ASH DA HERO、「俺たちはこの時代で
アホほど売れたいロックバンドなんで
す!」 初の全国ツアー最終日に見た
揺るがない思い

ASH DA HERO LIVE TOUR 2022 "Genesis"

2022.10.29 Zepp DiverCity(TOKYO)
「俺たちが令和最強のロックバンド、ASH DA HEROです!」
最初のMCで自信に満ちた表情で挨拶するASH(Vo)に、フロアから盛大な拍手が起きる。令和3年(2021年)9月結成。今年8月にメジャー1stフルアルバム『Genesis』をリリースし、9月より全国9ヵ所を巡るリリースツアーを回り、初ツアーにしてZepp DiverCity(TOKYO)の大舞台でのファイナル公演を行ったASH DA HERO。ライブの完成度や満足度の高さ、大舞台にも臆さないステージングは結成1年目とは思えない。ここまでの活動の充実とバンドのポテンシャルの高さをしっかり感じさせてくれたこの日のライブは、“令和最強のロックバンド”の謳い文句も決して大げさではないと思うほど、たくましく堂々としたものだった。
開演時間となり客電が落ち、アルバムの1曲目である「Genesis」がSEに流れると、演奏するメンバーのシルエットが紗幕に映る。アルバムタイトルでもある“Genesis”は、直訳すると“創世記”。ASH DA HEROの音楽で新たな時代を創造すべく、会場に力強く鳴り響く「Genesis」の生演奏に観客の期待が大いに高まる中、バンドサウンドの轟音とASHの咆哮で始まった「New Revolution」で、ファイナル公演のステージが幕を開ける。
ASH
1曲目から魂込めた歌と演奏で一丸となり、塊となった音像を観客にぶつけた5人。それに応えるように、フロアには熱い拳が突き上がる。聴く者の気持ちを奮い立たせるこの曲で革命の時が来たことを告げると、空間を切り裂くようなNarukaze(Gt)のギターイントロから「DAIDARA」へ。さらにロカビリー調の「Avengers」とめくるめく展開でブチアゲた序盤戦。変幻自在の歌と演奏で、様々な角度から繰り出される強烈なパンチはツアー序盤と比べても、明らかに強さと重みと説得力を増した印象。この印象の変化こそ、一本一本の積み重ねでバンドの絆を強め、個々の力を高めて自信を蓄え、サウンドの強靭さを増してきたツアーの成果なのだろう。
Narukaze
「9月の頭から回ってきたツアーも今日がラスト。俺たちもそうだけど、集まってくれた一人ひとり、悔いを残さないように全力で楽しんでください」と短いMCを挟み始まった曲は、バンドを結成して一番最初に完成したという全ての始まりの曲「Merry Go Round」。さらに「WARAWARA」、「Dead or Alive」と『Genesis』収録曲を軸としたセトリが展開され、切れ味鋭く表現力豊かなラップと歌声、息の合ったバンド演奏で楽曲世界を構築。音源だけでは伝えきらなかった生の迫力やリアルやメッセージ、楽曲の本領をダイレクトに届け、観客の心と体を揺さぶる。タイトで緊迫感ある演奏にASHの鋭いラップが映える新曲「自分革命」はハイブリッドかつ、既存の表現方法にとらわれない彼らの姿勢を明快に表していた。
Sato
MCでは、ASHがライブで声出しのできないもどかしさを嘆きながら、「でも、なんも心配しなくて大丈夫! 声出せなくても、“わっ!”と思わず声が出ちゃうくらい心躍らせるのが、ロックバンドの務めだと思うんで。このコロナ禍ん中で、俺たちミュージシャンはエスパーになってるから。出したい心の声、全部聞こえるから。全力でぶち上がってくれ!」と観客に力強い言葉をかけると、ASHがギターを掻き鳴らして「からっぽの街」を披露。現メンバーの演奏や新解釈で生まれ変わったソロ時代の楽曲たちに続き、「レーゾンデートル」を気持ちいっぱいに歌い上げて会場の空気を変えると、このバンドの強い個性のひとつとなっているDhalsim(DJ)のソロプレイに、ASHがラップを重ねて「エゴイスト」へ突入。再びテンションが上がった観客がジャンプを合わせ、フロアに熱気が上がる。
WANI
これもツアーの成果であり、ASHがソロ時代から積み重ねてきたものだと思うが、ASH DA HEROはライブの構成や観客の気持ちの煽り方も秀逸。さらにDhalsimのみならず、フロントマンであるASHを筆頭としたメンバーそれぞれが出るべきところでグッと前に出て、プレイやサウンド、パフォーマンスで自身の魅せ場を作り、バンドのオリジナリティや個性を形成しているのもASH DA HEROの強さ。「YELLOW FEVER DANCE」ではそれぞれのソロパートもあったが、ダイナミックかつ正確なプレイで見せるWANI(Dr)と華やかさと重厚さを併せ持つSato(Ba)の生み出すグルーヴにNarukazeが熱く激しく技巧的にギターを重ねて生まれる音像に、Dhalsimが彩りやエッジを加える独創性のあるバンドサウンドや、それぞれのキャラがキラリと光るステージングは見応え抜群。
Dhalsim
「また明日からクソみたいな毎日がきっと始まるし、諦めそうになる時とかクソみたいな気持ちになることもあると思うけど。俺たちロックバンドはこのステージの上で、君たちが笑顔で集まってくれるのを待ってるから。また必ずライブハウスで会いましょう」
ASHが一人ひとりに語りかけるように告げて始まった終盤戦は、《今 想像さえも超えて行く》と前向きに歌う「Just do it」。「ここがツアーファイナル。だけど、ここが俺たちの始まり。一生忘れねぇよ、今日イチの景色を見せてくれよ!」と始まった「Remember」と続いて、フロアの圧倒的な盛り上がりでクライマックスを生むと、渾身の歌と演奏で魅せた「世界をぶん殴れ」でライブを締めくくる。
と、これで終演と思いきや。今後のライブ予定と「伝えたいことが本当にあるんですけど……察してくれ!」と超ドデカいニュースがあることを報告すると、もっとデカくなるためにツアー中も新曲を書き溜めていたことを話したASHが、「夢や目標や自分のやりたいこと、諦めるにはちょうど都合の良い時代。でも、俺たちは揺るがないよ。俺たちはあの日見た夢に向かって、嘘つかずに真っ直ぐ走って行きてぇもん。俺たちはこの時代で、アホほど売れたいロックバンドなんです! 死ぬ気でこの時代、太陽よりもギラギラ輝いてやる。そんな決意も込めた新曲です」と熱く語り、生まれたての新曲「最強のエンドロール」を披露。初の全国ツアーを完遂し、次の一歩を力強く踏み込むような強い意志と覚悟と希望に満ちた新曲は、まさに今ツアーの最強のエンドロールだったし、その向こうにあるASH DA HEROの明日を明るく眩しく映した。
取材・文=フジジュン 撮影=堅田ひとみ

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