グラムロック、
キワモノ的な扱いとは裏腹に
英国を代表する文学、
演劇性を備えた実力派
コックニー・レベルの1st&2nd
より音楽性を高めた
2ndアルバム『The Psychomodo』
話をデビュー作に戻すと、シングルカットされた「Sebastian(邦題:悲しみのセバスチャン)」は発表当時、日本でもラジオでオンエアされるほど話題になった(ヒットには程遠いが)。演劇的というかドラマチックな構成で、クラシカルなピアノのイントロに始まり次第に盛り上がり、劇的な転調も用意されている。この構成、ハーレイの表現力。これはロックの枠を越えたものになっている。
余談だが、この曲やハーレイのキャラクターにインスパイアされたと思しき小説がある。作家、松浦理英子さんが1981年に刊行した小説『セバスチャン』がそれである。というわけで、間接的ではあるが、ユイスマンといい、松浦理英子さんといい、文学と何かと縁があるバンドだった。
傑作と言える2作を発表後、メンバーチェンジがあったり、ハーレイのソロ活動、俳優業など、バンドとして解散状態の時期もあるが、2022年現在もコックニー・レベルは活動継続中だそうだ。それに日本にいては伺いしれないが、英国では彼らの音楽は再評価され、英国ロックを代表するバンドのひとつであるとして人気を保っているようだ。ハーレイの書く文学的な詞が大学の講義で取り上げられる、なんてこともあって本人を戸惑わせているとも聞く。
今でも思うのだが、もうちょっとセンスのいいアートディレクターが付き、デヴィッド・ボウイのような人が手を貸していたらもっと状況は違っていたかもしれないが、1973年はボウイもあの“ジギー・スターダスト”を演じている真っ只中にあって、そんな余裕はなかっただろう。ワンマンで自己主張も強そうなハーレイとボウイが気の合う関係を持てたかどうかも疑問ではあるのだが…。ニューウェイヴ期に先駆けること10年、この早過ぎたポップセンスを惜しまないではいられない。というわけで、日本では長続きしなかったグラム人気、中性的、倒錯したイメージ等の紹介のされ方が相まってか、今一歩、人気が出なかったコックニー・レベルだが、ぜひ一度聴いてみてほしい。
TEXT:片山 明