Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
それでも世界が続くなら、
最初で最後のレーベル運営に挑戦

僕らのCDを作るべきかどうか、
最後に委ねてしまおう

千々和
篠塚さんは個人で若手のバンドのプロデュースなどもやっていますが、今回のレーベルの立ち上げはなぜ個人ではなく、バンド主宰なのでしょう?
篠塚
もともと自分たちのバンドでリリースする予定があったんですよ。でも、昨年末に僕が喉の不調で声が出なくなってしまって。なんとなく“いつか喉が壊れたらそれで終わりにしようと当時からずっと思っていて。だから逆に、壊れるまで本気で歌うんだ”って思えていたんですよね。僕は歌がうまくないので、気持ちを込めて熱量全開で歌うことでしか価値がないと思っていたし、よく“そんな歌い方をしていたら、いつか喉が壊れるよ”と周りの人にも言われていたから、“壊れたら終わりでいいよ”ってルールだったから歌えていたんです。それが現実的に壊れて、もうそこで辞めようと。
千々和
そうだったんですか!?
篠塚
手術はしたけど、曲が作れる頻度も落ちてきていて、心も身体もすり減っていたし。続けたい気持ちもあるのに、続けてほしいと言われても、自分の気持ちは簡単には覆らなくて…これは余談ですけど、今僕はまだ音楽を続けていますけど、遠くない未来に辞めてしまったほうがいいとは思っているんです。そう考えた時、もう一回最初に戻って自分たちでCDを出して、それで終わるんだったら納得できると思ったんです。それで所属していたレーベルを離れて、一枚だけ自分たちで出すつもりでレコーディングを始めたんですね。
千々和
今回のレーベルを立ち上げる以前に、バンドで最後のアルバムを制作していたんですね。
篠塚
はい。でも、世の中的にコロナ禍になってしまい、ライヴの人数制限があってチケットが完売しても赤字の状態だったのに加えて、機材車が壊れたりとか、本当にいろいろあって…。バンドのお金はメンバーが管理してくれていたんですけど、お金がないことを気を遣って、僕に言ってこなかったんですよ。そんな中、レコーディングをしていたら、そのメンバーが“もうお金が尽きちゃっているから、スタジオ代は俺が個人で出すわ”って払っていたんです。それを見た時に、こんなことさせてまでバンドを続けたくないと思って。なので、レコーディングは途中で中止にしたんです。で、このまま勝手にバンドを終わらせたら、聴いてくれたみんなに怒られるだろうから、“じゃあ、どうする?”ってなった時に、最後にクラウドファンディングをやろうという話が出て。もともと自分たちのレーベルを作ってアルバムを出すつもりではあったけど、自分たちのためだけにクラウドファンディングをするのは嫌だったし、いつか裏方でレーベルをやりたいと思っていたから、“どうせやるなら誰かの音楽の力にもなれるレーベルを作らせてくれ”ってメンバーに頼んだんです。あとは、自分たちの音楽を応援してくれた人たちに、アルバムを作るべきか作らないべきかを委ねてしまおうと。達成しなかったらお金は受け取れない仕組みにして、誰も求めていないなら自分たちのアルバムも作らないし、レーベルもやらないと決めていました。今思えば、人生ごと賭けていましたね。
石田
明らかに無謀なことをやろうとしているのに、メンバーがついてきてくれるっていうのは、やっぱりしのくんに歌ってほしいとか、このバンドじゃないとダメっていうのがあったんだと思いますよ。
篠塚
…恥ずかしいですけどね(笑)、そうだと思います。

OKMusic編集部

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