本ツアーはメンバーの新衣装、さらには花をモチーフに使った新アーティスト写真、舞台のRUKAのバックに掲げられたボタニカル柄のようなツアーロゴ、NIGHTMAREらしからぬ“With You”という温かみのあるツアータイトルのチョイス。どれもが、バンドとして次のフェーズ――「With」インタビュー時のメンバーの発言にもあったように――を感じさせる新しさがあって新鮮。それらがいつものNIGHTMAREのライブ空間にも“抜け感”を与え、ツアー初日に観た彼らは、バンドのステージングまで大人のヴィジュル系としての余裕さえ感じられる味わい深いパフォーマンスを、あの“ジャイアニズム”なNIGHTMAREが繰り広げているというところが印象的で、個人的には感慨深かった。この、“次のフェーズ”に突入した大人のヴィジュアル系バンド、NIGHTMAREをぜひ多くの人に観てもらいたい。
V系が衰退していると言われている昨今。復活後の彼らは今年7年ぶりのニューアルバム『NOX:LUX』を発売。今作、さらに本アルバムを掲げたツアーで、音楽的なチャレンジをしながら作ったバラエティー豊かな楽曲たちを、緻密な流れで組み立て、この先の扉の向こうにある希望をNIGHTMAREらしいパフォーマンスで描き出してみせた。扉の向こうにあったのは、このやっかいな時代を生きていく希望だけではなく、大人になったヴィジュアル系バンドの未来の希望でもあったのだと、今回のツアーを観て確信した。
本公演は最新曲をタイトルに掲げたツアーなので、本編は「With」、「スピン」、「殺したいほど愛してる」という新曲3曲を各ブロックのメインどころに置きながら、そこに過去曲を散りばめた構成になっている。初日は、みんなが聴きたいだろうあんな曲や、この季節にぴったりな懐かしい曲に加えて、『NOX:LUX』からシングル以外のアルバム曲を多めにチョイス。
結成当初からこれまで、ヴィジュアル系というジャンルを貫き通してきた彼らだからこそ到達できた“円熟味”。それがいままさに、5人のステージパフォーマンスのあちこちから垣間見れて、このプロフェッショナルな表情がたまらなく説得力があってカッコよかった。例えば、初日の中盤に演奏した冬の楽曲。前曲からの流れで、季節が冬へと移り変わるというドラマティックな展開も相まって、切なさが体に沁み渡った。
叫んだりエモーショナルに歌うだけではなく、丁寧に体を楽器のように扱い、響かせて歌うのがパフォーマンスから伝わってくるYOMIのいまのボーカルワーク。リズムに抑揚をつけるRUKAのリムショット。アウトロで咲人と柩が違うメロディーを交互に被せながら、それをNi~yaが最後に弾くメロディーで回収して、CDとは違うエンディングを作り出すアレンジまで、いまのNIGHTMAREは5人のプレイヤーが放つ音が際立って届いてくる。だから、NIGHTMAREならではの煽り系の曲も、各々のソロを回しながらという展開が新しい見どころとなっている。3連でどこまで頭を触れるかということで咲人が書き下ろした曲も、前回のツアー以上に本公演でもファンが激しいヘドバンを繰り出し、フロアに見事な黒い波を出現させていた。Ni~yaのスラップベースが炸裂するダンサブルなナンバーでは、柩とともにみんなでクラップを入れるエンタメな楽しさももちろんありつつ、最後は、“With You”という、彼らが言葉にはできないメッセージを、過去の名曲を使って見事に伝えきるという展開で本編を感動的に締めくくってみせた。
にも関わらず、だ。アンコールではYOMIが、発売したばかりの新曲3曲でノリまくるファンに対して「ノレるの、すごいよね?」と言うと、「みんな百戦錬磨、プロだから」と柩が言い、彼らとともに円熟味に達してきた観客を賞賛。そこに、YOMIがツアータイトルにひっかけて「みんなも数々のライブ、俺たちと“WITHって”きたからな」と言うと、これが今日イチのヒットを記録。ここからはメンバーのMC回しが全部「WITHってる」、「WITHる」、「WITHろう」の爆笑トークへと展開し、さっきまでの感動がはちゃめちゃに(笑)。RUKAにMCの順番が回ってくるも「何か言おうとしてたんだけど、忘れた」と言うとYOMIが「思い出したら声かけて」と返答し、それに対して柩が「そんなMCある? 曲中“思い出した!”ってRUKAさん、ドラム止めて言いかねないよ?」と言うとRUKAもメンバーもファンも大爆笑。YOMIが「MCが面白いのもNIGHTMAREのライブの醍醐味!」と言っていたが、この部分だけは次のフェーズに行っても相変わらずで、そんななところもいい感じだ。
そして、最後は「ツアー行ってきます!」と客席に向けて柩が手を振り、ステージを後にしてこの日のライブを終えた彼ら。ぜひとも、このツアーでいまバンドとしてとてもいい成熟期に入った大人なヴィジュアル系バンド、NIGHTMAREを味わってみてほしい。

取材・文=東條祥恵 撮影=森好弘
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>>【インタビュー】NIGHTMAREが示す“大人のヴィジュアル系バンド”の姿、30枚目のシングル「With」から聞こえるバンドの新たなフェーズ 

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