Nothing's Carved In Stone、7ヶ月ぶ
りにライブシーンへ帰還 興奮の一夜
を記したレポート到着

Live on November 15th 2022 2022.11.15 Zepp DiverCity(TOKYO)
4月の大阪城野外音楽堂と東京・LINE CUBE SHIBUYA公演からおよそ7か月、Nothing’ s Carved In Stoneがライブの現場に戻って来た。その時間を長いと取るか短いと取るかは人それぞれだが、大事なのは4人が今夜ここで演奏して満員のオーディエンスがそれを待ちわびているという事実だ。11月15日、バンドとファンにとって恒例の記念日。何が変わって何が変わらないのか、ステージにも客席にも注目の特別な一夜。
静寂と躍動、大らかにうねるリズム、切なさを秘めた美しいメロディ、1曲目からいきなり「November 15th」が来た。村松拓が「行こうぜ!」と短く叫び、フロアだけじゃなく2階席も総立ちのオーディエンスが拳を突き上げ、クラップでそれに応える。待たせたな、待ってた、行けるか、もちろん。笑顔で会話を交わすようなあたたかい空気。「Spirit Inspiration」から「白昼」へ、生形真一がスポットを浴びて速弾きソロを決め、日向秀和がトレードマークの強烈スラップで煽る。大喜多崇規の精密なスティックさばきには絶対の安定感しかない。オルタナ、ダンス、ハードロック──「Idols」の強迫的なリズムの快感には誰も抗えない。ギターとベースが爆音で攻め上がる超攻撃的フォーメーション、その中央をぶち抜いて朗々と響く村松拓の歌声。そして一言。
「いいね。興奮してる。それに全力で応えます。最後までついてきてくれ。よろしく」
トリッキーな変拍子をアクセントにした強力なダンスチューン「Spiralbreak」、柔らかいアルペジオと鋭いカッティングを織り交ぜた、生形の陰影豊かなプレーが印象的な「ツバメクリムゾン」、もはやベースには聴こえないモンスターに変身した、エフェクティブなベースに耳を奪われる「9 Beat」。全員がとんでもない爆音でぶつかり合いながら、プログレばりのトリッキーなフレーズをやりとりしながら、全体のアンサンブルが成立している。ライブで何度聴いた曲であっても、「何じゃこりゃあ」という新鮮な驚きがいつもある。それがNothing’ s Carved In Stone。
「久々のライブだけど、難しい曲ばっかりやってるんだよ(笑)。リクエストもらったみたいなんで、いろいろやってくから」
踊ろうぜお台場。村松の煽りに応えてフロアのオーディエンスが荒波のように揺れる「Brotherhood」から、大喜多のエレクトリックな質感のドラムがクールでかっこいい「Midnight Train」。そしてステージからあふれだす大量の光と、歌詞のメッセージが伝える希望の光とが重なり合い、視覚的にも聴覚的にも最高のシーンを作り上げた「Walk」。今を生きる、前を向いて。言葉は同じでも、聴くたびに意味が少しずつ変わってゆくシンプルで強い歌詞。
ここからの3曲がもうとんでもなくヤバい。エフェクトで歪んだボーカル、プログレとメタルとファンクをかき混ぜたギター、鬼のスラップ、高速変拍子を操るドラム、クレイジーなダンスチューン「Damage」。火炎放射器をぶっ放すような日向、大喜多、生形の楽器バトルと目くらましのストロボライトが度肝を抜く「Fuel」。生形の高速アルペジオの妙技に開いた口がふさがらない「Milestone」。そんな、「絶対に踊れない」と思わせるようなダンスロックにしっかりとクラップを乗せて体を揺らすオーディエンス。すごい空間だ。
「今日はやっぱり興奮するわ。ここにしか流れてない時間を、ここにいるみなさんと一緒に、未来に変えてつかんでいきたい。心通じ合わせたい。みんなで一つになって帰りたいと思います」
行けるかお台場。ゴリゴリのファンクメタルと壮大なスタジアムロックの合わせ技「In Future」から、豪快に突き抜けるメロディックなロックチューン「Like a Shooting Star」、メロディだけならキャッチーな歌ものロックを、強烈なスラップとワウギターが別次元に運ぶ「Beginning」。大喜多のマシンガンドラムに合わせて全員一丸となって突進する「Out of Control」。日向が大喜多に駆け寄り、グータッチを交わす。ステージ上が楽しんでいれば、ステージ下も楽しめる。ありふれた言葉が、本当に実感を持って届いてくる。それは一体感。
あと1曲やります。本編ラストに置かれた「The Silver Sun Rise Up High」の、包容力あるミドルテンポ。アコースティックギターを弾きながら、叙情味たっぷりにサビのメロディを歌い上げる村松。全力疾走で駆け抜けた体と心をクールダウンさせる、優しい旋律と白くまばゆい光。激しく複雑な曲をさんざんカマしておいて、こういう、ほろりとさせる曲を最後に持ってくる。ずるい、いや、うまい。
「気合入れてやるから」という村松の言葉通り、ドラム台の前に集まった人が息を合わせてスタートした、アンコール1曲目「Isolation」。三拍子と四拍子を行き来しながらさんざん暴れ回り、ラストにもう一度4人で集まって曲を締める、その姿を見てるだけでなんだかグッとくる。そして村松のラストMCに、さらに心が揺れる。
「4月20日(ライブ活動休止前、最後のライブ)にみんながどう思ったか、なんとなくわかるし、今日やるよって発表した時もみんなどう思ったか、だいたいわかってるんで、何も言いません。たぶん同じ気持ちでいるから、今日みたいな日を迎えられてると思ってるんで、みなさんに感謝です」
ナッシングスは世界で一番かっこいいバンドだと思ってる。多くを語らずすべてを語る、村松のMCに大きな拍手が贈られる。彼らは止まってなどいなかった。この日の本当のラスト曲「Perfect Sound」の、明快で力強く広がりある音像から感じたのは、希望だ。演奏が終わり、客席に手を振り、深々と礼をする姿から見えたのは、バンドを続ける喜びだ。
年が明けて、2023年は結成15周年のアニバーサリーイヤー。そして次のライブは2月27日、豊洲PIT、「BEGINNING 2023」だ。Nothing’ s Carved In Stoneは止まらない。楽しもう。

取材・文=宮本英夫 撮影=RYOTARO KAWASHIMA

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