グラムロック、
キワモノ的な扱いとは裏腹に
英国を代表する文学、
演劇性を備えた実力派
コックニー・レベルの1st&2nd

文学性、演劇的要素を
高度な演奏力で昇華させてデビュー

ハーレイ(ヴォーカル、ギター)、ジョン・クロッカー(フィドル、マンドリン、ギター)以外のメンバーはオーディションで募集し、スチュワート・エリオット(ドラム)、ポール・ジェフリーズ(ベース)、ミルトン・リーム・ジェームズ(キーボード)の5人が揃う。全員が無名だったが、確かな技量を備えたバンドは数回のギグを行なっただけでメジャーのEMIとの契約に漕ぎ着ける。どうやらハーレイが新聞社のツテを頼ってレコード会社の人間を招待したらしい。こうしてコックニー・レベルはスタートする。コックニー(ロンドンっ子+労働者階級の)+レベル(反逆)?

前評判は皆無に等しかったものの、デビュー作は新人離れした仕上がりだった。ハーレイの書いた文学的な詞、叙情的なメロディー、英国らしいポップセンスがうまく混ぜ合わされていた。それをギター・レスという、独特のサウンドで構成した点も巷のロックバンドとテイストを異なったものにした。しかも、バンドの演奏力は極めて高かったのだ。さらにレコーディングにはオーケストラ、合唱隊まで動員されていた。新人に潤沢な予算など組んでもらえないのが普通だと思うが、リハーサルを見たレーベル関係者が「これは…」と、その才能と可能性に見合う特別なはからいをしたのだろうか。

そして、リード・シンガー、ハーレイの説得力のある歌唱、表現力、ことにライヴにおける演劇的なパフォーマンスもインパクトがあった。こうしてアルバムはリリースされる。ライヴデビューはジェフ・ベック・グループの前座だったそうだ。アルバムからのシングル「Sebastian」は英国では振るわなかったものの、ヨーロッパ各国で大ヒットとなる。アルバムも同様で自国イギリスでは今一歩だったが、欧州各国で高評価で迎えられる。日本でもグラムロックの新人アーティストとしてアルバムは紹介される。この時に付けられたタイトルが前述の“美しき野獣の群れ”で、おまけにご丁寧にサブコピーには“黄昏の欧州のモダニズムとロマンティシズムをグラマラスにドレス・アップして70年代のロンドンに舞い降りた禁断のヒーロー”とつけられていた。

アルバムジャケットのイメージをそのまま言語に置き換えたようなものだが、自分やバンドに対して、こうした曲解されたイメージを植え付けられたこと(日本だけではなく自国でも)、また、それを安易に許してしまったことをハーレイは後年、後悔しているらしい。と言われて、同時期のグラムロック勢と比べると、サウンド的にも随分と異なる。案外近いと思わせられたのが、中期のキンクスだろうか。レイ・デイヴィスが歌うキンクスの「セルロイド・ヒーローズ」など、そのままハーレイが歌ってもピタッとハマりそうだ。プライドの高い、ザ・キンクスを率いるデイヴィス兄弟(レイ、デイヴ)が自分たちより後発のコックニー・レベルと同列で語られるのはたぶん喜ばないとは思うが、出身地も含め、コックニー仲間、共通項は多いように思える。交遊はなかったのだろうか。他にもスティーヴ・マリオットやロッド・スチュワート、ロニー・ウッドを擁したスモールフェイセス/フェイセスのベーシスト、故ロニー・レインにも彼ら、あるいはハーレイの音楽性はどこか通じるものがあると思う。

OKMusic編集部

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