映画『ゆめのまにまに』で初主演のこ
だまたいち 令和版「お茶の間のスタ
ー」へ向かう路上にて

音楽もやるし芝居できて笑いも取れる。そんなオールマイティーに活躍した昭和のテレビスターが憧れというこだまたいち。マイヒーローたちの背中を自らに投影するかのように、こだま自身もジャンルを越境しつつ精力的に活動、特に今年2022年は飛躍の一年だった。

ギター&ボーカルを担当するフォークバント「酔蕩天使(よいどれてんし)」を結成するや否や、1st配信シングル『タクシードライバーブルース』は、今年6月により放映されたテレビ東京の深夜ドラマ「ザ・タクシー飯店」主題歌となり話題に。2nd配信シングル『サンローゼ』も、11月12日より公開となる映画『ゆめのまにまに』のテーマとして作品に花を添えつつ、本作ではキャリア初となる主演にも大抜擢。さらに11月23日には、1stアルバム「ヨイテン」のリリースも控えている。

“転がる石のように”何かにぶつかりながらも、令和を代表する「お茶の間のスター」へと駆け上がるその道すがら。音楽遍歴から映画の撮影裏話、今後の展望までを『ゆめのまにまに』のロケ地となった特別な場所・浅草で隈なく尋ねた。

Photography_Junya Ooba
Hair&Make_Kyoko Kawashima
Text_Shunpei Narita
Edit:Miwo Tsuji

浅草からはじまった文化が好きだった

――11月12日に公開となる映画『ゆめのまにまに』のロケ地も浅草でした。浅草はプライベートでも遊びにきたりするんですか?

こだまたいち(以下、こだま) : 今まで浅草にはあまり縁がなくて、よく来るようになったのは出演が決まってからです。セリフの練習がてら、ロケ地となった浅草六区をぐるぐる歩き回っていました。僕は昭和芸能が好きなんですが、当時のスターである古川ロッパさんや、エノケン(榎本健一)さんの看板がこのあたりには飾ってあって、密かにテンション上がってました(笑)

――こだまさんは1991年の平成生まれですよね。昭和芸能好きって珍しくないですか?

こだま : この話で盛り上がれる同世代の友達は……確かにほとんどいないですね。実家に帰った時とかに、唯一おばあちゃんと盛り上がってます(笑)
――昭和のスターでいうと、どんな方たちが好きなんですか?

こだま : 沢田研二さんのザ・タイガースや、堺正章さんのザ・スパイダース植木等さんのハナ肇とクレージーキャッツも最高に好きです。今でも全く、色褪せない。こうした人たちの音楽を聴くようになったのは、もともとコミックソングという笑わせるための歌みたいなジャンルに興味を持ったのがきっかけです。そういえばコミックソングも、浅草とも関係が深いみたいで。もしかすると自分が格好いいな、と思う基準が江戸っ子スタイルというか、「浅草スタイル」なのかもしれません。

――浅草スタイル、斬新ですね。具体的にどんな点に惹かれていますか?

こだま : そうですね……。たとえば映画『浅草キッド』*なら、たけしさんがスーツを着て、タップダンスを練習したエピソードとか、すごくお洒落だなって思うんです。ユーモラスなんだけど上品で、なんか憧れますよね。

*ビートたけしが自身の師匠である浅草芸人・深見千三郎と過ごした青春をつづった自伝を2021年に映画化。監督・脚本は劇団ひとり。

ビートルズからつじあやの、吉田拓郎…

異色の音楽遍歴からフォークに繋がる一
本の線

――こだまさんの音楽のスタイルはフォークじゃないですか。昭和芸能好きと同じくらい、フォークを志すというのも、こだまさん世代だと珍しいような気がします。一体どういうきっかけだったんですか。

こだま : そうですね、小さい頃からJ-POPってなんとなく耳にするじゃないですか。でも、流行っている音楽がどうにも好きになれなくて。
――ちょっと天邪鬼な子どもだったんですね。

こだま : そうかもしれません。そこから中1の時にビートルズを聴いて衝撃を受けて。色々掘ってた……ってほどでもないんですけど、TSUTAYAに行って、洋楽コーナーに並んでるものから聴いてみようとサイモン&ガーファンクルやザ・ビーチ・ボーイズを聞くようになって。どれもいいな〜と思ってハマっていくなかで、ボブ・ディランにたどり着くんです。でも最初に聞いた時は、全く意味がわからなくて。

