海路×清田みくり×秦健豪インタビュ
ー~劇団papercraft 第7回公演『世界
が朝を知ろうとも』では「人間の深い
ところを描きたい」

2022年9月28日(水)~10月2日(日)すみだパークギャラリーSASAYAにて、劇団papercraft第7回公演『世界が朝を知ろうとも』が上演される。
脚本家・演出家の海路が主宰を務める、劇団papercraftの新作公演は、劇団初のオムニバス作品で、とあるラブホテルを舞台に3つのエピソードが描かれる。二人芝居✕二人芝居✕一人芝居の構成となっており、男女と友達同士、そしてとある女性の「朝まで」を中心とした物語が展開される。
出演者は、ダブルキャストでAとBの2チームに振り分けられている(一人芝居は葛堂里奈がシングルキャストとしてA・B両チームに出演する)。
主宰の海路と、友達同士のエピソードで同じ役を演じるAチームの清田みくりとBチームの秦健豪に、今作について話を聞いた。
【あらすじ】
ドアを眺めています。ラブホテルのドアです。この世の中では、皆何かしらの社会奉仕活動をしています。なぜなら人間、存在意義を感じれなくなるとムシになってしまうからです。ムシというのは、虫のムシです。ソーシャル・サービスと呼ばれる、その社会奉仕活動は、多岐にわたります。だからこそ、疲れたのでした。ドアの数だけ、ドラマがあるとは言いますが、お互い他のドアでは何をしているかなんて、知っているわけもないのでした。
■見た後すぐに「楽しかった」とか「悲しかった」とかで終わらない作品
――清田さんと秦さんが海路さんの作品にご出演されるのは今回が初めてということで、まずは海路さんから見た清田さんの印象を教えてください。
海路:今回は出演者オーディションをやりました。2分くらいのオーディション用の台本を作ったんですけど、目の前で起きていることに正しく反応するというか、会話がちゃんと出来る人というのが絶対条件でした。清田さんは会話がめちゃくちゃ面白かったんですよ。オーディションの前後にも少し雑談をする時間があったのですが、清田さんはこちらが言ったことに、気持ちよい返しをしてくれるという印象でした。
――清田さんから見た海路さんの印象はいかがでしょうか。
清田:オーディションで初めてお会いした時は、すごく静かな人かと思ったんですけど、稽古が始まると優しいけど強い感じがして、思っていたよりも静かじゃなかったです(笑)。普段しゃべっているときはほんわかしている感じなんですけど、演出になったら頭の回転とかしゃべる速度とかが早くてすごいなと思います。脚本については、個人的にこういう作品に出演したいなと思っていたから嬉しかったですね。とても考えさせられる内容で、悩んでいることがある人にとってはちょっとした救いになりそうな作品だなと思いました。
劇団papercraft 第7回公演『世界が朝を知ろうとも』 清田みくり
――次に、海路さんから見た秦さんの印象をお願いします。
海路:秦くんは、オーディション用の台本を作ったときに思っていたど真ん中の芝居を一発目でポンと出してきたんですよね。それで試しに「こういうのは?」って違う方向を提案してみたらそっちもポンと出来てしまって。何でもサラッとこなせる方だという印象を抱いて、それでご一緒したいなと思いました。
――秦さんから見た海路さんの印象はいかがでしょうか。
秦:海路さんの台本は、見た後すぐに「楽しかった」とか「悲しかった」とかで終わらない何かを残すところが、僕の好きな方向性なんです。見た後すっきりしないというか、気になってちょっと病みつきになる感じの作品の作り方が、やるのも見るのも好きです。今作はもちろん難しさはあるんですけど、海路さんは一緒にやっていてすごく面白い方なので、楽しいという思いがいつも一番前にありながら稽古をすることができています。
――清田さんは今回が初舞台とのことですが、舞台に挑戦したいというお気持ちは以前からあったのでしょうか。
清田:はい、ありました。今回の劇場は特にお客さんとの距離が近いので、怖いですね。マイクなしで声聞こえるのかな、というところも不安だし、結構ドキドキがいっぱいです。
――お稽古をしながら、映像との違いはどのように感じていらっしゃいますか。
清田:すぐにはできないことがあっても、お稽古をすることで詰めることができるところや、海路さんが役者個人個人を生かすように演出をしてくださるところが、舞台ならではだなと感じています。あとは、映像だとカメラがあるからどう見られているかが想像しやすいですが、舞台だと客席からどう見えるのかが想像しにくくて、ちょっと混乱しました。

