2022年10月23日@SHIBUYA CLUB QUATTRO

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【ポップしなないで
ライヴレポート】
『ポップしなないでpresents
「アコガレ」』
2022年10月23日
at SHIBUYA CLUB QUATTRO

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 ポップしなないでが10月23日にSHIBUYA CLUB QUATTROでワンマンライヴ『アコガレ』を開催。この日のアンコールにて、かめがいあやこ(Vo)がまるで解散するかのような面持ちで、2023年2月22日より日本コロムビアからメジャーデビューすることを発表し、その演技派ドッキリの様子の動画がSNSで話題となった。しかし、そんな悪気のないおふざけとは裏腹に、本公演は彼らがライヴで披露する上で特に大事にしてきた楽曲と新曲も多めに取り込んだセットリストで、バンド史上最大キャパでのワンマンに相応しい堂々たるパフォーマンスが繰り広げられた。

 ドラムと声をサンプリングしたSEとともに、メンバーのかめがいあやこ(Key&Vo)、かわむら(Dr)、サポートの山内かなえ(Gu)、カワノアキ(Ba)、ミツビシテツロウ(Mp)が入場すると、まずは今年8月に配信リリースした「UFOを呼ぶダンス」をバンドセットで披露。間奏でも繰り返されるサビのメロディーが癖になるダンスナンバーで、オーディエンスの高揚感も相まって、《集まれUFOを呼ぶダンス/意味のわからない言葉を叫ぶんだ/飛び散る汗でさ/君の横顔が輝く》という歌詞は、どことなくライヴのことを歌っているような印象もあった。ふたりのスキャットから始まった音源未発表の「どうすんの?」は、ジャズフレーバーのピアノと遊びが多いベース、終始クールなヴォーカルが会場をムーディーに染め上げ、6月に配信リリースした「月の踊り子」の柔らかで可愛らしさのあるメロディーも心地良い。

 そして、突如流れた雑踏の音とともに、かめがいの“本日お集まりのゾンビのみなさま、間もなく電車が参ります。地獄快速…”というアナウンスで始まった新曲「地獄快速」。打ち込みを使ったメロウなサウンドが夜の街を彷彿させるが、歌には《このままだとゾンビだ/私生きてるまま死んじゃうんだ》と、鬱々とした主人公の心の叫びが描かれていた。アナウンスにあった“ゾンビ=観客やリスナー”なのかどうかは明確ではないが、「救われ升」の演奏前に言うお決まりの台詞“お前らを救いに来たぜ!”からも受け取れるように、ポップしなないでのライヴは、観客のエネルギーを回復させる場であったり、明日からの日常に立ち向かうための滑走路として構えているように感じる。その心構えが忠実に受け取れるような楽曲だった。また、早口な歌とビートで畳み掛ける「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」はライヴでやるごとにパワーが増している様子で、誰かを救うだけでなく自らを奮い立たすような力量! オーディエンスのテンションもグイグイと押し上げ、演奏後にはひと際大きい拍手が起こった。

 ひと息ついて、衣装のメガネを新調した話や、かわむらがファンから差し入れでもらった北九州名物の“堅パン”を工夫して食べたことをのんびりと話したMCのあとに、彼らが心の内を明かした最初の曲と言える「Creation」、ポップと不安感が入り混じる「魔法使いのマキちゃん」、オーディエンスが息を呑むほどの迫力で歌われる「SG」と、特に感情を揺さぶる3曲を持ってきてしまう高低差には驚いたが、そのまま翻弄させるように7分ほどあるポップしなないで的ハウスナンバー「Sunset」でオーディエンスを引きつける。サウンドだけであればその場がクラブっぽいノリになる曲だが、そこにかめがいのソウルフルな歌声が乗っかることで、幻想的な仕上がりになるのが面白い。

 また、後半のMCではポップしなないでの率直な想いが語られた。

“ポップしなないでは、もともとセカイ系を表号していて、“僕と君vs世界”みたいな、そう言うことができたらいいなと思っていたんですけど、神田明神ホールでやったライヴで、それだけじゃダメだと思うようになって。みんな人生を懸けてライヴに来てくれているんだから、主人公は我々だけではない。“このままでいいのか?”と悩んだけど、少なくとも音楽で自分と好きな人を鼓舞しようと吹っ切れたんですよね“(かわむら)

 そんな想いの中、アニメ『農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。』のタイアップの話があり、同作に書き下ろした「ローリンソウル・ハッピーデイズ」をこの日ライヴ初披露。実際にアニメのエンディングで流れたのを観て、前述の想いが伝わっている気がしたという、かわむらにとってひとつ報われたような出来事もあったとのこと。

“音楽を聴いても、ライヴに来て楽しい時間を過ごしても、明日が劇的に変わることはないと思うんですよね。音楽にどんな力があるかは分からないけど、ポップしなないでの音楽はみんなの心のどこかに触れることができるのではないかと思っている。そうであったらいいなと願っています”(かめがいあやこ)

 そう語られたあと、本編の最後に披露したのは「夢見る熱帯夜」。ふたりの想いに応えるようなオーディエンスのノリノリな手拍子に包まれ、ともに今の心境を噛み締めるようなライヴとなった。

撮影:小坂茂雄/取材:千々和香苗


セットリスト

  1. 1.UFOを呼ぶダンス
  2. 2.どうすんの?
  3. 3.月の踊り子
  4. 4.地獄快速
  5. 5.支離滅裂に愛し愛されようじゃないか
  6. 6.Crestion
  7. 7.魔法使いのマキちゃん
  8. 8.SG
  9. 9.救われ升
  10. 10.Sunset
  11. 11.ローリンソウル・ハッピーデイズ
  12. 12.初夏それから
  13. 13.夢見る熱帯夜
  14. <ENCORE 1>
  15. 1.言うとおり、神さま
  16. 2.丑三キャットウォーク
  17. <ENCORE 2>
  18. エレ樫
ポップしなないで プロフィール

ポップしなないで:2015年結成のかめがいあやこ(Key&Vo)、かわむら(Dr)による、セカイ系おしゃべりPOP。かわむらの作るどこか寂しげだが前向きな歌詞世界と、かめがいの表情豊かでクセの強い魅力的なヴォーカルで、ミニマムな構成ながら完成された音楽性を持つ。独自の楽曲哲学に沿ったMVや、確かな表現力により世界観を再現するライヴパフォーマンスが話題となっている。23年2月に日本コロムビアよりメジャー1stアルバム『戦略的生存』を発表し、3月からは全国 6 都市を巡る『ポップしなないで presents 「合言葉はトキメキ」ツアー』を開催。ファイナルの恵比寿LIQUIDROOMでのワンマン公演はソールアウトした。ポップしなないで オフィシャルHP

OKMusic編集部

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