布袋寅泰、渡邉貢、
高橋まことらとGENETが創り出した
AUTO-MODの1st『REQUIEM』に遺る
新たな音楽潮流
ポストパンク、ニューウエイブを実践
そんなM6のあとだから…というわけでもなかろうが、イントロからベースラインが全体を引っ張るM7「バンピレラ」は、かなりスタンダードなロックチューンに思える。長めのイントロでメロディアスなサックスが彩ることも、例の布袋カッティングが重なることも、そう思えってしまう要因だろう。楽曲が進んでいくと、歌にトーキング気味の箇所があるところなど、やはりひと筋縄ではいかない部分も垣間見えるものの、間奏のサックスやギターにはアーバンな雰囲気すらあって、AOR…とまでは言わないけれども、言わばロック史のマナーに則していると感じるのは面白いところだ。
その意味では、M8「異国の幻想」もいい。レゲエである。ダークな雰囲気で、まさに「異国の幻想」といった感じだ。ロンドン発祥のパンクバンドのひとつ、The Clashがその3rd『London Calling』でスカ、ロックステディ、レゲエを自らの音楽に取り込んだことを思えば、ポストパンクを標榜していたAUTO-MODがこうしたタイプをやるのは自然なことだったかもしれない。文字通りのニューウエイブと言える。
アルバムのフィナーレはタイトルチューンM9「レクイエム」で締め括られる。これもまた冒頭からSEを加えている上、随所でコーラスをダビングしており(アウトロはでモノローグ的なボーカルを足している)、疾走感あるロックンロールに不思議な世界観を加味している。サックスがリードする箇所もわりと多く、ニューウエイブなソウルミュージックといった雰囲気もある。アウトロでのギターソロはまさに布袋メロディー。今となっては安定感がある。
このアルバム『REQUIEM』は、ジャケットをイラストレーターの丸尾末広が手掛け、ライナーノーツが同梱(?)された仕様でリリースされた。限定2000枚が即完売したという。まだまだアンダーグラウンドなシーンだったとは言え、当時のリスナーがAUTO-MODにどれほど期待していたかが分かるだろう。その後のバンドがどうなったかというと、その顛末は以前このコラムでオムニバス盤『時の葬列』で取り上げた時に書いたので、できればそちらをご参照いただきたい。結果から言えば、何だかんだあって1995年の時点でバンドは解散を選んだわけだが、冒頭でも述べた通り、GENETはまた新たなメンバーでAUTO-MODを継続していることから、彼はまだまだ意欲的であることは言うまでもないが分かる。ポジティブ(=積極的、前向き)パンクとはよく言ったものだ。音楽的な探求心ばかりではなく、そこには継続的に活動する精神も含まれているのだろう。GENETは日本のポジティブパンクを牽引していたアーティストであり、日本のゴシックロックの元祖とも呼ばれているようだが、その称号はまさに彼にこそ相応しいのである。
TEXT:帆苅智之
https://okmusic.jp/news/130066
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