――なるほど、一度挫折するんですね。

こだま : はい。ちょうど同じくらいの時期に邦楽も聞いていて、つじあやのさんにハマってました。カバーアルバムに「加川良の手紙」って言う曲があるんですけど、これがめちゃめちゃ良くて。オリジナルを調べたらフォークシンガーの吉田拓郎さんが歌っているというのがわかって。それも聴いてみると、あぁ、これは好きだ、好きだ!と。さらに調べてみたら、吉田拓郎さんのルーツにはボブ・ディランがあると知るんです。
――ディランに戻ってくる。

こだま : そうなんです、無事に戻ってこれました(笑)。つじさんや吉田拓郎さんの音楽を聞いていて一番刺さったのは、「飾らない言葉だった」こと。特段起承転結があるわけじゃなくて、日々を歌っていること。歌詞だって字余りで。ただフォークならばそれでいいんだ、あぁこれなら自分もできるかもって。正に居場所を見つけた感じでしたね。あとは音楽ではないんですが、さくらももこさんの『ほのぼの劇場』という短編集も同じ頃に読んで影響を受けています。ちびまる子ちゃんの漫画の、おまけページを集めたオムニバス本。たまたま買ったんですけど、読み進めるうちに「ちびまる子ちゃんが最高に好きかもしれない」と気づきました。

――ちびまる子ちゃんへの目覚めですね(笑)

こだま : はい。『ちびまる子ちゃん』や『ほのぼの劇場』は短いエッセイのような作品だから、フォークソングみたいと感じたところもあって。こういう日常を歌にしたらいんだって思いました。つじあやのさん、吉田拓郎さん、さくらももこさん……うまいこと繋がった。当時は高校生だったんですけど、東京行ったら本腰を入れて音楽をやろうと決めました。

酔蕩天使結成。ソロからグループとなり
進化を遂げたサウンド

――上京してからは、バンド・THE TOKYO、そこからソロ活動を経て、現在は酔蕩天使のヴォーカル&ギターとして活躍されていますけれど。結成の経緯を教えてください。

こだま : 現在一緒にやっている2人、やっくん(水永康貴)とさっくん(磯部智)は当時「超常現象」というユニットを組んでいたんです。2019年の11月に、彼らと僕のソロで対バンみたいなことをして。僕自身、ちょうど今後どうしていこう?と模索しているタイミングだったんですね。二人は海外での経験もあるし感覚も自分と違う。曲のアレンジとかもうまくて、自分にないものばかり持っている。一緒にできたら、もっと前に進んでいけるかもというイメージが持てたんですよね。
酔蕩天使 (ヨイドレテンシ) /「タクシードライバーブルース」Music Video

――通ってきた音楽とかも、それでは微妙に違う感じですか?

こだま : そうですね。とはいえ共通している部分もありますよ。でも共通していても、その音楽に対するたどり着き方や見方は、ぜんぜん違うと思います。例えば日本の音楽で「サザンオールスターズについてどう思ってるのか?」というお題があったとします。僕はサザン、大ファンなんですけど。演奏がどうこうよりも、最高のポップミュージックだと思っていて。2人も多分好きなんですけど。僕の好きとはおそらく違くて、どういうサウンドなのか?とか、より理論的にサザンを分析して、いい音楽だと感じているはず。

――なるほど。まさにタイプの違うメンバーたちだと思うんですけど、一緒に音楽をつくるなかで意見がぶつかることもありましたか?

こだま : そうですね……。僕が書いている歌詞って、基本的にストーリー仕立てなんです。前後が全部繋がっていて、聞き流すことを前提にしている歌詞じゃない。それに加えて、音楽的には必要ない言葉を入れまくっているから、歌詞とか、結構字余りで(笑)。だから歌詞を生かすのか? それとも語呂を合わせにいって、サウンドとしての完成度を上げていくのか?というせめぎ合いは初期にありました。
――それはどんなふうに着地しました?

こだま : 色々あったんですけど、「歌詞の個性を無くしてまで語呂を合わせにいくのは違うよね」ということで、最終的にはすごく尊重してくれて。基本的には僕の言葉を減らさない方向で、しかしリズムとして気持ちいいポイントを探っていきました。ただこれが苦戦して。いろんな角度から検証してみたんですが、なかなかこれだ!っていうのが見つからなくて……。1年くらいかかって、ようやく方向性が見えてきたところです。

映画『ゆめのまにまに』で初主演のこだまたいち 令和版「お茶の間のスター」へ向かう路上にてはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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