■男だから女だからじゃなくて誰が演じるかが重要
――今作はどういうところから発想されたのでしょうか。
海路:前回公演までは結構人数が多いお芝居を作っていたので、そろそろ一人一人をじっくり描く作品を作りたいと思って、オムニバス形式でやってみようというところから始まりました。二人芝居2本と一人芝居1本という形から考え始めて、舞台設定としてラブホテルの空間ってコアというか、人間の深いところが出てくる空間な気がしたのでそこを舞台にしようと思いました。社会と自分との関係性や位置づけみたいなところは最近いろいろ考えていたので、それを設定の中に組み込んで、かつ不条理なテイストにしてみようと思った結果、「存在意義を感じられなくなるとムシになる」という設定を思いつきました。
劇団papercraft 第7回公演『世界が朝を知ろうとも』 秦健豪
――清田さんと秦さんはそれぞれAチームとBチームに別れて同じ役を演じることになりますが、お互いを意識されていますか。
清田:この間、秦さんが本読みしているところを見る機会があったんですけど、自分と全然違うな、別物だな、と思ったので、そこに対してのプレッシャーみたいなものはなく、逆に楽しみです。
秦:僕はダブルキャスト自体は2回目で、前回やった舞台では同じ役の人と一緒に稽古をするスタイルだったので、相手のことはどうしても意識していたんですけど、今回は稽古が別々なので清田さんがお稽古しているところを見る機会がほとんどなくて、意識するというよりすごく気にはなりますね。完成したものを見て自分たちとの違いを楽しみたいなと思います。
――今回、AチームとBチームに分かれての公演ですが、清田さんと秦さんが出演するパートは同性同士の二人芝居となっていて、Aチームは女性同士、Bチームは男性同士というキャスティングになっています。
海路:同じ台本で2チームに分かれてやるなら何か差をつけたいなと思ったんです。それで、友達パートをAチームは女性同士にしてBチームは男性同士にして、そこから生まれる印象の違いやニュアンスの違い、見え方の違い、感じ方の違いみたいなところで差が出せないかな、と思って挑戦してみることにしました。
――稽古が始まってみて、女性ペアと男性ペアの違いみたいなものは感じていらっしゃいますか。
海路:男女の違いという感じではなく、個々の違いが表れてきているなと感じています。この人はこういう面白いところがあって、こういう素敵なところがあるから、じゃあそこを生かそう、という作り方を以前からしてきましたが、今回改めて男だから女だからじゃなくて誰が演じるかが重要だし、性別という枠にあてはめて人を見るのは違うんだな、ということをすごく感じているところです。
劇団papercraft 第7回公演『世界が朝を知ろうとも』 海路

■どの登場人物を見ても全員が主役になれる作品
――海路さんは劇団の公演と外部の公演と合わせると非常にハイペースで作品を発表し続けています。そのあたりはご自身で意識してやっていらっしゃるのでしょうか。
海路:自分なんてまだ出始めだしキャリアもないし、という中でそれでも自分の作品を見たいな、と思ってくださる人がいたときに、常に次の作品がある状態にしたいなっていう意識は持っています。「海路って名前聞いたけど、あの人の作品ってどうなの?」ってなったときに、「来月公演あるよ」「じゃあ行ってみようかな」っていう状況を作りたかったというか。あとは、やれるうちにやろう、という気持ちはありますね。コロナ禍の今が「やれるうち」なのかどうか正直わかりませんが、うちはコロナ禍で旗揚げして、ずっとコロナ禍の中で公演をやってきているんで。
――では最後に公演に向けての意気込みをお願いします。まずは清田さんから。
清田:3つのエピソードがあるんですけど、私は全エピソードそれぞれに共感ポイントがあります。「そんなこと思ってない」というふりをしていたけど、本当は自分の中で思っていたこと、みたいなものが全エピソードに出てくるんですよ。自分の出演する二人芝居のパートでは、ラブホの中というすごい静かな空間で、目が離せないようなお芝居をしたいと思います。(小さくガッツポーズ)
――ガッツポーズありがとうございます(笑)。では秦さん。
秦:台本を読んだときに、これまで出会った作品とは全然違う、これが海路さんワールドなんだと思いました。自分の新境地開拓じゃないですけど、新ジャンルに挑戦できる嬉しさもありますし、実際稽古では難しい部分もありますが、それ以上に吸収できることが多いです。至って普通の日常の中で起こる話ではあるんですけど、お客様の感情に波を作れるような作品にできるようにしたいと思いながら稽古しています。見に来てくださる方は、気持ち的にも物理的にも手ぶら感覚で来ていただいた方が、フラットに見てもらえるのかなと思います。
――最後に海路さんから一言、お願いします。
海路:今回、フライヤーのビジュアルを5パターン作ったのですが、どのエピソード、どの登場人物を見ても全員が主役になれる作品にしたいな、と思っています。人間の深いところを描きたいと思って稽古をやっているので、見てくださるみなさんにはいい意味で心をえぐられて帰っていただきたいなと思いますね。
劇団papercraft 第7回公演『世界が朝を知ろうとも』 左から清田みくり、海路、秦健豪

取材・文・撮影=久田絢子

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