TENDOUJIと04 Limited Sazabys、それ
ぞれの流儀で鳴らし燃やしたツーマン
をレポート

EASY PUNK PARK in TOKYO 2022.9.21 LIQUIDROOM
西日本編の『EASY PUNK PARK in West』と東日本編の『EASY PUNK PARK in East』、合わせて37公演の対バンツアーのファイナルとして開催された『EASY PUNK PARK in TOKYO』。ゲストは04 Limited SazabysTENDOUJIが参加したフォーリミのツアー『Human Communication tour 2022』の京都・岡山公演以来、約7ヶ月ぶりのツーマンだ。
開演前には、TENDOUJIのヨシダタカマサ(Ba)が一人で登場し、ハーモニカで「北の国から~遥かなる大地より~」を披露。喋り方もドラマの登場人物に寄せるこだわりを見せるも、このあとTENDOUJIライブ中のMCにて『北の国から』を知っている観客がそもそも少なかったことが判明し、ショックを受けるヨシダであった。
04 Limited Sazabys 撮影=藤井拓
メンバー登場シーンから自然と手拍子が発生。04 Limited Sazabysは快くオーディエンスに迎えられた。今年の夏も全国各地から引っ張りだこ、フェス出演の合間を縫ってTENDOUJIの元に駆けつけたが、オープナー「days」のあとに続いたのは「Do it Do it」、「Now here, No where」で、フェス鉄板セットリストとは一味違う選曲に観客のテンションは急上昇。重さとみずみずしさを兼ね備えたKOUHEI(Dr/Cho)のドラムが風を起こす中、どちらもリードに成り得るし、重厚な和音も鳴らすことも可能なRYU-TA(Gt/Cho)とHIROKAZ(Gt)のツインギター、さらにGEN(Ba/Vo)のハイトーンボイスが羽ばたいていく4ピースサウンドはやはり鮮烈。プライベートでもよくLIQUIDROOMに遊びに来るというGENは「TENDOUJIのツアーファイナルだからってよりかはLIQUIDROOMだから出てます(笑)」と愛あるいじりをかます。
「climb」までの4曲は“EASY PUNKっぽいテンション”を意識した選曲だったとのことで、「ここからギアが上がって、ローがバババって出てくるイージーじゃない曲が続くけど、ついてこれる?」とGENが伝えると、早速ギターが唸りを上げる。そうして「Utopia」以降はマイナー調の曲を連投。分厚いハードコアサウンドで観客を圧倒した。KOUHEIの爆裂プレイにベース、ギターが重なったあと、RYU-TAが「おらぁ、いけるか!」と投げかけ、HIROKAZのいかついリフを合図に「discord」が始まったり、「discord」を終えた直後、ほとんど間を空けずにGENが「Grasshopper」を歌い始めたりと曲間の繋ぎもスリル抜群。特に印象的だったのは「Grasshopper」でのGENのボーカルで、自分の歌でバンドを引っ張ろうという熱量が前面に出ているように感じられた。
中盤のMCでは、TENDOUJIとの出会いについて明かした。GEN曰く、名古屋のレコードショップで店長からおすすめされ、聴いてみたら「めっちゃいいじゃん!」と思ったとのこと。さらに、TENDOUJIについて調べる中で自分たちより年上だということや、Yogee New WavesとHAPPYに憧れて28歳でバンドを始めたというエピソードを知り、「最高じゃん!」と思ったそうだ。そのうえでGENは「バンド、音楽って誰がいつ始めてもいいんですよね」と噛み締める。歳を重ねるほどに見失ってしまいがちな無邪気さをむしろ輝かせるTENDOUJIの音楽に惹かれているのは、彼らを自分たちのツアーに呼んだフォーリミも、今ここに集まっている観客も一緒だろう。
その後は「ド平日のLIQUIDROOMということで懐かしい曲、珍しい曲をやってきたんですけど、ここからはめっちゃ普通です(笑)」と前置きしてから「Letter」や「hello」を披露し、「いろいろな分断がある世の中だけど、俺たちには音楽という共通言語があります。リキッド、今こういう状況(シンガロングやモッシュ等ができない状況)だけど、共感できる部分で会話しながら、また未来で再会しましょう」という想いを「Just」に込める。そしてラストは「monolith」。瞳孔を開きながら、歌っていない時にも口パクで観客に何かを伝えるGENをはじめ、一切の燃え残りを許さないテンションで最後の1曲に臨む4人だ。フォーリミのライブでは必ずと言っていいほど演奏されるこの曲がキラーチューンたる所以を垣間見た。
