市村正親がパワフルにカンパニーを牽
引し、たくさんの人に幸せとあたたか
さを届ける ミュージカル『スクルー
ジ』製作発表記者会見

チャールズ・ディケンズの名作「クリスマス・キャロル」を原作にしたミュージカル『スクルージ』。クリスマスが大嫌いな金貸しの老人・スクルージがかつての親友の亡霊の計らいによってクリスマスの精霊たちに出会う物語だ。クリスマスシーズンにぴったりのあたたかい作品に魅力的な音楽を乗せた本作は世界各地で上演されており、日本においては1994年の初演以来、市村正親によるスクルージで再演を重ねてきた。7回目となる2022年12月の公演に向けて制作発表会見が行われ、市村正親、武田真治、相葉裕樹、実咲凜音、安崎求、愛原実花、今陽子今井清隆といった主要キャスト、演出の井上尊晶が登壇した。
今回は歌唱披露も行われ、「オープニング〜クリスマス・キャロル〜」、「どうもありがとう」、「もう一度はじめるぞ」の3曲がメドレー形式で披露された。会見に参加するキャスト陣とアンサンブルによるハーモニーで、会場は一気に明るく華やかなホリデーの空気に包まれる。そしてサンタクロースの衣裳に身を包んだ市村が登場し、一足早いクリスマスの光景が繰り広げられた。
また、主催より「クリスマスシーズンに欠かせないこの『スクルージ』。私も毎回この作品を見ており、明日への活力をもらったことを思い出しました。日本初演からスクルージを演じ続けている日本ミュージカル界のレジェンド・市村正親さんをはじめ、素敵なキャストの皆さんと演出・井上さんに集まっていただきました。激動の時代に生きる私たちも改めて自分を見つめ直せる、大切なメッセージが込められています。ひとりでも多くの方に見ていただき、元気になって帰っていただけたら幸いです」と挨拶が寄せられた。
ーー3年ぶりの公演に向けた意気込みを教えていただけますか。
市村:スクルージを演じるのは7回目。初演の頃は2時間かかっていたメイクが今日は10分で終わりました(笑)。1週間ほど前に『ミス・サイゴン』を終え、今回でエンジニアを卒業しましたが、スクルージはむしろ今が脂の乗っているところ。ぜひ堪能していただければと思います。
武田:クリスマスシーズンにこの作品に携われるというのは非常に贅沢だと感じます。2019年の公演は独身でこの役を演じましたが、今回は家庭を持つもののあたたかみをさらに出せたらと思っています。
相葉:僕は今回が初参加。歴史ある作品に出演し、クリスマスシーズンにこの作品を皆さんと共有できることがとても嬉しいです。稽古を通してもっともっと深めて本番を迎えられたらと思っています。
実咲:私は2019年に引き続き2回目の参加。前回はクリスマスの時期にこの公演に参加できる幸福を感じました。皆さんにもこの幸福感を味わっていただきたいです。また、イザベルはスクルージがかつて愛した人ですので、濃密に演じられたらと思っています。
安崎:60歳を過ぎてフライングをする大変さをお話ししようかと思いましたが、70歳を超えてフライングをされる方がいるのでやめておきます(笑)。このコスチューム、そしてこの役がカンパニーの魔除け的な存在になってみんなを守れればと思っています。
愛原:3年ぶりにこの衣裳を着て、身が引き締まる思いです。このカンパニーで過ごせることがとても幸せです。
今:今はフェジウィッグ夫人の衣裳なので比較的軽いですが、もうひとつはすごく重いし振り付けもいっぱい。古希を過ぎてあの踊りができるか不安ですが、70歳を過ぎてもこれだけできるというのを披露したいと思っています。
今井:いよいよこの季節が来たという感じです。前回公演を行った3年前から世の中の状態が変わり、人との繋がりや命の大切さがより重みを増したと感じています。この作品を通して、生きる希望と勇気を与えられたらいいと思っています。