TENDOUJIのライブはお手製のムービーからスタート。BGMはジョン・レノン「Power to the People」。自分たちのライブ映像やオフショットに、NBAやプレミアリーグに熱狂する海外の人々の映像やアニメーション素材をコラージュした映像は遊び心満載で、この日初めてTENDOUJIのライブを観に来た人にもバンドのユニークなセンスが伝わったことだろう。スクリーンに大きく「WANNA BE CRAZY?」と表示されたあと、カウントダウンを経てメンバー4人が登場。印象的なギターリフが1曲目「Kids in the dark」の始まりを告げる。
それにしてもバンドの成長が著しい。7ヶ月前にここLIQUIDROOMで観た時に比べてサウンドは格段にダイナミックになっているし、フレーズ一つひとつの精度が上がっている。4ヶ月半かけて37ヶ所をまわったこのツアーの成果だろう。各地の対バン相手から受けた刺激もあったはずだ。特にモリタナオヒコ(Vo/Gt)のギターが痛快なフレーズを繰り出すシーンが目立つ。ボーカリスト&フロントマンであると同時にギタリストでもある自分の立ち位置により自覚的になったのではないだろうか。
キャッチーな「HEARTBEAT」で観客を踊らせると、アサノケンジ(Vo/Gt)ボーカルの「I don’ t need another life」で穏やかな風を吹かせ、甘酸っぱい歌メロとラウドなバンドサウンドの対比が鮮やかな「Young Love」へ。ガシガシと楽器を鳴らす4人は心底楽しそうだ。「適当に行こうぜって曲です。ドリンク買いに行ってもいいぜ。トイレ行ってもいいぜ。ホント自由にしてください」とオオイナオユキ(Dr)が紹介した「Blur blur」は沖縄民謡のようにリラックスした雰囲気のある曲だが、ドラマーが作ったからか、転調のしかたがやや強引で面白い。バンド結成初期のような無茶苦茶さやユーモア、演奏が上達しても彼らの根にある精神性としてのローファイがここに体現されている。
ゴリゴリのベースラインも最高だった「Peace Bomb」では途中モリタが歌うのをやめ、バンドの音のみになるシーンも。今はシンガロングできないが、観客の“心の大合唱”に耳を傾けた上で「スゲー! 最高だ!」と伝えるモリタ。その直後のボーカルは明らかに熱量が上がっている。喜びがそのまま音楽になっている。そんな中、次はあの曲ということだろう、ここで銅鑼が登場。さらに楽器から手を離せないメンバーの代わりに銅鑼を叩く人=“銅鑼リスト”としてフォーリミのGENも登場だ。TENDOUJIのライブは撮影OKのため、貴重なシーンを収めようと、スマホのカメラをステージに向ける観客たち。それに対し、「みんな、めっちゃ撮ってるね。俺らの100倍撮ってるね(笑)。めっちゃいいね、どんな楽しみ方でもいいよ!」とモリタ。そうしてGENのド派手な一発から「COCO」が始まっていく。
「今日予定空けて来てくれた人、ありがとう。予定なくてどうしようもなく来てくれた人もありがとう。平日夜に集まれる、音楽好きな気持ち悪い人が来てくれているわけですよ。大好きです」(モリタ)と飾らない言葉で親愛を伝えたMCでは、普通に働いていた自分たちが今はバンドを組んでいる、つまり音楽には“悪魔のパワー”があると語り、今ここにいるみんなは“同志”だと表現。「そういう音楽ジャンキーの人たちに、最後、大事な曲を捧げて終わりたいと思います」と純度高いサウンドで「Boys」を鳴らし、TENDOUJIはステージを去った。
アンコールでは、1stアルバム『MADCITY』リリース5周年を記念したライブを10月14日に開催することを発表。その流れで、ヨシダの顔面ドアップの『MADCITY』ジャケ写は当時ヨシダの周辺で流行っていた変顔身内ネタ“パンダちゃん”をやっている時の顔だと明かし、「パンダちゃんは口を曲げるとキリンちゃんになる」というごく狭い範囲にしか通じないネタで笑い合ったあと、『MADCITY』収録の3曲を演奏した。誰かにとっては取るに足らない、しかし自分にとっては何よりも面白いおもちゃの面白さを分かち合えたらそれはとても嬉しいことだ。それは変顔も音楽も同じで、つまりこの4人は、本当にその部分に突き動かされてバンドをやっているのだろう。
「またたくさん、たくさんライブしようと思ってます。またみんな会いに来てください!」とモリタ。ピュアな喜びそのもののような音楽をTENDOUJIはこれからも鳴らし続ける。

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=MOTO(TENDOUJI)、藤井拓(04 Limited Sazabys)

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