井上:稽古をスタートし、とにかく楽しくてたまらない状態です。私事になりますが、この作品がなければ今の私はありません。改めてこの上演ができることを幸せに思っています。また、今日は参加していませんが、子供たちがダブルキャストで14名ほどいます。日々の稽古でその子たちの成長を見ながら、負けていられないと思っています。市村さんは参加して3日で完成してしまう超人ですから、初日までプラッシュアップしていきたいですね。
ーー作品にちなんで、子供のころにもらって印象に残っているプレゼントを教えてください。
武田:クリスマスになると両親がクリスマスソングをかけて踊ってくれました。そういった思い出をくれたことが一番のクリスマスプレゼントかなと思いますね。
実咲:毎年私が欲しいものをくれていた覚えがあります。自転車が一番大変だったとサンタさんが言っていたのは覚えていますね。
安崎:僕の地元がデパートひとつしかない田舎で、そこの包装紙に包んであるプレゼントをもらったときに両親から「サンタさんはあのデパートでプレゼントを用意したんだ」とすごく説得されたことを覚えています。
今井:小学校1、2年生の頃に親父が飲み屋でもらってきたウィーン少年合唱団のLPですね。天使のような歌声に感動して、それがきっかけかは分かりませんが歌が大好きになりました。
ーースクルージは未来を見て生き方を変えますが、ご自身の変えたいところは何かありますか?
市村:優しさですね。自分がひとりっ子だったのもあって、子供を叱れないんですよ。ゲームをしてるとしたら、「面白そうだね。30分後にアラームかけたからね。おーい、もう40分だよ。終わり!」みたいな。厳しさを身につけたいですね。
武田:僕は20年くらい前から、そんなに必要ないと分かっているのに毎年革ジャンを買っちゃうんです。1着1着違うけど、引きで見るとほぼ同じ。そこは変わりたいです。
相葉:僕は寝るのが好きでお風呂も好きなんですが、お風呂でうとうとすることが増えていて。危ないのでやめなきゃと思っています。
実咲:普段、関西弁でばーっと喋ってしまうので、人によってはキツく感じるかもしれない、優しく話そうと思っています。この性格になったのは両親の教えもありまして。神戸出身で阪神淡路大震災を経験しているんです。その時に両親が言いたいことは伝えなきゃいけないと感じたそうで、私にもちょっとしたことでも伝えてくれるんです。
市村:阪神淡路大震災の時、この作品の初演をオリエンタル劇場でやっていたんだよ。明け方に地震があって街や建物が被害を受けたけど、妹尾河童さんの装置はびくともしなかった。
実咲:すごい!
市村:その時からやってるんだよね(笑)。
安崎:この仕事をしているとスタッフもやることが多く夜型になりがちなので、朝型にしたら人生観などが変わるのかな、なんて思いますね。
愛原:今回クラチット夫人も演じるんですが、子役ちゃんたちが可愛くてすごく可愛がってしまうんです。でも、ちょっと集中して欲しい時などに少しピリッと、肝っ玉母ちゃんという感じで演じられたらと思います。
今:私はピンキーとキラーズとして活動しており、歌手生活56年目に入りました。これからも変わらず歌手でいたいですし、ミリオンヒットを飛ばせたらいいなと思っています。
今井:武田くんと同じく、毎年買ってしまうものがあります。ギターが好きで、自分はひとりなのにギターがどんどん増えていく。でも音色が違うので処分できないですね。
井上:せっかちなので、稽古場で少し待つようにしようと心がけています。このカンパニーはせっかちな人が多くて、みんなが喋り出すとまとまらないので、待つことを覚えようとしています。
ーー井上さんに、今回の見どころや変更点をお伺いしたいです。
井上:2幕頭を初演バージョンに戻し、聖歌隊が祈る静かなシーンにしました。時代的なこともありますが、日本初演から30年、原作自体も180年ほど経った今でも愛されている理由やこの作品の核はそこにあると思ったからです。本当に些細なことですが、自分だけが幸せならいいではなく、みんなが幸せでないと幸せは訪れないという曲です。武田くん演じるボブの息子で、足の悪い末っ子のティムも、「神様のお恵みをみんなに」と言うんです。観客の皆さんを含めたみんなが幸せになるといいなという思いを込めています。
ーー市村さんが稽古に参加して3日で完成したというお話がありましたが、他の皆さんは稽古をしての印象、現時点での手応えなどいかがでしょうか。
武田:2週間ほど僕らだけで稽古していましたが、市村さんが参加したら、やっぱり市村さんのスクルージだと思いました。ぐいぐいと我々を引っ張ってくれて、遅れてきたのにこっちが周回遅れになるくらいのエネルギー。新たなアイデアもくれて、本当にすごいですよ。
相葉:初めてだと覚えることが多く、自分のことで一杯いっぱいになってしまいますが、市村さんは僕にももちろんアドバイスをくださいますし、全体のディレクションもすごく見ています。稽古場では市村さんの俳優としてのあり方も学んでいますし、ずっと見てしまいます。一緒に作っているという感覚がすごく強いので、これからまだまだ楽しいことが増えていくんだろうし、クリエイティブな取り組みができると思うので、本番に向けてさらに頑張っていきたいですね。
実咲:一緒にお芝居をすることが多い相葉さんが初参加なので、私も初めてのような気持ちで新鮮に挑めています。市村さんはパワフルすぎてびっくりしていますが、イザベルもヘレンも作中ではスクルージとほとんど会わないので少し寂しいですね。イザベルはすごく魅力的で、「みんなになんであんな優しい女性を手放してしまったんだと思われるくらい素敵な女性なんだよ」とおっしゃっていただいたので、それを肝に銘じて演じたいと思いながらお稽古に励んでいます。
安崎:僕は2013年の公演が初参加で、その時に市村さんからマーレイについて教えてもらい、二人で作ったことを覚えています。今回は市村さんが同僚・親友という関係を深めて作ろうとおっしゃってくださっているので楽しみですね。
愛原:相葉さんがおっしゃったように、市村さんが稽古場にいらっしゃるとずっと見てしまうんです。子役ちゃんたちも、本当は見ちゃけないシーンで市村さんの迫力に圧倒されて口をぽかんと開けて見てしまっていたりして(笑)。そのくらい華やかなオーラがあり、毎日勉強させていただいています。
今:いっちゃん(市村)の次に私が年寄りですが、いっちゃんは本当にパワフルで元気。私も文句を言えないので頑張ってます(笑)。
今井:今回も稽古場に来た市村さんがすぐに「あそこの芝居はこうしよう」とアドバイスをくれて、常に上を目指しており、演技に終わりはないんだなと改めて感じました。この年齢でもさらに良い演技を追求する姿を見ると私も頑張らなきゃと思います。ついていきます!
井上:このメンバーで言うと相葉くんがひとり転校生で、一番大変だろうなと思っているんですが、再演だと「前がこうだったから」と素通りしてしまうところに気付かせてくれる。「これは今何時ですか?」「あ、夜中だったね」とか。素朴な疑問ですが、ステージに上がる上では大事なことだと思います。すごく頭がいいな、この子は売れるなと思ったら「もう売れてます」と言われたんですけど。
相葉:言った記憶ないです(笑)。
一同:(笑)。
井上:そんな感じで、すごく充実した稽古を送っております(笑)。
ーー最後に、市村さんからメッセージをお願いします。
市村:今年で7度目のスクルージです。3日で完成したと言ってくださいましたが、そのために『ミス・サイゴン』の公演中から台本を読み、楽屋で音楽をかけていました。努力あってこそです。これからは通し稽古ができる。いつも思いますが、芝居というのは旅のようなもの。この作品はスクルージが過去・現在・未来のクリスマスと出会って変わっていく旅。明日からの稽古でみんなと旅をし、どんな気持ちが生まれるかを楽しみにしながら挑みたいと思っています。あたたかい、いい作品になると思います。12月7日から25日まで、日生劇場で上演しますから、劇場に観に来ていただけたら嬉しいです。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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